漢文『論語』学而・為政をやさしく解説|書き下し文・現代語訳・句法のポイント

漢文『論語』学而・為政をやさしく解説|書き下し文・現代語訳・句法のポイント 漢文

1. はじめに ― 『論語』学而・為政とは

生徒
生徒『論語』ってよく聞くけど、いったい誰の言葉を集めた本なんですか?章句が多くて、どこから覚えればいいか分かりません…。
先生
先生『論語』は孔子とその弟子たちの言行録だよ。テストに出やすい十の章句を、白文・書き下し・現代語訳の三つセットで押さえていこう。

『論語』は、孔子とその弟子たちの言行を記録した書物で、儒教の最も基本的な経典です。冒頭の「学而篇」には学問や友情・人格についての教えが、続く「為政篇」には政治や学びのあり方についての教えが多く収められています。

定期テストでは、有名な章句の書き下し文・現代語訳に加えて、「不亦〜乎(〜ではないか)」などの句法「温故知新」などの成語、重要語の意味が頻出します。この記事では、テストに出やすい十の章句をまとめて確認していきます。

学びて時に之を習ふ=学びのサイクル 図解

2. 白文・訓読文

まずは白文(訓点のないもとの漢文)です。

① 子曰、「学而時習之、不亦説乎。有朋自遠方来、不亦楽乎。人不知而不慍、不亦君子乎。」

② 曾子曰、「吾日三省吾身。為人謀而不忠乎。与朋友交而不信乎。伝不習乎。」

③ 子曰、「巧言令色、鮮矣仁。」

④ 子曰、「君子食無求飽、居無求安。」

⑤ 子曰、「吾十有五而志于学、三十而立、四十而不惑、五十而知天命、六十而耳順、七十而従心所欲、不踰矩。」

⑥ 子曰、「温故而知新、可以為師矣。」

⑦ 子曰、「学而不思則罔、思而不学則殆。」

⑧ 子曰、「由、誨女知之乎。知之為知之、不知為不知、是知也。」

⑨ 子曰、「人而無信、不知其可也。」

⑩ 子曰、「君子周而不比、小人比而不周。」

3. 書き下し文

① 子曰はく、「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや。朋有り遠方より来たる、亦楽しからずや。人知らずして慍みず、亦君子ならずや。」と。

② 曾子曰はく、「吾日に吾が身を三たび省みる。人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交はりて信ならざるか。伝へて習はざるか。」と。

③ 子曰はく、「巧言令色、鮮なし仁。」と。

④ 子曰はく、「君子は食飽くことを求むる無く、居安きことを求むる無し。」と。

⑤ 子曰はく、「吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順ふ。七十にして心の欲する所に従へども、矩を踰えず。」と。

⑥ 子曰はく、「故きを温めて新しきを知れば、以て師と為るべし。」と。

⑦ 子曰はく、「学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆ふし。」と。

⑧ 子曰はく、「由よ、女に之を知るを誨へんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す、是れ知るなり。」と。

⑨ 子曰はく、「人にして信無くんば、其の可なるを知らざるなり。」と。

⑩ 子曰はく、「君子は周して比せず、小人は比して周せず。」と。

①の「学びて時に之を習ふ」のように、「而」は置き字なので読みません。また「不亦説乎」は「亦説ばしからずや」と読みます。

先生
先生コツを一つ。書き下しに「而」をそのまま書くのは典型的なミスだよ。「学びて」の「て」に意味が出ていると考えよう。

4. 現代語訳

テストで問われやすいポイントを中心に、章句ごとに意味を確認しましょう。

学んで復習することの喜びを説いた章句です。「説」は「よろこぶ」の意味。後半の「人不知而不慍、不亦君子乎」は「人が(自分を)認めてくれなくても不平不満を抱かない、それこそ君子(立派な人物)ではないか」という意味です。

曾子が毎日反省する三つの事柄です。「人のために何かを考え行動するとき、まごころを尽くしていなかったか」「友人と交わるとき、誠実さ・信義を欠いていなかったか」「教わったことを、よく復習していなかったか」の三つを毎日反省するということです。

