東下り テスト対策問題28問|折句と掛詞・解答つきPDF

東下り(伊勢物語) 確認テスト|定期テスト対策 定期テスト対策

伊勢物語『東下り』は、定期テストで必ずといってよいほど問われる超頻出の段です。とくに八橋の場面で詠まれる「から衣…」の和歌は、各句の頭の文字をつなぐと「かきつばた」になる折句(おりく)の代表例として、修辞の問題で繰り返し出題されます。掛詞・縁語・序詞といった和歌の技法、傍線部の文法、語句の意味、そして文学史(歌物語・主人公のモデル)まで、テストでねらわれるポイントを一通り押さえられる問題をそろえました。まずは本文を読んで設問に答え、最後の解答で確認しましょう。あわせて伊勢物語『東下り』のやさしい解説も読むと、場面の流れが頭に入りやすくなります。

本文(傍線①〜⑮)

むかし、男ありけり。その男、身を要(えう)なきものに思ひなして、京にはあらじ、東(あづま)の方(かた)に住むべき国求めにとて行きけり。もとより友とする人、ひとりふたりして行きけり。道知れる人もなくて、まどひ行きけり。
三河(みかは)の国、八橋(やつはし)といふ所にいたりぬ。そこを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手(くもで)なれば、橋を八つ渡せるによりてなむ、八橋といひける。その沢のほとりの木の陰に下(お)りゐて、乾飯(かれいひ)食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人のいはく、「かきつばた、といふ五文字を句の上にすゑて、旅の心をよめ」といひければ、よめる。
から衣きつつなれにしつましあれば はるばるきぬる旅をしぞ思ふ
とよめりければ、みな人、乾飯の上に涙落としてほとびにけり
行き行きて、駿河(するが)の国にいたりぬ。宇津(うつ)の山にいたりて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、蔦(つた)・楓(かへで)は茂り、もの心細く、すずろなるめを見ることと思ふに、修行者(すぎやうざ)あひたり。「かかる道は、いかでかいまする」といふを見れば、見し人なりけり。京に、その人の御もとにとて、文(ふみ)書きてつく。
駿河なる宇津の山辺(やまべ)のうつつにも 夢にも人にあはぬなりけり
なほ行き行きて、武蔵(むさし)の国と下総の国との中に、いと大きなる河あり。それをすみだ河といふ。その河のほとりに群れゐて、思ひやれば、限りなく遠くも来(き)にけるかなと、わびあへるに、渡守(わたしもり)、「はや舟に乗れ、日も暮れぬ」といふに、乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さるをりしも、白き鳥の、嘴(はし)と脚(あし)と赤き、鴫(しぎ)の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡守に問ひければ、「これなむ都鳥(みやこどり)」といふを聞きて、
名にし負はばいざ言問(ことと)はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと
とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。

語注 東の方=東国。今の関東地方を中心とした、都から見て東の国々。 まどふ=迷う。どうしてよいかわからなくなる。 三河の国=今の愛知県の東部。 八橋=三河の国の地名。 下りゐる=(馬から)下りて座る。 かきつばた=初夏に紫の花をつける水辺の草。 句の上=和歌の各句の初めの一字。 から衣=唐風の美しい衣。「着る」を導く語としても使われる。 なる(萎る・馴る)=衣が着慣れてやわらかくなる/人と慣れ親しむ。ラ行下二段。 つま=衣の「褄(すその左右の端)」と「妻」。 駿河の国=今の静岡県の中部・東部。 修行者=仏道修行のために諸国をめぐり歩く僧。読みは「すぎやうざ」。 うつつ=現実。 文=手紙。 武蔵の国=今の東京都・埼玉県のあたり。 下総の国=今の千葉県北部・茨城県南西部のあたり。古文での読みは「しもつふさ(しもふさ)」。現代の地名としては「しもうさ」と読む。 すみだ河=隅田川。 渡守=渡し舟の船頭。 鴫=くちばしと脚の長い、水辺にすむ鳥。 名に負ふ=その名を持っている。名にふさわしい。 言問ふ=尋ねる。 こぞる=そろって〜する。全員が〜する。

