漢詩(中国の古い詩)には、知っておくと一気に読みやすくなる4つのきまりがあります。それが句数(くすう)・字数(じすう)・押韻(おういん)・対句(ついく)です。これらは「絶句か律詩か」を見分けたり、空欄に入る字を推測したりするときの強力な手がかりになります。共通テストや定期テストでも、「この詩の形式は?」「韻を踏んでいる字は?」「対句になっている部分は?」とよく問われます。
むずかしそうに見えますが、ルールはとてもシンプルです。まずは下の図解で、4つのきまりの全体像をつかみましょう。

漢詩の4つのきまり
漢詩を読むときにおさえるべきは、次の4点です。
- 句数:詩が何句(何行)でできているか(4句なら絶句、8句なら律詩)
- 字数:一句が何字か(5字なら五言、7字なら七言)
- 押韻:決まった句の末で、同じ響き(韻)の字をそろえること
- 対句:となり合う二句が、文の組み立てや意味で対になること
この4つを順に確認するだけで、詩の形式と特徴がほぼ分かります。逆に言えば、この4点を知らないまま漢詩を読むと、ただ文字を追うだけになってしまいます。一つずつ見ていきましょう。
①句数と字数――詩の「形」を決める
漢詩の形(詩型)は、句数と一句の字数の組み合わせで決まります。
- 五言絶句:一句5字 × 4句(全20字)
- 七言絶句:一句7字 × 4句(全28字)
- 五言律詩:一句5字 × 8句(全40字)
- 七言律詩:一句7字 × 8句(全56字)
つまり「4句なら絶句、8句なら律詩」「5字なら五言、7字なら七言」と数えるだけです。まず句の数を数え、次に一句の字数を数えれば、詩型はすぐに決まります。

②押韻――偶数句の末で韻を踏む
押韻とは、決まった句のいちばん下の字(句末)に、同じ響き(母音)の字をそろえることです。声に出して読むと、リズムよく響くのが分かります。
- 原則:偶数句の末で韻を踏む(第2句・第4句…の最後の字)。律詩なら第2・4・6・8句。
- 七言詩は、第1句の末でも韻を踏むことが多い。

たとえば孟浩然「春暁」(五言絶句)は、「暁(ギョウ)」「鳥(チョウ)」「少(ショウ)」が同じ響き(オ段)でそろっています(偶数句末と、この詩では第1句末も)。空欄補充問題では、「ここは偶数句末だから、前に出た韻と同じ響きの字が入る」と推測できます。押韻は、答えを導くヒントにもなるのです。
③対句――となり合う二句が対になる
対句とは、となり合う二つの句が、文の組み立て(品詞の並び)や意味で対になっていることです。「山 ⇔ 川」「白 ⇔ 紅」のように、同じ位置の語が対応します。
律詩では、句のまとまりに名前がついています。
- 首聯(しゅれん):第1・2句
- 頷聯(がんれん):第3・4句 … 原則ここが対句
- 頸聯(けいれん):第5・6句 … 原則ここが対句
- 尾聯(びれん):第7・8句

つまり律詩では、頷聯(3・4句)と頸聯(5・6句)が対句になるのが原則です。「どこが対句か」を問われたら、まずこの2か所を確認しましょう。絶句にも対句が使われることがあります。
目印と意味(まとめ表)
| 詩型 | 一句の字数 | 句数 |
|---|---|---|
| 五言絶句 | 五字 | 四句 |
| 七言絶句 | 七字 | 四句 |
| 五言律詩 | 五字 | 八句 |
| 七言律詩 | 七字 | 八句 |
例文で確認
孟浩然「春暁」(五言絶句)で確認しましょう。
- 春眠不覚暁(春眠暁を覚えず)
- 処処聞啼鳥(処処啼鳥を聞く)
- 夜来風雨声(夜来風雨の声)
- 花落知多少(花落つること知る多少)
句数=4句/字数=一句5字なので五言絶句。押韻=暁・鳥・少(同じ響き)。
現代語訳:春の眠りは心地よく、夜明けにも気づかない。あちらこちらで鳥の鳴き声が聞こえる。そういえば昨夜は風雨の音がしていた。花はどれほど散ってしまっただろうか。――短い4句のなかに、春の朝のけだるさと、散る花を惜しむ気持ちが、さりげなくこめられた名作です。
絶句の構成――起承転結
絶句(4句の詩)には、内容の流れに起承転結(きしょうてんけつ)という型があります。各句の役割を知っておくと、詩の内容を読み取りやすくなります。
- 起句(第1句):歌い起こす(場面・話題を示す)
- 承句(第2句):起句を受けて続ける
- 転句(第3句):話題を転じる(場面や視点が変わる)
- 結句(第4句):全体をしめくくる
「春暁」でも、第3句「夜来風雨声」で前夜の風雨に話題が転じ(転句)、第4句「花落知多少」で散った花への思いにしめくくられています(結句)。とくに第3句(転句)で内容が動くことを意識すると、漢詩がぐっと味わい深くなります。
実際の詩で確かめる
杜甫「春望」(五言律詩)で、4つのきまりをすべて確認してみましょう。
- 国破山河在(国破れて山河在り)
- 城春草木深(城春にして草木深し)
- 感時花濺涙(時に感じては花にも涙を濺ぎ)
- 恨別鳥驚心(別れを恨んでは鳥にも心を驚かす)
- 烽火連三月(烽火三月に連なり)
- 家書抵万金(家書万金に抵る)
- 白頭掻更短(白頭掻けば更に短く)
- 渾欲不勝簪(渾て簪に勝へざらんと欲す)
句数=8句/字数=一句5字なので五言律詩。押韻=深・心・金・簪(偶数句末)。対句=頷聯(感時花濺涙/恨別鳥驚心)と頸聯(烽火連三月/家書抵万金)。「感時⇔恨別」「花⇔鳥」「烽火⇔家書」「三月⇔万金」がきれいに対応しています。4つのきまりが全部そろった、律詩のお手本です。
現代語訳(前半):国都は戦乱で破壊されたが、山や川の自然は昔のまま在る。荒れた城内にも春が訪れ、草木が深くしげっている。この時世を思うと、(美しいはずの)花を見ても涙がこぼれ、家族との別れを悲しんでは、鳥の声にも心が乱れる。――戦乱のなかで自然の美しさと人の悲しみを対比させた、杜甫の代表作です。「対句」が悲しみをいっそう引き立てていることが分かります。
つまずきやすいポイント・入試での問われ方
- 句数と字数を取り違えない。 「句数=行の数(絶句4・律詩8)」「字数=一句の文字数(五言5・七言7)」。混同しないように。
- 押韻は偶数句末が基本。 七言詩は第1句末も踏むことが多い、という例外も覚えておきましょう。
- 対句は律詩の頷聯・頸聯。 「どこが対句か」と問われたら、まず3・4句と5・6句を見ます。
- 聯の名前を覚える。 首・頷・頸・尾の順(人の体の上から下=首→あご→首すじ→しっぽ、とイメージ)。
入試では「この詩の形式を答えよ」「韻を踏んでいる字をすべて抜き出せ」「対句になっている二句を答えよ」が定番です。句数→字数→押韻→対句の順にチェックすれば、確実に答えられます。
もう一歩くわしく――形式と内容のつながり
4つのきまりは、ただの「形のルール」ではなく、詩の内容や味わいと深くつながっています。
押韻はリズムをつくる。 偶数句末で同じ響きがくり返されることで、詩に心地よいリズムが生まれます。音読すると、韻の効果が体で分かります。
対句は意味を引き立てる。 「春望」の「感時花濺涙/恨別鳥驚心」のように、二句を対にすることで、悲しみや情景が二重に強調されます。対句は「飾り」ではなく、作者の思いを伝える工夫なのです。
転句で世界が動く。 絶句では第3句(転句)で場面や視点が変わり、詩に深みが出ます。形式を知ると、「なぜここで話題が変わるのか」という作者のねらいまで読み取れるようになります。
覚え方のポイント

