推定の助動詞「めり・らし・なり」の違い|根拠で見分ける

古文 めり・らし・なり 図解(推定の助動詞 三つの使い分け:めり=目で見て、らし=根拠で、なり=音・伝聞で) 古典文法

めり」「らし」「なり(伝聞推定)」は、どれも「〜らしい・〜ようだ」と訳せる推定の助動詞です。違いは「何を根拠に推定しているか」。見た目・音・確かな証拠で使い分けます。やさしく整理しました。

生徒
生徒「めり・らし・なり」って、どれも「〜ようだ・〜らしい」って訳になっちゃって、全然区別できないんです……。
先生
先生いいところに気づいたね。区別のカギは訳じゃなくて「何を手がかりに推定しているか」だよ。目で見た→めり、耳で聞いた→なり、確かな根拠→らし。これだけで一気にラクになるよ。

推定の助動詞 早見表

助動詞意味推定の根拠接続
めり〜ように見える(視覚推定)/婉曲目で見てそう思う終止形(ラ変は連体形)
なり〜ようだ・〜と聞こえる(聴覚推定)/伝聞音・声を聞いて/人から聞いて終止形(ラ変は連体形)
らし〜らしい(根拠ある推定)確かな根拠にもとづく終止形(ラ変は連体形)
めり・らし・なり 見分けフローチャート(図解)

めり=目で見た推定

助動詞「めり」視覚推定の図解|人々、帰るめり

目の前の様子を見て「〜のように見える」。「人々、帰るめり」=人々が帰るように見える。会話・地の文で婉曲(遠回し)にも使われます。

なり=音・声からの推定(伝聞推定)

助動詞「なり」聴覚・伝聞推定の図解|秋風の吹くなり

音や声を聞いて「〜のようだ/〜と聞こえる」。「秋風の吹くなり」=秋風が吹いているようだ(音で気づく)。人づての「〜だそうだ」も表します。断定の「なり」と紛らわしいので、「なり」の識別で接続(終止形接続なら推定、体言・連体形接続なら断定)を必ず確認しましょう。

らし=確かな根拠のある推定

助動詞「らし」根拠ある推定の図解|春過ぎて夏来たるらし

はっきりした根拠があって「〜らしい」と判断する。和歌に多く、「春過ぎて夏来たるらし」=(証拠があって)夏が来たらしい。

見分けのコツ

推定の助動詞 見分けの早見まとめ図解
  • 目で見た→めり/音・声・人づて→なり/確かな根拠→らし
  • 3つとも終止形接続(ラ変型には連体形)。接続が同じなので意味の根拠で見分けるのがポイント。
  • 「なり」は断定か推定かを必ず接続でチェック。
先生
先生コツは「目・耳・根拠」の三つだけ覚えること。接続はどれも終止形で同じだから、接続じゃなく意味の根拠で見分けるんだ。

テスト直前チェック

  • めり=視覚/なり=聴覚・伝聞/らし=根拠ある推定
  • 3つとも終止形接続
  • 「なり」は断定(体言・連体形接続)と区別

三つの助動詞をもう少しくわしく

早見表でだいたいの違いはつかめましたね。ここからは一つずつ、もう少していねいに見ていきます。「めり・らし・なり」はどれも「〜らしい・〜ようだ」と訳せてしまうため、訳だけで覚えようとすると必ず混乱します。大事なのは「何を手がかりに推定しているか」です。目で見たのか、耳で聞いたのか、それとも確かな根拠があるのか。この一点で見分けると、ぐっとラクになります。

「めり」をもっとくわしく(目で見た推定・婉曲)

「めり」は、目の前の様子を見て「〜のように見える・〜のようだ」と推定する助動詞です。語源は「見(み)」+「あり」が縮まったものと考えられており、「見て、そうあるようだ」という成り立ちを思い出すと、視覚推定であることが覚えやすくなります。活用は「(めら)/めり/めり/める/めれ/○」というラ変型に近い形で、終止形・連体形がどちらも「めり/める」と変化します。

「めり」にはもう一つ、婉曲(えんきょく)という用法があります。婉曲とは「遠回しに、やわらかく言う」ということで、はっきり断定せずに「〜のようだ」とぼかして述べる言い方です。とくに会話文や、書き手が自分の考えをひかえめに述べる地の文でよく使われます。視覚推定なのか婉曲なのかは文脈で判断しますが、入試では「めり=視覚推定または婉曲」と押さえておけば十分です。

例文で確認しましょう。

  • 原文:「秋の野に人まつ虫の声すなり」に対して、目で見た場合「灯火(ともしび)の影に、人々あまた居るめり
    現代語訳:灯火のあたりに、人々が大ぜい座っているように見える。(=目で見て推定)
  • 原文:「この男、いといたう思ひわびて出でて去ぬめり
    現代語訳:この男は、たいそう思い悩んで出て行ってしまったようだ。(=様子を見ての婉曲的な推定)

