今昔物語集『羅城門』定期テスト対策問題|現代語訳・文法・内容の頻出設問と解答

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今昔物語集の『羅城門(羅城門の上層に登りて死人を見る盗人の語)』は、芥川龍之介の小説『羅生門』の原典として知られ、高校の定期テストでも頻出の説話です。荒れ果てた平安京の羅城門の上で、盗人が死人の髪を抜く老婆と出くわす――その緊張した場面を通して、説話特有の語り口と人間の生々しさを味わうことができます。まずは本文を読み、設問に答え、最後の「解答・解説」で確認してみましょう。物語の全体像をやさしくつかみたい人は、あわせて今昔物語集『羅城門』のやさしい解説もどうぞ。

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本文

今は昔、摂津の国のあたりより、盗みせむがために京に上りける男の、日のいまだ暮れざりければ、羅城門の下に立ち隠れて立てりけるに、朱雀のかたに人しげく行きければ、人の静まる〔①〕までと思ひて、門の下に待ち立てりけるに、山城のかたより人どものあまた来る音のしければ、それに見えじと思ひて、門の上層にやはら〔②〕かきつきて登りたりけるに、見れば、火ほのかにともしたり。

盗人、あやしと思ひて、連子よりのぞきければ、若き女の死にて臥したるあり。その枕上に火をともして、年いみじく老いたる嫗の白髪白きが、その死人の枕上に居て、死人の髪をかなぐり抜き取るなりけり。

盗人、これを見るに、心も得ねば、「これはもし鬼にやあらむ」と思ひて恐ろしけれども、「もし死人にてもぞある、脅して試みむ〔③〕」と思ひて、やはら戸を開けて、刀を抜きて、「おのれは、おのれは」と言ひて走り寄りければ、嫗、手まどひをして、手をすりてまどへ〔④〕ば、盗人、「こはなにぞの嫗の、かくはしぞ」と問ひければ、嫗、「おのれが主にておはしましつる人の失せ給へるを、あつかふ人のなければ、かくて置き奉りたるなり〔⑤〕。その御髪の、丈に余りて長ければ、それを抜き取りて鬘にせむとて抜くなり。助け給へ〔⑥〕」と言ひければ、盗人、死人の着たる衣と、嫗の着たる衣と、抜き取りてある髪とを奪ひ取りて〔⑦〕、下り走りて逃げて去りにけり。

設問

  1. 次の傍線部を、それぞれ文脈に合うように現代語訳しなさい。
    • 傍線部①「静まる」
    • 傍線部④「まどへ(ば)」
  2. 次の傍線部の意味として最も適当なものを、それぞれ説明しなさい。
    • 傍線部②「やはら」
    • 傍線部⑦「奪ひ取りて」
  3. 本文中の「火ほのかにともしたり」を現代語訳しなさい。
  4. 次の語句の本文中での意味を、それぞれ答えなさい。
    • 「あやし」(盗人、あやしと思ひて)
    • 「嫗」
    • 「鬘」
  5. 本文中の「連子」とは、ここではどのようなものを指すか、簡潔に説明しなさい。
  6. 本文中の過去の助動詞「けり」(「登りたりけるに」「抜き取るなりけり」などの「けり」「ける」)の文法的意味(用法)を答えなさい。
  7. 本文中の「これはもし鬼にやあらむ」を現代語訳しなさい。また、この一文に用いられている係助詞「や」について、結びの語と係り結びの関係(文末がどう変化しているか)を説明しなさい。
  8. 盗人が「脅して試みむ」と思ったのは、老婆の姿を見て何ではないかと考え、それを確かめようとしたからである。盗人がこのとき何を疑い、どうしようと考えたのかを説明しなさい。
  9. 傍線部③「脅して試みむ」の「む」は助動詞である。その文法的意味(用法)を答え、あわせて盗人がこのとき抱いた心情を簡潔に説明しなさい。
  10. 冒頭の「盗みせむがために」の「む」と、傍線部③「脅して試みむ」の「む」とでは、助動詞「む」の用法が異なる。それぞれの用法の違いを説明しなさい。
  11. 老婆の会話文中の「おはしましつる」「失せ給へる」に用いられている敬語の種類を、それぞれ答えなさい。また、これらの敬語が示す、老婆と亡くなった人物との関係を説明しなさい。
  12. 傍線部⑤「あつかふ人のなければ、かくて置き奉りたるなり」を現代語訳しなさい。また、この一文に用いられている敬語「奉り」について、次の点を答えなさい。
    • 敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)
    • 誰に対する敬意か
  13. 傍線部⑥「助け給へ」について、次の点を答えなさい。
    • 「給へ」の敬語の種類
    • この敬意が「誰から誰へ」向けられたものか
  14. 盗人は、なぜ羅城門の上層によじ登ったのか。その理由を本文に即して説明しなさい。
  15. 老婆は、若い女の死人の髪を抜き取って、何にしようとしていたのか。本文に即して答えなさい。
  16. この説話における盗人の心情は、本文の前半から後半にかけてどのように変化したか。老婆を見つけてから衣をはぎ取るまでの流れに即して説明しなさい。
  17. 老婆が、死者の髪を抜くという行為を正当化するために述べた「論理(言い分)」を、本文に即して説明しなさい。
  18. この『羅城門』を原典として書かれた芥川龍之介の小説『羅生門』では、結末が今昔物語集と大きく異なる。両者の結末(盗人=下人がどうなるか)の違いを、簡潔に説明しなさい。
  19. 芥川『羅生門』の主人公「下人」と、この説話の主人公「盗人」とでは、人物の設定が大きく異なる。両者の設定の違いを説明しなさい。
  20. 【文学史】『今昔物語集』について述べた次の説明の空欄に入る語句を、それぞれ答えなさい。
    『今昔物語集』は、各話が「( ア )」という書き出しで始まる、( イ )末期に成立したと考えられる日本最大級の( ウ )集である。天竺・震旦・本朝の三部から成り、貴族から庶民まで多彩な人々の姿を描く。
  21. 【文学史】『今昔物語集』は、収録された話の舞台によって三つの部に分かれている。その三つの部「天竺・震旦・本朝」が、それぞれ現在のどの地域(国)を指すかを答えなさい。
  22. 【文学史】『今昔物語集』と同じく、平安時代から鎌倉時代にかけて作られた「説話集」の作品を、一つ挙げなさい。
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問1 ①「静まる」=(人通りが)静かになる・おさまる。/④「まどへ(ば)」=うろたえる・あわてふためく(ので)。
動詞「惑ふ」は「分別を失ってうろたえる・あわてる」の意。突然刀を抜いた盗人に詰め寄られ、老婆が動転している場面である。

