「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」は、目的を達成するために、長い間どんな苦難にも耐えて努力することのたとえです。呉王夫差(ふさ)が薪(たきぎ)の上に臥(ふ)して父の仇を忘れず、越王勾践(こうせん)が胆(きも)を嘗(な)めて会稽(かいけい)の恥を忘れなかったという故事に基づきます。定期テストでは、「臥薪」と「嘗胆」がそれぞれ誰の行動かを問う設問、書き下し文、重要語の意味、「会稽の恥」の内容が頻出です。次の文章を読み、後の問いに答えよ。
本文
【白文】
【書き下し文】
夫差讎(あだ)を復(ふく)せんと志(こころざ)し、朝夕(ちょうせき)薪(たきぎ)の中(うち)に臥(ふ)し、出入(しゅつにゅう)に人をして呼ばしめて曰(い)はく、「夫差、而(なんぢ)越人(えつひと)の而(なんぢ)の父を殺ししを忘れたるか。」と。
……
越王(えつわう)勾践(こうせん)国(くに)に反(かへ)り、胆(きも)を坐臥(ざが)に懸(か)け、即(すなは)ち胆を仰(あふ)ぎて之(これ)を嘗(な)めて曰はく、「女(なんぢ)会稽(くわいけい)の恥(はぢ)を忘れたるか。」と。(注)夫差…呉の王。父の闔閭(こうりょ)が越との戦いで負傷して死んだ。/讎…かたき。あだ。/薪…たきぎ。/而…「なんぢ」と読み、お前、の意(汝に同じ)。/勾践…越の王。/会稽の恥…勾践が会稽山で夫差に敗れて降伏した屈辱。/坐臥…座る所と寝る所。ふだんいる場所。/嘗…なめる。
設問
- 傍線部①「夫差志復讎」を書き下し文に改めよ。
- 「臥薪」とは、誰がどのような行動をとったことを指すか。簡潔に説明せよ。
- 「臥薪」と「嘗胆」は、それぞれ呉・越のどちらの王の行動か。組み合わせとして正しいものを選べ。
- ア 臥薪=越王勾践/嘗胆=呉王夫差
- イ 臥薪=呉王夫差/嘗胆=越王勾践
- ウ 臥薪=呉王夫差/嘗胆=呉王夫差
- エ 臥薪=越王勾践/嘗胆=越王勾践
- 「使人呼曰」の「使」の意味・働きを答えよ。また、ここでの読み方(送り仮名を含む)を示せ。
- 夫差が家来に言わせた言葉「夫差、而忘越人之殺而父邪。」を現代語訳せよ。
- 本文中の「而」(「而忘越人之殺而父邪」の二つの「而」)は、それぞれどのような意味・読みか。
- (1) 一つ目の「而」
- (2) 二つ目の「而」
- 「越人之殺而父」とあるが、夫差の父とは誰か、その名を答えよ。
- 傍線部②「懸胆於坐臥」を書き下し文に改めよ。
- 勾践が自らに言い聞かせた言葉「女忘会稽之恥邪。」を現代語訳せよ。
- 「会稽之恥」とは、具体的にどのような出来事を指すか。説明せよ。
- 夫差が「薪の中に臥し」たのは何のためか。本文に即して答えよ。
- 「嘗胆」とは、誰がどのような行動をとったことを指すか。簡潔に説明せよ。
- 勾践が胆を嘗めたのはなぜか。本文に即して説明せよ。
- 本文中の「邪」(「忘……邪」)は、ここではどのような意味・働きか。最も適切なものを次から選べ。
- ア 疑問・反語を表す助字
- イ 比較を表す助字
- ウ 断定を表す助字
- エ 仮定を表す助字
- 次の語の本文中での意味を答えよ。
- (1) 朝夕
- (2) 坐臥
- 夫差と勾践に共通する心情・態度はどのようなものか。両者をふまえて説明せよ。
- 故事成語「臥薪嘗胆」の意味として最も適切なものを次から選べ。
- ア 仲の悪い者どうしが同じ場所にいること
- イ 目的を達成するために、長い間苦難に耐えて努力すること
- ウ わずかな違いで大勢が決まること
- エ 取るに足らない、つまらない争いのこと
- 「臥薪嘗胆」を用いた短文を一つ作れ。
- この故事が記されている歴史書で、本問の出典となっている書物の名を答えよ。
- 「臥薪嘗胆」と最も意味が近い四字熟語・故事成語を、次から一つ選べ。
- ア 呉越同舟
- イ 切歯扼腕
- ウ 捲土重来
- エ 蛍雪之功
