「虎の威を借る狐」は、自分には実力がないのに、力のある者の権勢をかさに着て威張ることのたとえです。『戦国策』楚策に由来し、定期テストでは「無敢食我(敢へて我を食らふこと無かれ)」の禁止の句法、「子以我為不信(子我を以て信ならずと為す)」の使役・反語の読み、そして「狐の論理」と「虎の誤解」を説明させる問題が頻出します。次の文章を読み、後の問いに答えよ。
白文(原文)
【白文】
書き下し文(傍線①〜⑮)
虎(とら)①百獣(ひやくじゆう)を求(もと)めて之(これ)を食(く)らひ、②狐(きつね)を得(え)たり。狐曰(いは)く、「③子(し)④敢(あ)へて我(われ)を食らふこと無(な)かれ。天帝⑤我をして百獣に長(ちやう)たらしむ。今子我を食らはば、⑥是(これ)天帝(てんてい)の命(めい)に逆(さか)らふなり。子⑦我を以(もつ)て信(しん)ならずと為(な)さば、⑧吾(われ)子の為(ため)に先行(せんかう)せん。子⑨我に随(したが)ひて後(うしろ)にし観(み)よ、百獣の我を見て⑩敢へて走(はし)らざらんや。」と。
虎⑪以て然(しか)りと為し、故(ゆゑ)に⑫遂(つひ)に之と行(ゆ)く。⑬獣(じゆう)之を見て皆(みな)走る。虎獣の⑭己(おのれ)を畏(おそ)れて走るを知らずして、⑮以て狐を畏るると為すなり。
語注 子=あなた(二人称)。狐が虎に向かって言っている。 長たり=かしらである。 走る=逃げる(現代語の「走る」ではない)。 然り=そのとおりだ。 畏る=おそれる。
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設問
A 語句と読み
- ③「子(し)」の意味と、これは誰が誰に向かって言った言葉か
- ⑬「獣(じゆう)之を見て皆(みな)走る」の「走る」の意味
- ⑤の「長たり」の意味
- ⑨の「随ひて」の読みと意味
- ⑪の「然り」の意味
- ⑧の「為」の読みと意味
B 句法
- ④「敢(あ)へて我(われ)を食らふこと無(な)かれ」の句法名と意味
- ⑤「我をして百獣に長(ちやう)たらしむ」の句法名を漢字二字で答えよ
- ⑦「我を以(もつ)て信(しん)ならずと為(な)さば」の「以A為B」の読みと意味
- ⑩「敢へて走(はし)らざらんや」の句法名と意味
C 何を・誰を指すか
- ⑥「是(これ)天帝(てんてい)の命(めい)に逆(さか)らふなり」の「是」は何を指すか
- ⑭「己(おのれ)を畏(おそ)れて走る」の「己」とは誰のことか
- ⑫「遂(つひ)に之と行(ゆ)く」の「之」とは誰のことか
D 口語訳
- ④「敢(あ)へて我(われ)を食らふこと無(な)かれ」
- ⑤「我をして百獣に長(ちやう)たらしむ」
- ⑩「敢へて走(はし)らざらんや」
- ⑮「以て狐を畏るると為すなり」
E 内容・記述
- ①・②から、虎と狐はどのような場面で出会ったのか。二十字以内で書け。
- ⑪「以て然(しか)りと為し」とあるが、虎は何を「そのとおりだ」と思ったのか。三十字以内で書け。
- ⑬「獣(じゆう)之を見て皆(みな)走る」について、獣たちが逃げた本当の理由を、狐か虎かを明らかにして書け。
- ⑮「以て狐を畏るると為すなり」について、虎はどのように誤解したのか。四十字以内で書け。
- この話における「狐の論理」とはどのようなものか。簡潔に書け。
F 故事・文学史
- この故事の出典となった書物の名を答えよ。
- 「虎」と「狐」は、それぞれどのような立場の者をたとえているか。
- 故事成語「虎の威を借る狐」の意味を答えよ。
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解答と解説
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A 語句と読み
問1 「あなた」(二人称)。狐が虎に向かって言っている
└ ★取り違えが多い
問2 逃げる
└ ×「走る」。古典の「走」は多く「逃げる」
問3 かしらである。統率者である
問4 したがひて/ついて行って
問5 そのとおりだ
問6 ために/〜のために
└ 「吾子の為に先行せん」
B 句法
問7 禁止(決して〜してはならない)
└ 「敢へて〜こと無かれ」
問8 使役
└ 「(人)をして〜しむ」
問9 「AをもってBとなす」/AをBだと思う
問10 反語(どうして逃げないでいられようか、いや必ず逃げる)
└ 「敢へて〜ざらんや」
C 何を・誰を指すか
問11 いま虎が狐を食べるということ
問12 虎自身
問13 狐
D 口語訳
問14 あなたは決して私を食べてはならない。
問15 天帝が私をあらゆる獣のかしらにならせたのだ。
問16 (獣たちが)逃げないでいられようか、いや、必ず逃げる。
問17 (虎は)狐をおそれているのだと思ったのである。
E 内容・記述
問18 獣を食べていた虎が狐をつかまえた場面。(十八字)
問19 自分は天帝から百獣のかしらに任命されている、という狐の言い分。(三十字)
問20 狐ではなく、そのうしろにいた虎をおそれて逃げた。
問21 獣たちは自分ではなく狐をおそれて逃げたのだと思い込んだ。(二十七字)
問22 自分は天帝に任命された百獣の長だから、食べれば天帝にそむくことになる。疑うなら先を歩くから見ていろ、という筋道。実際は虎の力を利用しているだけ。
F 故事・文学史
問23 『戦国策』(楚策)
問24 虎=本当に力のある者/狐=力がないのに、その権威をかさに着て威張る者
問25 自分には実力がないのに、力のある者の権勢をかさに着て威張ることのたとえ。
【テスト直前チェック】この三つ
❶「走」=逃げる。現代語の「走る」ではありません。
❷句法四つ=禁止「敢へて〜こと無かれ」/使役「〜をして…しむ」/「以A為B」/反語「敢へて〜ざらんや」。
❸誤解の中身=獣は虎をおそれたのに、虎は狐をおそれたと思った。ここが記述の答えです。
現代語訳(全文)
虎はあらゆる獣を探し求めては食べていたが、あるとき狐をつかまえた。狐が言うには、「あなたは決して私を食べてはいけない。天帝は私をあらゆる獣のかしらにならせたのだ。いまあなたが私を食べれば、それは天帝の命令にそむくことになる。もしあなたが私をうそつきだと思うなら、私はあなたのために先に行こう。あなたは私について後ろから見ていなさい。あらゆる獣が私を見て、逃げないでいられようか、いや、必ず逃げる。」と。
虎はそのとおりだと思い、そこでとうとう狐といっしょに行った。獣たちはこれを見て皆逃げた。虎は、獣たちが自分をおそれて逃げたのだということが分からず、狐をおそれているのだと思ったのである。
※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
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