漢文の「選択」は、二つのものを比べて一方を選ぶときの言い方です。代表は三つあります。一つ目は「与レ其A寧B(その A よりむしろ B せよ)」で、A を退けて B をすすめます。二つ目は「寧A不B(むしろ A しても B しない)」で、つらい A を選んででも B だけは避けるという強い意志を表します。三つ目は「A孰与B・A与B孰C(A は B とどちらが C か)」で、二つを並べて優劣・是非をたずねます。「孰(いづレゾ)」「寧(むしロ)」の読みと、送り仮名に注意しましょう。次の各例文について、後の問いに答えよ。
本文
※例文は学習用です。
(其の生きて義無からんよりは、固より烹らるるに如かず。)
(礼は、其の奢らんよりは、寧ろ倹せよ。)
(其の誉れ前に有らんよりは、孰れか其の後に毀り無きに若かん。)
(其の民を害せんよりは、寧ろ我独り死せん。)
(寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ。)
(寧ろ死すとも、降らず。)
(寧ろ常流に赴きて、江魚の腹中に葬らるとも。)
(吾と城北の徐公と孰れか美なる。)
(君臣を料るに、舜と孰れぞ。=臣は舜とどちらがまさるか。)
(公の廉将軍を視るは、秦王と孰れぞ。=廉将軍と秦王とではどちらか。)
(礼と食と孰れか重き。)
(人の我を刃せんよりは、寧ろ自ら刃せん。)
① 与レ其生而無レ義、固不レ如二烹一。
② 礼、与二其奢一也、寧倹。
③ 与二其有二誉於前一、孰若無二毀於其後一。
④ 与二其害二於民一、寧我独死。
⑤ 寧為二鶏口一、無レ為二牛後一。
⑥ 寧死、不レ降。
⑦ 寧赴二常流一、葬二於江魚之腹中一。
⑧ 吾孰与二城北徐公一美。
⑨ 君料二臣一孰与二舜一。
⑩ 公之視二廉将軍一、孰与二秦王一。
⑪ 礼与二食一孰重。
⑫ 与二人刃レ我、寧自刃。
設問
- ①「与レ其」の「与」の読みを、ひらがなで答えよ。
- ①の「固不レ如二烹一」を書き下し文に直せ。
- ②「寧」の読みを、ひらがなで答えよ。
- ②「与二其奢一也、寧倹」を書き下し文に直せ。
- ②「礼、与二其奢一也、寧倹」を現代語訳せよ。
- ③「孰若」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ④「与二其害二於民一、寧我独死」を現代語訳せよ。
- ⑤「無レ為」の「無」の読みを、ひらがなで答えよ。
- ⑤「寧為二鶏口一、無レ為二牛後一」を書き下し文に直せ。
- ⑤の「鶏口」「牛後」とは、それぞれどのような立場のたとえか。簡潔に説明せよ。
- ⑥「不レ降」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ⑥「寧死、不レ降」を現代語訳せよ。
- 「寧A不B」(⑥)が表す気持ちはどのようなものか。「たとえ〜ても」を用いて十五字程度で説明せよ。
- ⑦「寧赴二常流一、葬二於江魚之腹中一」を現代語訳せよ。
- ⑧「孰与」の読みを、ひらがなで答えよ。
- ⑧「吾孰与二城北徐公一美」を書き下し文に直せ。
- ⑧「吾孰与二城北徐公一美」を現代語訳せよ。
- ⑩「公之視二廉将軍一、孰与二秦王一」を、「どちらが」という意味がわかるように現代語訳せよ。
- ⑪「孰重」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ⑪「礼与二食一孰重」を現代語訳せよ。
- ⑫「与二人刃レ我、寧自刃」を書き下し文に直せ。
- 「与レ其A寧B」の句形が表す意味として最も適当なものを、次のア〜エから一つ選べ。
- ア AもBもどちらもせよ
- イ AよりむしろBせよ
- ウ AすればBできない
- エ AかBかをたずねる
- 「A孰与B」の句形が表す意味として最も適当なものを、次のア〜エから一つ選べ。
- ア AとBはどちらが〜か
- イ AよりむしろBせよ
- ウ Aを選んでもBは避ける
- エ AもBもしてはいけない
- ⑨「孰与二舜一」の「孰」、③「孰若」の「孰」の読みとして正しいものを、それぞれ次から選べ。
- ⑨(ア いづレゾ イ たれカ)
- ③(ア いづレカ イ なんゾ)
- 「与其A、孰若B」(③)と「与其A、寧B」(②)は、どちらも「AよりB」の意味になる。両者に共通する、A・Bどちらをすすめているかを答えよ。
- ⑤・⑥・⑦に共通して用いられている「寧」は、どのような気持ちを表す語か。一語で答えよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 より(「与レ其〜」で「〜よりは」と読む比較・選択の起点)。
問2 固より烹らるるに如かず。(「不レ如」は「〜に如かず」と読む比較の句形。)
問3 むしろ(「寧」は「むしろ〜せよ/むしろ〜しよう」と訓む)。
問4 其の奢らんよりは、寧ろ倹せよ。
問5 礼というものは、ぜいたくにするくらいなら、むしろ質素にするのがよい。
問6 いずれか〜にしかん(孰れか…に若かん。Bの方がよい、の意)。
問7 民に害を与えるくらいなら、むしろ私一人が死のう。(「与其A寧B」=AするよりむしろBしよう。)
問8 なかれ(「無レ為」=「為る無かれ」。禁止の意)。
問9 寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ。(「無レ為」は「為る無かれ」と禁止で読む。)
問10 「鶏口」=小さな集団でも、その長(かしら)となる立場。「牛後」=大きな集団の中の、下につき従うだけの立場。小さくとも頭でいよ、という教え。
問11 くだらず(「降」は降伏する意で「くだる」)。
問12 たとえ死んでも、降伏はしない。(「寧A不B」=むしろAしてもBしない。強い決意。)
問13 (例)たとえ死んでも屈しないという強い決意。(「たとえ〜ても」+B しないの形。)
問14 たとえ川の流れに身を投げて、川魚の腹の中に葬られることになっても(それでよい)。(「寧〜とも」で強い覚悟を表す。)
問15 いずれか(「A孰与B」で「AとBと孰れか…なる」と読む)。
問16 吾と城北の徐公と孰れか美なる。(「A孰与B+形容詞」は「AとBと孰れか…なる」と読む。)
問17 私と城北の徐公とでは、どちらが美男子か。
問18 あなたが廉将軍を見るのは、秦王と比べてどちらか(=廉将軍と秦王とでは、どちらがすぐれていると思うか)。
問19 いずれかおもき(「孰重」=孰れか重き)。
問20 礼と食とでは、どちらが大切か。
問21 人の我を刃せんよりは、寧ろ自ら刃せん。(「与其A寧B」=AよりむしろBしよう。)
問22 イ(AよりむしろBせよ)。
問23 ア(AとBはどちらが〜か)。
問24 ⑨「孰」=ア いづレゾ(「孰与」は「(舜)と孰れぞ」と読み、二者の優劣をたずねる)/③「孰」=ア いづレカ。
問25 どちらも、A(前の事がら)を退けて、B(後の事がら)をすすめている。すなわちBがよいとするのがこのときのABの判断である。
問26 むしろ(つらい方をあえて選んででも、という強い意志・覚悟を表す)。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。
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