平家物語『祇園精舎』の冒頭は、高校の定期テストで必ずといってよいほど出題される超頻出の場面です。七五調の美しいリズムをもち、暗誦(暗記して書く)課題として課されることもとても多い箇所です。「諸行無常」「盛者必衰」「対句」「無常観」など、問われるポイントもはっきりしています。まず本文を声に出して読み、設問に答え、最後の解答で確認しましょう。本文の意味があやふやな人は、先に 平家物語『祇園精舎』のやさしい解説 に目を通しておくと、設問がぐっと解きやすくなります。
本文
祇園精舎の鐘の声、諸行無常〔①〕の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰〔②〕の理をあらはす。おごれる人も久しからず〔③〕、ただ春の夜の夢のごとし〔④〕。たけき者もつひには〔⑤〕ほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
設問
- この冒頭全体(「祇園精舎の鐘の声……風の前の塵に同じ」)を、現代語訳しなさい。
- 傍線部①「諸行無常」とは、どのような考え方か。わかりやすく説明しなさい。
- 傍線部②「盛者必衰」の意味を答えなさい。
- 本文中の「あらはす」を、現代仮名づかいに直して書きなさい。また、その意味(口語訳)も答えなさい。
- 「久しからず」を文法的に説明しなさい(もとになる語の品詞・活用形と、付いている語の説明)。
- 傍線部③「おごれる人も久しからず」を現代語訳しなさい。また「おごれ(る)」の意味を答えなさい。
- 「ただ春の夜の夢のごとし」を現代語訳しなさい。
- 傍線部④「ごとし」について、文法的に説明しなさい(品詞名・活用形・意味)。
- 「たけき者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」を現代語訳しなさい。
- 「たけき者」の「たけき」は、形容詞「たけし」が活用した形である。「たけし」の意味を答えなさい。
- 傍線部⑤「つひには」の「つひに」について、品詞名と意味を答えなさい。
- 「ほろびぬ」の「ぬ」は何か。文法的に説明しなさい(品詞名・意味・活用形)。
- 本文中から対句になっている部分を一組抜き出し、なぜ対句といえるのかを説明しなさい。
- 本文中から、第4問とは別の対句を一組抜き出しなさい。
- この冒頭の文章は、ある音数のリズムを基本にしている。何調と呼ばれるリズムか答えなさい。
- この文章全体を貫いている、人生や世の中についてのものの見方を何というか。漢字で答え、その内容を簡単に説明しなさい。
- この冒頭部分は、『平家物語』という長い物語全体の中で、どのような役割を果たしているか。簡単に説明しなさい。
- 【文学史】『平家物語』が成立した時代を答えなさい。
- 【文学史】『平家物語』のように、戦(いくさ)を中心に描いた物語のジャンルを何というか、漢字で答えなさい。
- 【文学史】『平家物語』を琵琶に合わせて語り広めた、盲目の僧を何と呼ぶか答えなさい。また、その語りを何というか(漢字三字)もあわせて答えなさい。
▼ 解答・解説を見る(まず自分で解いてから)
問1 答え=(例)「祇園精舎の鐘の音には、この世のすべてのものは絶えず移り変わり、いつまでも同じではないという響きがある。沙羅双樹の花の色は、勢いの盛んな者も必ず衰えるという道理を表している。得意になっておごり高ぶっている人も、その栄華は長くは続かず、ちょうど春の夜の(はかない)夢のようである。勢いの盛んな者も結局は滅びてしまい、まったく風の前の(吹き飛ばされる)塵と同じである。」
〔解説〕一文ずつ区切って、①鐘の声=諸行無常、②花の色=盛者必衰、③おごれる人=春の夜の夢、④たけき者=風の前の塵、という四つのたとえを順に訳すと整理しやすいです。
問2 答え=この世のすべての物事は常に移り変わり続け、永遠に変わらないものは一つもない、という仏教の考え方。
〔解説〕「諸行(しょぎょう)」=この世のあらゆる現象、「無常」=常(一定・永遠)ではないこと。鐘の音が鳴っては消えていく様子に、この無常の響きを重ねています。
問3 答え=どんなに勢いの盛んな者も、必ずいつかは衰えるということ。
〔解説〕「盛者(じょうしゃ/しょうじゃ)」=勢いの盛んな者、「必衰」=必ず衰える。問2の「諸行無常」と対になる、もう一つのキーワードです。
問4 答え=現代仮名づかい=「あらわす」。意味(口語訳)=表す・示す。
〔解説〕歴史的仮名づかいの語中・語尾の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、現代仮名づかいでは「わ・い・う・え・お」に直します。ここでは「あらはす」→「あらわす」となります。
問5 答え=形容詞「久し」の未然形「久しから」に、打消の助動詞「ず」が付いた形。意味は「長くは続かない」。
〔解説〕「久し」はク活用の形容詞で、「久しから・久しかり/久しく・久し/久しき/久しけれ」と活用します。下に「ず」が続くので未然形「久しから」を選びます。
