怒りっぽい良覚僧正が、あだ名を嫌って木を切り、切り株を掘り、かえって新しいあだ名がつく笑話。敬語「聞こゆ」、助動詞「られ」の識別、係り結び、内容理解が定番で問われます。
本文
【本文】
公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞こえしは、きはめて腹あしき人なりけり。坊のかたはらに、大きなる榎の木のありければ、人、「榎の木の僧正」とぞ言ひける。「この名、しかるべからず」とて、かの木を切られにけり。その根のありければ、「きりくひの僧正」と言ひけり。いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、その跡、大きなる堀にてありければ、「堀池の僧正」とぞ言ひける。
問題
- 「公世」「良覚僧正」の読みを、それぞれ現代仮名遣いで答えよ。
- 「せうと」の意味を答えよ。
- 傍線部「腹あしき」の意味を答えよ。
- 傍線部「聞こえし」の「聞こゆ」は敬語として何にあたるか、また誰から誰への敬意か答えよ。
- 傍線部「なりけり」を文法的に説明せよ(「なり」「けり」それぞれ)。
- 傍線部「切られにけり」の「られ」は、受身・尊敬のどちらか。理由も含めて答えよ。
- 傍線部「しかるべからず」を現代語訳せよ。
- 文末の「ぞ……ける」について、何という文法現象か、また文末の「ける」がなぜ連体形になっているか説明せよ。
- 良覚僧正が榎の木を切り、さらに切り株まで掘り捨てたのはなぜか。またその結果どうなったか、内容をふまえて説明せよ。
解答・解説
問1の解答
公世=きんよ/良覚僧正=りょうがくそうじょう。公世は箏の名手として知られた藤原公世、良覚僧正は比叡山の大僧正で歌人。
問2の解答
(男の)兄弟。ここでは公世の兄弟である良覚僧正を指す。歴史的仮名遣い「せうと」は「しょうと」と読む。
問3の解答
怒りっぽい・気が短い・気性が悪い。形容詞「腹あし」の連体形で、僧正の性格を表す。この一語がこの段の笑いの前提になっている。
問4の解答
謙譲語。作者(兼好法師)から良覚僧正への敬意。「聞こゆ」は「言ふ」の謙譲語で、ここは「(世間から)~と申し上げられた・評判された」の意。
問5の解答
「なり」=断定の助動詞「なり」の連用形。「けり」=過去の助動詞「けり」の終止形。あわせて「~であった」の意で、伝え聞いた昔の話を語る文脈で用いられている。
問6の解答
尊敬。良覚僧正への敬意を表す。動作主が僧正自身であり、他から動作を受ける文脈ではないので受身ではない。「(僧正が榎の木を)お切りになった」と訳す。
問7の解答
「ふさわしくない・けしからん」。「しかるべし(=そうあるべきだ・適当だ)」の打消で、僧正が「榎の木の僧正」というあだ名を不都合だと考えたことを表す。
問8の解答
係り結び(の法則)。係助詞「ぞ」を受けて、文末の過去の助動詞「けり」が連体形「ける」で結ばれている。「ぞ」は強意を表す。本文の「とぞ言ひける」がこれにあたる。
問9の解答
自分につけられたあだ名(「榎の木の僧正」→「きりくひの僧正」)が気に入らず、その元になった木や切り株をなくそうとしたため。しかし掘った跡が大きな堀になり、結局「堀池の僧正」という新たなあだ名がついてしまった。怒って対処するほど事態が滑稽になる点にこの話の面白さがある。
👉 本文の現代語訳・語句・文法のくわしい解説は 解説記事 で確認できます。
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