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読んだだけでは、テストでは書けません。本番と同じ縦書きで、実際に手を動かしてください。28問・解答と現代語訳つきです。

使い方のおすすめ。①まず何も見ずに解く → ②解答で答え合わせ → ③まちがえた設問の番号と同じ傍線を本文で探して読み直す。

設問

A 語句の意味と読み

  1. ①「身を要なきものに思ひなして」の「要(えう)なし」の意味を書け。
  2. ①「身を要なきものに思ひなして」の「思ひなす」の意味を書け。
  3. ②「蜘蛛手」とはどのようなようすを表す語か、説明せよ。
  4. ④「乾飯」とはどのようなものか、説明せよ。
  5. ⑨「ほとびにけり」の「ほとぶ」の意味を書け。

B 文法

  1. ③「橋を八つ渡せる」の「る」を文法的に説明せよ。
  2. ⑦「きぬる」を文法的に説明せよ。
  3. ⑧「旅をしぞ思ふ」の「し」はどのような働きの語か。
  4. ⑧「旅をしぞ思ふ」で、文末の「思ふ」が連体形になっているのはなぜか。きまりの名を示して答えよ。
  5. ⑬「あはぬなりけり」の「ぬ」の文法的意味と活用形を答えよ。

C 主語・指す内容・敬意

  1. ⑤「句の上にすゑて」とあるが、このように歌を詠むよう求めたのは誰か。
  2. ⑪「かかる道は、いかでかいまする」は誰の言葉か。
  3. ⑪「いまする」は、誰から誰に対する敬意か。
  4. ⑮「名にし負はば」の「名」とは、何という名のことか。

D 口語訳

  1. ⑨「ほとびにけり」を、主語を補って口語訳せよ。
  2. ⑩「すずろなるめを見ること」を口語訳せよ。
  3. ⑪「かかる道は、いかでかいまする」を口語訳せよ。
  4. ⑬「あはぬなりけり」を口語訳せよ。

E 内容・記述

  1. ③「橋を八つ渡せる」とあるが、その土地が「八橋」と呼ばれた理由を、本文に即して説明せよ。
  2. ⑥「なれにし」の「なれ」には二つの意味が掛けられている。それぞれ説明せよ。
  3. ⑭「わびあへる」から読み取れる一行の心情を、十五字以内で書け。
  4. ⑮「名にし負はば」の歌で、男は都鳥に何を尋ねているか。本文に即して書け。

F 文学史・修辞

  1. ⑤「句の上にすゑて」とあるように、各句の頭の文字を続けると一つの語になる修辞技法を漢字で書け。
  2. ⑤の方法で、この歌に隠されている語をひらがな五字で書け。
  3. ⑥「なれにし」を含む「から衣…」の歌には、「から衣」と関わりの深い「着る・なる(萎る)・つま(褄)・はる(張る)」が詠み込まれている。この修辞技法を漢字二字で書け。
  4. ⑫「うつつにも」には、すぐ前に出てくる地名と同じ音を利用した掛詞が使われている。掛けられている二つの意味を書け。
  5. 『伊勢物語』のように、和歌を中心にして、その歌が詠まれた事情を短い物語として記した作品を何というか。漢字で書け。
  6. 『伊勢物語』の主人公である「昔、男」のモデルとされる、平安時代初期の歌人は誰か。人物名を書け。

