漢文を読むうえで、文と文の「つながり方」をつかむカギになるのが仮定(かてい)・条件の句法です。日本語の「もし〜ならば」「たとえ〜でも」「〜すると」にあたる表現で、これを正しく読み取れないと、話の筋がねじれてしまいます。共通テストや定期テストでも、書き下し文・現代語訳の両方でよく問われます。
大きく分けると、①仮定条件(もし〜ならば)/②逆接の仮定(たとえ〜でも)/③確定条件(〜ので・〜すると)の3つです。①②には目印の字があり、③は目印がなく前後で判断します。まずは下の図解で全体像をつかみましょう。

仮定条件――「もし〜ならば」
「まだ起きていないことを仮に想定する」のが仮定条件です。目印になるのは次の字です。
- 如・若(も)し 〜(ば)、(則)… … もし〜ならば、…
- 苟(いやしく)も 〜ば … もしも〜なら(かりにも〜なら)
「如・若」を「もし」と読み、文の後半に「則(すなは)ち」が呼応することが多いのが特徴です。書き下すときは、上の動詞を未然形にして「〜ば(〜ずんば)」と仮定の形にします。

例文1:如不学、則無以成。
→(書き下し)如(も)し学ばずんば、則ち以て成す無し。
→(現代語訳)もし学ばなければ、何ごとも成しとげられない。
例文2:苟富貴、無相忘。
→(書き下し)苟(いやしく)も富貴ならば、相忘るる無かれ。
→(現代語訳)もし(私が)金持ちや身分の高い者になっても、おたがいに忘れないようにしよう。
逆接の仮定――「たとえ〜でも」
「たとえ〜だとしても」と、予想に反する内容をつなぐのが逆接の仮定です。目印は「雖」です。
- 〜と雖(いへど)も … たとえ〜でも/〜とはいえ
「雖」は下から上に返って「〜と雖も」と読みます。前で述べた条件を、後ろでくつがえす(逆接)のがポイントです。

例文1:雖千万人、吾往矣。
→(書き下し)千万人と雖も、吾往かん。
→(現代語訳)たとえ千万人が(反対して)立ちはだかろうとも、私は(信じる道を)進んで行こう。(『孟子』の有名な一節)
例文2:雖有智慧、不如乗勢。
→(書き下し)智慧有りと雖も、勢ひに乗ずるに如かず。
→(現代語訳)たとえ知恵があっても、勢いに乗るのにはかなわない。
例文3(縦=たとひ):縦江東父兄憐而王我、我何面目見之。
→(書き下し)縦(たと)ひ江東の父兄憐れみて我を王とすとも、我何の面目ありてか之に見えん。
→(現代語訳)たとえ故郷の人々が同情して私を王にしてくれても、どんな顔をして彼らに会えようか。(項羽の言葉。「縦ひ〜とも」も逆接の仮定です)
確定条件――「〜ので・〜すると」(目印なし)
確定条件は、すでに事実として成り立っていることを理由・きっかけとしてつなぐ言い方です。「もし」のような目印の字がないことが多く、前後の内容と送りがなで判断します。
- 〜ば(已然形+ば)、則ち… … 〜ので…/〜すると…(順接確定)
仮定条件が「未然形+ば(まだ起きていない=もし〜ならば)」なのに対し、確定条件は「已然形+ば(すでにそうである=〜ので・〜すると)」になります。送りがなの違いで、仮定か確定かが決まる点に注意しましょう。後半に「則ち」が呼応することが多いのは、仮定・確定に共通します。