- 夫差と勾践の故事から、私たちはどのような教訓を学ぶことができるか。あなたの考えを一文で述べよ。
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問1 夫差讎(あだ)を復(ふく)せんと志し/夫差讎を復せんと志す。「復讎」は「あだをかえす(仇討ちをする)」の意。「志」は「~しようと志す・心に決める」。
問2 呉王夫差が、父の仇を忘れないために、毎日薪(たきぎ)の上に寝起きしたこと。寝心地の悪い薪の上に臥すことで、復讐の決意を新たにし続けた。
問3 イ。臥薪(薪の上に臥す)は呉王夫差の行動、嘗胆(胆を嘗める)は越王勾践の行動である。
問4 「使」は使役を表し、「(人)をして…しむ」と読む。ここでは「人をして呼ばしめて」と読み、「家来に(自分を)呼ばせて」の意。読み…人をして呼ばしむ。
問5 「夫差よ、お前は越の人間がお前の父を殺したことを忘れたのか(いや、忘れてはならない)。」反語的に自らを戒める言葉である。
問6 (1) 一つ目の「而」…「なんぢ(汝)」と読み、「お前(夫差自身)」を指す呼びかけの語。 (2) 二つ目の「而」…「なんぢ(汝)の」と読み、「お前の」の意で、「父」を修飾する。いずれも二人称の代名詞として用いられている。
問7 闔閭(こうりょ)。呉王闔閭は越との戦いで傷を負い、それがもとで死んだ。その子が夫差である。
問8 胆を坐臥(ざが)に懸(か)け。「於」は場所を示す置き字で、「坐臥に(座る所・寝る所に)」と読む。胆を日常の生活の場に吊るしておく、の意。
問9 「お前は会稽の恥を忘れたのか(いや、忘れてはならない)。」自らに問いかけ、復讐の志を奮い立たせる言葉である。
問10 越王勾践が会稽山で呉王夫差に敗れ、降伏して屈辱を受けた出来事。勾践が呉に屈服させられたことを指す。
問11 越に殺された父の仇を討つという復讐の決意を、忘れず奮い立たせるため。薪の痛みによって、つねに恨みを思い起こすことを目的とした。
問12 越王勾践が、会稽山での敗北の屈辱を忘れないために、苦い胆(きも・肝)を身近に懸けておき、起き伏しのたびにそれを嘗(な)めたこと。
問13 会稽山で夫差に敗れて降伏した恥を忘れず、復讐の決意を保ち続けるため。苦い胆の味によって、つねに屈辱を思い起こそうとした。
問14 ア(疑問・反語を表す助字)。ここでは「~か、いや~ない」という反語の意で、自らを強く戒めている。
問15 (1) 朝夕…朝も夕も。一日中。いつも。 (2) 坐臥…座る所と寝る所。ふだん起き伏しする生活の場。
問16 どちらも、受けた屈辱や仇を決して忘れず、つらい思いをわざと続けることで復讐・雪辱の決意を保ち続けようとする、執念深く忍耐強い態度。
問17 イ(目的を達成するために、長い間苦難に耐えて努力すること)。もとは復讐のための忍耐を指したが、広く「目標達成のため苦労に耐えること」の意で用いられる。
問18 (解答例)彼は不合格の悔しさをばねに、臥薪嘗胆の思いで一年間勉強を続け、ついに志望校に合格した。(「目的のために苦難に耐えて努力する」意味で使えていれば可)
問19 『十八史略』。(同じ故事は『史記』にも記される。)
問20 ウ(捲土重来)。一度敗れた者が、再び勢いを盛り返して巻き返すことを言い、雪辱を期して努力する点で「臥薪嘗胆」に通じる。なお「呉越同舟」は仲の悪い者が同席すること、「切歯扼腕」は激しく悔しがること、「蛍雪之功」は苦学して成功することで、いずれも意味が異なる。
問21 (解答例)どんなにつらい状況でも、目標を忘れずに耐え努力を続ければ、いつか雪辱を果たすことができるということ。(自分の言葉で「忍耐・努力・目的達成」の趣旨が述べられていれば可)
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
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