和泉式部日記『夢よりもはかなき』定期テスト対策問題|現代語訳・和歌・文法の頻出設問と解答

夢よりもはかなき|定期テスト対策 確認テスト 定期テスト対策

平安時代を代表する歌人・和泉式部の手になる『和泉式部日記』。その書き出しは、恋人であった為尊親王(故宮)を亡くした悲しみの日々から始まり、その弟・帥宮(敦道親王)との新たな出会いへと続いていきます。橘の花にことよせて交わされる和歌の贈答は、定期テストでも頻出の名場面です。ここでは冒頭「夢よりもはかなき世の中を」の段から、現代語訳・和歌の解釈・文法・文学史までを20問以上の設問で総点検します。本文の流れや語句の意味をまず確認したい人は、和泉式部日記『夢よりもはかなき』のやさしい解説を先に読んでおくと、設問に取り組みやすくなります。

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本文

 夢よりもはかなき世の中を、嘆きわびつつ明かし暮らすほどに、〔①〕四月十余日にもなりぬれば、木の下暗がりもてゆく。築地の上の草青やかなるも、人はことに目もとどめぬを、あはれと〔②〕ながむるほどに、近き透垣のもとに人のけはひのすれば、誰ならむと思ふほどに、故宮に〔③〕候ひし小舎人童なりけり。

 あはれにもののおぼゆるほどに来たれば、「〔④〕などか久しう見えざりつる。遠ざかる昔の名残にも思ふを。」など〔⑤〕言はすれば、「そのことと候はでは、なれなれしきさまにやと、つつましう候ふうちに、日ごろは山寺にまかりありきてなむ。いと頼りなく、つれづれに思ひたまうらるれば、御代はりにも〔⑥〕見たてまつらむとてなむ、帥宮に参りて候ふ。」と語る。

 「いとよきことにこそ〔⑦〕あなれ。その宮は、いとあてに、けけしうおはしますなるは。昔のやうにはえしもあらじ。」など言へば、「しかおはしませど、いとけ近うおはしまして、『常に参るや。』と問はせおはしまして、『参り侍り。』と申し候ひつれば、『これ持て参りて、いかが見給ふとて〔⑧〕奉らせよ。』とのたまはせつる。」とて、橘の花を取り出でたれば、「〔⑨〕昔の人の」と言はれて、「さらば参りなむ。いかが聞こえさすべき。」と言へば、言葉にて聞こえさせむもかたはらいたくて、「何かは。あだあだしくもまだ聞こえたまはぬを、はかなきことをも。」と思ひて、

