古文を正しく読み解くには、単語の意味だけでなく、当時の時刻・暦・方角の数え方や、宮中の身分・建物の名称といった「古文常識」を身につけることが欠かせません。とりわけ十二支による時刻と方角、月の異名、人を表す語は、場面や人物関係をつかむ手がかりとして頻出します。次の各例文を読み、傍線部について後の問いに答えよ。
本文
※例文は学習用に作成しています。
① 暁の鐘の音に目覚めて、女君は文をしたためたまふ。
② あけぼのの空ほのかに白みて、山の端いと美し。
③ 冬はつとめてこそをかしけれと、清少納言は記したり。
④ 昼つ方になりて、客人あまた参り集ひぬ。
⑤ 夕されば、門田の稲葉に秋風ぞ吹く。
⑥ 宵のほどより灯ともして、御遊びありけり。
⑦ 夜中ばかりに、にはかに雨降り出でぬ。
⑧ 子の刻を過ぐるころ、宮中はいよいよ静まりぬ。
⑨ 丑の刻まゐりて、人皆寝静まりたり。
⑩ 御方の丑寅の隅より、あやしき音聞こゆ。
⑪ 睦月の朔日、宮人みな参賀したてまつる。
⑫ 師走の空かき曇りて、雪もよひなり。
⑬ 上達部・殿上人、こぞりて南殿に候ふ。
⑭ かの国の受領、任果てて都へ上りけり。
⑮ 女房たち、簾のうちにて物語などしたまふ。
⑯ 渡殿を渡りて、君は寝殿へおはしましぬ。
⑰ あからさまに立ち出でしまま、年経にけり。
⑱ そのわたりにゆかりある人と聞きて、なつかしう思ふ。
⑲ かねてよりほいなき仲なれば、別れも惜しからず。
⑳ 空のけしきあやしと見るほどに、夕立つ。
設問
- 傍線①「暁」とは、一日のうちおよそ何時ごろ(どのような時間帯)を指すか答えよ。
- 傍線④「昼つ方」とは、おおよそいつごろを指すか答えよ。
- 傍線⑤「夕されば」を現代語訳せよ。
- 傍線⑥の例文「宵のほどより灯ともして、御遊びありけり。」を、傍線部の意味を踏まえて現代語訳せよ。
- 傍線⑧「子の刻」とは、現在のおよそ何時ごろか答えよ。
- 傍線⑨「丑の刻」とは、現在のおよそ何時ごろか答えよ。
- 傍線⑩「丑寅」とは、どの方角を指すか答えよ。また、その方角は俗に何と呼ばれ、どのような意味で忌まれたか説明せよ。
- 傍線⑬「上達部」とは、どのような身分の人々を指すか説明せよ。
- 傍線⑬「殿上人」とは、どのような人々を指すか説明せよ。
- 傍線⑭「受領」とは、どのような立場の人を指すか説明せよ。
- 傍線⑮「女房」とは、どのような人々を指すか答えよ。
- 傍線⑮「簾」とは何か。現代の言葉で答えよ。
- 傍線⑯「渡殿」と傍線⑯「寝殿」は、それぞれ寝殿造のどのような部分か説明せよ。
- 渡殿
- 寝殿
- 傍線⑰「あからさまに」の意味を答えよ。
- 傍線⑱「ゆかり」の意味を答えよ。
- 傍線⑲「ほい」を漢字で書き、その意味を答えよ。
- 傍線⑳「けしき」の意味を答えよ。ここでの文脈に合う訳を示すこと。
- 傍線②「あけぼの」と傍線③「つとめて」は、それぞれ一日のどの時間帯を指すか、簡潔に答えよ。
- あけぼの
- つとめて
- 傍線⑥「宵」と傍線⑦「夜中」は、それぞれ夜のうちのどのあたりを指すか答えよ。
- 宵
- 夜中
- 傍線⑪「睦月」と傍線⑫「師走」は、それぞれ何月の異名か、漢数字で答えよ。
- 睦月
- 師走
- 月の異名を、一月(睦月)から順に十二月まですべて答えよ。
- 方角を表す十二支のうち、東・西・南・北にあたるものをそれぞれ一つずつ答えよ。
- 東
- 西
- 南
- 北
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問1 夜明け前、まだ暗いころ(午前三時~五時ごろ)。「暁」は夜が明けようとする直前の、まだ暗い時間帯を指す。これより少し明るくなると「あけぼの」「しののめ」となる。
