助動詞「つ・ぬ」は、定期テストで必ずと言ってよいほど問われる重要な完了の助動詞です。基本の意味は完了「〜た・〜てしまった」ですが、推量の語(む・べし・らむ等)や「な〜そ」と結びつくと強意(確述)「きっと〜・必ず〜」になる点が最大のポイントです。活用は「つ」が「て・て・つ・つる・つれ・てよ」(下二段型)、「ぬ」が「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」(ナ変型)と、ともに連用形に接続します。「つ」は意図的・人為的な動作に、「ぬ」は自然に起こる動作に付きやすい傾向もおさえましょう。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
① 今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。(『竹取物語』)
② ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる(『千載和歌集』)
③ 月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。(『おくのほそ道』)
④ 名を聞くより、やがて面影は推し量らるる心地するを、見る時はまた、かねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ。(『徒然草』)
⑤ いとうつくしうてゐたり。(『竹取物語』)
⑥ 睦月の十日ばかりのほどに、ほかへ隠れにけり。(『伊勢物語』)
⑦ つひに行く道とはかねて聞きしかどきのふけふとは思はざりしを(『伊勢物語』)
⑧ 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる(『古今和歌集』)
⑨ あづま路の道のはてよりも、なほ奥つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむ。(『更級日記』)
⑩ ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。(『方丈記』)
⑪ おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。(『平家物語』)
⑫ 京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。(『伊勢物語』)
⑬ 烏のねどころへ行くとて、三つ四つ二つ三つなど、飛びいそぐさへあはれなり。(『枕草子』)
⑭ 男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。(『土佐日記』)
⑮ 散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世になにか久しかるべき(『伊勢物語』)
⑯ 今宵は十五夜なりけりと思し出でて、殿上の御遊び恋しく、所々ながめたまふらむかしと思ひやりたまふにつけても、月の顔のみまもられたまふ。(『源氏物語』)
設問
- 例文①の「取りつつ」の「つつ」は助動詞「つ」ではない。これは何という語(品詞)か、答えよ。
- 例文②「鳴きつる」の「つる」について、次の問いに答えよ。
- (1) 文法的に説明せよ(何の何形か)。
- (2) 直後の体言「方(かた)」を修飾していることから、活用形が決まる。その活用形を答えよ。
- 例文②「鳴きつる」の「つる」の意味は、完了か強意か。答えよ。
- 例文②「鳴きつる方をながむれば」を、「つる」の意味を明確にして現代語訳せよ。
- 例文④「思ひつる」の「つる」を文法的に説明し、その意味(完了・強意の別)を答えよ。
- 例文⑤「ゐたり」の「たり」は完了の助動詞「たり」である。これと同じく「すわっていた」という状態・完了を表す。例文⑤全体を現代語訳せよ。
- 例文⑥「隠れにけり」の「に」は、完了の助動詞「ぬ」の連用形である。次の問いに答えよ。
- (1) この「に」を文法的に説明せよ(何の何形か)。
- (2) 「隠れにけり」を現代語訳せよ。
- 例文⑦「聞きしかど」の「しか」は過去の助動詞「き」の已然形である(下に接続助詞「ど」が続くため)。この文には完了の助動詞は用いられていない。本文中で、完了の助動詞「つ」が用いられている例文の番号をすべて挙げよ。
- 例文⑧「秋来ぬと」の「ぬ」について、次の問いに答えよ。
- (1) この「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」か、打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」か。上の「来(き)」の活用形に注目して答えよ。
- (2) その活用形(終止形か連体形か)も答えよ。
- 例文⑧「見えねども」の「ね」と、「おどろかれぬる」の「ぬる」を比べる。次の問いに答えよ。
- (1) 「見えねども」の「ね」は、完了の助動詞「ぬ」の命令形「ね」か、打消の助動詞「ず」の已然形「ね」か。理由とともに答えよ。