  〔⑩〕薫る香によそふるよりはほととぎす聞かばや同じ声やしたると

 と聞こえさせたり。まだ端におはしましけるに、この童、隠れの方に気色ばみけるけはひを、御覧じつけて、「いかに。」と問はせ給ふに、御文をさし出でたれば、御覧じて、

  同じ枝に鳴きつつをりしほととぎす声は変はらぬものと知らずや

設問

  1. 本文冒頭の「夢よりもはかなき世の中」とは、具体的にどのような事柄を指して言っているか。為尊親王との関係をふまえて説明しなさい。
  2. 傍線部①「四月十余日にもなりぬれば」を現代語訳しなさい。また、「ぬれ」の文法的説明(活用形・基本形・意味)を答えなさい。
  3. 「あはれ」という語は、この場面で繰り返し用いられ、作品全体の基調をなす重要語である。古文における「あはれ」の中心的な意味を説明し、本文中での使われ方とあわせて述べなさい。
  4. 傍線部②「ながむる」について、次の各問いに答えなさい。
    • (1) ここでの意味として最も適当なものを答えなさい。
    • (2) 終止形と活用の種類を答えなさい。
  5. 「故宮」「帥宮」とは、それぞれ実在の人物としては誰を指すか。漢字の名(親王名)で答えなさい。また、二人はどのような関係にあるか。
  6. 傍線部③「候ひし」、傍線部⑥「見たてまつらむ」、傍線部⑧「奉らせよ」には、それぞれ敬語が用いられている。それぞれの敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)と、誰から誰への敬意かを答えなさい。
  7. 傍線部④「などか久しう見えざりつる」を現代語訳しなさい。あわせて、この発言は誰の言葉か、本文に即して答えなさい。
  8. 傍線部④「などか……見えざりつる」について、この一文には係助詞による表現上の決まりが働いている。
    • (1) その決まりの名称を漢字で答えなさい。
    • (2) どの語を受けて、文末がどう変化しているかを説明しなさい。
  9. 傍線部⑤「言はすれば」の「す」は何を表す助動詞か。文法的意味を答え、あわせて「言はす」の主語(動作の主体)を答えなさい。
  10. 傍線部⑦「あなれ」は、もとは二語が音便を起こして一語のように続いた形である。
    • (1) もとの形(音便化する前の形)を答えなさい。
    • (2) この「なれ」(助動詞「なり」)は推定・伝聞のいずれの意味か、また、なぜそう判断できるかを簡潔に説明しなさい。
  11. 傍線部⑨「昔の人の」は、ある古歌の一節を引いたものである。和泉式部はどのような古歌を念頭に置いてこの言葉を口にしたのか、その歌のおおよその内容(趣旨)を説明しなさい。
  12. 傍線部⑨「昔の人の」の引用に関連して、橘の花は古来、何を思い起こさせるものとされてきたか。本文の文脈に即して答えなさい。
  13. 「あだあだしくもまだ聞こえたまはぬを、はかなきことをも」という和泉式部の心内語から、彼女が帥宮に和歌を贈ることをどのように受け止めているかが読み取れる。その心情を説明しなさい。
  14. 傍線部⑩の和歌「薫る香によそふるよりはほととぎす聞かばや同じ声やしたると」について、次の各問いに答えなさい。
    • (1) この和歌を現代語訳しなさい。
    • (2) 「聞かばや」の「ばや」の文法的意味を答えなさい。
    • (3) 「同じ声やしたると」の「や」の用法を答えなさい。
    • (4) 和泉式部はこの歌で、帥宮の何を確かめたいと言っているのか。「同じ声」が指す内容を明らかにして説明しなさい。
  15. 二首の和歌は、和泉式部・帥宮ともに「ほととぎす」を共通の素材として詠み交わしている。両者が「ほととぎす」に込めた意味の違いを、対比させて説明しなさい。
  16. 帥宮の返歌「同じ枝に鳴きつつをりしほととぎす声は変はらぬものと知らずや」について、次の各問いに答えなさい。
    • (1) この和歌を現代語訳しなさい。
    • (2) 「同じ枝に鳴きつつをりしほととぎす」とは、誰と誰をたとえたものか。
    • (3) 結句「知らずや」には、相手にどのような気持ちを伝える働きがあるか説明しなさい。
  17. 傍線部にない次の語句の、本文中での意味を答えなさい。
    • (1) はかなき
    • (2) あはれと(ながむる)
    • (3) つつましう
    • (4) けけしう(おはします)
    • (5) かたはらいたく
  18. 小舎人童は、もとは誰に仕えていた者で、現在は誰に仕えていると本文で語っているか。あわせて、童が和泉式部のもとを訪れた直接のきっかけを答えなさい。
  19. 次の文学史の問いに答えなさい。
    • (1) 『和泉式部日記』が成立した時代区分を答えなさい。
    • (2) 作者と考えられている和泉式部は、同時代に活躍した女性歌人・作家である。彼女と同じ時代に宮廷で活躍した女性文学者を、作品名とともに一人挙げなさい。
    • (3) 『和泉式部日記』は、作者自身を三人称(「女」)で記す独特の書き方をとる。このような書き方をする点で、同じく和歌を中心に据えた平安期の物語風の作品を一つ挙げなさい。
  20. 『和泉式部日記』は、日記文学の系譜に位置づけられる。次の各問いに答えなさい。
    • (1) 日記文学の先駆とされ、男性が女性に仮託して仮名で書いた紀貫之の作品名を答えなさい。
    • (2) 『和泉式部日記』の内容を一言で言い表すとすれば、何を中心に描いた日記といえるか。
  21. 本文全体をふまえ、この冒頭の段が描こうとしている主題を、「悲しみ」と「出会い」という二つの言葉を用いて、八十字程度で説明しなさい。
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問1 「夢よりもはかなき世の中」とは、恋人であった為尊親王(故宮)と死別したことによって、はかなく終わってしまった二人の仲(男女の仲)を指す。「世の中」は男女の仲の意で、夢以上にはかない恋であったと嘆いている。

