「うつくし」は、現代語の「美しい」ではなく「かわいい・愛らしい」という意味で、古典の語彙問題でくり返し問われる最頻出語です。清少納言は『枕草子』のこの章段で、自分が「かわいい」と感じる小さなものを次々に書きつらねています。まずは本文を読み、設問に答えてみましょう。最後の「解答・解説」で答え合わせができます。あわせて枕草子のやさしい解説(あらすじ)も読むと、作品全体の雰囲気がつかめます。
本文
うつくしきもの。瓜にかきたるちごの顔〔①〕。雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る〔②〕。二つ三つばかりなるちごの、いそぎてはひ来る〔③〕道に、いとちひさき塵のありけるを目ざとに〔④〕見つけて、いとをかしげなるおよびにとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし〔⑤〕。頭はあまそぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきて物など見たるも、うつくし。
設問
- 本文の表題にもなっている「うつくし」は、現代語の「美しい」とは意味が違う。次の問いに答えなさい。
- (a) 古語「うつくし」の意味を答えなさい。
- (b) 現代語の「美しい」との意味の違いを説明しなさい。
- 波線部の語句について、それぞれが何を指すか、簡潔に説明しなさい。
- (a) 「ちご」
- (b) 「ねず鳴き」
- (c) 「あまそぎ」
- 傍線部①「瓜にかきたるちごの顔」を、現代語に訳しなさい。
- 傍線部②「雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る」を、現代語に訳しなさい。
- 傍線部②「をどり来る」を単語に分け、それぞれの動詞の終止形(基本の形)を答えなさい。
- 「二つ三つばかりなるちご」とは、どのような子どもか。年齢に注意して説明しなさい。
- 傍線部③「はひ来る」を、現代語に訳しなさい。
- 傍線部③「はひ来る」を単語に分け、それぞれの動詞の終止形(基本の形)を答えなさい。
- 「いとちひさき塵のありけるを」の「ける」は助動詞「けり」が活用したものである。次の問いに答えなさい。
- (a) ここでの「けり」の文法的意味(働き)を答えなさい。
- (b) 「ける」の活用形(何形か)を答えなさい。
- 傍線部④「目ざとに」の意味として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 目つきが鋭くて
- イ すばやく目をつけて
- ウ 目が悪くて
- エ 眠たそうにして
- 「いとをかしげなるおよび」の「げなる」について、ここでの「をかしげなり」はどのような意味か答えなさい。
- 「いとをかしげなるおよび」の「および」とは、体のどの部分を指すか答えなさい。
- 「大人などに見せたる」の「たる」について、次の問いに答えなさい。
- (a) この「たる」の文法的意味(働き)を答えなさい。
- (b) もとになる助動詞の終止形を答えなさい。
- 傍線部⑤「いとうつくし」を、現代語に訳しなさい。
- 傍線部⑤の直前にある「いとうつくし」の「いと」の意味を答えなさい。また、「いと」が打消の語を伴ったときには意味がどう変わるか説明しなさい。
- 本文末の「頭はあまそぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきて物など見たるも、うつくし」を、現代語に訳しなさい。
- 「目に髪のおほへる」の「おほへ」は、どの動詞が活用したものか。その動詞の終止形を答えなさい。
- 「かきはやらで」の「で」の文法的意味を答えなさい。また、「で」を現代語に訳すとどうなるか答えなさい。
- 清少納言が「うつくし(かわいい)」と感じて取り上げているものを、本文から具体的に三つ書き出しなさい。
- 本文で清少納言が「かわいい」と感じているものに共通する特徴を答えなさい。
- 【文学史】次の問いに答えなさい。
- (a) 『枕草子』の作者名を答えなさい。
- (b) 『枕草子』のジャンル(文章の種類)を、漢字二字で答えなさい。
- (c) 『枕草子』が成立したのは何時代か答えなさい。
- (d) この章段のように、あるテーマに沿って同類のものを次々と書き並べた章段を何と呼ぶか。次から選びなさい。[ ものづくし(類聚的章段) / 日記的章段 / 随想的章段 ]
- 【文学史】『枕草子』の有名な書き出し「春は□□□」の□にあてはまる語を、ひらがなで答えなさい。
▼ 解答・解説を見る(まず自分で解いてから)
問1 (a)「うつくし」=かわいい・愛らしい(いとおしい)という意味。 (b) 現代語の「美しい(きれい・立派だ)」とは異なり、古語では小さなものや幼いものに対する「いとおしくてかわいい」という気持ちを表す。
※入試・定期テストの最頻出語。「うつくしきもの」=「かわいいもの」と訳す点に注意。
問2 (a)「ちご」=幼い子ども・赤ん坊(乳幼児)。 (b)「ねず鳴き」=ねずみの鳴き声に似せて口で「ちゅっちゅっ」と音を立てること。 (c)「あまそぎ」=髪を肩のあたりで切りそろえた、子どもの髪型(尼そぎ)。