- (2) 「おどろかれぬる」の「ぬる」を文法的に説明せよ(何の何形か)。
- 例文⑨「奥つかた」の「つ」は、完了の助動詞「つ」ではない。古い格助詞「つ」(「〜の」の意)である。では、完了の助動詞「つ」は、活用語のどの活用形に接続するか答えよ。
- 例文⑪「つひにはほろびぬ」の「ぬ」について、文法的に説明し(何の何形か)、「ほろびぬ」を現代語訳せよ。
- 例文⑫「見えぬ鳥」の「ぬ」は、完了の「ぬ」か、打消の「ず」の連体形「ぬ」か、いずれかを答え、その判断の理由(接続・意味)を述べよ。
- 完了の助動詞「ぬ」と打消の助動詞「ず」(連体形「ぬ」・已然形「ね」)は形が似ていて紛らわしい。両者を見分ける最大の手がかりを、「接続(上に来る活用形)」の面から一文で説明せよ。
- 「京には見えぬ鳥なれば」を現代語訳せよ。
- 完了の助動詞「ぬ」は、活用語のどの活用形に接続するか答えよ。
- 次の活用表の空欄に、助動詞「つ」の活用形を順に(未然・連用・終止・連体・已然・命令の順で)すべて書け。
- 次の活用表の空欄に、助動詞「ぬ」の活用形を順に(未然・連用・終止・連体・已然・命令の順で)すべて書け。
- 「花咲きなむ」という句がある。「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「む」は推量の助動詞である。このとき「なむ」は、完了ではなく別の意味になる。その意味を答え、「花咲きなむ」を現代語訳せよ。
- 助動詞「つ・ぬ」が、後ろに推量の助動詞「む・べし」などを伴って「てむ・なむ・つべし・ぬべし」の形になると、完了ではない別の意味(用法)になる。その意味(用法)を漢字二字(「強意」)で答えよ。
- 本文中で、完了の助動詞「ぬ」(強意を含む)が用いられている例文の番号をすべて挙げよ。
- 例文③「百代の過客にして」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形であり、完了の「ぬ」の連用形「に」とは異なる。両者を見分けるには直後の語に注目する。完了の「に」の直後によく来る語を一つ挙げよ(例文⑥を参考に)。
- 記述問題:助動詞「つ」と「ぬ」は、どちらも完了の意味を持つが、どのような動作に付きやすいかという「傾向」に違いがある。その違いを、「つ」「ぬ」それぞれについて一文ずつで説明せよ。
- 記述問題:助動詞「つ・ぬ」が「強意(確述)」の意味になるのは、どのような語と結びついたときか。具体的な語形を二つ挙げて説明せよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 答え:接続助詞(反復・継続の「つつ」)。解説:「つつ」は「〜しながら」「〜し続けて」という意味の接続助詞で、完了の助動詞「つ」とは別の語です。形が似ているのでひっかけに使われます。「取りつつ」は「(竹を)取り取りして/取り続けて」の意味になります。
問2 答え:(1) 完了の助動詞「つ」の連体形。(2) 連体形。解説:「つ」は「て・て・つ・つる・つれ・てよ」と活用します。「つる」は連体形で、すぐ後ろの体言「方(かた)」に続いている(修飾している)ので、活用形は連体形だと分かります。
問3 答え:完了。解説:「ほととぎすが鳴いた方角」という意味で、「鳴いてしまった・鳴いた」と動作が終わったことを表しているので完了です。後ろに推量の語が続いていないので強意ではありません。
問4 答え:(現代語訳)ほととぎすが鳴いた方角をながめると。解説:「つる」を完了「〜た」と訳して「鳴いた方角」とします。「ながむれば」は「ながめると」。
問5 答え:完了の助動詞「つ」の連体形。意味は完了。解説:「かねて思ひつるままの顔」で「前もって(心の中で)思っていたとおりの顔」の意味。後ろの体言「まま」に続くので連体形、推量の語がないので意味は完了です。
問6 答え:(現代語訳)たいそうかわいらしい様子ですわっていた。解説:「うつくしうて」は「かわいらしくて」、「ゐたり」は「すわっていた」。ここはかぐや姫が竹の中にすわっていた場面です。
問7 答え:(1) 完了の助動詞「ぬ」の連用形。(2)(現代語訳)よそへ隠れてしまった。解説:「ぬ」は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」と活用し、「に」は連用形です。直後に過去の助動詞「けり」が続いて「にけり」の形になっています。「隠れにけり」で「(すっかり)隠れてしまった」という完了の意味になります。
問8 答え:②・④。解説:完了の助動詞「つ」が使われているのは、②「鳴きつる」と④「思ひつる」です(①の「つつ」は接続助詞、⑨の「つ」は格助詞なので除きます)。
問9 答え:(1) 完了の助動詞「ぬ」(の終止形)。(2) 終止形。解説:すぐ上の「来」はカ変動詞「来(く)」の連用形「き」です。連用形に接続しているので完了の「ぬ」。下に「と」(引用)が続き言い切りの形なので終止形です。「秋来ぬと」は「秋が来たと」の意味になります。
