「江は碧にして鳥は逾よ白く」――川の深いみどり、鳥の白、山の青、燃えるような花の赤。あざやかな春の色彩から始まり、最後は「いつになったら故郷に帰れる年が来るのか」という嘆きで結ばれるのが、杜甫(とほ)の『絶句(江碧にして鳥逾よ白く)』です。色の対比の美しさと望郷の思いで知られる五言絶句の代表作で、定期テストでは「五言絶句という形式」「押韻」「起句・承句の対句」「欲然(燃えんと欲す)の句法」「何れの日か是れ帰年ならん、の疑問」まで細かく問われます。この記事では、テストで本当に出るポイントだけにしぼって、二十問以上の対策問題と、ていねいな解答・解説をのせました。まず自分で解き、答え合わせをしながら弱点をつぶしていきましょう。
解き始める前に、漢詩そのものの基本ルール(絶句と律詩のちがい、押韻や対句のきまり)があやしい人は、先にこちらで確認しておくと理解がぐっと深まります。 → 漢詩のきまり(絶句・律詩)のやさしい解説
本文
絶句 杜甫
〔白文〕
〔書き下し文〕
江碧にして鳥①逾よ白く
山青くして花②然えんと欲す
今春③看又過ぐ
何れの日か是れ④帰年ならん
※読みの確認:江(こう)/碧(みどり)/逾よ(いよいよ)/然えんと欲す(もえんとほっす)/看(みすみす)/又(また)/何れの日(いづれのひ)/是れ(これ)/帰年(きねん)。「然」は「燃」と同じ意味で使われています。
設問
次の各問いに答えなさい。傍線部①〜④は本文中の位置を示しています。
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この詩の形式を、漢字四字で答えなさい。
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この詩の形式について、次の問いに答えなさい。
- 一句が何字で構成されているか、漢数字で答えなさい。
- 全部で何句から成るか、漢数字で答えなさい。
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この詩で押韻している漢字を、本文中からすべて抜き出しなさい。
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近体詩で、五言絶句が押韻する位置の原則を、簡潔に説明しなさい。
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第一句「江碧鳥逾白」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
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傍線部①「逾」について、次の問いに答えなさい。
- 読みを、送り仮名を含めて現代仮名遣いのひらがなで答えなさい。
- 意味として最も適切なものを次から一つ選びなさい。(ア 〜を飛びこえて イ ますます・いっそう ウ はるか遠くに エ かえって・逆に)
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「江」とあるが、この詩がよまれたとき杜甫が住んでいた町はどこか。最も適切なものを次から一つ選びなさい。
- ア 都の長安 イ 黄河ぞいの洛陽 ウ 蜀の成都 エ 江南の蘇州
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第二句「山青花欲然」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
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傍線部②「欲然」の「然」について、次の問いに答えなさい。
- 「然」とここで同じ意味を表す漢字一字を答えなさい。
- 「花が然えんとす」とはどのような情景をたとえた表現か、簡潔に説明しなさい。
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「欲然」の「欲」は「〜んと欲す」と読む。ここでの意味として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 〜したいと願っている イ 今にも〜しそうだ ウ 〜しなければならない エ 〜させようとする
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第一句と第二句に用いられている表現技法を何というか。漢字二字で答えなさい。また、第一句のどの語が第二句のどの語と対応しているか、一組挙げなさい。
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第一句・第二句では、色彩の対比があざやかである。詠みこまれている(または連想される)色を、四つ挙げなさい。
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第三句「今春看又過」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
