助動詞「ごとし」は、「〜のようだ」と何かにたとえる比況と、「〜のような・たとえば〜のような」と具体例を挙げる例示の二つの意味を持ちます。接続は体言や連体形+格助詞「が」「の」、または動詞などの連体形に付き、活用はク活用型で「ごとく・ごとく・ごとし・ごとき・○・○」と変化します(已然形・命令形はありません)。「ごとくに」「ごとくなり」の形でも使われ、漢文訓読では「如・若」を「ごとし」と読むため頻出です。よく似た「やうなり」との使い分けも問われます。「やう・ごとし」の見分け方は古文「やう・ごとし」の識別を完全攻略でくわしく解説しています。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
※⑤〜⑯は学習用のオリジナル例文(擬古文)です。①〜④は古典作品からの引用です。
① 世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。(『方丈記』)
② おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。(『平家物語』)
③ たけき者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。(『平家物語』)
④ 水の流るるがごとく、月日はとどまることなし。
⑤ かの人の心、玉のごとく清らかなり。
⑥ 雪のごとき白き花、庭一面に咲きにけり。
⑦ その者の走ること、鳥の飛ぶがごとし。
⑧ 梅・桜・桃のごとき花、春に咲くものなり。
⑨ 光のごとくに速く、使ひ走りて行きけり。
⑩ 山のごとく高き波、舟に打ちかかれり。
⑪ 君の恩、海のごとく深し。
⑫ かの城の堅きこと、鉄のごとくなり。
⑬ 過ぎにし日のこと、夢のごとくにはかなし。
⑭ ことごとく焼け失せて、跡かたもなきがごとし。
⑮ 盛者必衰のことわりをあらはす。(『平家物語』)
⑯ この子の賢きこと、大人のごとくにものを言ふ。
設問
- 傍線部「かくのごとし」(例文①)の「ごとし」の意味として正しいものを、次から選べ。
- ア 比況(〜のようだ) イ 例示(たとえば〜のような)
- 例文①の「ごとし」の活用形(未然・連用・終止・連体のいずれか)を答えよ。
- 例文②「春の夜の夢のごとし」の「ごとし」の意味は、比況・例示のどちらか答えよ。
- 例文②「夢のごとし」の「ごとし」は、何という語に接続しているか。直前の一語を抜き出せ。
- 例文②「春の夜の夢のごとし」を現代語訳せよ。
- 例文③「風の前の塵に同じ」は「ごとし」を用いていないが、これと同じ「〜のようだ」という比況の意味を、「ごとし」を使って言いかえると「風の前の塵の( )」となる。空欄に入る「ごとし」の活用形を、終止形で答えよ。
- 例文④「水の流るるがごとく」の「ごとく」の活用形を答えよ。
- 例文④「水の流るるがごとく」では、「ごとく」は何(体言・連体形のどちらか)に「が」を介して接続しているか答えよ。
- 例文⑤「玉のごとく清らかなり」の「ごとく」は、比況・例示のどちらの意味か答えよ。
- 例文⑥「雪のごとき白き花」の「ごとき」の活用形を答えよ。
- 例文⑦「鳥の飛ぶがごとし」の「ごとし」は、直前の「飛ぶ」のどの活用形に接続しているか答えよ。
- 例文⑧「梅・桜・桃のごとき花」の「ごとき」の意味は、比況・例示のどちらか答えよ。
- 例文⑧「梅・桜・桃のごとき花」を、例示の意味がわかるように現代語訳せよ。
- 例文⑨で、「ごとく」は直前のどの語に付いているか。直前の一語を抜き出せ。
- 「ごとくに」「ごとくなり」は、「ごとし」のどの活用形に何が付いた形か。例文⑨「ごとくに」を例に、簡潔に説明せよ。
- 例文⑩「山のごとく高き波」について、次の問いに答えよ。
- (1) 「ごとく」の意味(比況・例示)を答えよ。
- (2) この一文を現代語訳せよ。
- 例文⑪「君の恩、海のごとく深し」を現代語訳せよ。
- 例文⑫「鉄のごとくなり」の「ごとく」の活用形を答えよ。