言葉を巧みに飾り、顔つきをやわらげて人に取り入ろうとするような人物には、本当の思いやり(仁)が少ない、という批判です。

君子の暮らしぶり(食事や住まいに対する構え)を述べた章句です。書き下し文の形がそのまま問われやすいので、「求むる無く・求むる無し」の形で覚えましょう

孔子が自分の生涯を振り返った有名な章句です。最後の「従心所欲、不踰矩」は「(七十歳になって)自分の心の思うままに行動しても、道徳の規範(道理)を踏み外すことがなくなった」という意味です。

「昔の事柄や学問をよく学び直して、そこから新しい知識や道理を見いだす」——そうすれば「人の師となることができる」(可以為師矣)という意味です。

学んでも考えなければ物事の道理が身につかず(罔し)、考えるだけで学ばなければ独断におちいって危うい(殆ふし)。知識を得ることと自分の頭で考えることの両方が大切だと説いています。

知っていることは知っていると認め、知らないことは知らないと正直に認める。知ったかぶりをせず、自分の知識の限界を自覚することこそが本当に「知る」ということだ、という弟子の由(子路)への教えです。

人として信義(誠実さ・約束を守る心)がなければ、その人がうまくやっていけるかどうか(人として通用するかどうか)わからない、という意味です。

君子は人と広く公平に親しんで、特定の者とだけ私的に結びつくことはしない。小人はその逆だ、と両者の人づきあいのあり方を対比しています。

5. 句法・重要語のポイント

句法「不亦〜乎」(亦〜ずや)

①の章句で三度くり返される「不亦〜乎」は、「〜ではないか」という強い感動や詠嘆(よろこび・心からの肯定)を表す句法です。「不亦説乎→亦説ばしからずや」のように読みます。書き下し・訳ともに最頻出です。

覚えておきたい重要語

読み・意味
「よろこぶ」の意(「悦」に通じる)
友・友人(同じ師のもとで学ぶ仲間、同門の友)
「慍(うら)みず」=うらむ・腹を立てる・不満に思う
まごころ・誠実さ(言葉に偽りがなく誠実であること)
「罔(くら)し」と読む。学んでも考えないと道理が身につかない状態
「殆(あや)ふし」と読む。考えるだけで学ばず独断におちいって危うい状態

テストに出る成語

成語由来と意味
温故知新(おんこちしん)⑥「温故而知新」から。昔の事柄や学問をよく学び直して、そこから新しい知識や道理を見いだすこと。
不惑(ふわく)⑤「四十にして惑はず」から生まれた、四十歳を表す語。
生徒
生徒「温故知新」や「不惑」って、どの章句から来た言葉かまで問われるんですか?
先生
先生そう、成語は由来の章句とセットで覚えるのが鉄則。温故知新は⑥、不惑は⑤だね。

6. 孔子の教えと現代へのつながり

孔子は、学ぶことを人生の根本に置き、それを喜ばしい営みとしてとらえていました。①では学んで復習することの喜びを説き、⑦では知識を得ることと自分の頭で考えることの両立を説き、⑥では過去の学びを土台に新しい道理を見いだす姿勢を重んじています。

こうした教えは、二千年以上たった今もそのまま通用します。「温故知新」は、歴史や先人の知恵に学んで新しい発想を生み出すときに今でも使われる言葉ですし、⑧の「知らないことは知らないと認める」姿勢は、情報があふれる現代でこそ大切な学びの態度といえます。テスト勉強でも、ただ暗記する(学ぶ)だけでなく「なぜそうなるのか」を考える——まさに⑦の教えの実践です。

確認クイズ(3問)

Q1. ①「不亦説乎」の「説」と同じ意味・読みで用いられている漢字はどれ?

ア 喜 イ 説明 ウ 遊説

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正解:ア 解説:「説」はここでは「よろこぶ」の意味で「悦」に通じます。「説明」「遊説」の「説」は「とく・述べる」の意味なので異なります。

Q2. ⑥「温故而知新」から生まれた成語「温故知新」の意味として正しいものは?