- 4句=絶句/8句=律詩。5字=五言/7字=七言。
- 押韻は偶数句末(七言は第1句末も)。
- 律詩の対句は頷聯(3・4句)と頸聯(5・6句)。
漢詩のきまりは、暗記というより「数える・見比べる」作業です。詩を見たら、まず句を数え、字を数え、偶数句末をチェックし、3〜6句が対になっていないか見る――この手順を身につければ、初見の詩でも形式を即答できます。
ミニ練習問題(解答つき)
次の問いに答えましょう。
- 一句が7字で、全部で4句の詩を何というか。
- 律詩で、押韻するのは何句目の末か(五言律詩の場合)。
- 律詩で、原則として対句になるのはどの聯とどの聯か。
解答:
1 七言絶句。
2 第2・4・6・8句の末(偶数句末)。
3 頷聯(第3・4句)と頸聯(第5・6句)。
よくある質問
Q1:押韻している字は、どうやって見つけますか?
A:まず偶数句の末の字に注目します。それらを音読してみて、母音(響き)が同じならそれが韻です。漢文の授業では現代の音読みで判断してかまいません。七言詩では第1句の末も韻を踏むことが多いので、あわせて確認しましょう。
Q2:対句かどうかは、どこを見れば分かりますか?
A:となり合う二句で、同じ位置にある語の品詞や意味が対応しているかを見ます。「名詞⇔名詞」「動詞⇔動詞」が並び、「山⇔河」「花⇔鳥」のように意味も対になっていれば対句です。律詩なら頷聯・頸聯をまず疑いましょう。
Q3:絶句と律詩、どちらがよく出ますか?
A:どちらも出ますが、対句を問う問題は律詩で出やすく、形式・押韻の基本は絶句で問われがちです。短い絶句で基本を固め、律詩で対句・聯の名前まで覚えると、入試対策として万全です。
Q4:「絶句」「律詩」という名前は、どう覚えればいいですか?
A:句数で覚えるのが確実です。「絶句=4句(短い=絶〈絶え切る〉)」「律詩=8句(律=きまりが多い長い詩)」とイメージしましょう。そこに字数(五言=5字・七言=7字)を組み合わせれば、「五言絶句」「七言律詩」などの呼び名はすぐに作れます。まず句を数える、を習慣にしてください。
漢詩のきまりは、覚えてしまえば確実に得点できる分野です。しかも、形式を理解すると、押韻のリズムや対句の美しさ、転句で世界が動くおもしろさまで味わえるようになります。本記事の「春暁」「春望」を例に、句数・字数・押韻・対句を自分で確認できるようにしておきましょう。一度コツをつかめば、初めて見る漢詩でも形式をすばやく言い当てられるようになります。仕上げに、下の100問ドリルで定着させてください。
📗 参考書・問題集で対策するなら|塾長が古文・漢文の市販教材を目的別に正直レビューしています。目的別おすすめを見る →
[広告・PR]
動画で授業を受けたい人へ
誰でも古典塾は「読んで覚える」無料テキスト専門で、動画授業はありません。「文字だけだと入りにくい」「授業を聞いて理解したい」人は、動画授業のスタディサプリ(古文・漢文=岡本梨奈先生)が相棒になります。


コメント