問2 現代語訳:「四月十日過ぎにもなったので」。
「ぬれ」=完了の助動詞「ぬ」の已然形。下に接続助詞「ば」が付いて「(〜になった)ので」という順接確定条件を表す。ここは「すでに〜してしまった」という完了の意。

問3 「あはれ」は、対象に深く心を動かされたときに生じる、しみじみとした感動・情趣を表す語で、悲哀・愛憐・感嘆など幅広い感情を含む。本文では「あはれとながむる」「あはれにもののおぼゆる」と繰り返され、亡き恋人をしのぶ作者のもの悲しくしみじみとした心情を表し、場面全体に哀切の情趣を与えている。

問4
(1) ぼんやりと物思いにふけりながら(外を)眺める、の意。「眺める」と「物思いにふける」の両義をあわせ持つ「ながむ」で、ここは悲しみに沈んで庭の景色を見るともなく見ている様子。
(2) 終止形「ながむ」、マ行下二段活用。

問5 「故宮」は為尊親王、「帥宮」は敦道親王を指す。二人は兄弟(故宮=兄、帥宮=弟)の関係にあり、和泉式部は兄の為尊親王と恋仲であったが、その死後、弟の敦道親王と新たな交渉を持つことになる。

問6
・③「候ひし」=謙譲語(「仕える」の意の「候ふ」)。小舎人童が故宮(為尊親王)に対して持つ敬意を、作者(語り手)が表したもの。
・⑥「見たてまつらむ」=「たてまつる」は謙譲の補助動詞。童から、世話の対象である帥宮(または故宮)への敬意。
・⑧「奉らせよ」=謙譲語「奉る」。帥宮が「(和泉式部に)差し上げよ」と命じた言葉の中で用いられ、童から、贈り物を受け取る側である和泉式部への敬意を表す。
(敬語は「誰から誰へ」を、会話文か地の文かで切り分けて判断する。)

問7 現代語訳:「どうして長い間姿を見せなかったのか」。
発言者は和泉式部(作者)。久しく訪れのなかった小舎人童に対し、侍女を介して語りかけた言葉である。

問8
(1) 係り結び(の法則)。
(2) 係助詞「か」(「などか」の「か」)を受けて、文末が連体形「つる」(完了の助動詞「つ」の連体形)で結ばれている。「か」は疑問・反語を表し、ここでは「どうして〜か」という疑問の意で結びを連体形にしている。

問9 「す」=使役の助動詞「す」の已然形。「言はす」で「(侍女に)言わせる」の意。動作の主体(言わせる人)は和泉式部。実際に声に出して言うのは侍女だが、そう仕向けているのは和泉式部である。

問10
(1) もとの形は「あるなれ」。「ある」の撥音便「あんなれ」を経て、表記上「あなれ」となったもの。
(2) 伝聞・推定の助動詞「なり」。ここは伝聞〜推定の意で、「(よいことである)そうだ/ようだ」と訳す。直前が「こそ」を受けた已然形「あなれ」となっており、ラ変型に接続して耳で得た情報(童の話)にもとづく判断を表すことから、視覚でなく聴覚・伝聞にもとづく「なり」と判断できる。

問11 念頭に置いた古歌は『古今和歌集』の「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」。意味は「五月を待って咲く橘の花の香りをかぐと、昔親しんだ人の袖の香りが思い出されることだ」。橘の香が昔の恋人を呼び起こす、という趣旨の歌である。

問12 橘の花(の香り)は、古来「昔の人(昔なじみの人・亡き恋人)」を思い起こさせるものとされてきた。ここでは橘の香が、亡き為尊親王(故宮)への思いを和泉式部の胸によみがえらせている。

