徒然草『高名の木登り』定期テスト対策問題|現代語訳・敬語・教訓の頻出設問と解答

高名の木登り|定期テスト対策 確認テスト 定期テスト対策

徒然草『高名の木登り』(第百九段)は、高校の定期テストで非常によく出題される名場面です。木登りの名人が、低い所まで降りてきたときにこそ注意を促した――この短いエピソードに、兼好法師の鋭い人生観がこめられています。まずは本文を読み、設問に答えてから、最後の解答で確認しましょう。文法・敬語・教訓のどれも問われやすいので、ここでしっかり固めておきましょう。くわしい内容は徒然草『高名の木登り』のやさしい解説もあわせて読むと理解が深まります。

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本文

高名の木登りといひしをのこ、人を掟てて、高き木に登せて梢を切らせしに、いと危ふく見えしほどは言ふ事もなくて、降るるときに、軒長ばかりになりて、「あやまち〔①〕すな。心して降りよ」と言葉をかけ侍り〔②〕しを、「かばかりになりては、飛び降るともおりなん〔③〕。いかにかく言ふぞ〔④〕」と申し侍りしかば、「その事に候ふ。目くるめき、枝危ふきほどは、おのれが恐れ侍れば申さず。あやまちは、やすき所になりて、必ず仕る〔⑤〕ことに候ふ〔⑥〕」と言ふ。

あやしき下臈なれども、聖人の戒めにかなへり。鞠も、難き所を蹴出して後、やすく思へば、必ず落つ〔⑦〕と侍るやらん。

設問

  1. 本文冒頭の「高名の木登りといひしをのこ、人を掟てて、高き木に登せて梢を切らせし」を現代語訳しなさい。
  2. 「切らせし」の「せ」は、ある助動詞の一部である。この助動詞の意味(はたらき)を答え、なぜここでその意味になるのかを簡単に説明しなさい。あわせて、「登せて」の「せ」はこの助動詞かどうかを答えなさい。
  3. 「いと危ふく見えしほどは言ふ事もなくて、降るるときに、軒長ばかりになりて」を現代語訳しなさい。
  4. 傍線部①「あやまち」とは、ここではどういう意味か。漢字を用いて答えなさい。
  5. 傍線部②「かけ侍り」の「侍り」は敬語である。種類(尊敬・謙譲・丁寧のいずれか)を答え、誰の誰に対する敬意かを説明しなさい。
  6. 傍線部③「おりなん」を、助動詞「な」「ん(む)」の意味がわかるように現代語訳しなさい。
  7. 傍線部④「いかにかく言ふぞ」を現代語訳しなさい。また、この言葉は誰が誰に向かって言ったものか答えなさい。
  8. 傍線部④「いかにかく言ふぞ」には係り結びが用いられている。係りの助詞を抜き出し、それによって文末(結び)がどうなっているか、また係り結びがどのような効果(はたらき)をもつかを説明しなさい。
  9. 「申し侍りし」には二種類の敬語が用いられている。「申し」と「侍り」のそれぞれについて、敬語の種類(謙譲・丁寧など)を答えなさい。
  10. 「その事に候ふ。目くるめき、枝危ふきほどは、おのれが恐れ侍れば申さず」を現代語訳しなさい。
  11. 「おのれが恐れ侍れば」の「侍れ」は敬語である。敬語の種類を答え、現代語ではどのような言い方にあたるか説明しなさい。
  12. 傍線部⑤「あやまちは、やすき所になりて、必ず仕ることに候ふ」を現代語訳しなさい。あわせて「やすき所」とはどのような場所か説明しなさい。
  13. 傍線部⑥「候ふ」、傍線部⑦をふくむ文末「必ず落つと侍るやらん」をふまえ、この話を通して作者(兼好法師)が伝えようとした教訓を、現代語で簡潔に述べなさい。
  14. 傍線部⑥「候ふ」の文法的説明として、敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)を答え、誰の誰に対する敬意かを説明しなさい。
  15. 「あやしき下臈なれども」の「あやしき」「下臈」の意味をそれぞれ答えなさい。
  16. 「聖人の戒めにかなへり」とはどういうことか。「聖人」「かなへり」の意味をふまえて説明しなさい。
  17. 木登りの名人は、なぜ高い危険な所ではなく「やすき所(低くて簡単な所)」で注意を促したのか。その理由を本文に即して説明しなさい。
  18. 本文中の「いひ/切らせ/見え/かけ侍り」などに付く「し」「しか」は、同じ助動詞の活用形である。この助動詞の終止形(基本形)と意味を答えなさい。
  19. 末尾の「必ず落つと侍るやらん」の「やらん(やらむ)」について、もとの形を示し、文末が連体形(「やらん」)になっている理由を説明しなさい。
  20. 作者は木登りの話のあとに「鞠(蹴鞠)」の例を挙げている。この鞠の例は、何を示すために述べられたのか説明しなさい。
  21. この章段全体を通して述べられている主題(言いたいこと)を、十五字以内のことわざ風の一文でまとめなさい。
  22. 【文学史】この作品『徒然草』の作者名(法名)と、作品のジャンル(種類)を答えなさい。また、同じジャンルに分類される平安時代の代表的な作品を一つ挙げなさい。
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問1 「木登りの名人といわれた男が、(ある)人に指図をして、高い木に登らせて梢を切らせたところ」。「をのこ」は男、「掟てて」は指図して・命令して。「登せて」は「登らせて」(サ行下二段動詞「登す」=登らせる)、「切らせ」は「切ら」+使役の助動詞「す」で「(人に)切らせて」の意。

