伊勢物語『芥川』定期テスト対策問題|現代語訳・和歌・文法の頻出設問と解答

芥川|定期テスト対策 確認テスト 定期テスト対策

『伊勢物語』第六段「芥川(あくたがわ)」は、定期テストで非常によく出題される章段です。とくに和歌「白玉か何ぞ」の解釈と「なまし」の反実仮想、そして結末の「鬼一口(おにひとくち)」が何のたとえなのかは頻出ポイント。まずは本文を読んで設問に答え、最後の解答で答え合わせをして理解を確かめましょう。本文の流れがあやしい人は、先に伊勢物語『芥川』のやさしい解説を読んでから取り組むと得点しやすくなります。

📥 PDFダウンロード(無料・印刷OK)
問題用紙とテスト形式で解きたい人はこちら。 📝 問題編PDF(全21問)✅ 解答・解説編PDF

本文

むかし、男ありけり。女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて〔①〕、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ〔②〕」となむ男に問ひける。

行く先多く、夜もふけにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓、やなぐひを負ひて戸口にをり。「はや夜も明けなむ〔③〕」と思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや」と言ひけれど、神鳴る騒ぎに、え聞かざりけり〔④〕。

やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。足ずりをして泣けども、かひなし。

 白玉か何ぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを

設問

  1. 本文中の助動詞「けり」(「男ありけり」「来けり」など)は、ここではどのような働きをしているか。文法的な意味を答えなさい。
  2. 冒頭の「女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを」を現代語訳しなさい。
  3. 「え得まじかりけるを」の「まじ」は、ここではどのような意味を表しているか。最も適切なものを次から選びなさい。
     ア 打消推量(〜ないだろう) イ 不可能(〜できそうにない) ウ 禁止(〜してはいけない) エ 打消意志(〜まい)
  4. 傍線部①「盗み出でて」を、文脈に合うように現代語訳しなさい。
  5. 傍線部①「盗み出でて」・傍線部④「え聞かざりけり」について、それぞれの主語(動作主)を本文中の語で答えなさい。
  6. 「率て行きければ」「降りければ」の「ければ」は、接続助詞「ば」が已然形に付いた形である。ここでの「ば」の意味(用法)を答えなさい。
  7. 本文中で、女が「草の上に置きたりける露」を見て言ったことばから、この女がどのような人物(育ち)であると読み取れるか。簡潔に説明しなさい。
  8. 傍線部②「かれは何ぞ」を、誰が誰に向かって言ったことばかを明らかにして、現代語訳しなさい。
  9. 「となむ男に問ひける」で、文末が「問ひけり」ではなく「問ひける」(連体形)となっているのはなぜか。文法的に説明しなさい。
  10. 傍線部③「はや夜も明けなむ」の「なむ」の文法的説明として最も適切なものを次から選びなさい。
     ア 完了の助動詞「ぬ」未然形+推量の助動詞「む」
     イ 強意(確述)の助動詞「ぬ」未然形+意志・願望の助動詞「む」
     ウ ナ変動詞の活用語尾+推量の助動詞「む」
     エ 係助詞「なむ」
  11. 結末で女が消えたのは、本文では「鬼はや一口に食ひてけり」と表現されている。この「鬼一口」は、実際にはどのような出来事をたとえたものか。『伊勢物語』の背景をふまえて説明しなさい。
  12. 「あなや」と言ひけれど、神鳴る騒ぎに、え聞かざりけり」を現代語訳しなさい。
  13. 結末の「率て来し女もなし。足ずりをして泣けども、かひなし」を現代語訳しなさい。
  14. 和歌「白玉か何ぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを」を、現代語訳しなさい。
  15. 設問14の和歌の末尾「消えなましものを」の「なまし」には、ある文法的な意味がこめられている。その文法名を漢字で答え、和歌全体にどのような心情が表れているかを説明しなさい。
  16. 設問14の和歌の中の「人」とは、具体的に誰を指すか。本文の内容をふまえて答えなさい。
  17. 設問14の和歌で、男はなぜ女のことを「白玉(真珠)」や「露」にたとえているのか。その表現の効果を説明しなさい。
  18. 次の本文中の語句の意味を答えなさい。
     (1) からうじて (2) あばらなる (3) やなぐひ
  19. この章段で「鬼」がやって来た(女を食べた)ことになっている背景には、当時の貴族社会のどのような事情があったと考えられるか。「二条の后」という語を用いて説明しなさい。
  20. 【文学史】『伊勢物語』について述べた次の文の空欄に当てはまる語を答えなさい。
     『伊勢物語』は、和歌を中心に物語が展開する( あ )物語の代表作で、ある男の一代記の形をとる。主人公の男は、歌人( い )がモデルとされる。成立は( う )時代である。
  21. 【文学史】『伊勢物語』と同じく、和歌を中心に短い話を連ねた作品(歌物語)を、『伊勢物語』以外に一つ挙げなさい。また、主人公のモデルとされる在原業平が選ばれている、すぐれた六人の歌人の総称を漢字で答えなさい。
▼ 解答・解説を見る(まず自分で解いてから)

