『論語』は、孔子とその弟子たちの言行を記録した書物で、儒教の最も基本的な経典です。冒頭の「学而篇」は学問や友情・人格についての教えが多く、続く「為政篇」は政治や学びのあり方を説きます。定期テストでは、有名な章句の書き下し文・現代語訳に加え、「不亦〜乎(〜ではないか)」などの句法、「温故知新」などの成語、重要語の意味が頻出します。次の各章句を読み、後の問いに答えよ。
本文
① 子曰、「学而時習レ之、不二亦説一乎。有レ朋自二遠方一来、不二亦楽一乎。人不レ知而不レ慍、不二亦君子一乎。」
子曰はく、「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや。朋有り遠方より来たる、亦楽しからずや。人知らずして慍みず、亦君子ならずや。」と。② 曾子曰、「吾日三省二吾身一。為レ人謀而不レ忠乎。与二朋友一交而不レ信乎。伝レ不レ習乎。」
曾子曰はく、「吾日に三たび吾が身を省みる。人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交はりて信ならざるか。習はざるを伝ふるか。」と。③ 子曰、「巧言令色、鮮矣仁。」
子曰はく、「巧言令色、鮮なし仁。」と。④ 子曰、「君子食無レ求レ飽、居無レ求レ安。」
子曰はく、「君子は食飽くことを求むる無く、居安きことを求むる無し。」と。⑤ 子曰、「吾十有五而志二于学一、三十而立、四十而不レ惑、五十而知二天命一、六十而耳順、七十而従二心所一レ欲、不レ踰レ矩。」
子曰はく、「吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に従へども、矩を踰えず。」と。⑥ 子曰、「温レ故而知レ新、可二以為一レ師矣。」
子曰はく、「故きを温めて新しきを知れば、以て師と為るべし。」と。⑦ 子曰、「学而不レ思則罔、思而不レ学則殆。」
子曰はく、「学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆ふし。」と。⑧ 子曰、「由、誨二女知一レ之乎。知レ之為レ知レ之、不レ知為レ不レ知、是知也。」
子曰はく、「由よ、女に之を知るを誨へんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す、是れ知るなり。」と。⑨ 子曰、「人而無レ信、不レ知二其可一也。」
子曰はく、「人にして信無くんば、其の可なるを知らざるなり。」と。⑩ 子曰、「君子周而不レ比、小人比而不レ周。」
子曰はく、「君子は周して比せず、小人は比して周せず。」と。
設問
- ①の傍線部「学而時習之、不亦説乎」を書き下し文に改めよ。
- ①「人不知而不慍、不亦君子乎」を現代語訳せよ。
- ②の傍線部「吾日三省吾身」を書き下し文に改めよ。
- ③「巧言令色、鮮矣仁」とはどのような人物を批判した言葉か、現代語訳をふまえて説明せよ。
- ⑤の傍線部「五十而知天命」を書き下し文に改めよ。
- ⑤の「従心所欲、不踰矩」を現代語訳せよ。
- ⑤で孔子が「四十にして惑はず」と述べていることから、四十歳を表す語が生まれた。その語を漢字で答えよ。
- ⑥「温故而知新」から生まれた四字熟語(成語)を漢字で答え、その意味を説明せよ。
- ⑥「可以為師矣」を現代語訳せよ。
- ⑦「学而不思則罔、思而不学則殆」について、次の問いに答えよ。
- (1)「罔」「殆」の読み(送り仮名を含む)をそれぞれ答えよ。
- (2) この章句で孔子が説いている、学問における大切な態度を説明せよ。
- ⑧の傍線部「知之為知之、不知為不知、是知也」を書き下し文に改めよ。
- ⑨「人而無信、不知其可也」を現代語訳せよ。
- ⑩「君子周而不比、小人比而不周」で、孔子は「君子」と「小人」をどのように対比しているか説明せよ。
- ①の「説」と同じ意味・読みで用いられている漢字を、次から選べ。
- ア 喜 イ 説明 ウ 解説 エ 遊説
- ①の「朋」の意味を答えよ。
- ①の「慍」の読み(送り仮名を含む)と意味を答えよ。
- ①に三度くり返される「不亦〜乎」という句法は、どのような意味・気持ちを表すか答えよ。
- ②で曾子が日々反省するとしている三つの事柄を、本文に即して具体的に説明せよ。
- ②の「信」の意味として最も適当なものを次から選べ。
- ア 信仰すること イ まごころ・誠実さ ウ 手紙 エ 信用貸し
