漢文の「仮定」は、まだ起きていない事柄を「もし〜ならば」と仮に設定して述べる言い方です。代表的な語に、順接の仮定を作る「如・若(もシ〜バ)」「苟(いやしクモ〜バ)」、逆接の仮定を作る「縦・縦令(たとヒ〜トモ=たとえ〜ても)」があります。さらに「使・令(仮に〜だったら)」、過去に反する仮定を表す「微(〜なかりせバ=もし〜がなかったら)」も重要です。順接(もし〜ば)と逆接(たとえ〜ても)の違いを意識しながら、読みと訳を確かめましょう。次の各例文について、後の問いに答えよ。
本文
※例文は学習用です。
① 如(も)シ我(われ)死(し)セバ、子(し)之(これ)ヲ継(つ)ゲ。/もし我死せば、子之を継げ。
② 若(も)シ雨(あめ)降(ふ)ラバ、行(ゆ)カず。/もし雨降らば、行かず。
③ 苟(いやしク)モ志(こころざし)有(あ)ラバ、事(こと)竟(つひ)ニ成(な)ル。/いやしくも志有らば、事竟に成る。
④ 苟(いやしク)モ過(あやま)チ無(な)カラバ、何(なに)ヲカ改(あらた)メン。/いやしくも過ち無からば、何をか改めん。
⑤ 縦(たと)ヒ千万人(せんまんにん)ト雖(いへど)モ、吾(われ)往(ゆ)カン。/たとひ千万人と雖も、吾往かん。
⑥ 縦(たと)ヒ彼(かれ)来(き)タルトモ、懼(おそ)ルル勿(なか)レ。/たとひ彼来たるとも、懼るる勿れ。
⑦ 縦令(たと)ヒ貧(まづ)シクトモ、学(まな)ビヲ廃(はい)セず。/たとひ貧しくとも、学びを廃せず。
⑧ 使(も)シ我(われ)富(と)マバ、必(かなら)ズ人(ひと)ヲ救(すく)ハン。/もし我富まば、必ず人を救はん。
⑨ 令(も)シ汝(なんぢ)知(し)ラバ、速(すみ)ヤカニ告(つ)ゲヨ。/もし汝知らば、速やかに告げよ。
⑩ 微二(な)カリセバ管仲一(くわんちゆう)、吾(われ)其(そ)レ髪(はつ)ヲ被(かうむ)ラン。/管仲微かりせば、吾其れ髪を被らん。
⑪ 如(も)シ機(き)ヲ失(うしな)ハバ、悔(く)イテモ及(およ)バず。/もし機を失はば、悔いても及ばず。
⑫ 苟(いやしク)モ信(まこと)有(あ)ラバ、遠(とほ)ク自(よ)リ人(ひと)来(き)タル。/いやしくも信有らば、遠くより人来たる。
設問
- ①の「如」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ①「如我死セバ」を書き下し文に改めよ。
- ②の「若」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ②「若雨降ラバ、行カず」を現代語訳せよ。
- ③「苟志有ラバ、事竟ニ成ル」を書き下し文に改めよ。
- ④「苟過チ無カラバ、何ヲカ改メン」を現代語訳せよ。
- ⑤「縦千万人ト雖モ、吾往カン」を書き下し文に改めよ。
- ⑥「縦彼来タルトモ、懼ルル勿レ」を現代語訳せよ。
- ⑦の「縦令」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ⑦「縦令貧シクトモ、学ビヲ廃セず」を現代語訳せよ。
- ⑧「使我富マバ、必ズ人ヲ救ハン」を現代語訳せよ。
- ⑩の「微」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ⑩「微カリセバ管仲」を書き下し文に改めよ。
- ⑩の「微カリセバ管仲」は、実際には管仲がいたうえで述べられている。このように「もし(実際にはあった)〜がなかったら」と、事実に反することを仮定する言い方を何というか。次から選べ。
- ア 順接の仮定
- イ 反実仮想(事実に反する仮定)
- ウ 単純な条件
- ⑪「如機ヲ失ハバ、悔イテモ及バず」を現代語訳せよ。
- 記述 「如・若」と「苟」は、どちらも「もし〜ば」と訳せる順接の仮定を作るが、「苟」には「かりにも・少しでも」という強調のニュアンスが加わることが多い。⑫「苟信有ラバ」を、この強調のニュアンスを生かして現代語訳せよ。
