副助詞は、さまざまな語に付いて、後ろの述語にかかりながら微妙な意味を添える助詞です。なかでも入試で最頻出なのが「だに・すら・さへ」の区別です。「だに」と「すら」はどちらも軽いものを挙げて重いものを推し量らせる類推(〜さえ)の用法を持ちますが、「だに」にはさらに「せめて〜だけでも」と願う最小限の限定の用法があるのが急所です。一方「さへ」は、すでにある事柄にもう一つ重ねる添加(〜までも)を表し、現代語の「さえ」とは意味がずれる点に注意しましょう。次の各例文を読み、後の問いに答えよ。
本文
※例文は学習用に作成しています。
① 光だになき山里に、まして人の訪ふべくもあらず。
② せめて一目だに見てしがな。
③ 水だに飲ませず、いと心なきわざなり。
④ 影だに見えば、慰むこともありなまし。
⑤ 聖人すら過ちはあり、いはんや凡人をや。
⑥ 鳥の声すら聞こえぬ深山に分け入りぬ。
⑦ 風吹けば、波さへ立ちて舟出でがたし。
⑧ 雨降り、風さへ添ひて、いとわびし。
⑨ 親に別れ、家さへ焼けて、寄る方もなし。
⑩ ただ月のみぞ昔ながらの光なりける。
⑪ この子のみぞ、人にすぐれてかしこかりける。
⑫ 三日ばかりありて、文おこせたり。
⑬ 涙にくれて、ものも言はれずばかりなり。
⑭ 花など散るころは、心ぼそくこそおぼゆれ。
⑮ 名をだに知らぬ草の、思ひのほかに咲きにけり。
⑯ 今しも、月のいと明かきに出でぬ。
設問
- 例文①の傍線部「だに」の意味として最も適切なものを、次から選べ。
- ア 類推(〜さえ) イ 最小限の限定(せめて〜だけでも) ウ 添加(〜までも)
- 例文②の傍線部「だに」の意味を、ア〜ウから選べ(選択肢は問1と同じ)。
- 例文③の傍線部「だに」の意味を、ア〜ウから選べ。
- 例文④の傍線部「だに」の意味を、ア〜ウから選べ。
- 例文⑤の傍線部「すら」の意味として最も適切なものを、ア〜ウから選べ。
- 例文⑤の「すら」と呼応して、下に省略されている言い回し(…をや の形)を補い、文意を説明せよ。
- 例文⑥の傍線部「すら」の意味を、ア〜ウから選べ。
- 例文⑦の傍線部「さへ」の意味として最も適切なものを、ア〜ウから選べ。
- 例文⑧の傍線部「さへ」の意味を、ア〜ウから選べ。
- 例文⑨の傍線部「さへ」の意味を、ア〜ウから選べ。
- 例文⑩の傍線部「のみ」の意味として最も適切なものを、次から選べ。
- ア 限定(〜だけ) イ 程度 ウ 例示
- 例文⑪の傍線部「のみ」の意味を、問11のア〜ウから選べ。
- 例文⑫の傍線部「ばかり」の意味として最も適切なものを、次から選べ。
- ア 限定(〜だけ) イ 程度・おおよそ ウ 添加
- 例文⑬の傍線部「ばかり」の意味を、問13のア〜ウから選べ。
- 例文⑭の傍線部「など」の意味として最も適切なものを、次から選べ。
- ア 強意 イ 例示・婉曲 ウ 限定
- 例文⑮の傍線部「だに」の意味を、ア〜ウから選べ。
- 例文⑯の傍線部「しも」の意味として最も適切なものを、次から選べ。
- ア 強意 イ 例示 ウ 添加
- 例文①〜④・⑮の「だに」のうち、「最小限の限定(せめて〜だけでも)」の用法であるものをすべて番号で答えよ。
- 「だに・すら・さへ」のうち、現代語の「さえ(類推)」と同じ意味を表すのはどれか。あてはまるものをすべて挙げよ。
- 次の傍線部を、それぞれ現代語訳せよ。
- (1) 光だになき山里(例文①)
- (2) せめて一目だに見てしがな(例文②)
- 次の傍線部を、それぞれ現代語訳せよ。
- (1) 聖人すら過ちはあり(例文⑤)
- (2) 波さへ立ちて(例文⑦)
- 「だに」が「最小限の限定(せめて〜だけでも)」の意味になるとき、文末にはどのような表現(願望・命令・意志・仮定など)が来やすいか。例文②④を参考に説明せよ。