問2 ②「やはら」=そっと・静かに。気づかれないよう静かに門の上によじ登った様子を表す。/⑦「奪ひ取りて」=(むりやり)奪い取って。盗人が死人の衣・老婆の衣・抜き取った髪を強引に取り上げたことをいう。

問3 「火ほのかにともしたり」=火(明かり)がかすかにともしてある。「ほのかなり」は「ぼんやりとかすかである」の意。暗い門の上層に、わずかな灯がともっている不気味な情景を表す。

問4 「あやし」=(ここでは)不思議だ・変だ・怪しい。門の上に灯がともっているのを見て、盗人が「変だ」といぶかしんだ場面。/「嫗」=年老いた女・老婆(読みは「おうな」)。/「鬘」=かつら・添え髪(読みは「かづら(かつら)」)。死者の髪を集めてかつらを作ろうとしている。

問5 「連子」=連子窓(れんじまど)。細い格子(こうし)を縦または横に間を空けて並べた窓のこと。盗人はこの格子のすき間からそっと中をのぞき見た。

問6 「けり」「ける」は過去の助動詞(「~た」「~たということだ」)。ここでは、語り手が伝え聞いた昔の出来事を語る、説話特有の過去の回想・伝聞的な語りとして用いられている(「今は昔…けり」と昔話を語る文体)。

問7 訳=「これはもしかすると鬼ではないだろうか。」
係り結び=係助詞「」(疑問)を受けて、文末が連体形「あらむ」で結ばれている。「や(…)む」で疑問の意を表し、「…なのだろうか」と訳す。

問8 盗人は、灯の下で死人の髪を抜く老婆の異様な姿を見て、これは「」ではないかと疑った。しかし「いや、(生きた人間ではなく)死人かもしれない」とも考え、正体を確かめるために脅してやろう(脅して試みむ)と思って、刀を抜いて走り寄った。=相手が鬼か、それとも死人(=何か)なのかを見極めようとしたのである。

問9 「む」は意志の助動詞(「~しよう」)。「(相手が死人なら)脅して試してみよう」という盗人の意志を表す。
心情=はじめは「鬼ではないか」と恐れたが、相手が生身の人間かもしれないと考え直し、刀を抜いて確かめてやろうという積極的・攻撃的な気持ちに転じている。恐怖から、相手を試そうとする強気な心理への変化が読み取れる。