※「ちご(稚児)」は語句問題でよく問われます。「子ども」とだけ訳さず「幼い」のニュアンスを入れると確実です。
問3 (例)瓜(うり)に描いた、幼い子どもの顔。
※瓜の表面に子どもの顔を描いたもののことで、あどけなくてかわいらしいものの一つとして挙げられています。
問4 (例)すずめの子が、(人が)ねずみの鳴きまねをすると、それにつられて飛びはねるようにしてやって来る(様子)。
※「ねず鳴き」は、ねずみの鳴き声に似せて「ちゅっちゅっ」と口で鳴らすこと。それに反応して寄って来る雀の子を「かわいい」と言っています。「をどり来る」は「踊る(飛びはねる)」+「来る」。
問5 「をどり」=動詞「をどる(踊る)」(飛びはねる)/「来る」=動詞「く(来)」。
※「をどり来る」も二つの動詞が組み合わさった複合動詞で、「飛びはねるようにやって来る」の意味です。
問6 (例)二、三歳ぐらいの(幼い)子ども。
※「二つ三つばかりなる」=「二歳か三歳ぐらいの」。「ばかり」は「〜ぐらい」の意味で、おおよその程度を表します。
問7 (例)はって(やって)来る。
※赤ちゃんが手足を使ってはい進んでくる様子を表しています。
問8 「はひ」=動詞「はふ(這ふ)」(はって行く)/「来る」=動詞「く(来)」。
※「はひ来る」は「はって(やって)来る」の意味。二つの動詞が組み合わさった複合動詞です。
問9 (a) 過去(〜た)。 (b) 連体形。
※直前の「ちひさき塵の」を受け、下の「を」に続くため連体形「ける」になっています。「ちひさき塵のありけるを」=「小さな塵があったのを」。
問10 イ(すばやく目をつけて)
※「目ざとし」は、小さなものでもすばやく見つける、目が早い、の意味。小さな塵をめざとく見つける幼児のしぐさを「かわいい」と描いています。
問11 (例)いかにもかわいらしい様子の(かわいらしげな)。
※「をかしげなり」は「いかにもかわいらしい・趣がありそうだ」の意味。ここでは小さな指のかわいらしい様子を表しています。
問12 「および」=指(ゆび)。
※「をかしげなるおよびにとらへて」=「かわいらしい指でつまんで」。塵を小さな指でつまむ幼児のしぐさを表しています。
問13 (a) 完了(〜た・〜ている。動作が完了して、その状態が続いていることを表す)。 (b) 助動詞「たり」。
※「見せたる」=「(大人などに)見せた」。連体形「たる」で下の「いとうつくし」へつながっています。
問14 (例)たいそう(とても)かわいらしい。
※「いと」=「とても」、「うつくし」=「かわいい」。小さな塵を見つけて大人に見せる幼児のしぐさを「とてもかわいい」と言っています。
問15 「いと」=たいそう・とても・非常に(程度がはなはだしいことを表す副詞)。打消の語を伴って「いと〜ず」となると、「たいして〜ない・それほど〜ない」の意味になる。
※本文は打消がないので「とても」。打消を伴うときの意味の変化もあわせて覚えましょう。
問16 (例)髪を尼そぎ(肩のあたりで切りそろえた髪型)にした幼い子どもが、目に髪がかかっているのをかき払いもしないで、首をかたむけるようにして物などを見ているのも、かわいらしい。
※「かきはやらで」=「かき払わないで」、「うちかたぶきて」=「首をちょっとかたむけて」。
問17 動詞「おほふ(覆ふ)」。
※「目に髪のおほへる」=「目に髪がかぶさっている」。「おほへ」は「おほふ」が活用した形で、下に完了・存続の「り」がついて「おほへる」となっています。
問18 「で」=打消の接続(〜ないで・〜しないで)を表す。現代語訳は「(かき)払わないで」。
※「〜で」は「〜ずして」と同じく「〜しないで」の意味になる、頻出の接続助詞です。「かきはやらで」=「かき払わないで」。
問19 (例)次のうちから三つ。
・瓜に描いた子どもの顔 ・(ねず鳴きにつられて飛びはねてくる)雀の子 ・塵を見つけて大人に見せる幼児 ・髪が目にかかったのをかき払わずに物を見ている子ども
※いずれも「小さくて幼いもの」である点が共通しています。
問20 (例)どれも小さくて幼く、あどけない(無邪気な)ものであるという点。
※雀の子、塵を見つけて見せる幼児、髪が目にかかった子どもなど、いずれも「小さい・幼い・あどけない」存在で、清少納言の関心が一貫していることがわかります。
問21 (a) 清少納言 (b) 随筆 (c) 平安時代(平安時代中期) (d) ものづくし(類聚的章段)
※『枕草子』は平安時代中期に清少納言が書いた随筆で、日本最初の随筆とされます。「春はあけぼの」のような随想的章段、宮中での出来事をつづった日記的章段に加え、この「うつくしきもの」のように同類のものを集めて並べた類聚的章段(ものづくし)があります。
問22 あけぼの(春はあけぼの)。
※『枕草子』冒頭の有名な一文「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは…」の書き出しです。
※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は古典原文(著作権の対象外)を用いています。
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