助動詞「む(ん)・むず(んず)」は、定期テストでも入試でも最頻出の重要語です。意味は大きく 推量「〜だろう」・意志「〜しよう」・適当/勧誘「〜のがよい・〜しませんか」・仮定/婉曲「〜ような」 の四つ。見分け方の基本は 主語の人称 で、ふつう 一人称→意志、二人称→適当・勧誘、三人称→推量 と考えると当たりやすくなります。また文末の「む」は推量・意志・勧誘になりやすく、文中(連体形)で体言に続く「む」は婉曲・仮定になりやすい、という形からの手がかりも大切です。詳しい識別法は 古文「む」の識別を完全攻略 もあわせて確認しておきましょう。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
① 「いざ、かいもちひ せむ。」(『宇治拾遺物語』)
② 子になり 給ふ べき人な めり。(『竹取物語』)
③ いざ給へ、出雲拝みに。かいもちひ召さ せむ。(『徒然草』)
④ 散れ ばこそ いとど桜は めでたけれ 憂き世に何か久しかる べき。(『伊勢物語』)
⑤ あづまの方に住む べき 国求めにとて行きけり。(『伊勢物語』)
⑥ われこそ死な め。(オリジナル例文)
⑦ 心あら む 友もがな。(オリジナル例文)
⑧ 君や来 む 我や行か む。(オリジナル例文)
⑨ いざ、もろともに帰ら む。(オリジナル例文)
⑩ 花咲か む 春をぞ待ちわたる。(オリジナル例文)
⑪ 雨降ら むずれ ば、今日は出でじ。(オリジナル例文)
⑫ この事を申さ むずる なり。(オリジナル例文)
設問
- 例文①「かいもちひせむ」の「む」の意味として最も適当なものを選べ。
- ア 推量 イ 意志 ウ 婉曲 エ 仮定
- 例文①の「む」がその意味になる理由を、主語の人称に注目して一文で説明せよ。
- 例文①「かいもちひせむ」で、「む」の直前の「せ」は何という動詞の何形か。接続のきまりをふまえて答えよ。
- 例文②「なめり」の「めり」は、助動詞「む」ではない。この「めり」は何か。文法的に説明せよ。(ヒント:終止形やラ変型連体形に接続する推定・婉曲の助動詞である。)
- 例文③「召させむ」の「む」の意味として最も適当なものを選べ。これは話し手が相手を誘っている場面である。
- ア 推量 イ 意志 ウ 勧誘 エ 婉曲
- 例文⑥「われこそ死なめ」の「む」の意味として最も適当なものを選べ。
- ア 推量 イ 意志 ウ 適当 エ 仮定
- 例文⑥「死なめ」の「め」は「む」の活用形である。何形か答えよ。また、その活用形になっている理由を、文中の係助詞との関係から説明せよ。
- 例文⑥「死なめ」で、「め」の直前の「死な」は動詞「死ぬ」の何形か。接続のきまりをふまえて答えよ。
- 例文⑦「心あらむ友」の「む」の意味として最も適当なものを選べ。
- ア 推量 イ 意志 ウ 婉曲 エ 勧誘
- 例文⑦「心あらむ友」の「む」の活用形を答えよ。また、その活用形になる理由を、直後の語に注目して説明せよ。
- 例文⑧「君や来む、我や行かむ」の二つの「む」の意味を、それぞれ答えよ。主語の人称を手がかりにすること。
- 例文⑨「もろともに帰らむ」の「む」の意味を答え、現代語訳せよ。話し手が相手に呼びかけている場面である。
- 例文⑨「もろともに帰らむ」を、「む」の意味(勧誘)がはっきり伝わるように現代語訳せよ。
- 例文⑩「花咲かむ春」の「む」の意味として最も適当なものを選べ。
- ア 意志 イ 勧誘 ウ 婉曲 エ 推量
- 例文⑩「花咲かむ春」を、「む」の意味(婉曲)がはっきり伝わるように現代語訳せよ。
- 例文⑪「雨降らむずれば」の「むずれ」は助動詞「むず」の活用形である。何形か答えよ。また、そう判断できる理由を、直後の語に注目して説明せよ。
- 例文⑫「申さむずるなり」の「むずる」は助動詞「むず」の活用形である。何形か答えよ。
- 連体形の「む」が、例文⑦⑩のように下に体言(名詞)を伴うとき、推量・意志ではなく何の意味になりやすいか。漢字二字で二つ答えよ。
- 助動詞「む」はどの活用の型と同じ活用をするか。次から選べ。
- ア 四段型 イ 下二段型 ウ ラ変型 エ ナ変型
- 助動詞「む」の活用を、未然形から命令形まで順に書け。活用形のない箇所は「○」と記せ。
- 助動詞「む」「むず」は、活用語の何形に接続するか答えよ。
- 助動詞「むず」は、もともと別々の三つの語が結びついてできた語である。どのような語が縮まってできたものか、説明せよ。
- 前問をふまえ、「むず」がなぜ「む」とほぼ同じ意味(推量・意志など)を表すのか、その成り立ちから簡単に説明せよ。
- 「一人称が主語なら意志、二人称が主語なら適当・勧誘、三人称が主語なら推量」という見分け方について、なぜこの順で意味が決まりやすいのか、「自分の心の中」「相手への働きかけ」という言葉を使って説明せよ。