問6 現代語訳=(例)「得意になっておごり高ぶっている人も、長くは(その栄華が)続かない。」 「おごれ(る)」の意味=勢いに乗って思い上がる・得意になって高ぶる。
〔解説〕「おごる」は「驕る」で、いい気になって高ぶること。「久しからず」は形容詞「久し」の未然形+打消「ず」で、「長くは続かない」の意味です。
問7 答え=(例)「ちょうど春の夜の(はかない)夢のようである。」
〔解説〕「ただ」=ちょうど・まるで、「ごとし」=~のようだ。短くはかなく消える「春の夜の夢」に、おごる人の栄華のはかなさをたとえています。
問8 答え=品詞=助動詞(比況の助動詞)。活用形=終止形。意味は「~のようだ」。
〔解説〕直前の「(春の夜の)夢の」を受けて「夢のようだ」となります。「ごとし」は「~のごとし(~のようだ)」の形でよく問われる比況の助動詞です。
問9 答え=(例)「勢いの盛んな者も結局は滅びてしまい、まったく風の前の(吹き飛ばされる)塵と同じである。」
〔解説〕「たけき者」=勢いの盛んな・荒々しく強い者、「ほろびぬ」=滅びてしまう、「ひとへに」=まったく・ひたすら。風に吹き飛ばされる塵に、滅びのはかなさを重ねています。
問10 答え=勢いが盛んだ・荒々しく強い(いさましい)。
〔解説〕「たけし(猛し・健し)」は、勢いがあって強く荒々しいさまを表す形容詞です。「たけき者」で「勢いの盛んな者・強い者」となり、前の「おごれる人」と響き合っています。
問11 答え=品詞=副詞。意味は「最後には・結局」。
〔解説〕「つひに」は「終に・遂に」と漢字で書きます。現代仮名づかいでは「ついに」と読む点もあわせて確認しておきましょう。直後の「は」は強めの働きをする係助詞です。
問12 答え=品詞=助動詞(完了の助動詞「ぬ」)。意味=「~てしまった・~てしまう」。活用形=終止形。
〔解説〕「ほろび(滅び)」は上二段動詞「ほろぶ」の連用形で、その下に完了の「ぬ」が付いています。打消の「ず」(未然形に付く)とまぎらわしいので、上の語が連用形か未然形かで見分けます。ここは連用形+「ぬ」なので完了です。
問13 答え=(例)「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」と「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」。
〔理由・解説〕「祇園精舎の鐘の声」と「沙羅双樹の花の色」、「諸行無常の響き」と「盛者必衰の理」というように、組み立て(語の並び方)が同じで、意味の上でも対応する二つの句を並べているので対句といえます。対句はテストで最頻出なので、必ず指摘できるようにしておきましょう。
問14 答え=(例)「おごれる人も久しからず」と「たけき者もつひにはほろびぬ」。または「春の夜の夢のごとし」と「風の前の塵に同じ」。
〔解説〕語の組み立てが同じで意味の上でも対応していれば対句です。冒頭はこのように、いくつもの対句を重ねてリズムと無常のテーマを強めています(どちらか一組を正しく抜き出せていれば正解)。
問15 答え=七五調。
〔解説〕七音と五音の組み合わせを基本とするリズムで、声に出して読むと整った調子が感じられます。『平家物語』が琵琶に合わせて語られたことともつながっています。
問16 答え=無常観。内容=この世のすべてのものは絶えず移り変わり、永遠に続くものはない、という人生・世の中に対するものの見方。栄えている者もいつかは必ず滅びる、というはかなさの感覚を指します。
〔解説〕『平家物語』全体を貫くテーマであり、「諸行無常」「盛者必衰」と結びつけて押さえましょう。
問17 答え=(例)物語全体の主題である「無常観(おごる者・栄える者も必ず滅びるというはかなさ)」を、はじめにまとめて示す序章(総論)の役割を果たしている。
〔解説〕この後に語られる平家一門の繁栄と滅亡の物語を、あらかじめ一つのテーマでつらぬくための「導入」になっています。
問18 【文学史】 答え=鎌倉時代(鎌倉時代前期)。
〔解説〕『平家物語』は平家(平氏)一門の繁栄と滅亡を描いた物語で、鎌倉時代に成立しました。作者は未詳ですが、『徒然草』には信濃前司行長(しなののぜんじゆきなが)が関わったとする説が記されています。
問19 【文学史】 答え=軍記物語(軍記物)。
〔解説〕合戦や武士の活躍・滅亡を描いた物語のジャンルです。『保元物語』『平治物語』『太平記』なども同じ軍記物語に分類されます。
問20 【文学史】 答え=盲目の僧=琵琶法師。その語り=平曲(へいきょく)。
〔解説〕『平家物語』は文字を読むだけでなく、琵琶法師が琵琶を弾きながら語る「平曲」として、耳で聞く形で全国に広まりました(ここまで覚えられれば万全です)。
※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は古典原文(著作権の対象外)を用いています。
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