清少納言『枕草子』の「ものづくし(類聚的章段)」の一つ、「はしたなきもの(きまりが悪いもの・体裁の悪いもの)」からの定番問題です。「はしたなし」「いとど」「つと」などの重要語、助動詞「ぬ」「たり」の識別、「げに〜など聞きながら」の逆接、涙をめぐる人間観察という主題が繰り返し問われます。
本文
【本文】
はしたなきもの。異人(ことびと)を呼ぶに、我ぞとてさし出でたる。物などとらする折は、いとど。おのづから人の上などうち言ひそしりたるに、幼き子どもの聞き取りて、その人のあるに言ひ出でたる。あはれなる事など人の言ひ出で、うち泣きなどするに、げにいとあはれなりなど聞きながら、涙のつと出で来ぬ、いとはしたなし。泣き顔つくり、けしきことになせど、いとかひなし。めでたき事を見聞くには、まづただ出で来にぞ出で来る。
問題
- 傍線部「異人」の読みをひらがなで答えよ。また意味も答えよ。
- 傍線部「はしたなき」(終止形「はしたなし」)の意味を答えよ。
- 傍線部「いとど」の意味を答えよ。どのような気持ちを表すか。
- 傍線部「さし出でたる」の「たる」、および「涙のつと出で来ぬ」の「ぬ」は、それぞれ何の助動詞の何形か。文法的に説明せよ。
- 傍線部「げにいとあはれなりなど聞きながら」を、「ながら」の意味に注意して現代語訳せよ。
- 傍線部「つと出で来ぬ、いとはしたなし」とは、どのような状況を「はしたなし」と言っているのか、内容を説明せよ。
- 傍線部「まづただ出で来にぞ出で来る」を現代語訳せよ。また、直前の涙の話とどのような関係にあるか説明せよ。
- この章段全体の主題を、『枕草子』のどの種類の章段かにも触れて答えよ。
解答・解説
問1の解答
読み=ことびと。意味=ほかの人・別の人。「い(じん)」と読まないよう注意。ここは「他の人を呼んでいるのに」の意。
問2の解答
きまりが悪い・体裁が悪い・中途半端で落ち着かない。形容詞ク活用。現代語の「はしたない(下品だ)」とは意味が異なる点が頻出。
問3の解答
「ますます・いっそう」。物をあげる場面では、勘違いして出しゃばった気まずさが「いっそう(ひどくなる)」という気持ちを表す。下に「はしたなし」などが省略された余情表現。
問4の解答
「たる」=完了・存続の助動詞「たり」の連体形(連体止めで体言的に列挙)。「ぬ」=打消の助動詞「ず」の連体形(「涙がさっと出てこない(こと)」)。完了「ぬ」の終止形と紛らわしいので、直前が未然形「来(こ)」+文脈が打消である点で識別する。
問5の解答
「本当にたいそうしみじみと悲しいことだなどと聞きながらも(=聞いてはいるものの)」。「ながら」は逆接(〜けれども)。「げに」=なるほど・本当に。心では共感しているのに涙が出ない、という逆接をつかむのが要点。
問6の解答
人が悲しい話をして泣いているのに合わせて、自分も心では悲しいと思って聞いているのに、涙がさっと出てこない状況。同情して泣くべき場面で泣けず、間が悪くきまりが悪い、ということ。「つと」=さっと・急に。
問7の解答
訳=「まっさきにただもう(涙が)出てきて出てくる」。悲しい場面では涙が出ないのに、めでたい(すばらしい)ことを見聞きするときには、こらえようもなく涙が出てくる、という対比を示す。人の感情と涙が食い違うおかしさを描いている。文末「ぞ〜出で来る」は係り結び(強意「ぞ」+連体形「出で来る」)。
問8の解答
「はしたなきもの(きまりが悪いもの)」という一つの題のもとに具体例を列挙する『枕草子』の類聚的章段(ものづくしの段)。呼び違え・子どもの失言・涙の出方など、日常の「きまり悪い瞬間」を鋭く観察し、人間の心と反応のずれをおかしみを持ってとらえている点が主題。
👉 本文の現代語訳・語句・文法のくわしい解説は 解説記事 で確認できます。
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