助動詞「らむ(らん)」は、いま目の前には見えていない「今ごろの出来事」を推量するときに使う語で、定期テストでは「意味の見分け」が必ずねらわれます。覚えるべき意味は三つ。①現在推量「今ごろは〜ているだろう」、②現在の原因推量「(どうして)〜なのだろう」、③伝聞・婉曲「〜とかいう・〜ような」です。接続は終止形(ラ変型には連体形)で、これは過去推量「けむ」との対比でも問われます。活用は四段型で、係助詞を受けて連体形「らむ」で結ぶ形(係り結び)もよく出ます。識別のコツは「らむ」の識別を完全攻略(現在推量・現在の原因推量・伝聞婉曲)の解説で確認しておきましょう。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
① 久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ (『古今和歌集』)
② 風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ (『伊勢物語』)
③ 思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを (『古今和歌集』)
④ いづくにか舟泊てすらむ安礼の崎漕ぎたみ行きし棚なし小舟 (『万葉集』)
⑤ 今ごろは都も花盛りにてあるらむと、旅の空にて思ひやらる。 (出題用例文)
⑥ なほ春の心はのどかにて、花の散るらむと見ゆる夕暮れなり。 (出題用例文)
⑦ かの山に住むらむ人は、いかに月を見るらむ。 (出題用例文)
⑧ 妹は今ごろ里にて待つらむと、夜もすがら思ふ。 (出題用例文)
⑨ いづれの船か先に着きぬらむ。 (出題用例文)
⑩ 雨降れば、外にはいかなる人か行くらむ。 (出題用例文)
⑪ 都には今宵も雪や降るらむと、ひとり思ふ。 (出題用例文)
⑫ さるらむと、人々あはれがる。 (出題用例文)
⑬ 桜は今や咲けらむと、文には書きたり。 (出題用例文/四段「咲け」+「らむ」)
設問
- 例文①の傍線部「散るらむ」の意味として最も適当なものを、次から選べ。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 伝聞・婉曲
- 例文①「散るらむ」の「らむ」の活用形を答えよ。また、なぜその活用形になるのか、和歌の末尾での働きにふれて説明せよ。
- 例文①「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」を現代語訳せよ。
- 例文②「ひとり越ゆらむ」の「らむ」の意味を、ア〜ウから選べ。「夜半にや(=夜中にか)」という疑問の語に注目すること。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 伝聞・婉曲
- 例文②のうち「夜半にや君がひとり越ゆらむ」の部分を現代語訳せよ。
- 例文③「人の見えつらむ」の「らむ」の意味を、ア〜ウから選べ。直前の「寝ればや(=寝たからか)」に注目すること。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 伝聞・婉曲
- 例文④「舟泊てすらむ」の「らむ」の意味を、ア〜ウから選べ。「いづくにか(=どこに)」に注目すること。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 伝聞・婉曲
- 例文④「すらむ」の「らむ」の活用形を答えよ。文頭の「いづくにか」との関係(係り結び)にふれて答えること。
- 例文④「いづくにか舟泊てすらむ」を現代語訳せよ。
- 例文⑤「花盛りにてあるらむ」の「らむ」の意味を、ア〜ウから選べ。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 伝聞・婉曲
- 例文⑤「あるらむ」で、「らむ」はラ変動詞「あり」のどの活用形に接続しているか、活用形の名称で答えよ。
- 例文⑤「今ごろは都も花盛りにてあるらむ」を現代語訳せよ。
- 例文⑥「花の散るらむと見ゆる」の「らむ」の意味を、ア〜ウから選べ。下に「と」を伴って、言い切らずに続いている点に注目すること。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 婉曲
- 例文⑦「住むらむ人は、いかに月を見るらむ」には「らむ」が二つある。前の「住むらむ」の「らむ」の活用形を答え、なぜその活用形になるのかを説明せよ。
