『源氏物語』の冒頭「いづれの御時にか…」は、定期テストで最もよく出題される箇所の一つです。光源氏の母・桐壺更衣の身分と、帝のあつい寵愛、そしてそれをめぐる女御・更衣たちの嫉妬が、わずか数行に凝縮されています。ここでは、その頻出箇所をオリジナルの設問にしました。まずは本文を読み、設問に答え、最後の「解答・解説」で確認してください。先に物語の流れをつかみたい人は、源氏物語『桐壺』のやさしい解説もあわせて読むと、設問の意図がぐっとわかりやすくなります。
本文(傍線①〜⑮)
①いづれの御時(おほんとき)にか、女御(にようご)・更衣(かうい)あまた②さぶらひたまひける中に、いと③やむごとなき④際(きは)にはあらぬが、すぐれて⑤時めきたまふありけり。
はじめより我はと⑥思ひ上がりたまへる御方々、⑦めざましきものに⑧おとしめそねみたまふ。同じほど、それより⑨下臈(げらふ)の更衣たちは、まして⑩やすからず。
朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、⑪恨みを負ふ積もりにやありけむ、いと⑫篤(あつ)しくなりゆき、もの心細げに⑬里がちなるを、いよいよ飽かずあはれなるものに⑭思ほして、人のそしりをも⑮え憚(はばか)らせたまはず、世のためしにもなりぬべき御もてなしなり。
語注 御時=御代。天皇の治世。 女御・更衣=帝に仕える后妃。女御のほうが上位。 さぶらふ=お仕えする(謙譲語)。 やむごとなし=高貴だ・格別だ。 際=身分。 時めく=寵愛を受けて栄える。 思ひ上がる=自負する。 めざまし=目にあまる・気にくわない。 おとしむ=見下す。 そねむ=ねたむ。 下臈=身分の低い者。 やすからず=心が穏やかでない。 篤し=病気が重い。 里がち=実家に下がりがち。 飽かず=いくら見ても飽き足りない。 思ほす=「思ふ」の尊敬語。 そしり=非難。 憚る=遠慮する・気にする。 ためし=先例・語り草。 御もてなし=お扱い。
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設問
A 語句の意味と読み
- ①の「御時」の読みと意味を書け。
- ③「やむごとなき」の意味を書け。
- ⑤「時めき」の意味を書け。
- ⑦「めざましき」のここでの意味を書け。
- ⑨「下臈(げらふ)」の読みと意味を書け。
- ⑩「やすからず」の意味を書け。
- ⑫「篤しく」と⑬「里がちなる」の意味をそれぞれ書け。
B 文法
- ①の「か」の下に省略されている語を補い、その理由も書け。
- ④「際(きは)にはあらぬ」の「ぬ」は何の助動詞の何形か。
- ⑪の「や」と「けむ」を、それぞれ文法的に説明せよ。
- ⑮の「え〜ず」は、どのような意味を表すか。
- 「世のためしにもなりぬべき」の「ぬ」「べき」を、それぞれ文法的に説明せよ。
C 敬語と敬意の方向
- ②の敬語を二つに分け、それぞれ種類と、誰から誰への敬意かを書け。
- ⑥の「たまへ」の敬語の種類と、誰から誰への敬意かを書け。
- ⑧の「たまふ」の敬語の種類と、誰から誰への敬意かを書け。
- ⑭「思ほして」は「思ふ」をどう言いかえた語か。種類と敬意の方向も書け。
- ⑮の「せたまは」は何と呼ばれる言い方か。誰への敬意かも書け。
D 口語訳
- ①「いづれの御時にか」(省略されている語を補って訳すこと)
- ⑦・⑧「めざましきものにおとしめそねみたまふ」
- ⑫・⑬を含む「いと篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを」
- ⑮を含む「人のそしりをもえ憚らせたまはず」
E 内容・記述
- ③・④から、桐壺更衣はどのような身分の女性だと分かるか。書け。
- 桐壺更衣が女御・更衣たちから見下され、ねたまれたのはなぜか。また、ねたんだのは具体的にどのような人々か。本文の語句を使って書け。
- 更衣が⑬「里がちなる」ようになったのはなぜか。また、それに対して帝の気持ちはどう変化したか。書け。
- 「世のためしにもなりぬべき御もてなしなり」とは、どういうことか。書け。
F 文学史
- 『源氏物語』の作者名・成立したおおよその時代・全部で何帖から成るかを書け。
- 『源氏物語』のような、伝説や空想をもとにつくられた物語を何というか。