- 記述:「だに」と「さへ」は、ともに何かを「付け加える」ように見えて意味が異なる。両者の違いを、「類推」「添加」という語を用いて一文で説明せよ。
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問1 ア(類推)/「光さえない山里で、まして人が訪ねて来るはずもない」。最も軽い「光」を挙げ、まして人など、と重い事柄を推し量らせている。下に「まして」があるのも類推の目印。
問2 イ(最小限の限定)/「せめて一目だけでも見たい」。「せめて」と願望「てしがな」に挟まれ、最低限これだけはと望む用法。
問3 ア(類推)/「水さえ飲ませず」。軽い「水」すら与えない、まして他は、という含み。文末が打消「ず」で、まして…の含意がある。
問4 イ(最小限の限定)/「せめて影だけでも見えたなら、慰むこともあっただろうに」。仮定「ば」+反実仮想「なまし」と呼応し、最低限の願いを表す。
問5 ア(類推)/「聖人でさえ過ちはある、まして凡人は言うまでもない」。「いはんや…をや」と呼応する典型的な類推。
問6 省略を補うと「いはんや凡人をや(=まして凡人は言うまでもない)」。聖人でさえ過つのだから、まして凡人が過つのは当然だ、という抑揚(よくよう)の構文。
問7 ア(類推)/「鳥の声さえ聞こえない深山」。軽いものを挙げ、まして人声など、と推し量らせる。
問8 ウ(添加)/「風が吹くと、波までも立って」。すでにある「風」に「波」を重ね加える添加。
問9 ウ(添加)/「雨が降り、その上 風までも加わって」。「雨」に「風」を添える添加。
問10 ウ(添加)/「親と別れ、そのうえ家までも焼けて」。不幸に不幸を重ねる添加。
問11 ア(限定)/「ただ月だけが昔のままの光であった」。「ただ…のみ」で「〜だけ」と限定する。
問12 ア(限定。特に取り立てる用法)/「この子だけが、人にすぐれて賢かった」。多くの中からその一つを取り立てて限定する。
問13 イ(程度・おおよそ)/「三日ほど経って、手紙をよこした」。数量に付いて「〜くらい・〜ほど」の意。
問14 ア(限定)/「涙にくれて、ものも言えないばかりだ」。「〜ばかりなり」で「ただ〜するだけだ」と限定・強調する。程度から転じた限定の用法。
問15 イ(例示・婉曲)/「花などが散るころは」。「花」を一例として軽く例示し、言い方をやわらげる。
問16 ア(類推)/「名前さえ知らない草が」。最も基本的な「名」すら知らない、の意で類推。
問17 ア(強意)/「今ちょうど、月がたいそう明るいときに出た」。「し」「しも」は直前の語を強調する強意の副助詞。
問18 ②・④/②は「せめて一目だけでも」、④は「せめて影だけでも」。いずれも願望・反実仮想と呼応する最小限の限定。①③⑮は類推。
問19 「だに」と「すら」/古文の「だに(類推)」「すら」は現代語の「〜さえ」にあたる。「さへ」は現代語の「さえ」とは違い「〜までも(添加)」を表すので注意。
問20 (1) 光さえない山里 (2) せめて一目だけでも見たいものだ
問21 (1) 聖人でさえ過ちはある (2) 波までも立って
問22 文末には願望(〜てしがな・〜ばや・〜なむ等)・命令・意志、または仮定+反実仮想(〜ば…まし)が来やすい。例文②は願望「てしがな」、例文④は仮定「ば」+「なまし」と呼応し、「せめて〜だけでも」の最小限の願いを示している。
問23 「だに」は軽いものを挙げて重いものを推し量らせる類推(〜さえ)であるのに対し、「さへ」はすでにある事柄に別の事柄を重ねて付け加える添加(〜までも)である。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。
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