ア 古いものをすべて捨てて新しいものを取り入れること イ 昔の事柄や学問をよく学び直して、新しい知識や道理を見いだすこと ウ 新しい知識だけをひたすら追い求めること

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正解:イ 解説:「故きを温めて新しきを知る」、つまり昔の学びを土台に新しい道理を見いだすことです。孔子は「そうすれば人の師となることができる」と続けています。

Q3. 『論語』は誰の言行を記録した書物?

ア 孟子 イ 老子 ウ 孔子

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正解:ウ 解説:『論語』は孔子とその弟子たちの言行録で、その教えにもとづく思想(学派)を儒教(儒学)といいます。

7. つまずきやすいポイントと入試・テストでの問われ方

『論語』は短い章句が多いぶん、一字一句の読み方や句法がそのまま出題されます。ここでは、生徒がよくつまずくところと、テストでどう問われるかを整理します。

(1)「而」は読まない置き字

①「学時習之」、⑦「学不思」「思不学」、⑩「周不比」などに出てくる「而」は、上の語と下の語をつなぐ働きをもつ置き字で、原則として読みません。「学びて」「思ひて」のように、上の語の活用語尾(送りがな)「〜て」「〜で」に意味が表れます。書き下し文に「而」をそのまま書いてしまうのは典型的な誤りなので注意しましょう。

(2)「不亦〜乎」の語順と読み

「不亦説乎」を「亦説ばしからずや」と読むとき、漢字の並び(不・亦・説・乎)と読む順序(亦・説・ず・や)が入れ替わる点が難所です。「不」は打消で文末近くの「〜ず」に、「乎」は文末の疑問・詠嘆の助字で「〜や」に対応します。「不亦〜乎」とあったら機械的に「亦〜ずや」と置き換えられるよう、形ごと覚えてしまうのが近道です。

(3) 「知之為知之」の「為」

⑧「知之知之、不知不知」の「為」は「〜と為す(〜とする・〜と認める)」と読む動詞です。受身や使役の「為」ではない点に注意します。「知っていることは知っているとし、知らないことは知らないとする」と、同じ字をくり返すリズムごと押さえましょう。

(4) 反語の「人而無信、不知其可也」

⑨は「人にして信無くんば、其の可なるを知らざるなり」と読みます。「人」の「而」は「〜にして(〜であって・〜でありながら)」と読む点、「無くんば」が「もし〜がなければ」という仮定を表す点が問われやすいところです。

テスト・入試での出題例

  • 傍線部「不亦楽乎」を書き下し文に改めよ(→「亦楽しからずや」)。
  • 「温故知新」の由来の章句を本文中から抜き出し、その意味を答えよ。
  • 「四十而不惑」から生まれ、四十歳を表す語を漢字二字で書け(→「不惑」)。
  • ⑦で孔子が大切だと説いている二つの態度を、本文の語句を使って説明せよ(→「学ぶこと」と「(自分の頭で)思う・考えること」)。
  • 「説」「朋」「慍」など重要語の読みと意味を答えよ。
先生
先生⑧の「為」を受身や使役と取り違えないようにね。ここは「〜と為す(〜と認める)」の動詞だよ。

8. ミニ練習問題(解答つき)

ここまでの内容を確かめましょう。まず自分で考えてから、解答を見てください。

問1 次の白文を書き下し文に改めなさい。
「学而不思則罔、思而不学則殆。」

問2 ⑤「七十而従心所欲、不踰矩」を現代語訳しなさい。

問3 次の年齢を表す語を、『論語』に由来する言い方で答えなさい。
(1)四十歳 (2)(参考)五十歳の「天命を知る」から生まれた言い方

問4 ⑩「君子周而不比、小人比而不周」を参考に、孔子が考える「君子」と「小人」の人づきあいの違いを説明しなさい。

解答・解説

答1 学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆ふし。
解説:「而」は置き字で読まず、上の語に「〜て」を付けて続けます。「則」は「すなはち」と読み、「〜すると(その結果)」という意味です。