問2 昼ごろ。正午前後の時間帯を指す。「~つ方」は「~のころ」の意。
問3 夕方になると。/ 夕方になったので。「夕さる」は「夕方になる」の意の動詞で、「されば」は已然形+接続助詞「ば」。文脈により順接(…になると/…になったので)に訳す。
問4 日が暮れて間もないころから明かりをともして、管絃の遊び(音楽の催し)があった。「宵」は夜の早い時間帯、「御遊び」は管絃の遊びを指す。
問5 真夜中、午前零時ごろ(およそ午後十一時~午前一時)。十二支で時刻を表すと、子の刻は一日の起点で深夜にあたる。
問6 午前二時ごろ(およそ午前一時~三時)。子の次が丑で、深夜から明け方へ向かう時間帯。「丑三つ時」はこの丑の刻をさらに四分した第三の部分で、午前二時半ごろを指す。
問7 北東の方角。十二支を方角に当てると、子=北、卯=東、午=南、酉=西で、丑と寅の間が北東にあたる。北東は俗に「鬼門」と呼ばれ、鬼(邪気)が出入りする不吉な方角として忌まれた。
問8 摂政・関白や大臣・大納言・中納言など、三位以上(および参議)の高位の貴族をまとめていう語。公卿(くぎょう)ともいう。朝廷の政務を担う最上層の人々。
問9 四位・五位のうち、清涼殿の殿上の間に昇ること(昇殿)を許された人々。および六位の蔵人。天皇の近くに伺候できる、選ばれた中級貴族をいう。
問10 任国に実際に赴任して政務を執り、その国を治めた国司の長官(守など)。地方の実務と徴税を担い、私財を蓄えることも多かった。
問11 宮中や貴族の邸宅に仕え、独立した部屋(房)を与えられた女性の使用人。教養ある女性が多く、『枕草子』の清少納言、『源氏物語』の紫式部もこの女房であった。
問12 すだれ。竹や葦を細く割って編み、室内と外、または部屋と部屋の間を隔てるために垂らした道具。貴人の姿を直接見せないための仕切りでもあった。
問13 渡殿=寝殿造で、母屋や対屋など建物どうしをつなぐ渡り廊下。/寝殿=寝殿造の中心となる正殿で、主人が住み、儀式や対面の場となる建物。
問14 ほんの少しの間。ちょっと。一時的に。「あからさまに立ち出づ」で「ちょっと外出する」の意。現代語の「あからさま(露骨だ)」とは意味が異なる点に注意。
問15 縁(えん)。つながり。血縁・縁故、また関係・由縁。「ゆかりある人」で「縁のある人・関係する人」の意。
問16 漢字=本意。意味=かねてからの望み・本来の意志・かねての願い。「ほいなし」で「不本意だ・心ならずも」の意になる。
問17 様子。ありさま。ここでは「空のけしき」で、空のようす(雲行き・天候のぐあい)を指す。「機嫌・気色」の意で用いられることもある。
問18 あけぼの=夜がほのぼのと明けはじめるころ(明け方)。/つとめて=早朝。また「(何かのあった)翌朝」の意でも用いる。「冬はつとめて」は冬は早朝が趣深い、の意。
問19 宵=日が暮れて間もないころ(夜の早い時間帯)。/夜中=夜のなかば、真夜中ごろ。夜は「宵→夜中→暁」の順に移る。
問20 睦月=一月。/師走=十二月。
問21 睦月(一月)・如月(二月)・弥生(三月)・卯月(四月)・皐月(五月)・水無月(六月)・文月(七月)・葉月(八月)・長月(九月)・神無月(十月)・霜月(十一月)・師走(十二月)。
問22 東=卯/西=酉/南=午/北=子。十二支を時計回りに方角へ配し、子(北)を起点として卯(東)・午(南)・酉(西)が四方にあたる。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。
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