助動詞「まじ」は、推量の「べし」の打消にあたる重要語で、定期テストでは「打消推量(〜ないだろう)・打消意志(〜まい)・不可能(〜できそうにない)・打消当然(〜べきでない)・禁止(〜してはならない)・不適当(〜ないほうがよい)」の6つの意味のうちどれかを問う問題が頻出します。あわせて、シク活用型の活用(まじく・まじく・まじ・まじき・まじけれ・○)と、終止形接続(ただしラ変型の語には連体形接続)も狙われます。「べし」と裏表の関係で覚えるのがコツです。仕組みをもう一度確認したい人は古文「まじ」の識別を完全攻略|打消推量・打消意志・不可能・打消当然・禁止・不適当の6用法もあわせて読んでください。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
① 約束は違ふまじきか。 (『平家物語』)
② よも生きてはあるまじ。 (例文)
③ 雨いたく降れば、え出づまじ。 (例文)
④ 子どもの前にて、さやうの事は言ふまじ。 (例文)
⑤ 武士たる者、敵に後ろを見すまじ。 (例文)
⑥ 羽なければ、空をも飛ぶまじ。 (例文)
⑦ 仰せ言はかしこし。されど、え参るまじ。 (例文)
⑧ ゆめゆめ人にもらすまじきぞ。 (例文)
⑨ まさなき事し出だしつべき人なれば、近づくまじ。 (例文)
⑩ 心知らざらん人には語るまじく候ふ。 (例文)
⑪ かばかりの事に、命をこそ失ふまじけれ。 (例文)
⑫ かかる事、世にあるまじ。 (例文)
⑬ あるまじき事を申しけり。 (例文)
⑭ これより内へは、人入るまじき所なり。 (例文)
設問
- 例文①の「まじき」の意味を、打消推量・打消意志・不可能・打消当然・禁止・不適当の中から一つ選んで答えよ。
- 例文①の「まじき」の活用形を答えよ。
- 例文①「約束は違ふまじきか」を現代語訳せよ。
- 例文②の「まじ」の意味を、6用法の中から一つ選んで答えよ。
- 例文②「よも生きてはあるまじ」を現代語訳せよ。
- 文頭の副詞「よも」が、下の「まじ」とどのように呼応しているかも一言で説明せよ。
- 例文③の「まじ」の意味を、6用法の中から一つ選んで答えよ。
- 例文③「え出づまじ」を現代語訳せよ。
- あわせて、副詞「え」がどんな語と呼応して、どんな意味を作っているかを説明せよ。
- 例文④の「まじ」の意味を、6用法の中から一つ選んで答えよ(口語訳「言わないほうがよい」をふまえること)。
- 例文⑤「敵に後ろを見すまじ」の「まじ」の意味を、6用法の中から一つ選んで答えよ。
- 例文⑥「羽なければ、空をも飛ぶまじ」を現代語訳せよ(不可能の意味で訳すこと)。
- 例文⑦「されど、え参るまじ」の「されど」の意味(現代語訳)を答えよ。
- 例文⑧の「まじき」の意味を、6用法の中から一つ選んで答えよ。
- 例文⑧「ゆめゆめ人にもらすまじきぞ」を現代語訳せよ。
- 例文⑨「まさなき事し出だしつべき人なれば、近づくまじ」の「まじ」を、打消意志の意味になるように現代語訳せよ。
- 例文⑩「語るまじく候ふ」の「まじく」は何活用形か。また、なぜその形になっているのか、下に続く語に注目して説明せよ。
- 例文⑪「命をこそ失ふまじけれ」の「まじけれ」は何活用形か。係り結びの観点もふまえて、この形になる理由を簡単に説明せよ。
- 助動詞「まじ」は、ある推量の助動詞の打消にあたる。その推量の助動詞を一つ答えよ。
- 「まじ」の活用を、未然形から命令形まで順に答えよ(活用のない形は「○」と記せ)。
- この活用は、形容詞のどの活用の型と同じか答えよ。
- 「まじ」は原則として動詞のどの活用形に接続するか答えよ。
- ただし、ラ変・ラ変型の語に付くときは何形に接続するか、あわせて答えよ。
- 例文⑫「かかる事、世にあるまじ」と例文⑬「あるまじき事」では、「あり」に「まじ」が付いている。なぜ「あり」の下の「まじ」は終止形ではなく連体形「ある+まじ」になっているのか、接続のきまりにふれて説明せよ。
- 例文⑭「人入るまじき所なり」の「まじき」と、例文③「え出づまじ」の「まじ」は、それぞれ何活用形か。二つとも答えよ。
- 「べし」と「まじ」の意味の対応関係について、推量の意味に注目して、両者がどのような関係にあるかを一文で説明せよ。
- 「まじ」の6つの意味のうち、「禁止」と「不適当」は意味が近いが、訳し方の違いを簡単に説明せよ。
- 本文の例文の中から「禁止」にあたるものを一つ、番号で挙げよ。
- 本文の例文の中から「不適当」にあたるものを一つ、番号で挙げよ。