- 例文⑬「夢のごとくにはかなし」を現代語訳せよ。
- 助動詞「ごとし」はク活用型で活用する。次の活用表の空欄ア〜エに入る語を答えよ。
- 未然形( ア )/連用形( イ )/終止形( ウ )/連体形( エ )/已然形(○)/命令形(○)
- 次の各文の傍線部について、接続のしかたを後から選べ。
- (1) 例文⑤「玉のごとく」 (2) 例文⑭「なきがごとし」
- ア 体言に直接接続 イ 連体形+「が」に接続
- 比況の助動詞「ごとし」と「やうなり」について、文体のうえでの使われ方の違いを一つ、簡潔に説明せよ。
- 記述問題。助動詞「ごとし」の「比況」と「例示」の意味のちがいを、それぞれどんなときに使うかがわかるように、二〜三文で説明せよ。
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問1 ア(比況)。「かくのごとし(このようだ)」は、川の水のはかなさと同じだと人や住まいをたとえています。
問2 終止形。文の終わりにあり、言い切りの形「ごとし」になっています。
問3 比況。「春の夜の夢のようだ」と、おごる人のはかなさを夢にたとえています。
問4 夢(体言「夢」+「の」)。体言+格助詞「の」に接続しています。
問5 春の夜の夢のようだ(=春の夜に見る夢のように、はかない)。
問6 ごとし。「風の前の塵のごとし(風の前の塵のようだ)」と言いかえられます。終止形なので「ごとし」です。
問7 連用形。「ごとく」で、後ろの「とどまる(とどまることなし)」へ続いています。
問8 連体形。「流るる」は動詞「流る」の連体形で、連体形+「が」に接続しています。
問9 比況。「玉のように清らかだ」と、心を玉にたとえています。
問10 連体形。「ごとき」で、後ろの体言「白き花」を修飾しています。「ごとき+体言」は連体形です。
問11 連体形。「飛ぶ」は動詞「飛ぶ」の連体形で、これに「が」が付いて「ごとし」へ続いています。
問12 例示。「梅や桜や桃のような(春に咲く)花」と、具体例をいくつか挙げて示しています。具体例を並べているときは例示です。
問13 梅や桜や桃のような花。(「〜のような」と具体例を挙げる例示の訳にします。)
問14 光(体言「光」+「の」)。体言+「の」に付いています。
問15 (例)「ごとくに」は、連用形「ごとく」に助詞(または状態を表す「に」)が付いて、「〜のように」と下の動詞へ続ける言い方です。「ごとくなり」も連用形「ごとく」に「なり」が付いた形です。
問16 (1) 比況 (2) 山のように高い波。
問17 あなたの恩は、海のように深い。
問18 連用形。「ごとく」で、後ろの「なり」へ続いています。「ごとくなり」の「ごとく」は連用形です。
問19 夢のようにはかない(あっけない)。
問20 ア=ごとく/イ=ごとく/ウ=ごとし/エ=ごとき。ク活用型で「ごとく・ごとく・ごとし・ごとき・○・○」と変化します(已然形・命令形はありません)。
問21 (1) ア(体言「玉」に「の」を介して接続) (2) イ(連体形「なき」+「が」に接続)。「ごとし」は〈体言・連体形+が/の〉または〈連体形〉に付きます。
問22 (例)「ごとし」は漢文訓読体や和漢混交文(『平家物語』など)で多く使われ、「やうなり」は和文(仮名の文章)でよく使われる、という違いがあります。(意味はどちらも比況「〜のようだ」で共通します。)
問23 (例)比況は、あるものを別のものにたとえて「〜のようだ」と言うときに使います(例:夢のごとし=夢のようだ)。例示は、「梅・桜のごとき花」のように具体例をいくつか挙げて「たとえば〜のような」と示すときに使います。たとえているのか、例を挙げているのかで意味を見分けます。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文の引用は古典作品(著作権の対象外)から正確に行っています。
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