「なり」をもっとくわしく(音・声・人づての推定)

「なり」は、音や声を耳で聞いて「〜のようだ・〜が聞こえる」と推定したり、人づてに聞いた話として「〜だそうだ」と伝聞を表したりする助動詞です。「鳴る(なる)」「音(ね)あり」と関わるとも言われ、耳から得た情報がもとになっていると考えると覚えやすいでしょう。この「なり」を、断定の「なり」と区別するために「伝聞推定の助動詞なり」と呼ぶこともあります。

もっとも大切なのは、同じ「なり」でも二種類あるという点です。一つは今ここで扱っている伝聞推定の「なり」、もう一つは「〜である」と言い切る断定の「なり」です。この二つは活用も意味も別物なので、見分けが入試最頻出ポイントになります。

  • 伝聞推定の「なり」…上の語が終止形(ラ変型は連体形)になる。意味は「〜ようだ・〜が聞こえる・〜そうだ」。
  • 断定の「なり」…上の語が体言(名詞)や連体形になる。意味は「〜である・〜だ」。

例文で違いを見てみましょう。

  • 原文:「秋風の吹くなり」(「吹く」は終止形)
    現代語訳:秋風が吹いているようだ(音で気づく)。→伝聞推定
  • 原文:「これは竜の首の玉なり」(「玉」は体言)
    現代語訳:これは竜の首の玉である。→断定

このように、「なり」の上の語が終止形か体言・連体形かを見るだけで、推定か断定かが決まります。迷ったら必ず接続を確認するクセをつけましょう。くわしくは「なり」の識別の記事もあわせて読むと、得点源になります。

生徒
生徒「なり」って二つあるんですね……。どっちか見分けるには、上の語が終止形か体言・連体形かを見ればいいんでしたっけ?
先生
先生その通り。終止形なら伝聞推定、体言・連体形なら断定。これが最頻出だから、「なり」を見たらまず上の語の形を確認するクセをつけよう。

「らし」をもっとくわしく(確かな根拠のある推定)

「らし」は、はっきりした根拠・確かな証拠にもとづいて「〜らしい・きっと〜だろう」と判断する助動詞です。「めり」「なり」が「見た感じ」「聞いた感じ」というやや主観的な推定なのに対し、「らし」は客観的な手がかりがあって確信をもって言うところに特徴があります。そのため、ただの「〜らしい」よりも「(証拠があるので)きっと〜にちがいない」に近いニュアンスです。

「らし」は和歌(特に上代・万葉の歌)に多く使われるのも大きな特徴です。活用は「○/○/らし/らし/らし/○」と、終止形と連体形が同じ「らし」になる無変化に近い形で、文章中では数が限られるため、出てきたら「根拠ある推定だな」と見抜きやすい助動詞でもあります。

有名な例文を見てみましょう。

  • 原文:「春過ぎて夏来たるらし白たへの衣干したり天の香具山」(持統天皇)
    現代語訳:春が過ぎて夏がやって来たらしい。(あの天の香具山に)真っ白な衣が干してあるよ。
    ポイント:「白い衣が干してある」という目に見える確かな証拠があるから「夏が来たらしい」と推定しています。これが「らし=根拠ある推定」の典型です。

つまずきやすいポイント

  • 訳が似ているので訳だけで判断してしまう。「めり・らし・なり」はどれも「〜ようだ・〜らしい」と訳せます。訳ではなく「何を根拠に推定しているか」で区別するのが正解です。
  • 「なり」を断定と取りちがえる。「なり」を見たら、まず上の語が終止形か/体言・連体形かを確認。終止形なら伝聞推定、体言・連体形なら断定です。
  • 接続を同じだと油断する。三つとも基本は終止形接続(ラ変型は連体形接続)。接続が同じだからこそ、意味の根拠で見分ける必要があります。
  • 「めり」の婉曲を見落とす。会話文や心内文では、視覚推定ではなく「〜のようだ」とやわらげる婉曲のことがあります。文脈もあわせて読みましょう。
先生
先生いちばん多い失敗は訳だけで判断してしまうこと。訳が似てるのは当たり前だから、必ず「何を手がかりにしているか」に戻ってね。