- ⑧で孔子が弟子の由(子路)に教えている「本当の知(知ること)」とはどのようなことか、わかりやすく説明せよ。
- 『論語』について、次の問いに答えよ。
- (1)『論語』は、誰の言行を記録した書物か。人物名を答えよ。
- (2)『論語』を中心とする、その人物の教えにもとづく思想(学派)を何というか。漢字で答えよ。
- 本文全体をふまえ、孔子が「学ぶこと」についてどのような考えを持っていたか、本文中の二つ以上の章句を根拠にして説明せよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや。(「而」は置き字で読まない。「不亦〜乎」は「亦〜ずや」と読む。)
問2 人が(自分を)認めてくれなくても不平不満を抱かない、それこそ君子(立派な人物)ではないか。
問3 吾日に吾が身を三たび省みる。
問4 言葉を巧みに飾り、顔つきをやわらげて人に取り入ろうとするような人物。孔子は、そういう人には本当の思いやり(仁)が少ない、と批判している。
問5 五十にして天命を知る。
問6 (七十歳になって)自分の心の思うままに行動しても、道徳の規範(道理)を踏み外すことがなくなった。
問7 不惑(ふわく)。
問8 成語…温故知新(おんこちしん)。意味…昔の事柄や学問をよく学び直して、そこから新しい知識や道理を見いだすこと。
問9 (そうすれば)人の師となることができる。
問10 (1)「罔」…罔(くら)し。「殆」…殆(あや)ふし。 (2) 書物などから学ぶ(知識を得る)ことと、自分の頭で考えることの両方が大切で、どちらか一方に偏ってはならないという態度。学んでも考えなければ物事の道理が身につかず(罔し)、考えるだけで学ばなければ独断におちいって危うい(殆ふし)からである。
問11 之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す、是れ知るなり。
問12 人として信義(誠実さ・約束を守る心)がなければ、その人がうまくやっていけるかどうか(人として通用するかどうか)わからない。
問13 君子は、人と広く公平に親しんで特定の者とだけ私的に結びつくことはしない。一方、小人は、特定の者と私的に結びつくばかりで、広く公平に親しむことはしない。両者の人づきあいのあり方を対比している。
問14 ア。「説」はここで「よろこぶ」の意で「悦」に通じる。アの「喜」が同じ意味。イ・ウ・エは「説(と・ぜい)」=「とく・述べる」の意で異なる。
問15 友・友人(同じ師のもとで学ぶ仲間、同門の友)。
問16 読み…「慍(うら)みず」。意味…うらむ・腹を立てる・不満に思う。
問17 「〜ではないか」という意味で、強い感動や詠嘆(よろこび・心からの肯定)を表す反語的な詠嘆の句法。
問18 ①人のために何かを考え行動するとき、まごころを尽くしていなかったのではないか。②友人と交わるとき、誠実さ・信義を欠いていなかったのではないか。③(先生から)教わったことを、よく復習していなかったのではないか。――この三つを毎日反省するということ。
問19 イ(まごころ・誠実さ)。「信」は言葉に偽りがなく誠実であることをいう。
問20 知っていることは知っていると認め、知らないことは知らないと正直に認めること。知ったかぶりをせず、自分の知識の限界を自覚することこそが、本当に「知る」ということだと孔子は教えている。
問21 (1) 孔子(とその弟子たち)。 (2) 儒教(儒学)。
問22 (解答例)孔子は、学ぶことを人生の根本に置き、それを喜びとしてとらえていた。①「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや」では学んで復習することの喜びを説き、⑦「学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆ふし」では、ただ知識を得るだけでなく自分で考えることと合わせてこそ学問が身につくと説いている。さらに⑥「故きを温めて新しきを知る」のように、過去の学びを土台に新しい道理を見いだす姿勢を重んじた。このように孔子は、学びを生涯続ける喜ばしい営みとしてとらえ、知識と思考の両立を大切にしていたといえる。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。


コメント