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傍線部③「看」について、次の問いに答えなさい。
- 読みを現代仮名遣いのひらがなで答えなさい。
- 意味として最も適切なものを次から一つ選びなさい。(ア 大切に見守るうちに イ 見ているうちに、なすすべもなく ウ 病人を看病しながら エ よそ見をしているすきに)
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第三句の「又」の一字には、作者のどのような思いがこめられているか。説明しなさい。
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第四句「何日是帰年」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
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傍線部④「帰年」の意味として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 故郷へ帰ることのできる年 イ 故郷へ帰り着いた年 ウ 新しい年のはじめ エ 人生の晩年
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「何日是帰年」に用いられている句法として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 使役 イ 受身 ウ 疑問(詠嘆をふくむ) エ 比較
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この詩の前半二句と後半二句では、詠まれている内容が大きく変わる。それぞれ何を詠んでいるか、簡潔に説明しなさい。
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この詩全体の主題(作者が表現しようとしたこと)として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 春の行楽のたのしさ
- イ 美しい春景色とは裏腹の、故郷に帰れない嘆きと望郷の思い
- ウ 戦地に向かう友人との別れのつらさ
- エ 年老いていく身の上をなげく気持ち
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この詩がよまれたころの杜甫の境遇として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 科挙に合格し、都で高い位についていた
- イ 安史の乱の戦乱を避けて、故郷を遠く離れた成都に身を寄せていた
- ウ 皇帝のお供で各地を旅していた
- エ 故郷に帰り、静かな隠居生活を送っていた
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作者の杜甫について、次の問いに答えなさい。
- 杜甫が活躍したのは、唐のどの時期か。最も適切なものを次から選びなさい。(ア 初唐 イ 盛唐 ウ 中唐 エ 晩唐)
- 杜甫はその詩風から「詩◯」と呼ばれた。◯に入る漢字一字を答えなさい。
- 杜甫とともに「李杜」と並び称された詩人は誰か、答えなさい。
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杜甫の作品を、次から一つ選びなさい。
- ア 『春暁』(春眠暁を覚えず) イ 『春望』(国破れて山河在り) ウ 『静夜思』(牀前月光を看る) エ 『涼州詞』(葡萄の美酒夜光の杯)
▼ 解答・解説を見る(まず自分で解いてから)
問1 五言絶句(ごごんぜっく)
〈解説〉一句が五字、全体が四句なので「五言絶句」。詩題の『絶句』は「形式の名をそのまま題にした」もので、特定の題をつけない作品によく見られる。
問2
・一句の字数 … 五(字)
・句数 … 四(句)
〈解説〉「五言」は一句が五字であること、「絶句」は四句から成ることを表す。
問3 然・年
〈解説〉「ゼン(然)」「ネン(年)」と、響きの似た音(-en の韻)でそろえてある。第一句末の「白」は押韻していない(五言詩は第一句末で韻を踏まないのが原則)。
問4 (例)偶数句の末字で押韻する。
〈解説〉五言詩では原則として偶数句末(この詩では第二句「然」・第四句「年」)で韻を踏む。七言詩は第一句末+偶数句末が原則、というちがいまでセットで覚える。
問5
・書き下し … 江碧にして鳥逾よ白く
・現代語訳 …(例)川は深いみどりで、(そのみどりを背景に)水鳥の白さはますますあざやかに見え。
〈解説〉返り点はなく上から順に読む。「碧」という濃い色を背景に置くことで、鳥の「白」がいっそう引き立つという色彩の対比を述べた句。
問6
・読み … いよいよ
・意味 … イ(ますます・いっそう)