入試・定期テストでの問われ方

この単元は、次のような形で出題されることが多いです。出題パターンを知っておくと、対策がしやすくなります。

  1. 傍線部の「なり」が伝聞推定か断定かを答える問題。上の語の活用形(終止形か体言・連体形か)で判断します。最頻出です。
  2. 「めり・らし・なり」のうち、視覚推定/聴覚推定/根拠ある推定はどれかを選ぶ問題。「目・耳・根拠」の対応をそのまま使えば解けます。
  3. 現代語訳の問題。「〜ように見える(めり)」「〜のようだ・〜が聞こえる(なり)」「〜らしい(らし)」と、根拠のニュアンスを訳に反映できると高得点です。
  4. 「めり」が視覚推定か婉曲かを文脈で判断する問題。やや難しめの出題ですが、会話文・心内文なら婉曲を疑います。

ミニ練習問題(解答つき)

ここまでの内容が身についたか、かんたんな問題でチェックしましょう。まず自分で考えてから、下の解答を見てください。

  1. 「鐘の音、聞こゆなり」の「なり」は、伝聞推定・断定のどちらか。また現代語訳は。
  2. 「花の咲くめり」の「めり」は、何による推定か(視覚・聴覚・根拠)。
  3. 「秋来たるらし」の「らし」は、どんなときに使う助動詞か。
  4. 「これは京なり」の「なり」は、伝聞推定・断定のどちらか。理由も。

<解答>

  1. 伝聞推定。「聞こゆ」が終止形で、しかも「鐘の音」を耳で聞いているので聴覚推定。訳は「鐘の音が聞こえるようだ」。
  2. 視覚推定。「めり」は目で見た様子からの推定。訳は「花が咲いているように見える」。
  3. 確かな根拠があって推定するとき。訳は「秋が来たらしい」。和歌に多い。
  4. 断定。「京」は体言(名詞)なので、伝聞推定ではなく断定の「なり」。訳は「これは京である」。

よくある質問(Q&A)

Q1.「めり」と「なり」はどちらも推定なのに、どうやって見分けるの?

A.手がかりが「目」か「耳」かで見分けます。「めり」は目で見た様子からの推定、「なり」は音・声を聞いての推定(または人づての伝聞)です。文中に「見る」「影」など視覚に関わる語があれば「めり」、「音」「声」「聞こゆ」など聴覚に関わる語があれば「なり」と判断しやすくなります。

Q2.「らし」だけ和歌に多いのはなぜ?

A.「らし」は上代(奈良時代ごろ)からよく使われた古い助動詞で、万葉集などの和歌に多く残っています。平安時代以降の散文(物語など)では数が減るため、結果的に「和歌に出てくる推定=らし」という印象が強くなっています。出てきたら「根拠ある推定」と押さえましょう。

Q3.「なり」が断定か推定か、本当に接続だけで決められるの?

A.基本は接続で決められます。上が終止形なら伝聞推定、体言・連体形なら断定です。ただし注意したいのがラ変型の語(あり・をり・はべり・いますがり)です。ラ変型は終止形(あり)と連体形(ある)の形がちがいますが、伝聞推定の「なり」はラ変型のあとでは連体形(ある)に付くという決まりがあります。つまり「あり(=あるなり)」のような形では、連体形に付いていても断定とはかぎりません。こうした場合は、文の意味(音・声を聞いているか、言い切っているか)もあわせて判断します。迷ったら「なり」の識別の記事で接続のパターンを確認してください。

Q4.「めり」の「婉曲」って、結局どういうこと?

A.「婉曲」は、はっきり言い切らずに「〜のようだ」とやわらかく述べる言い方です。たとえば「(彼は)帰った」と断定せず「帰っためり(=帰ったようだ)」とぼかすことで、ひかえめでていねいな印象になります。視覚推定の延長と考えてかまいません。

覚え方のまとめ

最後にもう一度、いちばん大切なポイントをまとめます。三つの推定の助動詞は、「何で気づいたか」で覚えるのが鉄則です。

  • 目で見た → めり(視覚推定・婉曲)「〜ように見える」
  • 音・声・人づて → なり(聴覚推定・伝聞)「〜ようだ・〜が聞こえる・〜そうだ」
  • 確かな根拠 → らし(根拠ある推定)「〜らしい」(和歌に多い)

そして「なり」を見たら、上の語が終止形か体言・連体形かを必ずチェック。終止形なら伝聞推定、体言・連体形なら断定です。この二つの覚え方さえ押さえれば、推定の助動詞はもう怖くありません。あとは下のドリルや確認テストで、くり返し練習して定着させましょう。

先生
先生「目・耳・根拠」と「なりは接続でチェック」、この二つを押さえれば大丈夫。あとは下のドリルでくり返せば、本番でも迷わず解けるようになるよ。一緒にがんばろう!

まとめ

推定の助動詞は「何で気づいたか」で覚えると一発です。目→めり、耳→なり、根拠→らし。とくに「なり」は断定との識別が頻出なので、なりの識別記事とセットで仕上げましょう。

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