問2 使役(〜せる・〜させる)の意味。「切らせし」は四段動詞「切る」の未然形「切ら」+使役の助動詞「す」の連用形「せ」+過去「き」の連体形「し」。名人自身が切るのではなく、指図を受けた『人』に切らせているので、使役と判断できる(「人を掟てて」が使役の相手を示す)。一方、「登せて」の「せ」は使役の助動詞ではない。「登せ」はサ行下二段動詞「登す」(=登らせる)の連用形で、「せ」はその一部。使役の助動詞「す」は未然形に付くので、ラ行四段「登る」に付くなら「登らせて」という形になるはずである(「登す」は語そのものに使役の意味を含む動詞)。

問3 「(その男が登っていて)たいそう危なく見えたあいだは(名人は)何も言わないでいて、(木を)降りるときに、軒の高さくらい(の低さ)になって」。「いと」はたいそう、「軒長ばかり」は軒の高さほど(=もう地面に近い低い所)を表す。

問4 「過ち」(=失敗。ここでは特に、木から落ちるなどの「しくじり・けが」を指す)。現代語の「あやまる(謝罪する)」ではなく、「やりそこなうこと・失敗」の意味である点に注意。

問5 丁寧語。作者(兼好法師=書き手)から、読者に対する敬意を表す。「侍り」は会話文の外の地の文(「言葉をかけ侍りし」)にあり、語り手が読者へていねいに語る働きをしている。現代語の「〜です・ます」にあたる。

問6 「(このくらいの高さなら、たとえ)飛び降りても、きっと降りられるだろう」。「な」は完了(強意)の助動詞「ぬ」の未然形、「ん(む)」は推量の助動詞で、「な+ん」で「きっと〜だろう・必ず〜できるだろう」という強い推量を表す。

問7 訳…「どうしてこのように(注意するように)言うのか」。低い所まで降りてきた木登りの男に向かって、そばで見ていた人(作者=兼好、あるいは見物していた者)が、不思議に思って言った言葉である。危なそうな高い所では何も言わず、安全な低い所になって注意したのを、いぶかしんでいる。

問8 係りの助詞…「ぞ」。これに呼応して文末(結び)が連体形「言ふ」となっている(係り結び)。「ぞ」は意味を強める働きをもち、「いったいどうしてこのように言うのか」と強い疑問・いぶかしさを表している。

問9 「申し」=謙譲語(「言ふ」の謙譲。動作の受け手=木登りの名人を高める/話の相手への敬意を表す)。「侍り」=丁寧語(語り手である作者から読者への敬意)。一語の中に謙譲+丁寧の二方向の敬意が重ねられている。