問1 答え:過去(伝聞過去)の意味。
「けり」はここでは過去を表す助動詞で、「〜た・〜たそうだ」と訳します。とくに『伊勢物語』のような物語の語り出し「むかし、男ありけり」の「けり」は、語り手が人から伝え聞いた昔話を語るニュアンス(伝聞過去)を含みます。なお和歌などで使う「気づき・詠嘆の『けり』」とは区別しましょう。

問2 答え:(その)女で、手に入れることができそうになかった人を、長年求婚し続けてきたが。
「え〜まじ」で「〜できそうにない」という不可能の打消推量。「得(う)」は「手に入れる・自分のものにする」。「よばひわたる」は「求婚し続ける」で、「わたる」は「ずっと〜し続ける」という継続を表す補助動詞です。

問3 答え:イ(不可能)
「え〜まじ」はセットで「〜できそうにない・〜できないだろう」という不可能の打消推量を表します。「え得まじ」で「(自分のものに)できそうにない」。冒頭で「手に入れるのが難しい高貴な女性だった」と説明しているのです。副詞「え」は下に打消・不可能の語を伴って「〜できない」を作る、と覚えましょう。

問4 答え:(女を)こっそりと連れ出して。
「盗む」は財物を盗む意味だけでなく、人目を忍んで連れ去る・駆け落ちのように連れ出す意味でも使います。ここは男が、長年思い続けた女をついに(親の許しを得ず)こっそり連れ出した場面です。「〜出づ」は「外へ出す」の意。

問5 答え:①「盗み出でて」の主語= / ④「え聞かざりけり」の主語=
①は、長年言い寄っていた男が、ついに女を連れ出した場面なので主語は男。④は、女の「あなや(あれっ・あっ)」という叫びを、雷の鳴る騒がしさのために男が聞き取れなかった、という意味です。「え〜ず(打消)」で「〜できない」という不可能を表します。

問6 答え:順接の確定条件(〜ので・〜たところ)
已然形+「ば」は順接の確定条件で、原因・理由(〜ので)や、偶然・きっかけ(〜したところ)を表します。「率て行きければ」は「連れて行ったところ/行ったので」。これに対し未然形+「ば」は仮定条件(もし〜ならば)になる点と区別しましょう。

問7 答え:露さえ見たことのない、深窓で大切に育てられた高貴な身分の女性であること。
草の上の露という、ありふれた自然のものを「あれは何?」と尋ねている点がポイント。屋外の露を知らないほど、外の世界から隔てられて育った姫君だと読み取れます。この「世間知らずなほどの高貴さ」が、のちの結末(取り返される女=身分の高い女)への伏線になっています。

問8 答え:「あれは何ですか」と、女が男に向かって言った。
「かれ」は遠くのもの(草の上の露)を指す指示語で「あれ」。「は何ぞ」は「は何であるか・何ですか」の意。直前に「となむ男に問ひける」とあり、問いかけたのは女、問われたのは男です。連れ出された女が露を指して尋ねた場面だと押さえましょう。

問9 答え:直前に係助詞「なむ」があるため、その結びとして文末が連体形「ける」になっている(係り結びの法則)。
「となむ男に問ひける」の「なむ」は強調の係助詞で、結びの語を連体形にします。だから「問ひけり(終止形)」ではなく「問ひける(連体形)」。係助詞「ぞ・なむ・や・か」は連体形結び、「こそ」は已然形結び、と整理して覚えましょう。

問10 答え:
「なむ」は〔強意(確述)の助動詞「ぬ」の未然形「な」+意志・願望の助動詞「む」〕。ここは「早く夜も明けてほしい/きっと明けてしまうだろう」と、男が夜明けを待ち望む気持ちを表します。
見分け方:「明け」(下二段動詞「明く」)のあとの「な」を強意(確述)の助動詞「ぬ」の未然形と取れば〔な+む〕(=ア・イのどちらか)。文脈が男の願望なので意志・願望のイが最適。エの係助詞「なむ」なら結びが連体形になるはずで、ここでは当てはまりません。
※補足:下二段動詞は未然形と連用形が同じ形(明け)なので、この「明けなむ」を〔未然形+終助詞「なむ」(あつらえの願望「〜してほしい」)〕と説明する教科書・参考書もあります。どちらで取っても「早く夜が明けてほしい」という大意は変わらず、この設問の選択肢の中ではイを選べば十分です。