- その系譜で「物語の祖(現存する日本最古の物語)」とされる作品名を書け。
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解答と解説
▼ 解答・解説を見る
A 語句の意味と読み
問1 おほんとき/御代(帝の治世)
問2 高貴だ・格別だ
└ 「際」=身分、と続く
問3 (帝の)寵愛を受けて栄える
└ ×「時流に乗る」ではない
問4 目にあまる・気にくわない(不快だ)
└ ★現代語の「目ざましい(すばらしい)」ではない
問5 げらふ(げろう)/身分の低い者
問6 心が穏やかでない・おだやかでいられない
問7 篤しく=病気が重く 里がちなる=実家に下がりがちである
B 文法
問8 「ありけむ」(あらむ)などが省略されている。係助詞「か」の結びが省かれているため。
問9 打消の助動詞「ず」の連体形
└ 下に「が(=方)」が続くので連体形
問10 「や」=係助詞(疑問)/「けむ」=過去推量の助動詞(連体形。「や」の結び)
└ 「〜であったのだろうか」
問11 〜できない(不可能)
問12 「ぬ」=強意(確述)の助動詞「ぬ」の終止形/「べき」=推量(当然)の助動詞「べし」の連体形
└ 「きっと〜になってしまいそうな」
C 敬語と敬意の方向
問13 「さぶらひ」=謙譲語。作者から帝への敬意/「たまひ」=尊敬語。作者から女御・更衣への敬意
└ ★一語の中に二方向。最頻出
問14 尊敬語/作者から御方々(女御たち)への敬意
問15 尊敬語/作者から御方々(女御たち)への敬意
問16 「思ふ」の尊敬語/作者から帝への敬意
問17 最高敬語(二重敬語)/帝への敬意
└ ★帝や中宮など、最も高い方にだけ使う
D 口語訳
問18 どの帝の御代のことであっただろうか。
問19 (その更衣を)気にくわない者として見下し、ねたみなさる。
問20 たいそう病気が重くなっていき、なんとなく心細そうに実家に下がりがちであるのを、
問21 人の非難をもお気になさることがおできにならず、
E 内容・記述
問22 それほど高貴な家柄の出ではない、女御より下の身分の更衣。
問23 身分が高くないのに、帝の寵愛をひとりじめしていたから。ねたんだのは「はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方々」(女御たち)と、「同じほど、それより下臈の更衣たち」。
問24 人々の恨みを受け続けて心労が重なり、病気が重くなったから。帝はそれを見て、ますますこの上なくいとしいものとお思いになった。
問25 帝の更衣への扱いが、のちの世の語り草になってしまいそうなほど、度をこえたものであったということ。
F 文学史
問26 紫式部/平安時代(中期)/五十四帖
問27 作り物語(つくりものがたり)
問28 『竹取物語』
【テスト直前チェック】この三つ
❶「さぶらひたまひ」は二方向の敬語。「さぶらひ」=謙譲(帝へ)/「たまひ」=尊敬(女御・更衣へ)。誰の動作かを先に決めると、向きは自動的に決まります。
❷「せたまは」は最高敬語(二重敬語)。帝だから使われています。
❸「めざまし」=気にくわない。現代語の「目ざましい(すばらしい)」ではありません。
現代語訳(全文)
どの帝の御代のことであっただろうか、女御や更衣が大勢お仕えなさっていた中に、それほど高貴な身分ではない方で、格別に帝の寵愛を受けていらっしゃる方があった。
(入内の)はじめから「自分こそは」と自負していらっしゃった女御の方々は、(その更衣を)気にくわない者として見下し、ねたみなさる。同じ身分、あるいはそれより低い身分の更衣たちは、まして心穏やかでない。
朝夕の宮仕えにつけても、人の心をひたすら乱すばかりで、恨みを受けることが積み重なったせいであろうか、たいそう病気が重くなっていき、なんとなく心細そうに実家に下がりがちであるのを、(帝は)ますますこの上なくいとしいものとお思いになって、人の非難をもお気になさることがおできにならず、世の語り草にもなってしまいそうなお扱いである。
※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
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