問10 「盗みせむがために」の「む」は、これからしようとすることを表す意志(または婉曲)の用法で、「盗みをしようとして/盗みをするために」の意。一方、傍線部③「脅して試みむ」の「む」は、話し手(盗人)自身の意志(「~しよう」)を表す。前者は「~(ん)がために」という目的を示す言い方の中で用いられているのに対し、後者は心内文の文末で盗人の決意そのものを表している点が異なる。
※「盗みせむがために」の「む」を婉曲(~ような)ととる説明も可。

問11 「おはしまし(つる)」=尊敬語(「あり・居り」などの尊敬表現で「いらっしゃる」の意)。「失せ給へ(る)」=補助動詞「給ふ」による尊敬語(「お亡くなりになる」の意)。いずれも老婆が、亡くなった人物を高く敬って言っているもので、亡くなった人物が老婆の主人(仕えていた相手)であったことを示している。

問12 訳=「(亡くなった主人の)世話をする人がいないので、こうして(ここに)置き申し上げているのです。」
「奉り」は謙譲語。死んでしまった主人(老婆が仕えていた人)に対する、老婆からの敬意を表す(動作の対象=主人を高めている)。

問13 「給へ」は尊敬語(補助動詞「給ふ」の命令形)。敬意の方向は、老婆(話し手)から盗人(聞き手)へ。「(どうか命を)お助けください」と、盗人を高めて懇願している会話文中の敬語である。

問14 盗人は、(朱雀大路の方に)人通りが多く、また山城の方からも大勢の人が来る足音がしたので、その人たちに姿を見られまいとして(「それに見えじと思ひて」)、身を隠すために門の上層によじ登った。

問15 老婆は、抜き取った長い髪で鬘(かつら)を作ろうとしていた。亡くなった女主人の髪が背丈を超えるほど長かったので、それを抜き取ってかつらにしようとして抜いていた、と説明している。

問16 盗人の心情は次のように変化する。最初は上層の灯りと老婆の異様な姿を見て「鬼ではないか」と恐怖を感じる。次に「死人(の正体)かもしれない、ならば脅して試そう」と思い直し、恐れから強気・攻撃的な態度へ転じて刀を抜き走り寄る。そして老婆の正体が生きた人間だとわかって恐怖が消えると、最後は盗人本来の欲が表に出て、衣も髪も奪って逃げ去る。=「恐怖 → 強気(試そうとする心) → 盗人としての欲」という流れで変化している。

問17 老婆の論理(言い分)=「自分の主人だった人が亡くなったが、弔い世話をする人がいないので、ここに置いている。その髪がたいへん長いので、抜き取って鬘(かつら)にしようとして抜いているのだ」というもの。死者から髪を抜くという行為を、「(自分が)生きていくための、しかたのないこと」として正当化している点が、後の芥川『羅生門』の主題(生きるための悪の肯定)につながる。

問18 今昔物語集では、盗人ははじめから盗みを目的に羅城門へ来た盗人であり、老婆と出会って衣と髪を奪って逃げ去る、という結末で終わる(盗人の心理の劇的な転換は描かれない)。
一方、芥川『羅生門』では、主人公は職を失い「盗人になるかどうか」を迷う下人として描かれ、老婆の言い分を聞いて「ならば自分が引剝ぎをしても恨むまい」と悪を働く決意を固め、老婆の着物をはぎ取って闇の中へ姿を消す。=芥川は、原典にない「下人の心理の変化・悪への踏み出し」を結末の中心に据えて改作している。

問19 説話の「盗人」は、はじめから盗みをするために京へ上ってきた、すでに盗人である男として描かれる。これに対し、芥川『羅生門』の「下人」は、主人に暇を出されて職を失い、これから盗人になるかどうかを迷っている、ふつうの若者として設定されている。=「最初から悪人である盗人」と「悪に踏み出すかどうかを迷う下人」という違いがある。

問20 ア=今は昔 イ=平安 ウ=説話
『今昔物語集』は全話が「今は昔」で始まり、平安時代末期に成立したと考えられる日本最大級の説話集である。天竺・震旦・本朝の三部構成で、約千余話を収める。

問21 天竺=インド、震旦=中国、本朝=日本。『今昔物語集』は、インド・中国・日本に伝わる説話を集め、三つの部に分けて収めている。

問22 (解答例)『宇治拾遺物語』『古今著聞集』『十訓抄』『発心集』『沙石集』など、いずれか一つを挙げればよい。これらは『今昔物語集』と同じく、説話(言い伝えられた短い物語)を集めた説話集である。

※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は古典原文(著作権の対象外)を用いています。なお本文の表記は、高校の学習で広く用いられる漢字仮名交じりの校訂本文に準拠しています(原典の今昔物語集は漢字片仮名交じり文)。

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