台風の翌日の情景を清少納言独特の観察眼で描いた章段。「こそ〜已然形」の係り結び、「あはれなり」「心あり」などの重要語、「心あらむ」の『む』の識別、「むべ山風を」の和歌引用の理解が定番で問われます。
本文
【冒頭】
野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。立蔀、透垣などの乱れたるに、前栽どもいと心苦しげなり。大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折られたるが、萩、女郎花などの上によころばひ伏せる、いと思はずなり。【人物の描写】
いと濃き衣のうはぐもりたるに、黄朽葉の織物、薄物などの小袿着て、まことしうきよげなる人の、夜は風の騒ぎに寝られざりければ、久しう寝起きたるままに、母屋よりすこしゐざり出でたる、髪は風に吹きまよはされて、すこしうちふくだみたるが、肩にかかれるほど、まことにめでたし。【和歌の引用】
ものあはれなるけしきに見出だして、「むべ山風を」など言ひたるも、心あらむと見ゆるに、をかし。
問題
- 傍線部「野分」の読みと意味を答えよ。
- 傍線部「あはれに」の語の意味を答えよ。
- 冒頭「野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。」の文について、係り結びの係助詞とその結びの語を抜き出し、結びが何形になっているか答えよ。
- 傍線部「よころばひ伏せる」を現代語訳せよ。
- 「まことしうきよげなる人の、夜は風の騒ぎに寝られざりければ」の「寝られざりけれ」を単語に分け、「れ」の意味を答えよ。
- 傍線部「すこしうちふくだみたる」とは、何がどうなっている様子か説明せよ。
- 傍線部「むべ山風を」は、ある和歌の一部を口ずさんだものである。この歌の趣旨をふまえ、なぜここでこの歌が引かれているのか説明せよ。
- 傍線部「心あらむ」を文法的に説明し(品詞分解を含む)、あわせて清少納言がこの人物のどのような点を評価しているか説明せよ。
解答・解説
問1の解答
読み=のわき。意味=秋に吹く暴風・台風。「野の草を分けて吹く強い風」の意で、この段は台風一過の翌朝の情景を描く。
問2の解答
しみじみと心が動かされる・情趣が深い、の意。形容動詞「あはれなり」の連用形。同じ「趣がある」でも、明るく知的な美をいう「をかし」と区別して押さえる。
問3の解答
係助詞=「こそ」、結び=「をかしけれ」で已然形。「こそ」は結びを已然形にする。ここは強調(他の日とは違って台風の翌日こそ)を表す。
問4の解答
(枝などが萩や女郎花の上に)横たわり伏している、の意。「せ(存続の助動詞『り』の連体形『る』)」で状態の継続を表し、吹き折られた枝が花の上に倒れかかっている思いがけない様子を描く。
問5の解答
寝(動詞)+られ(助動詞「らる」の未然形)+ざり(打消「ず」の連用形)+けれ(過去「けり」の已然形)。「られ」は自発ではなく可能で、下に打消を伴い「(風の騒ぎで)眠ることができなかった」の意。
問6の解答
(女性の)髪が風に吹き乱されて、少しふくらみ乱れている(けばだっている)様子。「うち」は接頭語、「ふくだむ」はマ行四段で髪がそそけ立つ意。乱れ髪すら「めでたし」と美しく感じている。
問7の解答
文屋康秀の歌「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ」(古今集・秋、百人一首二十二番)の一句。山(+風=嵐)が草木を萎れさせるさまが、台風で乱れた眼前の庭の光景と重なるため、その場にふさわしく引かれている。
問8の解答
「心あら」はラ変動詞「あり」の未然形で、「心あり」=物の情趣・風流を解する心がある、の意。「む」は推量(婉曲)の助動詞で、「心あらむと見ゆるに」=『情趣を解する人であろうと見えるので』。乱れた庭を眺めて自然と古歌をふと口にする、その教養と風情を解する感性を「をかし(趣がある)」と高く評価している。
👉 本文の現代語訳・語句・文法のくわしい解説は 解説記事 で確認できます。
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