推定の助動詞「らし・めり・なり」は、定期テストで「推定の種類の判別」と「なりの識別(推定か断定か)」が頻出します。ポイントは三つ。第一に意味で、「らし」は根拠のある推定(〜らしい)、「めり」は目で見ての推定・婉曲(〜のように見える・〜のようだ)、「なり」は音や声を耳で聞いての推定・伝聞(〜という・〜の音がする・〜ようだ)を表します。第二に接続で、「めり・なり」はいずれも終止形接続ですが、ラ変型の語には連体形に付くため「あるめり・あなり」「ざるなり」のような形に注意します。第三に識別で、推定の「なり」(終止形・ラ変型連体形接続)と断定の「なり」(体言・連体形接続)は接続と意味で見分けます。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
※①〜⑯は学習用のオリジナル例文です。
① 風の音にぞ秋は来ぬらし。
② 山の端に月かたぶくめり。
③ 奥山に鹿の鳴くなり、もの悲し。
④ 花の散るらし、庭の白きを見れば。
⑤ 雨降るめり、空のいたう暗きに。
⑥ 笛の音すなり、いづくにかあらむ。
⑦ この水、いと清らなり。
⑧ かの人は世に並びなき歌人なり。
⑨ 人々あまた集ふめり、門のほとりに。
⑩ 鐘の声聞こゆなり、暁近きにや。
⑪ 都には今や桜咲くらし。
⑫ 海のあなたに島あるめり、かすかに見ゆ。
⑬ 虫の声しげくなりぬなり、秋深しと知らる。
⑭ これは亡き親の形見なり、ゆめおろそかにすな。
⑮ あるじはまだ寝ねたるめり、音もせず。
⑯ 露の置くらし、草葉のうち濡れたるは。
設問
- ①の「らし」の意味として最も適切なものを選べ。
- ア 視覚による推定 イ 根拠のある推定 ウ 伝聞
- ①の「らし」の活用形(文法上の終止形・連体形などの別)を答えよ。
- ②の「めり」は推定の種類のうち何を表すか。次から選べ。
- ア 根拠のある推定 イ 視覚による推定 ウ 聴覚による推定
- ②の「めり」の活用形を答えよ。
- ②「かたぶくめり」で、「めり」が四段動詞「かたぶく」のどの活用形に接続しているか。次から選べ。
- ア 連用形 イ 終止形 ウ 連体形
- ③の「なり」は推定の種類のうち何を表すか。次から選べ。
- ア 根拠のある推定 イ 視覚による推定 ウ 聴覚による推定・伝聞
- ③の「なり」の活用形を答えよ。
- ③「鳴くなり」で、「なり」が四段動詞「鳴く」のどの活用形に接続しているか。次から選べ。
- ア 連用形 イ 終止形 ウ 連体形
- ⑦「いと清らなり」の「なり」の文法的説明として正しいものを選べ。
- ア 推定の助動詞 イ 伝聞の助動詞 ウ 断定の助動詞(形容動詞の活用語尾を含む語)
- ⑧「歌人なり」の「なり」は推定か断定か。漢字二字で答えよ。
- ⑨の「めり」の活用形を答えよ。
- ⑩「聞こゆなり」の「なり」は推定(聴覚)か断定か。理由(直前の語の意味・接続)にもふれて答えよ。
- ⑫「島あるめり」で、「めり」がラ変動詞「あり」のどの活用形に接続しているか答え、なぜその形になるのかを「ラ変型」という語を用いて説明せよ。
- ⑬「なりぬなり」の最後の「なり」は推定の「なり」である。直前の完了の助動詞「ぬ」のどの活用形に接続しているか、次から選べ。
- ア 終止形 イ 連体形
- ④・⑤・⑥の傍線部「らし・めり・なり」は、それぞれどの感覚・根拠に基づく推定か。「らし=根拠/めり=視覚/なり=聴覚」のように簡潔に答えよ。
- 次の傍線部を現代語訳せよ。
- (1) ①「秋は来ぬらし」
- (2) ②「月かたぶくめり」
- (3) ③「鹿の鳴くなり」
- 次の傍線部を現代語訳せよ。
- (1) ⑥「笛の音すなり」
- (2) ⑪「桜咲くらし」
- ③「鹿の鳴くなり」の「なり」と⑭「形見なり」の「なり」は、それぞれ推定・断定のいずれか。両方答えよ。
- ⑥「笛の音すなり」の「なり」と⑭「形見なり」の「なり」が、推定か断定かを見分ける手がかりを、「接続」という語を用いて簡潔に説明せよ。
- 次の傍線部を現代語訳せよ。
- (1) ⑭「亡き親の形見なり」
- (2) ⑮「寝ねたるめり」
- 「めり」と「なり」が、どちらも終止形接続でありながら意味の上でどう異なるか。「視覚」「聴覚」という語を用いて二十字以上で説明せよ。