答2 (七十歳になって)自分の心が思うままに行動しても、道徳の規範(道理)を踏み外すことがなくなった。
解説:「従心所欲」は「心の欲する所に従ふ」、「不踰矩」は「矩を踰えず」。「矩」はもと大工が使う「さしがね(直角の定規)」のことで、転じて「物事の規範・道理」を表します。

答3 (1)不惑(ふわく) (2)知命(ちめい)。
解説:⑤の章句からは「志学(十五歳)」「而立(じりつ・三十歳)」「不惑(四十歳)」「知命(五十歳)」「耳順(じじゅん・六十歳)」など、年齢を表す言い方が数多く生まれました。とくに「不惑」はよく問われます

答4 君子は人と広く公平に親しみ、特定の相手とだけ私的に結びつくことをしない。一方、小人は特定の相手とだけ私的に結びつき、広く公平に人と親しむことができない。
解説:「周」は「広く公平に親しむ」、「比」は「私的に・偏って結びつく」という対照的な意味で使われています。君子と小人を対比する『論語』らしい構成です。

9. よくある質問(Q&A)

Q. 「子曰はく」の「子」とは誰のことですか。
A. ここでの「子」は先生という敬称で、『論語』では基本的に孔子を指します。「子曰はく」は「先生(=孔子)がおっしゃった」という意味です。②の「曾子(そうし)」のように、ほかの人物には名前を付けて区別します。

Q. 「論語」と「儒教」はどう違うのですか。
A. 『論語』は書物の名前で、孔子とその弟子たちの言行を記録したものです。その教えにもとづく思想・学派を儒教(儒学)といいます。つまり『論語』は儒教の代表的な経典の一つ、という関係です。

Q. 「説」が「よろこぶ」になるのが覚えられません。
A. 「説」は本来「とく・述べる」の意味ですが、①では「悦(よろこぶ)」と同じ音・同じ意味で使われていると考えると分かりやすいです。このように、別の漢字の代わりに使われる字を「通仮字(つうかじ)」といいます。「学んで復習できるのは、うれしい(悦ばしい)ことだ」と内容で結びつけて覚えましょう。

Q. 書き下し文は、ひらがなと漢字のどちらで書けばよいですか。
A. 原則として、助詞・助動詞などの付属語はひらがなに直し、実質的な意味をもつ語(名詞・動詞など)は漢字のまま残します。たとえば「不亦説乎」は「亦説ばしからず」と、打消の「ず」や疑問・詠嘆の「や」をひらがなで書きます。

先生
先生白文・書き下し・現代語訳の三つをセットで頭に入れて、声に出して読めば自然と身につくよ。焦らず一章句ずつ、いっしょにやっていこう。

10. まとめ ― 学びの章句として読む

学而・為政の章句は、「学ぶよろこび」(①)、「日々の反省」(②)、「学ぶことと考えることの両立」(⑦)、「過去に学んで新しさを生む」(⑥)、「知ったかぶりをしない正直さ」(⑧)など、学びの姿勢をめぐる教えが中心です。テスト対策としては、まず白文・書き下し文・現代語訳の三つをセットで頭に入れ、そのうえで「不亦〜乎」「而(置き字)」といった句法と、「温故知新」「不惑」などの成語を、由来の章句と結びつけて覚えるのが効率的です。意味を理解してから声に出して読むと、独特のリズムごと自然に覚えられます。

まとめ

・『論語』は孔子とその弟子たちの言行録。その教えにもとづく学派が儒教(儒学)。

・「不亦〜乎」は「亦〜ずや」と読み、「〜ではないか」という詠嘆を表す。「而」は置き字で読まない。

・成語「温故知新」(⑥)と「不惑」(⑤)は、由来の章句とセットで覚える。

・⑦「学びて思はざれば則ち罔し」——学ぶことと考えることの両立が孔子の学問観。

・「説(よろこぶ)」「朋(友)」「慍(うらむ)」「信(まごころ・誠実さ)」など重要語の意味も頻出。

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この記事を書いた人

中本 裕太(現役の古典講師)

国語科の教員免許を持つ現役の古典講師。個別指導塾フィット塾長。「誰でも古典塾」で古文・漢文の解説と約8,000問のドリルを無料公開しています。くわしいプロフィール

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