- 例文④「久しかるべき」、例文⑤「住むべき」の「べき」は、助動詞「む」ではない。何という助動詞の何形か答えよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 イ(意志)。「(私が)ぼたもちを作ろう」と、話し手が自分のこれからの行動を決めている場面なので意志です。
問2 この「む」の主語は話し手自身(一人称=私)であり、自分がこれからしようとする動作を表しているから、意志の意味になる。
問3 サ変動詞「す」の未然形「せ」。「む」は未然形接続なので、上のサ変動詞「す」は未然形「せ」になっています。
問4 推定(または婉曲)の助動詞「めり」。終止形(ラ変型には連体形)に接続し、「〜のように見える・〜ようだ」という意味を表す。助動詞「む」とは別の語である。
問5 ウ(勧誘)。「さあいらっしゃい、出雲を拝みに。ぼたもちを召し上がらせよう(=召し上がりませんか)」と、話し手が相手を誘っている場面なので、適当・勧誘(ここでは勧誘)です。
問6 イ(意志)。「われこそ死なめ」は「私こそ死のう(死んでしまおう)」と、話し手(一人称)の強い決意を表しているので意志です。
問7 已然形(いぜんけい)。直前に係助詞「こそ」があるため、係り結びの法則によって結びの語が已然形になり、「む」は已然形「め」になっている。
問8 未然形。「む」は未然形接続なので、ナ変動詞「死ぬ」はその未然形「死な」になっています。
問9 ウ(婉曲)。「心あらむ友」は「(もし)情趣を解するような友」の意味で、「友」という体言に続く連体形の「む」なので婉曲(〜ような)です。
問10 連体形。直後に「友」という体言(名詞)が続いており、体言に続く活用語は連体形になるため、「む」は連体形になっている。
問11 「君や来む」=推量(あなたが来るだろうか)。主語が二人称でも、ここは「来るだろうか」と相手の行動を推し量る言い方なので推量。「我や行かむ」=意志(私が行こうか)。主語が一人称(私)で自分の行動を表すので意志。※「〜や…む」は疑問の形で、どちらにしようかと迷う気持ちを表しています。
問12 勧誘。現代語訳「さあ、いっしょに帰りましょう。」相手に「いっしょに〜しよう」と呼びかける場面なので勧誘です。
問13 (例)「さあ、いっしょに帰りましょう。」相手を誘う勧誘(〜しましょう・〜しませんか)の意味が出ていればよい。
問14 ウ(婉曲)。「花咲かむ春」は「花が咲くような春」の意味で、「春」という体言に続く連体形の「む」なので婉曲です。
問15 (例)「花が咲くような春」。婉曲(〜ような)の意味が出ていればよい。
問16 已然形。直後に接続助詞「ば」があり、「〜ば」が「すでに〜なので・〜すると」の意味(已然形+ば)で続いているため、「むず」は已然形「むずれ」になっている。(「むず」はサ変型に活用し、已然形は「むずれ」。)
問17 連体形。直後に断定の助動詞「なり」が続いており、「なり」は連体形に接続するため、「むず」は連体形「むずる」になっている。(「むず」はサ変型に活用し、連体形は「むずる」。)
問18 婉曲・仮定。文中で体言に続く連体形の「む」は、推量・意志ではなく、婉曲(〜ような)や仮定(もし〜なら、その〜)の意味になりやすい。
問19 ア(四段型)。助動詞「む」は四段型の活用をします。
問20 (未然形)○・(連用形)○・(終止形)む・(連体形)む・(已然形)め・(命令形)○。「む」は終止形・連体形・已然形の三つだけに活用形があり、未然形・連用形・命令形はありません。
問21 未然形。助動詞「む」「むず」は、活用語の未然形に接続します。
問22 「むず」は、助動詞「む」+格助詞「と」+サ変動詞「す」が結びついた「むとす」が縮まってできた語である。すなわち「む+と+す」→「むず」。
問23 「むとす」は「〜(し)ようとする」という意味で、もともと推量・意志を表す「む」を含んでいる。それが縮まった「むず」も、その「む」の意味を受け継ぐため、「む」とほぼ同じく推量・意志などを表す。
問24 意志は「自分の心の中」で自分がこれからしようと思うことなので、主語が一人称(私)のときに合う。適当・勧誘は「相手への働きかけ」で、相手にこうしてはどうかと勧める言い方なので、主語が二人称(あなた)のときに合う。推量は自分でも相手でもない第三者やものごとを想像する言い方なので、主語が三人称のときに合う。だから人称によって意味が決まりやすい。
問25 助動詞「べし」の連体形「べき」。例文④は「久しかる」(形容詞のカリ活用連体形)に、例文⑤は「住む」(動詞の終止形)に続いており、いずれも推量・意志などを表す「べし」の連体形である。助動詞「む」ではない。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文の引用は古典作品(著作権の対象外)から正確に行っています。
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