例文1:水至清則無魚。
→(書き下し)水至りて清ければ則ち魚無し。
→(現代語訳)水があまりに澄みきっていると、(かえって)魚はすまない。(厳しすぎると人が集まらないことのたとえ。「清ければ」が已然形=確定条件)
例文2:歳寒、然後知松柏之後彫也。
→(書き下し)歳寒くして、然る後に松柏(しょうはく)の彫(しぼ)むに後(おく)るるを知るなり。
→(現代語訳)寒い季節になって、はじめて松や柏(かしわ)が他の木より遅れて散る(=強い)ことが分かる。(『論語』。「歳寒くして」=確定条件で、苦境でこそ真価が分かる、という教えです)
もう一歩くわしく――そのほかの仮定の表現
如・若・苟・雖のほかにも、仮定を表す字があります。読みが問われやすいので、あわせて覚えておきましょう。
- 縦(たと)ひ・縦令(たと)ひ:「たとえ〜でも」(逆接の仮定)。雖と同じはたらきをします。
- 使(も)し:「もし〜ならば」(順接の仮定)。如・若と同じはたらきです。
- 微(な)かりせば:「もし〜がなかったら」(事実に反する仮定=反実仮想)。
- 自(よ)り〜非(あら)ずんば:「〜でなければ」という仮定の言い方。
例文(反実仮想):微管仲、吾其被髪左衽矣。
→(書き下し)管仲微(な)かりせば、吾其れ髪を被(こうむ)り左衽(さじん)せん。
→(現代語訳)もし(名臣の)管仲がいなかったら、我々は今ごろ髪をふり乱し、異民族のような服装をしていただろう。「微〜」は「もし〜がなかったら」と、事実に反する仮定を表します。
このように、仮定には「もし〜ならば(実際にありうる)」と「もし〜だったら(事実に反する)」の二種類があります。どちらも「もし」で訳せますが、後者は実際にはそうでなかったという含みがある点をおさえておくと、訳がより正確になります。
目印と意味(まとめ表)
| 条件 | 目印の字 | 訳 |
|---|---|---|
| 順接仮定 | 如・若・苟 | もし〜ば(ならば) |
| 逆接(仮定) | 雖 | 〜といへども(たとえ〜でも) |
| 順接確定 | (文脈) | 〜ので・〜すると |
例文で確認
- 如不学 → 如し学ばずんば (もし学ばなければ)=仮定
- 雖千万人吾往矣 → 千万人と雖も吾往かん (たとえ大勢でも私は行く)=逆接の仮定
- 水至清則無魚 → 水至りて清ければ則ち魚無し (澄みすぎると魚がいない)=確定条件
つまずきやすいポイント・入試での問われ方
- 仮定の「ば」と確定の「ば」を送りがなで見分ける。 未然形+ば=仮定(もし〜なら)、已然形+ば=確定(〜ので・〜すると)。書き下しの活用形が決め手です。
- 「雖」は返って読む。 「〜と雖も」と下から上に返り、「たとえ〜でも」と逆接でつなぎます。
- 「則」は目印になる。 後半に「則ち」があれば、前半が(仮定または確定の)条件節だと気づけます。
- 「苟」は「いやしくも」と読む。 読みが問われやすい字です。「かりにも・もしも」の意味でおさえましょう。
入試では「傍線部を書き下し文にせよ」「現代語訳せよ」のほか、「この『ば』は仮定か確定か」を直接問う設問もあります。目印の字(如・若・苟・雖)を探す → なければ送りがな(未然形か已然形か)で仮定・確定を判断する、という順で処理しましょう。
覚え方のポイント
- 如・若・苟=仮定「もし〜ならば」(未然形+ば)。
- 雖=逆接の仮定「たとえ〜でも」(返って「〜と雖も」)。
- 目印なし+已然形+ば=確定条件「〜ので・〜すると」。後半の「則ち」も手がかり。
仮定・条件は、「目印の字があるか」「送りがなが未然形か已然形か」の2点で判断できます。例文を声に出して読み、「もし〜ば」「〜と雖も」「〜ければ則ち」のリズムを体に入れてしまいましょう。
ミニ練習問題(解答つき)
次の各文が仮定・逆接の仮定・確定条件のどれかを答え、現代語訳してみましょう。
- 若有過、則改之。
- 雖有嘉肴、弗食不知其旨也。
- 春暖、則花開。
- 苟非吾之所有、雖一毫而莫取。
解答:
1 仮定。「若し過ち有らば、則ち之を改む」=もし過ちがあれば、それを改める。
2 逆接の仮定。「嘉肴有りと雖も、食らはずんば其の旨きを知らざるなり」=たとえおいしい料理があっても、食べなければそのうまさは分からない。
3 確定条件。「春暖かなれば、則ち花開く」=春が暖かくなると、花が咲く。(已然形+ば)
4 仮定+逆接の仮定。「苟くも吾の有する所に非ざれば、一毫と雖も取る莫し」=もし自分のものでなければ、たとえ毛一本ほどのわずかなものでも取らない。(蘇軾『赤壁賦』)
よくある質問
Q1:仮定か確定か、すばやく見分けるコツはありますか?
A:まず「如・若・苟・雖」があるかを見ます。あれば仮定(雖は逆接の仮定)。なければ、書き下しの「ば」の上が未然形か已然形かを確認します。未然形+ば=仮定、已然形+ば=確定です。古文の文法(未然形・已然形)の知識がそのまま役立ちます。
Q2:「雖」はいつも「たとえ〜でも」と訳すのですか?
A:基本は逆接で「たとえ〜でも・〜とはいえ」です。すでに事実であることを受けて「〜だけれども」と訳す場合もありますが、いずれも「前後が食いちがう(逆接)」点は共通です。前の内容と後ろの内容が逆向きになっていれば、「雖」の訳は逆接でほぼ間違いありません。
Q3:「則」は必ず仮定・条件の文に出てきますか?
A:いつも出るわけではありませんが、「則ち」があれば、その前が条件節(〜ならば/〜ので)であることが多いです。「則」を見たら「前に条件が来ているな」と当たりをつけると、文の構造がつかみやすくなります。
Q4:「ば」の上が未然形か已然形か、自信がありません。
A:古文の文法と同じ考え方です。たとえば四段動詞「学ぶ」なら、未然形は「学ば」、已然形は「学べ」。「学ばば」なら仮定(もし学ぶなら)、「学べば」なら確定(学ぶので・学ぶと)です。形容詞なら「清からば(仮定)」「清ければ(確定)」。活用表を思い出しながら、上の語の形を確認しましょう。漢文の仮定・確定は、古文の活用が分かっていれば必ず見分けられます。
仮定・条件は、否定や使役・受身などほかの句法と組み合わさって出ることもよくあります。まずは目印の字(如・若・苟・雖)と、送りがなによる仮定・確定の見分けを身につけましょう。とくに「未然形+ば=仮定/已然形+ば=確定」の区別は、漢文だけでなく古文の読解にも直結する大切なルールです。あわせて、逆接の仮定「雖(〜と雖も)」と、反実仮想「微(なかりせば)」は読みも意味も問われやすいので、必ず押さえておきましょう。本記事の例文を音読し、書き下せるようにしたうえで、下の100問ドリルで一気に定着させてください。くり返し解くうちに、目印を見たしゅんかんに仮定か確定かが判断できるようになります。
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