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解答と解説

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A 語句の意味と読み

問1 必要がない。役に立たない。
└ 「要」=入り用。都での自分を無用の者と見たということ

問2 (そうではないのに)自分でそう思い込む。
└ 「なす」=意識してそうする。旅立ちの動機になる語

問3 蜘蛛の足のように、四方八方へ幾筋にも分かれているようす。
└ 川が分流している地形。これが地名「八橋」の由来につながる

問4 炊いた米を干した、旅の携帯用の保存食。水などでもどして食べる。
└ 乾いているからこそ、涙で「ほとぶ」という表現が生きる

問5 水気を含んでふやける。ふくれる。
└ 乾飯が涙でふやけるほど泣いた、という誇張のきいた表現

B 文法

問6 存続(完了)の助動詞「り」の連体形。「橋を八つ渡してある」の意。
└ 「渡せ」は四段動詞「渡す」。※「り」の接続を「四段の已然形」と説明する教科書と「四段の命令形」と説明する教科書があるので、お使いの教科書の説明に合わせること

問7 カ行変格活用の動詞「来(く)」の連用形「き」+完了の助動詞「ぬ」の連体形「ぬる」。
└ 下の「旅」を修飾するので連体形。「来(く)」の活用=こ・き・く・くる・くれ・こ

問8 意味を強める副助詞(強意の「し」)。訳には直接表れない。
└ 直前が格助詞「を」。過去の助動詞「き」の連体形「し」ではない

問9 係助詞「ぞ」を受けて連体形で結ぶ、係り結び(の法則)によるため。
└ ぞ・なむ・や・か→連体形/こそ→已然形

問10 打消の助動詞「ず」の連体形。
└ 下の「なり」が断定の助動詞で、体言・連体形に接続するから。続く「けり」は詠嘆(〜だなあ)

C 主語・指す内容・敬意

問11 ある人(旅を共にしている同行者の一人)。
└ 「ある人のいはく」に注目。求められて詠んだのは男

問12 修行者の言葉。
└ 「といふを見れば、見し人なりけり」=言うのを見ると都で見知った人だった、という流れ

問13 話し手である修行者から、男(一行)に対する敬意。
└ 「います」は尊敬語なので、敬われるのは動作をする人=男。会話文の中なので、敬っているのは作者ではなく話し手の修行者

問14 「都鳥」という、「都」の字を持った鳥の名。
└ 都の名を負う鳥なら都のことを知っていよう、という理屈でよびかけている

D 口語訳

問15 (涙が落ちて)乾飯がふやけてしまった。
└ 「に」=完了「ぬ」の連用形。「けり」はここでは地の文なので過去(〜てしまった)。和歌の文末の「けり」は詠嘆になることが多い(⑬参照)

問16 思いがけない(つらい)目にあうことだ。
└ 「すずろなり」=思いがけない/「めを見る」=経験する

問17 このような(暗く心細い)道を、どうしていらっしゃるのですか。
└ 「かかる」=このような、「いかでか」=どうして〜か、「います」=いらっしゃる

問18 (あの人に)会えないのだなあ。
└ 「ぬ」=打消/「なり」=断定/和歌の文末の「けり」=詠嘆。「〜ないのだなあ」と結ぶ

E 内容・記述

問19 川の流れが蜘蛛の足のように幾筋にも分かれていて、そこに橋を八つ渡してあったから。
└ ②「蜘蛛手」の地形が前提。地形→橋の数→地名、の順で書く

問20 衣が着慣れてやわらかくなる意の「萎る」と、長年連れ添って慣れ親しむ意の「馴る」。
└ 「から衣」の縁で「萎る」、「つま(妻)」の縁で「馴る」。一語に二つの意味を重ねるので掛詞

問21 都を離れた心細さと望郷の思い(十四字)
└ 直前の「限りなく遠くも来にけるかな」が手がかり。「心細さ」「望郷」の二要素を入れる

問22 都に残してきた恋しい人が、無事でいるかいないかということ。
└ 歌の下の句「わが思ふ人はありやなしや」がそのまま答え。直後に「舟こぞりて泣きにけり」とある