- 例文⑧「待つらむ」の「らむ」の意味を、ア〜ウから選べ。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 伝聞・婉曲
- 例文⑪「雪や降るらむと…思ふ」の「らむ」について。下に「と」が続いて言い切らない点をふまえ、意味を答えよ。
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 婉曲
- 例文⑫「さるらむ」について。
(1) ここでの「らむ」自体は、推量の助動詞「らむ」か、それとも別の語の一部か、答えよ。
(2) 「らむ」の直前の「さる」は、どのような語が縮まった形か。ラ変との関係(接続)にふれて説明せよ。 - 例文⑨「先に着きぬらむ」と例文⑩「いかなる人か行くらむ」の「らむ」の意味を、それぞれア〜ウから選べ。いずれも疑問の語(「いづれの船か」「いかなる人か」)に注目すること。
- (1) ⑨「着きぬらむ」 (2) ⑩「行くらむ」
- ア 現在推量 イ 現在の原因推量 ウ 伝聞・婉曲
- 例文⑤「あるらむ」と、例文②「越ゆらむ」の「らむ」の活用形を、それぞれ答えよ。
- (1) ⑤「あるらむ」
- (2) ②「越ゆらむ」
- 助動詞「らむ」の終止形・連体形・已然形を、活用の型(◯◯型)とともに答えよ。
- 「らむ」の接続を答えよ。また、ラ変型の活用語に付くときは何形に接続するか、その点が識別の根拠になることもふくめて説明せよ。
- 次のA・Bの傍線部「らむ」は、成り立ちが異なる。それぞれを文法的に説明せよ。
- A 花の散るらむ(例文①)
- B 桜は今や咲けらむ(例文⑬)
- 「らむ」と過去推量「けむ」は対で問われやすい。両者の意味のちがいを「時間」の観点から一文で説明せよ。
- 例文①「花の散るらむ」と、例文⑥「花の散るらむと見ゆる」を比べると、同じ「散るらむ」でも意味が異なる。なぜ意味が変わるのか、文中での位置や下に続く語に着目して説明せよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 イ(現在の原因推量)。「日の光ものどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく花は散っているのだろう」と、いま目の前に見えない=心の中で「散る理由」を問いかけている。中学生風に言えば「なんで散っちゃうんだろう?」という気持ちなので原因推量。
問2 連体形。「らむ」は四段型で、終止形も連体形も同じ「らむ」の形だが、この歌は一首の末尾を連体形で結んで余情を残している。和歌の末尾の「らむ」は連体形でとるのがふつう。
(注)教科書によっては終止形とみる立場もあるが、本問は「言い切らず余情を残す」連体形でとる。
問3 「日の光ものどかな春の日であるのに、どうして落ち着いた心もなく花は散っているのだろう。」(「らむ」は原因推量で「どうして〜だろう」と訳す。)
問4 ア(現在推量)。文中の「夜半にや(=夜中にか)」は「夜中に〜しているのだろうか」と時・様子を問う疑問であって、理由(どうして)を問う語ではない。ここは「(あなたは)今ごろ夜中にひとりで竜田山を越えているのだろうか」と、見えない今の様子を推し量る現在推量(疑問を伴う形)。原因推量になるのは「など・なぞ」や「〜ばや」など、理由を問う言い方を伴うとき(例文③)。
問5 「(あなたは)今ごろ、夜中にたった一人で(あの竜田山を)越えているのだろうか。」(「夜半にや…らむ」で「今ごろ夜中に〜しているのだろうか」。)
問6 イ(現在の原因推量)。直前に「寝ればや(=寝たからだろうか)」と理由を示す言い方があるので、「(あの人を思って)寝たから、あの人が(夢に)見えたのだろうか」と原因を推量している。
問7 ア(現在推量)。文頭の「いづくにか(=どこに)」は場所を問う疑問語で、理由(どうして)を問う語ではない。「(あの小舟は)今ごろどこに停泊しているのだろう」と、見えない今の様子を推し量る現在推量(疑問を伴う形)。
問8 連体形。文頭に係助詞「か」があるため、係り結びの法則で文末(結び)が連体形「らむ」になっている。「か」は連体形で結ぶ。
問9 「(あの棚なし小舟は)今ごろどこに停泊しているのだろう。」(場所を問う疑問語「いづくに」+現在推量の「らむ」。)
問10 ア(現在推量)。「今ごろは都も花の盛りであるだろう」と、旅先から、見えない都の今の様子を「〜だろう」と推量している。疑問の語がないので現在推量。
