「助長(じょちょう)」は、よかれと思ってした余計な手助けが、かえって物事をだめにしてしまうことをいう故事成語です。現代では「不安を助長する」のように「悪い結果を後押しする」意味で使われ、テストでは本来は悪い意味であること、出典が『孟子』であること、そして「揠苗(あつびょう)」の故事との結びつきがよく問われます。次の文章を読み、後の問いに答えよ。
本文
【白文】
【書き下し文】
宋人(そうひと)に其(そ)の苗(なへ)の長(ちやう)ぜざるを閔(うれ)へて、之(これ)を揠(ぬ)く者(もの)有(あ)り。芒芒然(ばうばうぜん)として帰(かへ)り、其(そ)の人(ひと)に謂(い)ひて曰(いは)く、「今日(けふ)病(つか)れたり。予(われ)苗(なへ)を助(たす)けて長(ちやう)ぜしむ。」と。其(そ)の子(こ)趨(はし)りて往(ゆ)きて之(これ)を視(み)れば、苗(なへ)則(すなは)ち槁(か)れたり。【注】
・宋人…宋の国の人。古典では愚かな人物の例としてよく登場する。
・閔(うれふ)…心配する。気にやむ。
・揠(ぬく)…引き抜く。ここでは苗を引っぱって伸ばそうとすること。
・芒芒然…疲れてぐったりしたさま。
・病(つかる)…疲れる。
・予…わたし。一人称。
・趨(はしる)…小走りに急ぐ。
・槁(かる)…枯れる。
設問
- 傍線部①「宋人有閔其苗之不長而揠之者」を書き下し文に改めよ。
- 「閔其苗之不長」とは、宋人が何を心配したのか。現代語で説明せよ。
- 「芒芒然」とはどのような様子か。現代語で答えよ。
- 「今日病矣」の「病」はここではどのような意味か。次から選べ。
- ア 病気になる
- イ 疲れる
- ウ 心配する
- エ 失敗する
- 「予助苗長矣」を現代語訳せよ。
- 「其子趨而往視之、苗則槁矣」を現代語訳せよ。
- 重要語「閔」の意味を答えよ。
- 重要語「揠」の意味を答えよ。
- 宋人は苗をどうすることで「助苗長(苗の成長を助けた)」つもりになったのか。具体的に説明せよ。
- 重要語「槁」の意味を答えよ。
- 結果として苗はどうなったか。本文の語句を用いて答えよ。
- 宋人の行動は、なぜ苗を枯らす結果になったのか。理由を説明せよ。
- この故事から生まれた故事成語を漢字二字で答えよ。
- 故事成語「助長」の本来の意味を説明せよ。
- 「助長」は本来よい意味か悪い意味か。次から選べ。
- ア よい意味
- イ 悪い意味
- 「助長」を用いた短文を一つ作れ(悪い意味で用いること)。
- この文章の出典である書物の名前を答えよ。
- 17の書物に登場し、この話を説いた思想家はだれか。
- 『孟子』で説かれる、正しい修養によって養われるとされる道徳的な気力を何というか。漢字四字で答えよ。
- 孟子は、19の気力を養う際にしてはならない態度の例えとしてこの故事を挙げている。この故事が示す教訓を、現代の私たちの生活に当てはめて説明せよ。
- 「揠苗助長」という四字熟語の読みを、現代仮名遣いで答えよ。
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問1 宋人に其の苗の長ぜざるを閔へて、之を揠く者有り。
(「有〜者」は「〜する者がいる」と訳す。「閔」「揠」の読みに注意。)
問2 自分の畑の苗が(思うように)大きく伸びないこと。
(「長ぜざる」=成長しないこと、を心配したのである。)
問3 疲れてぐったりした様子。
(一日中苗を引っぱり続けて疲れ切ったさまを表す。)
問4 イ 疲れる
(「病」には「病気」のほか「疲れる」の意味がある。ここは一日中作業して疲れた意。)
問5 私は苗(の成長)を助けて、伸ばしてやった。
(「助苗長」=苗を助けて成長させる。本人は得意になっている点がポイント。)
問6 その子(息子)が走って行って苗を見ると、苗はすっかり枯れてしまっていた。
(「趨」=小走りに急ぐ、「則」=そこで・すると、を訳出する。)
問7 心配する。気にやむ。(「うれふ」と読む。)
問8 引き抜く。(ここでは、苗を引っぱって伸ばそうとすること。「ぬく」と読む。)
問9 一本一本の苗を手で引っぱり上げて、(無理やり)背を高くした。
(「揠」=引き抜く・引っぱるという行為を具体的に説明する。)
問10 枯れる。(「かる」と読む。)
問11 (引っぱられたために根が傷つき、)枯れてしまった(苗則槁れたり)。
問12 苗は土から養分を吸って自然に成長するものなのに、無理に引っぱったため根が土から浮いて傷つき、生きていけなくなったから。
(自然の成長を無視した点が原因である。)
問13 助長
(「揠苗助長(あつびょうじょちょう)」を略して「助長」という。)
問14 早く成長させようとして余計な手出しをし、かえってだめにしてしまうこと。
(よかれと思った手助けが逆効果になる、という意味。)
問15 イ 悪い意味
(現代でも「不安を助長する」など、悪い結果を後押しする意味で使う。「成長を助ける」というよい意味で使うのは誤り。)
問16 (例)受験生に過度なプレッシャーをかけることは、かえって不安を助長する。
(「悪い結果を強めてしまう」文脈であれば正解。)
問17 孟子(『孟子』)
(公孫丑上に収められている話である。)
問18 孟子
(戦国時代の儒家の思想家。性善説を説いたことで知られる。)
問19 浩然の気(こうぜんのき)
(天地に満ちる正大な気力。正しい行いを積み重ねて養われるとされる。)
問20 (例)物事には自然な順序や成長の早さがあり、結果を焦って無理に手を加えると、かえってだめにしてしまう。勉強や人の成長も、急がず着実に積み重ねることが大切だ、という教訓。
(孟子は、浩然の気も焦って無理に養おうとしてはいけない例えとしてこの故事を挙げている。「焦りは禁物」という趣旨が書けていればよい。)
問21 あつびょうじょちょう
(「揠苗」を「あつびょう」と読む。苗を抜いて成長を助ける、の意。)
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
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