音便(おんびん)とは、発音しやすくするために語中・語尾の音が変化する現象です。種類は四つあり、「書きて→書いて」のように「い」に変わるイ音便、「思ひて→思うて」のように「う」に変わるウ音便、「読みて→読んで」のように「ん」に変わる撥音便(はつおんびん)、「取りて→取つて」のように「つ(小書き)」に変わる促音便(そくおんびん)です。撥音便の「ん」は表記されない(無表記)こともあり、「あるなり→あんなり→あなり」のように見た目では消えるので注意が必要です。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
※例文は学習用に作成しています。
① 文を書いて、友に送りけり。
② 鐘の音を聞いて、夜の更けぬるを知る。
③ いみじう趣ある夕暮れなりけり。
④ 親のことを思うて、都へ帰りぬ。
⑤ この僧、たふとくおぼえて、人みな拝みけり。
⑥ 経を読んで、亡き人を弔ふ。
⑦ 鳥の飛んで行くを、ながめゐたり。
⑧ 花の散りぬるを惜しうおぼゆ。
⑨ 童、走つて門を出でぬ。
⑩ 笠を取つて、深く礼をなしけり。
⑪ 月の光、いと明うさし入りたり。
⑫ 雪の積もんで、道も見えずなりにけり。
⑬ 風の吹いて、桜のいたう散りけり。
⑭ かの人、立つて出でなんとす。
⑮ 都に人多かなり、と人の語りき。
⑯ 矢をはげて、的を射んとす。
設問
- 傍線部①「書いて」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部①「書いて」で音便が起きたのは、下にどのような語が続いたからか。続く語を抜き出して答えよ。
- 傍線部②「聞いて」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部③「いみじう」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部④「思うて」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部④「思うて」を、現代語訳せよ。
- 傍線部⑤「たふとく」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部⑤の「たふとく」は、後に「たうとく」とも書かれ、さらに「たうとう」のようにウ音便で読まれることがある。この語の終止形(基本の形)を答えよ。
- 傍線部⑥「読んで」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部⑥「読んで」で音便が起きたのは、下にどのような語が続いたからか。続く語を抜き出して答えよ。
- 傍線部⑦「飛んで」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部⑦「鳥の飛んで行く」を、現代語訳せよ。
- 傍線部⑧「惜しう」を、音便が起こる前の元の形(連用形)に直せ。
- 傍線部⑨「走つて」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部⑨「走つて」で音便が起きたのは、下にどのような語が続いたからか。続く語を抜き出して答えよ。
- 傍線部⑩「取つて」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部⑪「明う」を、音便が起こる前の元の形(連用形)に直せ。
- 傍線部⑫「積もんで」は撥音便であるが、もとの「積もりて」の「て」が「で」と濁音になっている。なぜ「て」が「で」に変わるのか、簡潔に説明せよ。
- 傍線部⑬「吹いて」について、音便の種類を答えよ。
- 傍線部⑭「立つて」を、音便が起こる前の元の形に直せ。
- 傍線部⑮「多かなり」は、もともと「多かるなり」の形であった。ここに含まれる撥音便について説明した次の文の空欄を補え。
「多かるなり」は撥音便化して「多か( あ )なり」となり、さらにその音が表記されず「多かなり」となっている。この、表記されない撥音便を特に何というか。 - 次の各語を、音便が起こる前の元の形に直せ。
- ① 書いて
- ④ 思うて
- ⑥ 読んで
- ⑨ 走つて
- 次の各語を、音便が起こる前の元の形に直せ。
- ② 聞いて
- ⑩ 取つて
- ⑫ 積もんで
- ⑬ 吹いて
- イ音便・ウ音便・撥音便・促音便のうち、活用語に「ん」の音が現れるものをすべて選び、種類の名で答えよ。
- 次の説明にあてはまる音便の種類を、それぞれ答えよ。
- (1) 「い」の音に変化するもの。
- (2) 「う」の音に変化するもの。
- (3) つまる音(小書きの「つ」)に変化するもの。
▼ 解答・解説を見る
問1 イ音便/「書きて」の「き」が「い」に変化したもの。
問2 「て」(接続助詞「て」)/動詞の連用形に「て」が続くとき、発音しやすくするためイ音便が起こる。
問3 イ音便/「聞きて」の「き」が「い」に変化したもの。
問4 ウ音便/形容詞「いみじく」の「く」が「う」に変化したもの。
問5 ウ音便/「思ひて」の「ひ」が「う」に変化したもの。
問6 (親のことを)思って/「思うて」は「思ひて」のウ音便で、現代語の「思って」にあたる。
問7 ウ音便/形容詞「たふとく(たうとく)」の「く」が「う」に変化したもの。なお「たふとく」自体はハ行表記で、後に「たうとう」とウ音便化する。ここでは元の連用形「たふとく」として扱う。
問8 たふとし(尊し)/形容詞「たふとし(尊し)」。連用形「たふとく」がウ音便で「たうとう」とも読まれる。
問9 撥音便/「読みて」の「み」が「ん」に変化し、下の「て」が「で」と濁音化したもの。
問10 「て(で)」(接続助詞「て」)/「て」が続くために撥音便が起こり、撥音「ん」に続くため「て」が「で」と濁る。
問11 撥音便/「飛びて」の「び」が「ん」に変化し、下の「て」が「で」と濁音化したもの。
問12 鳥が飛んで行くのを/「の」は主格を表し「鳥が」、「飛んで」はそのまま現代語と同じ。
問13 惜しく/形容詞「惜し」の連用形「惜しく」の「く」がウ音便化して「惜しう」となった。
問14 促音便/「走りて」の「り」がつまる音(つ)に変化したもの。
問15 「て」(接続助詞「て」)/「て」が続くために促音便が起こる。
問16 促音便/「取りて」の「り」がつまる音(つ)に変化したもの。
問17 明く(あかく)/形容詞「明し(あかし)」の連用形「明く」の「く」がウ音便化して「明う」となった。
問18 撥音「ん」の音に続くと、後の清音「て」は発音上濁って「で」となるため。(同様に「が・ば」なども濁音化する。)
問19 イ音便/「吹きて」の「き」が「い」に変化したもの。
問20 立ちて/「立ちて」の「ち」が促音便化して「立つて」となった。
問21 ん(撥音「ん」)/表記されない撥音便を撥音便の無表記という。「多かるなり」→「多かんなり」→「多かなり」と、撥音「ん」が表記から消えている。
問22 ①書きて ④思ひて ⑥読みて ⑨走りて/いずれも動詞の連用形に「て」が付いた形に戻す。
問23 ②聞きて ⑩取りて ⑫積もりて ⑬吹きて/撥音便・促音便も、もとは「みて・りて・きて」の形である。
問24 撥音便/活用語に「ん」の音が現れるのは撥音便のみである。
問25 (1) イ音便 (2) ウ音便 (3) 促音便
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。
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