問11 連体形。「あり」はラ変動詞なので、終止形接続の「らむ」もラ変型には連体形に接続する。よって連体形「ある」+「らむ」で「あるらむ」となる。
問12 「今ごろは都も花の盛りであるだろう。」(現在推量「今ごろは〜ているだろう」。)
問13 ウ(婉曲)。「らむ」の下に「と」が続いて言い切らず、内容を示している。このように下に「と」や体言が続いて文が言い切りで終わらない「らむ」は、「〜ような」とやわらかく言う婉曲になる。ここは「花が散るような(と見える夕暮れだ)」。
問14 連体形。直後に体言「人」が続いて連体修飾語になっている(「住んでいるような人」)ので、「住むらむ」の「らむ」は連体形。下に体言が来るときは連体形になる、と判断する。
問15 ア(現在推量)。「(妹は)今ごろ里で(私を)待っているだろう」と、いまの相手の様子を「〜だろう」と推し量っている。疑問の語がなく、ただ今ごろの様子を想像しているので現在推量。
問16 ウ(婉曲)。「らむ」の下に「と」が続き、思った内容を示して言い切らないため、「(都には今夜も雪が)降るような(と思う)」という婉曲になる。
(補足)「降るらむ」を一語の文末ととれば「降っているだろう」(現在推量)の解釈も可能だが、本問は「と」に続けて言い切らない点を重視して婉曲ととる。
問17 (1) 「さるらむ」の「らむ」自体は、推量の助動詞「らむ」である。 (2) 直前の「さる」は、指示の副詞「さ」+ラ変動詞「あり」の連体形「ある」が縮まった形(さ・ある→さる)。ラ変型なので「らむ」は連体形「ある(→さる)」に接続している。全体で「(なるほど)そうであるのだろう」の意。
問18 (1) ⑨「着きぬらむ」…ア(現在推量)。「いづれの船か」は「どの船が」と対象を問う疑問語で、理由を問う語ではない。「今ごろどの船が先に着いたのだろう」と今の様子を推し量る現在推量(疑問を伴う形)。 (2) ⑩「行くらむ」…ア(現在推量)。「いかなる人か」も「どんな人が」と人を問う疑問語。「(雨の中を)今ごろどんな人が出歩いているのだろう」と推し量る現在推量。どちらも疑問の語はあるが理由(どうして)を問わないので、原因推量ではない(理由を問うのは「など・なぞ」「〜ばや」など——例文③参照)。
問19 (1) ⑤「あるらむ」…終止形(係助詞がなく、文をふつうに言い切っているため)。 (2) ②「越ゆらむ」…連体形(直前に係助詞「や」があり、係り結びで連体形に結ぶ)。
問20 「らむ」は四段型に活用する。問われやすいのは、終止形「らむ」・連体形「らむ」・已然形「らめ」。(整理)未然—(ら)/連用—○/終止—らむ/連体—らむ/已然—らめ/命令—○。
問21 接続は終止形。ただしラ変型(ラ変動詞や、形容詞・形容動詞の補助活用、「めり」「なり」などラ変型に活用する語)には連体形に接続する。終止形接続の助動詞は、ラ変型の語だけは連体形につくのが共通のルール。したがって、直前の語がラ変型かどうかが「らむ」の接続を見分ける根拠になり、ラ変「あり」の下では「あるらむ」(連体形+らむ)の形になる。
問22 A「散るらむ」…動詞「散る」(ラ行四段)の終止形「散る」に、現在(原因)推量の助動詞「らむ」が付いた形=「散る(終止形)+らむ」。
B「咲けらむ」…四段動詞「咲く」の已然形「咲け」に、完了・存続の助動詞「り」の未然形「ら」、さらに推量の助動詞「む」が付いた「咲け+ら+む」。つまり一語の「らむ」ではなく「り(未然形ら)+む」で、「(桜は今ごろ)咲いているだろう」の意。見分けの根拠は、直前が四段動詞の已然形「咲け」になっている点(四段已然形+「り」)。
問23 「らむ」は、いま目の前で起きている(が直接は見えない)現在の事態を推量する(今ごろ〜ているだろう)。これに対し「けむ」は、過去に起きた事態を推量する(〜ただろう・〜たとかいう)。つまり推量する出来事の時間が、「らむ」は現在、「けむ」は過去という点で異なる。
問24 例文①「花の散るらむ」は和歌の末尾にあって言い切る形なので、現在の事態の理由を問う原因推量(どうして散るのだろう)になる。一方、例文⑥「花の散るらむと見ゆる」は「らむ」の下に「と」が続いて言い切らず、内容を示しているため、「散るような(と見える)」という婉曲の意味になる。下に「と」や体言が続いて言い切るか否かで意味が変わる。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文の引用は古典作品(著作権の対象外)から正確に行っています。
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