問11 答え:実際には、無理に連れ出された高貴な女を、その身内(兄など身分の高い人々)が探し出して連れ戻したという出来事を、「鬼が一口で食べてしまった」と物語的に表現したもの。
この女は二条の后(藤原高子)がモデルとされ、その兄である堀河の大臣(藤原基経)らが、連れ去られた妹を取り返したと伝えられます。男の側から見れば、一夜のうちに女が突然いなくなってしまった——その不条理さ・あっけなさを「鬼一口」という怪異のたとえで描いているのです。「鬼」が本当の妖怪ではない点が最大のポイントです。

問12 答え:(女は)「あれっ」と言ったけれど、雷が鳴る騒がしさのために、(男は)聞くことができなかった。
「あなや」は驚いたときの叫び声で「ああっ・あれっ」。「え〜ず(ざり)」は「〜できない」の不可能。鬼に襲われた女の悲鳴が、雷の音にかき消されて男に届かなかった、という緊迫した場面です。

問13 答え:連れて来た女もいない。(男は)じだんだを踏んで泣くけれども、どうしようもない。
「率(ゐ)て来し」は「連れて来た」。「足ずりをす」は地団駄を踏んで悔しがるしぐさ。「かひなし」は「(泣いても)効き目がない・どうにもならない」。女を失った男の激しい嘆きが描かれています。

問14 答え:(あれは)白玉(真珠)でしょうか、何でしょうか、とあの人が尋ねたとき、「あれは露ですよ」と答えて、いっそ私も露のように消えてしまえばよかったのに。
「白玉か何ぞ」は女が露を見て尋ねたことばの引用。「人」はあの人=女を指します。「消えなまし」は「消えてしまえばよかったのに(実際は消えなかった)」という、かなわなかった願いです。

問15 答え:文法名=反実仮想
「なまし」は〔強意「ぬ」の未然形「な」+反実仮想の助動詞「まし」〕で、「(もし〜だったら)〜してしまえばよかったのに」と、事実に反する仮定とその後悔・願望を表します。和歌全体には、あのとき露と一緒に自分も消えていれば、女を失うこんなつらい思いをせずにすんだのに、という男の深い悲しみと後悔の心情がこめられています。

問16 答え:連れ去られた(鬼に食われたとされる)女
和歌の「人の問ひし時」は、本文前半で女が露を指して「かれは何ぞ(あれは何ですか)」と尋ねた場面に対応します。その「問うた人」=あの女です。生きていたあのとき、と過去を振り返ることで、今はもういない女への思いがいっそう強く表れます。

問17 答え:白玉(真珠)や露は、美しいがはかなく、すぐ消えてしまうもの。女をそれにたとえることで、美しくも短命に終わった女のはかなさと、一瞬で失った悲しみを重ねて表現する効果がある。
「露と答へて消え」と続けることで、露=消えるもの、というイメージが、女が消えてしまった結末と自然に結びつきます。美しさ・はかなさ・消滅を一語で連想させるのが「露」「白玉」の縁語的な働きです。

問18 答え:(1) からうじて=やっとのことで・かろうじて (2) あばらなる=荒れ果てた・あちこち壊れて隙間だらけの (3) やなぐひ=矢を入れて背負う道具(箙)
(1)「からうじて」は「辛うじて」で、苦労してようやく、の意。(2)「あばら」は屋根や壁が傷んで隙間だらけの荒れた状態。「あばらなる蔵」で荒れ果てた倉。(3)「やなぐひ(胡簶・箙)」は矢を差して携帯する武具で、「弓、やなぐひを負ひて」は弓矢で武装して見張る男の姿です。

問19 答え:女のモデルとされる二条の后(藤原高子)は、のちに天皇のきさきになる予定の高貴な女性だった。その女を身分の釣り合わない男が連れ出したため、兄たちが取り戻した――この「身分違いの恋が引き裂かれた」という現実を、直接書かずに「鬼に食われた」という怪異のたとえでぼかして表現したと考えられる。
当時、高貴な女性の結婚は家の都合で決まり、本人や恋人の自由にはなりませんでした。だから二条の后をめぐる悲恋は、そのまま書けば差し障りがある。そこで「鬼一口」という幻想的な言い方にしたのです。

問20 答え:あ= / い=在原業平(ありわらのなりひら) / う=平安
『伊勢物語』は、和歌を中心にして短い章段(段)を連ねた歌物語の代表作。主人公「昔、男」は在原業平がモデルとされ、平安時代前期に成立したとされます。同じ歌物語に『大和物語』『平中物語』があることもあわせて覚えておきましょう。

問21 答え:歌物語の例=『大和物語』(または『平中物語』) / 六人の歌人の総称=六歌仙
歌物語の代表作は『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』の三つ。在原業平は、紀貫之が『古今和歌集』仮名序で挙げた六人のすぐれた歌人「六歌仙」の一人です(他に小野小町・僧正遍昭・大友黒主・文屋康秀・喜撰法師)。「三十六歌仙」とは数も時代も違うので混同しないよう注意しましょう。

※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は古典原文(著作権の対象外)を用いています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました