「君に勧む 更に尽くせ 一杯の酒」――西の果てへ旅立つ友に、もう一杯だけ酒を勧める。王維(おうい)の『送元二使安西(元二(げんじ)の安西(あんせい)に使(つか)ひするを送る)』は、中国の送別詩(別れの詩)の最高傑作とされ、のちには歌としても歌いつがれた名作です。高校の定期テストでは「七言絶句という形式」「押韻」「浥・故人など語句の読みと意味」「無+名詞の句法」、さらに「陽関三畳」という文学史まで幅広く問われます。この記事では、テストで本当に出るポイントだけにしぼって、二十問以上の対策問題と、ていねいな解答・解説をのせました。まず自分で解き、答え合わせをしながら弱点をつぶしていきましょう。
解き始める前に、漢詩そのものの基本ルール(絶句と律詩のちがい、押韻のきまり)があやしい人は、先にこちらで確認しておくと理解がぐっと深まります。 → 漢詩のきまり(絶句・律詩)のやさしい解説
本文
送元二使安西(元二の安西に使ひするを送る) 王維
〔白文〕
〔書き下し文〕
渭城の朝雨①軽塵を浥し
客舎青青②柳色新たなり
君に勧む③更に尽くせ一杯の酒
西のかた陽関を出づれば④故人無からん
※読みの確認:送元二使安西=元二(げんじ)の安西(あんせい)に使(つか)ひするを送る/渭城(いじょう)/朝雨(ちょうう)/浥し(うるおし)/軽塵(けいじん)/客舎(かくしゃ)/青青(せいせい)/柳色(りゅうしょく)/陽関(ようかん)/故人(こじん)。「使ひする」は「使者として出かける」という意味です。
設問
次の各問いに答えなさい。傍線部①〜④は本文中の位置を示しています。
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この詩の形式を、漢字四字で答えなさい。
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この詩の形式について、次の問いに答えなさい。
- 一句が何字で構成されているか、漢数字で答えなさい。
- 全部で何句から成るか、漢数字で答えなさい。
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この詩で押韻している漢字を、本文中からすべて抜き出しなさい。
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近体詩で、七言絶句が押韻する位置の原則を、簡潔に説明しなさい。
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詩題「送元二使安西」について、次の問いに答えなさい。
- 「元二」とはどのような人か。最も適切なものを次から一つ選びなさい。(ア 元という名の二歳の子ども イ 元家の兄弟のうち二番目の人 ウ 元の国から来た使者 エ 王維の二番目の息子)
- 「使ひする」とはどういう意味か、簡潔に答えなさい。
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「安西」の説明として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 都・長安の西側の繁華街 イ 唐が西域を治めるために置いた安西都護府 ウ 江南地方の港町 エ 西の都と呼ばれた洛陽
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第一句「渭城朝雨浥軽塵」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
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傍線部①「浥」の読みを、送り仮名を含めて現代仮名遣いのひらがなで答えなさい。
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「渭城」の説明として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 長安の東にある港町で、船出を見送る場所 イ 長安の北西、渭水のほとりの町で、西へ旅立つ人をここまで見送る習慣があった ウ 陽関のさらに西にある国境の砦 エ 元二の故郷の町
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第二句「客舎青青柳色新」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
-
「客舎」の意味を簡潔に答えなさい。
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傍線部②「柳色新」とあるが、中国の詩で「柳」が送別の場面によく詠まれるのはなぜか。最も適切なものを次から一つ選びなさい。
- ア 柳は長寿のしるしで、旅の無事を祈ったから
- イ 旅立つ人に柳の枝を折って贈る習慣があり、柳が別れの象徴だったから
- ウ 柳の綿毛が豊作を知らせると信じられたから
- エ 柳の下で恋人と会う風習があったから
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第三句「勧君更尽一杯酒」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
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傍線部③「更尽」について、次の問いに答えなさい。
- 「更尽」の読みを、送り仮名を含めて現代仮名遣いのひらがなで答えなさい。
- ここでの「更」の意味として最も適切なものを次から一つ選びなさい。(ア 夜がふけてから イ そのうえさらに、もう一杯 ウ あらためて最初から エ 交代で順番に)
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作者が「更に尽くせ一杯の酒」と酒を勧めるのはなぜか。第四句の内容をふまえて説明しなさい。
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第四句「西出陽関無故人」について、次の問いに答えなさい。
- この句を書き下し文に直しなさい。
- この句を現代語訳しなさい。
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傍線部④「無故人」の「故人」の意味として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 亡くなった人 イ 昔なじみの親しい友人 ウ 故郷に残してきた家族 エ 昔の時代の人
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「無故人」の「無」について、次の問いに答えなさい。
- 「無」のように、必ず下の語から返って読む字を何というか、漢字で答えなさい。
- 「無+名詞」の形で「無故人」はどのような意味を表すか、簡潔に説明しなさい。
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この詩には、起承転結の構成上「転句」にあたる句がある。それは第何句か、漢数字で答えなさい。
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この詩全体の主題(作者が表現しようとしたこと)として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 戦地へ向かう兵士の勇ましさをたたえる気持ち
- イ 遠い任地へ旅立つ友人との別れを惜しむ気持ち
- ウ ふるさとの春の美しさをなつかしむ気持ち
- エ 酒宴のにぎやかさを楽しむ気持ち
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この詩はのちに送別の歌として広く歌われ、句を繰り返して歌う歌い方が生まれた。その呼び名として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 陽関三畳 イ 渭城八景 ウ 折楊柳 エ 長亭送別
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作者の王維について、次の問いに答えなさい。
- 王維が活躍したのは、唐のどの時期か。最も適切なものを次から選びなさい。(ア 初唐 イ 盛唐 ウ 中唐 エ 晩唐)
- 王維は、ある詩人と作風が近く「王孟」と並び称された。その詩人とは誰か、答えなさい。
- 王維は仏教を深く信仰したことから「詩◯」と呼ばれた。◯に入る漢字一字を答えなさい。
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王維の詩風の説明として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
- ア 戦場の悲惨さをえがく社会派の詩人で、「詩史」と呼ばれた イ 自然や山水の風景を絵画のようにえがき、「詩の中に画有り」と評された ウ 酒と月を愛する豪放な詩風で、「詩仙」と呼ばれた エ 宮廷の恋愛をはなやかにうたう詩風で知られた
▼ 解答・解説を見る(まず自分で解いてから)
問1 七言絶句(しちごんぜっく)
〈解説〉一句が七字、全体が四句なので「七言絶句」。一句五字・四句なら五言絶句、一句七字・八句なら七言律詩となる。
問2
・一句の字数 … 七(字)
・句数 … 四(句)
〈解説〉「七言」は一句が七字であること、「絶句」は四句から成ることを表す。
問3 塵・新・人
〈解説〉「ジン(塵)」「シン(新)」「ジン(人)」と、響きの似た音(-in の韻)でそろえてある。第三句末の「酒」は韻を踏んでいないので注意。
問4 (例)第一句末と偶数句末で押韻する。
〈解説〉七言詩では原則として第一句末+偶数句末(この詩では塵・新・人)で韻を踏む。五言詩の原則(偶数句末のみ)とのちがいがよく問われる。
問5
・元二 … イ(元家の兄弟のうち二番目の人)
・「使ひする」 … (例)使者として出かける。使命を帯びて出張する。
〈解説〉「元」が姓、「二」は兄弟の生まれ順で呼ぶ言い方(排行〈はいこう〉という)。「使」は「使者として行く」という動詞。
問6 イ(唐が西域を治めるために置いた安西都護府)
〈解説〉安西都護府は現在の新疆ウイグル自治区クチャ(亀茲)にあった役所。長安から数千キロも離れた西の果てで、当時としては命がけの長旅だった。
問7
・書き下し … 渭城の朝雨軽塵を浥し
・現代語訳 …(例)渭城に降る朝の雨が、軽く舞い上がる土ぼこりをしっとりとしめらせ。
〈解説〉「浥二軽塵一」と返り点が付き、「軽塵を→浥し」と下から返って読む。旅立ちの朝の、清らかに洗われた空気を描く。
問8 うるおし
〈解説〉「浥す(うるおす)」は「しめらせる・うるおす」の意。ここは下に続くので連用形「浥し(うるおし)」と読む。読みの問題として頻出。
問9 イ(長安の北西、渭水のほとりの町で、西へ旅立つ人をここまで見送る習慣があった)
〈解説〉渭城はもとの秦の都・咸陽のあたり。長安から西へ旅立つ人を、見送る人がここまで付き添い、別れの宴を開く場所だった。
問10
・書き下し … 客舎青青柳色新たなり
・現代語訳 …(例)旅館のあたりは雨に洗われて青々とし、柳の葉の色もあざやかに新しい。
〈解説〉返り点はなく上から順に読む。朝雨に洗われた清新な景色で、第一句とあわせて「景」を描く前半となる。
問11 (例)旅館。宿屋。
〈解説〉「客」は旅人のこと。旅人が泊まる宿を「客舎」という。元二との最後の宴が開かれている場所である。
問12 イ(旅立つ人に柳の枝を折って贈る習慣があり、柳が別れの象徴だったから)
〈解説〉中国では送別のとき柳の枝を折って贈る「折柳(せつりゅう)」の風習があった。「柳(リュウ)」が「留(リュウ)=とどまる」と同じ音であることから、別れを惜しむ心を表すとされる。
問13
・書き下し … 君に勧む更に尽くせ一杯の酒
・現代語訳 …(例)さあ君、もう一杯この酒を飲みほしてくれ。
〈解説〉「勧レ君」は「君に勧む」とレ点で返る。「尽くせ」は「飲みほせ」という命令形で、別れの間際に酒をすすめる場面。
問14
・読み … さらにつくせ
・「更」の意味 … イ(そのうえさらに、もう一杯)
〈解説〉すでに何杯も酌み交わしたうえで「そのうえもう一杯」と引きとめる言い方。別れがたい気持ちが「更」の一字ににじむ。
問15 (例)西の陽関から先へ出てしまえば、ともに酒を酌み交わせる親しい友人はもういないのだから、せめて今ここでもう一杯飲んでほしい、と別れを惜しむ気持ちから。
〈解説〉第四句「西出陽関無故人」が理由になっている。「これが友と飲む最後の一杯になる」という思いが、酒を勧める行為にこめられている。
問16
・書き下し … 西のかた陽関を出づれば故人無からん
・現代語訳 …(例)西の方、陽関から外へ出てしまったら、もう昔なじみの友人はいないだろう。
〈解説〉「西出二陽関一」「無二故人一」と二度返って読む。「西のかた」は「西の方へ」という方向を示す慣用的な読み方。文末は「〜だろう」と推量で訳すとよい。
問17 イ(昔なじみの親しい友人)
〈解説〉漢文の「故人」は「古くからの友人」の意味。現代日本語の「故人=亡くなった人」と意味がちがう、テスト頻出の語。
問18
・呼び名 … 返読文字(へんどくもじ)
・意味 … (例)「故人が(一人も)いない」という存在の打ち消しを表す。
〈解説〉「無」は「〜なし」と必ず下の語(名詞)から返って読む返読文字。「無+名詞」で「〜が存在しない」となる(有・無・多・少などが代表)。
問19 三(第三句)
〈解説〉起承転結では第一句=起句、第二句=承句、第三句=転句、第四句=結句。前半の朝の風景から、第三句で酒宴の人事(別れの場面)へと内容が転じている。
問20 イ
〈解説〉雨にしめる朝の清らかな景色(前半)を背景に、西の果てへ旅立つ友への惜別の情(後半)をうたう送別詩。アのような勇壮さや、エのような陽気さの詩ではない。
問21 ア(陽関三畳〈ようかんさんじょう〉)
〈解説〉この詩は送別の歌『渭城曲(陽関曲)』として愛唱され、結句(一説には二句目以降)を三度繰り返して歌ったことから「陽関三畳」と呼ばれた。文学史の頻出事項。
問22
・時期 … イ(盛唐)
・詩人 … 孟浩然(もうこうねん)
・呼び名 … 仏(詩仏)
〈解説〉王維(701?〜761)は盛唐の詩人。自然をうたう作風が孟浩然と近く「王孟」と並称される。仏教に傾倒したことから「詩仏」と呼ばれた(李白=詩仙、杜甫=詩聖とセットで覚える)。
問23 イ(自然や山水の風景を絵画のようにえがき、「詩の中に画有り」と評された)
〈解説〉王維は山水・自然をえがく詩にすぐれ、画家としても一流だった。のちに蘇軾(そしょく)が「詩中に画有り、画中に詩有り」と評した。アは杜甫、ウは李白の説明。
【補足・本文の異同について】第一句の「浥」は、本によって「潤」「裛」と書くものもあります。また詩題は『渭城曲』『陽関曲』としても伝わり、第二句を「客舎依依楊柳春」に作る古い写本もありますが、現在の教科書では本記事の形(「渭城朝雨浥軽塵 客舎青青柳色新」)が一般的です。テストでは教科書本文に従って答えましょう。
※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は中国古典の原文(著作権の対象外)を用いています。


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