問13 和泉式部は、帥宮がまだ浮ついたうわさを立てられてもいない(実直な)方であることをふまえ、「言葉で口上を述べるのは気恥ずかしいが、とりとめのない和歌くらいなら差し上げてもよいだろう」と、ためらいながらも歌を贈る決心をしている。慎みと、相手への淡い関心とが入りまじった心情が読み取れる。

問14
(1) 現代語訳:「(橘の)薫る香に(亡き宮を)なぞらえてしのぶよりは、いっそ(あなたを)ほととぎすとして、その声を聞きたいものです。(亡き宮と)同じ声をしているかと思いますので」。
(2) 「ばや」=自己の願望を表す終助詞。「〜したい」の意。
(3) 「や」=疑問の係助詞(係助詞「や」)。「〜だろうか(と)」という疑問の気持ちを表す。
(4) 「同じ声」とは、亡き兄・為尊親王(故宮)の声を指す。和泉式部は、弟の帥宮が亡き恋人と同じ声・同じ面影を持っているのかどうかを、それとなく確かめたいと詠んでいる。橘の香で故人をしのぶより、生きている弟宮その人の声を聞きたい、という心の動きが込められている。

問15 和泉式部は「ほととぎす」を、亡き故宮になぞらえつつ、その面影を宿す相手として帥宮を指す素材として用い、「同じ声か確かめたい」と相手との距離を測っている。一方、帥宮は自らを「同じ枝に鳴くほととぎす」と詠み、亡き兄と自分とを一続きのものとして示し、「声は変はらぬ」と積極的に近づく素材として用いている。同じ鳥に、女は「確かめたい距離」を、男は「変わらぬ親しさ」を込めている点で対照的である。

問16
(1) 現代語訳:「(兄と)同じ枝で鳴いていたほととぎす(である私)の声は、(亡き兄と)変わらないものだと、ご存じないのですか」。
(2) 兄・為尊親王(故宮)と弟・帥宮(敦道親王)の兄弟を、同じ枝に鳴くほととぎすにたとえている。
(3) 結句「知らずや」は、「知らないのですか(いや、知っているでしょう)」と相手に問いかける形で、「自分の声は亡き兄と変わらないのだから、確かめるまでもないではないか」と、親しみを込めて和泉式部に近づこうとする気持ちを伝えている。

問17
(1) はかなき=あっけない、頼りない、むなしい。
(2) あはれと(ながむる)=しみじみと心打たれる思いで(眺める)。もの悲しく感慨深い気持ちで。
(3) つつましう=遠慮して、気が引けて。「つつまし」の連用形ウ音便。
(4) けけしう(おはします)=よそよそしく、近づきがたく(いらっしゃる)。とりすました感じである。
(5) かたはらいたく=(自分のすることが)きまりが悪く、気恥ずかしく。みっともなく感じられて。

問18 小舎人童は、もとは故宮(為尊親王)に仕えていたが、為尊親王の死後は、その弟である帥宮(敦道親王)に仕えていると語っている。和泉式部のもとを訪れた直接のきっかけは、帥宮から「これ(橘の花)を持って参り、和泉式部がどう御覧になるか尋ねて差し上げよ」と命じられたことである。

問19
(1) 平安時代(平安中期)。
(2) (例)紫式部『源氏物語』。ほかに清少納言『枕草子』、赤染衛門なども可。和泉式部とともに一条天皇の中宮彰子に仕えた人物を挙げるとなおよい。
(3) (例)『伊勢物語』。和歌を中心に据え、主人公を「男」と記す歌物語で、作者自身を「女」と三人称的に記す『和泉式部日記』と通じる。(『源氏物語』を挙げてもよい。)

問20
(1) 『土佐日記』。
(2) 和泉式部と帥宮(敦道親王)との恋の経緯を、二人の間で交わされた和歌を中心に描いた恋愛日記といえる。

問21 (解答例)恋人為尊親王を失った深い悲しみの中にいた作者のもとに、その弟帥宮からの便りが届き、橘の香と和歌の贈答を通じて新たな出会いが始まる。哀傷と恋の予感が交錯する場面である。(八十字程度)

※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は古典原文(著作権の対象外)を用いています。

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