問10 答え:(1) 打消の助動詞「ず」の已然形「ね」。理由:すぐ上の「見え」は「見ゆ」の未然形であり、未然形に接続しているので打消「ず」である。下に「ども」(逆接の接続助詞、已然形に付く)が続くので已然形。「見えねども」で「(目には)はっきり見えないけれど」の意味。(2) 完了の助動詞「ぬ」の連体形。解説:「おどろかれぬる」は、すぐ上の「おどろか+れ」が連用形なので完了の「ぬ」。文末を「ぞ」が結ぶ係り結びで連体形「ぬる」になっています(「ぞ…ぬる」)。「はっと気づいてしまった」の意味です。
問11 答え:連用形。解説:完了の助動詞「つ」は連用形に接続します(例:「行き+つ」など)。なお「奥つかた」の「つ」は古い格助詞で「奥の方」の意味であり、助動詞ではありません。
問12 答え:完了の助動詞「ぬ」の終止形。(現代語訳)ついには滅んでしまった。解説:すぐ上の「ほろび」は「ほろぶ」の連用形なので完了の「ぬ」。文がここで言い切られているので終止形です。「ぬ」は終止形と連体形(ぬる)を間違えやすいので注意しましょう。
問13 答え:打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」。理由:「ぬ」のすぐ上の「見え」は動詞「見ゆ」の未然形である。完了の「ぬ」は連用形に接続するが、打消の「ず」は未然形に接続する。「見え」は未然形なので、この「ぬ」は打消「ず」の連体形である。また意味も「都では見かけない鳥なので」と打消で文意が通り、完了では通らない。解説:「上が未然形なら打消、連用形なら完了」が決め手です。
問14 答え:完了の「ぬ」は連用形に接続し、打消の「ず」は未然形に接続する。つまり、すぐ上の語が連用形なら完了「ぬ」、未然形なら打消「ず」と見分けられる。解説:これが一番確実な決め手です。たとえば「死+ぬ」なら「死に(連用形)」だから完了、「死+ぬ(鳥)」のもとが「死な(未然形)」なら打消、というように、上の活用形を見ます。多くの受験生がつまずく超頻出ポイントです。
問15 答え:(現代語訳)都では見かけない鳥なので。解説:「見えぬ」は「見えない・見かけない」。「なれ」は断定「なり」の已然形、「ば」で「〜ので」と理由を表します。
問16 答え:連用形。解説:完了の助動詞「ぬ」も連用形に接続します(例:「散り+ぬ」など)。「つ」「ぬ」はどちらも連用形接続と覚えましょう。これに対し打消「ず」は未然形接続なので、ここで区別できます。
問17 答え:て・て・つ・つる・つれ・てよ。解説:「つ」は下二段型に活用します。順に、未然形「て」、連用形「て」、終止形「つ」、連体形「つる」、已然形「つれ」、命令形「てよ」です。
問18 答え:な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね。解説:「ぬ」はナ変型に活用します。順に、未然形「な」、連用形「に」、終止形「ぬ」、連体形「ぬる」、已然形「ぬれ」、命令形「ね」です。
問19 答え:意味は強意(確述)+推量で「きっと〜だろう」。(現代語訳)きっと花が咲くだろう。解説:「な(ぬの未然形)+む(推量)」のように、推量の語の直前に来た「な」は完了ではなく「きっと〜」という強意になります。「花咲きなむ」は「きっと花が咲くだろう」です。
問20 答え:強意(確述)。解説:「つ」「ぬ」は、後ろに推量の助動詞「む・べし・らむ」などが続くと、完了ではなく「きっと〜・必ず〜」という強意(確述)の意味になります。
問21 答え:⑥・⑧・⑪。解説:完了の助動詞「ぬ」が使われているのは、⑥「隠れにけり」(連用形「に」)、⑧「秋来ぬと」(終止形「ぬ」)・「おどろかれぬる」(連体形「ぬる」)、⑪「ほろびぬ」(終止形「ぬ」)です。⑦「思はざりし」の「ざり」は打消「ず」、⑧「見えねども」の「ね」、⑩「絶えずして」、⑫「見えぬ・見知らず」はいずれも打消「ず」なので含みません。
問22 答え:(過去の助動詞)「けり」(または「き」)。解説:完了の「に」の直後には過去の「けり・き」(〜にけり・〜にき)や接続助詞「て」(〜にて)が来やすいです(例文⑥「隠れにけり」)。一方、断定「なり」の連用形「に」の直後には「あり」「して」などが来ます。直後の語で見分けます。
問23 答え:「つ」は、人が意図的に行う(意志的・人為的な)動作に付きやすい。「ぬ」は、自然に・ひとりでに起こる動作に付きやすい。解説:例えば「(自分の意志で)書きつ」のように意図的な動作には「つ」、「(自然に)散りぬ」「明けぬ」のように自然現象には「ぬ」が付く傾向があります。
問24 答え:後ろに推量の助動詞(む・べし・らむ・じ等)が続いたときに強意になる。具体的な語形としては「てむ」「なむ」「つべし」「ぬべし」などがあり、「きっと〜だろう・必ず〜できるだろう」の意味になる。解説:「てむ・なむ・つべし・ぬべし」を見たら「強意+推量」と反応できるようにしておきましょう。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文の引用は古典作品(著作権の対象外)から正確に行っています。
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