F 文学史・修辞

問23 折句(おりく)
└ 「からころも/きつつなれにし/つましあれば/はるばるきぬる/たびをしぞ思ふ」の頭を続けて読む

問24 かきつばた
└ 沢に咲いていた花の名。各句の頭は「か・き・つ・は(ば)・た」

問25 縁語(えんご)
└ なお「から衣」自体を、「着る」を導く枕詞とする教科書と、序詞的な表現とする教科書があるので、お使いの教科書の説明に合わせること

問26 地名の「宇津(の山)」と、「現=現実」の意味。
└ 歌の上の句「駿河なる宇津の山辺の」の「宇津」に「うつつ」の音を重ねている。歌意は「現実にも夢にもあの人に会えないことだなあ」

問27 歌物語(うたものがたり)
└ ほかに『大和物語』『平中物語』などがある

問28 在原業平(ありわらのなりひら)
└ 六歌仙・三十六歌仙の一人。あくまで「モデルとされる」人物で、作品全体が業平の事績そのものというわけではない

【テスト直前チェック】この三つ
「から衣…」の歌は修辞の三点セット 各句の頭を続けて「かきつばた」=折句、「なれ・つま・はる」=掛詞、「着る・萎る・褄・張る」=縁語。技法の名前を漢字で書けるようにしておく。
「きぬる」と「ほとびにけり」 「きぬる」=カ変「来」の連用形「き」+完了「ぬ」の連体形(下の「旅」にかかる)。「ほとぶ」の主語は人ではなく乾飯。訳と文法の両方でねらわれる。
「いまする」は尊敬語 言ったのは修行者、敬われているのは。あわせて「うつつ」=地名「宇津」+「現実」の掛詞もセットで覚える。

現代語訳(全文)

昔、ある男がいた。その男は、わが身を必要のない(役に立たない)ものだと思い込んで、都にはいるまい、東国の方に住むのによい国を求めて行こうと思って出かけて行った。もとから友としている人、一人二人と連れ立って行った。道を知っている人もいなくて、迷いながら行った。

三河の国の八橋という所に着いた。そこを八橋といったのは、流れる川が蜘蛛の足のように幾筋にも分かれているので、橋を八つ渡してあることによって、八橋といったのである。その沢のほとりの木の陰に(馬から)下りて座って、乾飯を食べた。その沢にかきつばたがたいそう美しく咲いていた。それを見て、ある人が言うことには、「『かきつばた』という五文字を各句の初めに置いて、旅の心を詠め」と言ったので、(男が)詠んだ歌。

唐衣を着慣れるように、慣れ親しんだ妻が都にいるので、はるばると来てしまったこの旅を、しみじみと思うことだ

と詠んだので、一行の人々はみな、乾飯の上に涙を落として、その乾飯がふやけてしまった。

さらにどんどん行って、駿河の国に着いた。宇津の山まで来て、自分が分け入ろうとする道は、たいそう暗く細いうえに、蔦や楓が茂り、なんとなく心細く、思いがけないつらい目にあうことだと思っていると、修行者に出会った。「このような道を、どうしていらっしゃるのですか」と言うのを見ると、(都で)見知った人であった。都にいる、あの人のもとへと思って、手紙を書いて(修行者に)託す。

駿河にある宇津の山辺の、その「うつ」ではないが、現実にも、また夢の中でも、あなたに会えないことだなあ

さらにどんどん行って、武蔵の国と下総の国との間に、たいそう大きな川がある。それをすみだ河という。その川のほとりに一行が集まって座って、都のことを思いやると、この上なく遠くまで来てしまったものだなあと、互いに嘆き合っていると、渡し守が、「早く舟に乗れ、日も暮れてしまう」と言うので、舟に乗って渡ろうとするが、人々はみななんとなく物悲しくて、都に思う人がいないわけでもない。ちょうどそのとき、白い鳥で、くちばしと脚とが赤い、鴫くらいの大きさの鳥が、水の上で遊びながら魚を食べている。都では見かけない鳥なので、人々はみな見知らない。渡し守に尋ねたところ、「これが都鳥だ」と言うのを聞いて、

「都」という名を持っているのならば、さあ尋ねよう、都鳥よ。私が思っているあの人は、無事でいるのかいないのかと

と詠んだので、舟に乗っている人がみなそろって泣いてしまった。

※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。

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