問10 「そのことでございます(おっしゃるとおりです)。目がくらむほど高く、枝が危ない(不安定な)あいだは、本人が(自分から)こわがっておりますので、(私は)申しません」。「目くるめき」は目がくらむほど高い、「おのれ」はその当人(木に登っている者)、「恐れ侍れば」はこわがっているので、の意。

問11 丁寧語。会話文の中で、話し手(木登りの名人)が聞き手にていねいに述べる働きをしており、現代語の「〜ます・〜ております」にあたる。「恐れ侍れば」で「こわがっておりますので」の意。

問12 訳…「失敗は、(高い所ではなく)たやすい所になって、必ずいたすものでございます」。「やすき所」とは、地面に近く、降りるのがたやすそうに見える低い所のこと。あぶない高所ではなく、もう大丈夫だと安心してしまうような場面を指す。

問13 物事は、難しく危険な場面よりも、油断や慢心の生まれる「もう大丈夫」という所でこそ失敗しやすい、ということ。何事も、気のゆるみこそが失敗のもとであり、最後まで(やさしい所ほど)油断せず慎重であれ、という教訓。蹴鞠(けまり)も難所を蹴り出した後、簡単だと思うと必ず落とす、という例で補強されており、身分の低い者の言葉ながら聖人の戒めにかなうものだと作者は感心している。

問14 丁寧語。木登りの名人(話し手)から、その問いかけをした相手(聞き手=見ていた人)に対する敬意を表す。会話文の中で用いられ、現代語の「〜です・ます・ございます」にあたる。

問15 「あやしき」…身分が低い・卑しい(みすぼらしい)。「下臈(げらふ)」…身分の低い者。あわせて「あやしき下臈なれども」で「身分の低い卑しい者であるけれども」の意となり、そんな者の言葉でも立派だ、という後半への対比になっている。

問16 「聖人」は、すぐれた知恵や徳をそなえた立派な人(賢人・聖賢)。「かなへり」は「かなふ(一致する・合致する)」+完了・存続「り」で、「ぴったり合っている」の意。つまり、身分の低い木登りの男の言葉が、(取るに足らないどころか)すぐれた聖人の教え・戒めにそのままあてはまっている、ということ。

問17 高くて危険な所では、本人がこわがって自分から十分に注意するので失敗しない。しかし、低くて簡単な所まで来ると「もう大丈夫だ」と気がゆるみ、油断するために、かえってそこで失敗(落下)が起きるから。だから名人は、油断の生まれる低い所でこそ声をかけた。

問18 終止形(基本形)…「き」。意味…過去(〜た)。「し」は連体形、「しか」は已然形で、いずれも過去の助動詞「き」の活用形である。

問19 もとの形は「やらむ」。係助詞「や」に推量の助動詞「らむ」が続いた形(「に+あら+む」が変化したものとも説明される)で、係助詞「や」を受けて文末が連体形「らむ(らん)」で結ばれている。「〜とかいうことであるよ/〜であるらしい」と、伝え聞いた内容をやわらげて推量する言い方になる。

問20 蹴鞠でも、難しい所を蹴り出して切り抜けたあと、「もう簡単だ」と気をゆるめると必ず鞠を落としてしまう、という。これは木登りの話と同じく、「やさしい所・油断した所でこそ失敗する」という教訓が、木登りだけの特殊な話ではなく広く通じる道理であることを、別の例で裏づけ・補強するために挙げられている。

問21 (解答例)「油断大敵(油断こそ失敗のもと)」。/「やさしい所でこそ気をつけよ」「気のゆるみが失敗を招く」なども可。難所より、安心した所にこそ失敗がひそむ、という主題を一言で表せていればよい。

問22 作者…兼好法師(吉田兼好/卜部兼好)。ジャンル…随筆。同じジャンルの平安時代の代表作…清少納言の『枕草子』。(『徒然草』は鎌倉時代末期の成立で、『枕草子』『方丈記』とあわせて日本三大随筆と呼ばれる。)

※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は古典原文(著作権の対象外)を用いています。

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