- 推定の「なり」と断定の「なり」を識別する方法を、「接続」「意味」の両面から記述せよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 イ(根拠のある推定)。「風の音」という確かな根拠をもとに「秋が来たらしい」と推定している。「らし」は確かな根拠に基づく推定を表す。
問2 終止形。文末で言い切っているため。(「らし」は終止形と連体形が同形だが、ここは文末で言い切る終止形。)
問3 イ(視覚による推定)。「めり」は目で見た事柄をもとにした推定・婉曲を表す。月が傾いていく様子を見て述べている。
問4 終止形。文末で言い切っている。
問5 イ(終止形)。「めり」は終止形接続。四段動詞「かたぶく」の終止形「かたぶく」に付いている。(「月がかたぶく」は「月が沈みかかる」という自動詞で、カ行四段活用。下二段の「かたぶく」は「〜を傾ける」という他動詞である。)
問6 ウ(聴覚による推定・伝聞)。「なり」は音や声を耳で聞いたことに基づく推定を表す。鹿の鳴き声が聞こえてくる場面である。
問7 終止形。文末で言い切っている。(「、」で句切れているが、ここでは言い切りの終止形と見る。)
問8 イ(終止形)。「なり」は終止形接続。四段動詞「鳴く」の終止形「鳴く」に付いている。
問9 ウ(断定の助動詞を含む語)。「清らなり」はナリ活用の形容動詞で、「なり」は活用語尾(断定の助動詞「なり」に由来)。推定・伝聞ではない。
問10 断定。「歌人」という体言に付いており、「〜である」と断定している。
問11 終止形。文末で言い切っている。
問12 推定(聴覚)。下二段動詞「聞こゆ」の終止形「聞こゆ」に付いており、「鐘の声が聞こえてくるようだ」と音・声を根拠とする推定だから。体言や連体形ではなく終止形に接続している点も推定の根拠となる。
問13 連体形。「めり」は終止形接続だが、ラ変型の活用語には連体形に付く(ラ変型は終止形と連体形で語形が異なり、「めり・なり」は連体形に接続するため)。よって「あり」の連体形「ある」に付いて「あるめり」となる。
問14 ア(終止形)。⑬「なりぬなり」は「成り(四段連用形)+ぬ(完了・終止形)+なり(推定)」。推定「なり・めり」は終止形接続で、連体形接続になるのはラ変型の活用語の場合のみ。完了「ぬ」はナ変型でラ変型ではないため、終止形「ぬ」に付いて「ぬなり」となる(連体形「ぬる」に付くなら「ぬるなり」になるはずである)。よって直前は終止形。
問15 ④らし=根拠(庭が白いという根拠から「花が散るらしい」と推定)/⑤めり=視覚(空がひどく暗いのを見て「雨が降るようだ」)/⑥なり=聴覚(笛の音を聞いて「笛の音がするようだ」)。
問16 (1) 秋が来たらしい。 (2) 月が傾いていくように見える(月が傾くようだ)。 (3) 鹿が鳴いている(鳴く声が聞こえる)。
問17 (1) 笛の音がするようだ(笛の音が聞こえる)。 (2) 桜が咲いているらしい。
問18 ③=推定(聴覚による推定・伝聞)/⑭=断定。③は動詞の終止形「鳴く」に付き音を根拠とする推定、⑭は体言「形見」に付く断定。
問19 推定の「なり」は活用語の終止形(ラ変型は連体形)に接続するのに対し、断定の「なり」は体言や連体形に接続する。⑥は「音す」の終止形に付くので推定、⑭は体言「形見」に付くので断定、と接続によって見分ける。
問20 (1) 亡き親の形見である。 (2) (主人は)まだ寝てしまっているようだ(寝ているように見える)。
問21 「めり」は目で見たことを根拠とする視覚による推定を表し、「なり」は音や声を耳で聞いたことを根拠とする聴覚による推定・伝聞を表す点で異なる。(例:視覚の「めり」、聴覚の「なり」)
問22 <接続>推定の「なり」は活用語の終止形(ラ変型は連体形)に付き、断定の「なり」は体言または連体形に付く。<意味>推定の「なり」は音・声を根拠に「〜のようだ・〜という」と推し量る意を表し、断定の「なり」は「〜である」と断定する意を表す。体言の下にあれば断定、終止形の下にあって音・声が根拠なら推定、と判断する。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文の引用は古典作品(著作権の対象外)から正確に行っています。
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