- 打消意志・打消推量を表す助動詞には「まじ」のほかに「じ」がある。「じ」は動詞のどの活用形に接続するか答え、「まじ」の接続(問19)とどう違うかを一言で述べよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 打消意志。「(約束を)破るまい」と、話し手自身の意志を打ち消している。下に「か」があり、相手に意志を問う形になっている点もヒント。
問2 連体形。すぐ下に係助詞(疑問)の「か」が続いているため、「まじき」(連体形)になっている。
問3 「(あなたは)約束を破らないだろうね(破るまいね)。」と訳す。「違ふ(たがふ)」は「(約束に)背く・破る」の意。
問4 打消推量。「まさか生きてはいないだろう」と、ある事柄をおしはかって打ち消している。
問5 「まさか生きてはいないだろう。」 / 副詞「よも」は下に打消推量の「じ」「まじ」を伴って、「よも〜まじ(じ)」で「まさか〜ないだろう」という意味を作る。つまり「よも」は打消推量と呼応する。
問6 不可能。「(雨がひどいので)外出できそうにない」と、できないことを推量している。
問7 「外出できそうにない(出ることはできまい)。」 / 副詞「え」は下に打消の語(ここでは「まじ」)を伴い、「え〜まじ」で「〜できない・〜できそうにない」という不可能の意味を作る。
問8 不適当。「(子どもの前では)そういう事は言わないほうがよい」という、やわらかい禁止・忠告の意味。
問9 禁止。「武士たる者は、敵に背中を見せてはならない」と、強く禁止している。
問10 「羽がないので、空を飛ぶこともできない(飛べそうにない)。」 不可能の意味で訳す。
問11 「けれども・しかし」。逆接を表す接続語で、前の「仰せ言はかしこし(=ご命令はおそれ多い)」を受けて、「それでも参上できない」とつなぐ。
問12 禁止。「決して人に漏らしてはならない」と、相手の行為を強く禁止している。
問13 「決して人に漏らしてはならないぞ。」 「ゆめゆめ〜まじ」で「決して〜してはならない」という強い禁止を表す。
問14 「(その人は)よくないことをしでかしそうな人なので、(私は)近づくまい。」 「まじ」を打消意志「〜まい」で訳す。
問15 連用形。下に「候ふ(補助動詞・用言)」が続いているため、連用形「まじく」になっている。(連用形は下に用言・助動詞などが続くときに用いる。)
問16 已然形。文中の係助詞「こそ」を受けて、係り結びの法則により文末が已然形「まじけれ」で結ばれている。(已然形は、ほかに接続助詞「ば・ど・ども」が下に続くときにも現れる。)
問17 「べし」。「まじ」は推量の「べし」の打消にあたる助動詞である。
問18 まじく・まじく・まじ・まじき・まじけれ・○(命令形なし)。 / 形容詞の「シク活用」と同じ型。(このほかに補助活用「まじから・まじかり・○・まじかる・○・○」もある。)
問19 終止形。 / ただし、ラ変動詞(あり・をり・はべり・いますがり)やラ変型に活用する語(形容詞・形容動詞・一部の助動詞など)に付くときは、連体形に接続する。
問20 「あり」はラ変動詞なので、「まじ」は終止形ではなく連体形に接続する。そのため終止形「あり」ではなく連体形「ある」に付いて「あるまじ/あるまじき」となる。
問21 例文⑭「人入るまじき所」の「まじき」=連体形(下に体言「所」が続くため)、例文③「え出づまじ」の「まじ」=終止形(言い切りの形)。
問22 「べし」が推量(〜だろう)を表すのに対し、「まじ」はその打消、すなわち打消推量(〜ないだろう)を表す。両者は意味の上で「肯定(べし)」と「打消(まじ)」の表裏の関係にある。(意志・当然・適当などの他の用法も、それぞれ「べし=肯定/まじ=打消」で対応する。)
問23 「禁止」は「〜してはならない」と相手の行為を強く止める訳、「不適当」は「〜ないほうがよい」とやわらかく勧める訳になる。 / 禁止の例…例文⑤「敵に後ろを見すまじ=見せてはならない」や例文⑧「もらすまじき=漏らしてはならない」。 不適当の例…例文④「言ふまじ=言わないほうがよい」。
問24 「じ」は動詞の未然形に接続する。 / 「まじ」が終止形接続(ラ変型は連体形接続)なのに対し、「じ」は未然形接続である点が大きく異なる。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文の引用は古典作品(著作権の対象外)から正確に行っています。
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