〈解説〉「逾」は「愈」と同じで「いよいよ=ますます」と読む副詞。川のみどりが濃いからこそ、鳥の白さが「ますます」白く見える、という関係をおさえる。
問7 ウ(蜀の成都)
〈解説〉この詩は、杜甫が戦乱を避けて蜀(しょく)の成都(せいと)に住んでいたころの作。「江」は成都を流れる錦江(きんこう)を指すとされる。
問8
・書き下し … 山青くして花然えんと欲す
・現代語訳 …(例)山は青々として、(その青を背景に)花は今にも燃え出しそうなほど赤くあざやかである。
〈解説〉「欲レ然」とレ点が付き、「然えんと→欲す」と下から返って読む。第一句と対になる、色彩の対比の句。
問9
・漢字 … 燃
・情景 … (例)山の青さを背景に、花の赤い色が燃える炎のようにあざやかに咲いている情景。
〈解説〉「然」はここでは「燃」と同じ(もとは「然」が「もえる」の意味の字で、のちに火へんを付けた「燃」が作られた)。花の赤を炎にたとえている。
問10 イ(今にも〜しそうだ)
〈解説〉「欲」は人が主語なら「〜したい(願望)」だが、ここは花が主語なので「今にも〜しそうだ」という状態を表す。「まさに〜んとす(将・且)」に近い用法で、テスト頻出のひっかけポイント。
問11 対句(ついく)
対応の例 … 「江」と「山」(ほかに「碧」と「青」、「鳥」と「花」、「逾白」と「欲然」)
〈解説〉第一句と第二句は、語の組み立てが「江碧/鳥逾白」「山青/花欲然」とそろう対句。律詩でなくても対句は用いられる。一組答えればよい。
問12 碧(みどり)・白・青・紅(赤)
〈解説〉川のみどり、鳥の白、山の青、花の赤(燃えるような色)。四つの色を二句に詰めこんだ、絵画のようにあざやかな表現である。
問13
・書き下し … 今春看又過ぐ
・現代語訳 …(例)今年の春も、見ているうちに、またむなしく過ぎてゆく。
〈解説〉返り点はなく上から順に読む。美しい春をながめながら、それをただ見送るしかない作者の姿が浮かぶ転句。
問14
・読み … みすみす
・意味 … イ(見ているうちに、なすすべもなく)
〈解説〉「看」は「みすみす」と読み、「目の前で見ていながら、どうにもできないまま」の意。読み問題として最頻出の一字。
問15 (例)去年もおととしも故郷に帰れないまま春を見送り、今年「もまた」同じように春が過ぎてゆく、という、長い流浪の暮らしへの嘆きの思い。
〈解説〉「又」は「今年も繰り返された」ことを示す。一字で「帰れない年月の積み重なり」を表す、この詩の感情の要となる字。
問16
・書き下し … 何れの日か是れ帰年ならん
・現代語訳 …(例)いったいいつの日が、故郷へ帰れる年となるのだろうか。
〈解説〉「何れの日か」と問いかける疑問の句。返り点はなく上から順に読む。望郷の思いが直接あふれ出た結句である。
問17 ア(故郷へ帰ることのできる年)
〈解説〉「帰年」は「(故郷に)帰る年」。まだ帰れていないからこそ「何れの日か(いつになったら)」と問うている。イの「帰り着いた年」では文意が通らない。
問18 ウ(疑問〈詠嘆をふくむ〉)
〈解説〉「何(いづれの)」という疑問詞を用いて「いつの日が帰れる年なのか」と問う疑問形。答えを求めるというより、「帰れる日はいつになるのか…」という嘆き(詠嘆)がこもる。
問19 (例)前半二句は、成都の春のあざやかで美しい景色(叙景)を詠み、後半二句は、その春を見ながら故郷に帰れない作者の嘆き(心情)を詠んでいる。
〈解説〉「景→情」という漢詩の典型的な構成。美しい景色であればあるほど、帰れない悲しみが引き立つという効果(対照)まで言えると満点。
問20 イ
〈解説〉あざやかな春景色(前半)と、「いつ帰れるのか」という嘆き(後半)の対照で、望郷の思いを際立たせた詩。アは前半だけ、エは「年老い」が本文にないので不適。
問21 イ(安史の乱の戦乱を避けて、故郷を遠く離れた成都に身を寄せていた)
〈解説〉杜甫は安史の乱(755〜763年)の戦乱で各地を流浪し、成都の草堂に身を寄せていた。この詩はそのころ(764年ごろ)の作とされ、「帰れない」嘆きの背景となっている。
問22
・時期 … イ(盛唐)
・呼び名 … 聖(詩聖)
・詩人 … 李白(りはく)
〈解説〉杜甫(712〜770)は盛唐の詩人。誠実で重厚な詩風から「詩聖」と呼ばれ、「詩仙」李白とあわせて「李杜」と並称される(王維=詩仏もセットで覚える)。
問23 イ(『春望』〈国破れて山河在り〉)
〈解説〉『春望』は安史の乱で荒れた長安を嘆いた杜甫の代表作。アの『春暁』は孟浩然、ウの『静夜思』は李白、エの『涼州詞』は王翰(おうかん)の作品である。
【補足・本文の異同について】この詩は『絶句二首』の二首目(其の二)にあたります。第一句の「逾」は、本によって「愈」と書くものもありますが、意味・読み(いよいよ)は同じです。テストでは教科書本文の表記に従って答えましょう。
※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は中国古典の原文(著作権の対象外)を用いています。


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