- ③④の「苟」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ⑤⑥の「縦」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ⑧の「使」、⑨の「令」は、ここではどのような意味の語として用いられているか。次から選べ。
- ア 〜させる(使役)
- イ もし〜ならば(仮定)
- ウ 〜してはならない(禁止)
- ①③のような「如・若・苟(もし〜ば/いやしくも〜ば)」が表す仮定と、⑤⑥のような「縦(たとひ〜とも)」が表す仮定とでは、前後のつながり方がどう違うか。「順接」「逆接」の語を用いて説明せよ。
- 次の各文は、順接の仮定(もし〜ば)と逆接の仮定(たとえ〜ても)のどちらか。それぞれ記号で答えよ。
- (1) 如シ晴レバ、出デン。
- (2) 縦ヒ敗ルトモ、悔イず。
- (3) 苟モ努メバ、達セン。
- 記述 漢文で「仮定」を表す語には、訓読のうえで共通する特徴がある。①〜⑨の書き下し文を参考に、仮定の条件を示す部分の末尾がどのような形(送り仮名)になっているか、一語で答えよ。
▼ 解答・解説を見る
問1 もし(〜ば)。「如」は「もシ」と読み、「如〜セバ」で「もし〜ならば」と順接の仮定を表す。
問2 もし我死せば、子之を継げ。(もし私が死んだら、おまえがこれを継げ。)
問3 もし(〜ば)。「若」も「もシ」と読み、「如」と同じく順接の仮定を作る。
問4 もし雨が降ったら、行かない。
問5 いやしくも志有らば、事竟に成る。(少しでも志があるならば、物事は最後には成就する。)
問6 もし(少しでも)過ちがなければ、何を改めようか(いや、改めるものはない)。
問7 たとひ千万人と雖も、吾往かん。(たとえ相手が千万人であっても、私は進んで行こう。)
問8 たとえ彼が来ても、恐れてはならない。
問9 たとひ(〜とも)。「縦令」も二字で「たとヒ」と読み、「縦」と同じく逆接の仮定を作る。
問10 たとえ貧しくても、学問をやめない。
問11 もし私が(金持ちに)なったら、必ず人を救おう。
問12 なかりせば。「微〜」は「〜なかりせバ」と読み、「もし〜がなかったら」と事実に反する仮定(反実仮想)を表す。
問13 管仲微かりせば。(もし管仲がいなかったら。)※「微」を先に訓読しても、訳のうえでは「管仲がいなかったら」となる。
問14 イ(反実仮想=事実に反する仮定)。実際には管仲がいたのに「もし管仲がいなかったら」と仮定しているので、反実仮想にあたる。
問15 もし好機を逃したら、悔やんでも取り返しがつかない。
問16 かりにも誠実さ(信義)がありさえすれば、(遠くからでも人がやって来る)。※「苟」の「少しでも・かりにも」という強調を生かして訳す。
問17 いやしくも(〜ば)。「苟」は「いやしクモ」と読み、「かりにも・少しでも〜ならば」という順接の仮定を表す。
問18 たとひ(〜とも)。「縦」は「たとヒ」と読み、「縦〜トモ」で「たとえ〜ても」と逆接の仮定を表す。
問19 イ(もし〜ならば=仮定)。「使・令」は使役「〜させる」のほか、文脈により「もし〜だったら」という仮定の意でも用いられる。⑧⑨はいずれも仮定。
問20 「如・若・苟(もし〜ば/いやしくも〜ば)」は、条件が成り立てばそのまま順当な結果が続く順接の仮定である。これに対し「縦(たとひ〜とも)」は、条件が成り立っても予想に反する結果になる、または条件をしりぞけて結論を述べる逆接の仮定である。前者は「〜ば(〜ならば)」、後者は「〜とも(〜ても)」で結ぶ点が異なる。
問21 (1)順接の仮定(もし〜ば) (2)逆接の仮定(たとえ〜ても) (3)順接の仮定(もし〜ば)
問22 ば(未然形+「ば」の形)。仮定の条件を示す部分は、訓読のうえで動詞・形容詞などを未然形にして「〜ば」(逆接の場合は「〜とも」)で結ぶ。問の指示どおり一語で答えるなら「ば」。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。
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