『列子』湯問篇の「愚公移山(愚公、山を移す)」は、詠嘆「甚矣、汝之不恵」と反語「其如土石何」「何苦而不平」という二つの句法、そして「且」「懲」「迂」などの重要語、愚公と智叟の対比が定番の出題ポイントです。書き下し・現代語訳・句法・主題をバランスよく確認しましょう。
本文
【一】
太行・王屋の二山は、方七百里、高さ万仞なり。北山の愚公なる者、年且に九十ならんとす。山に面して居る。山北の塞、出入の迂なるを懲り、室を聚めて謀りて曰はく、「吾と汝と力を畢くして険を平らかにし、豫南に指通し、漢陰に達せんこと、可ならんか。」と。雑然として相許す。【二】
其の妻疑ひを献じて曰はく、「君の力を以つてしては、曾ち魁父の丘をも損する能はず。太行・王屋を如何せん。且つ焉くにか土石を置かん。」と。【三】
河曲の智叟笑ひて之を止めて曰はく、「甚だしきかな、汝の不恵なる。残年の余力を以つてしては、曾ち山の一毛をも毀つ能はず。其れ土石を如何せん。」と。北山の愚公……曰はく、「……子子孫孫窮匱無きなり。而るに山は加増せず、何ぞ苦しみて平らかならざらん。」と。河曲の智叟応ふる以無し。【四】
操蛇の神之を聞き、其の已まざるを懼れ、之を帝に告ぐ。帝其の誠に感じ、夸蛾氏の二子に命じて二山を負はしむ。
問題
- 傍線部「且に九十ならんとす」の「且」の読み(ふりがな)と意味を答えよ。
- 傍線部「山北の塞、出入の迂なるを懲り」の「懲り」「迂」の意味をそれぞれ答えよ。
- 傍線部「君の力を以つてしては、曾ち魁父の丘をも損する能はず」を現代語訳せよ。
- 傍線部「甚だしきかな、汝の不恵なる」に用いられている句法の名称を答え、意味も記せ。
- 傍線部「其れ土石を如何せん」の句法を答え、現代語訳せよ。
- 傍線部「何ぞ苦しみて平らかならざらん」を、句法に注意して現代語訳せよ。
- 傍線部「応ふる以無し」とあるが、智叟がこうなったのはなぜか。理由を説明せよ。
- 傍線部「帝其の誠に感じ」の「誠」とは何を指すか。またこの話(愚公移山)が伝える主題を答えよ。
解答・解説
問1の解答
読み=「まさ(に)」。意味=「今にも(九十に)なろうとしている・もうすぐ九十だ」。『且に…んとす』で「今にも…しようとする」という再読文字。
問2の解答
「懲り」=(不便さに)苦しむ・困り悩む。「迂」=回り道・遠回り。山が北をふさぎ、出入りが遠回りになるのに悩んで、の意。
問3の解答
「あなたの力では、(あんな大山どころか)魁父程度の小さな丘さえ崩すことができない」。妻が計画の困難さを心配して述べた言葉。「曾ち…ず」は「まったく…ない・…さえない」と強い否定を表す。
問4の解答
句法=詠嘆(感嘆)。「甚矣」を文頭に置いて強調した倒置の詠嘆で、「ひどいものだなあ、おまえの愚かさは」の意。「不恵」は「知恵がない・愚かなこと」。智叟が愚公をあざけった言葉。
問5の解答
句法=反語(「如何せん」=どうしようか、いや、どうにもできない)。訳=「いったいあの土や石をどうするというのか(=どうにもできまい)」。掘り出した土石の置き場もないと嘲る智叟の反語。
問6の解答
「どうして(山が)平らにならないことがあろうか、いや、必ず平らになる」。「何ぞ…ざらん」の反語。子孫は尽きないが山は増えない以上、いつかは必ず平らにできる、という愚公の確信を示す。
問7の解答
「返答する手立てがなくなった(言い返せなかった)」の意。子孫は限りなく続くのに山は高くなりはしないのだから必ず平らにできる、という愚公の理屈に智叟が反論できなかったため。愚公の勝ち・智叟の敗北を示す場面。
問8の解答
「誠」=愚公が山を移そうと諦めずに努力し続けるひたむきな真心(誠意)。天帝はその誠実さに感動して二山を運び去らせた。主題=どんな困難な事業も、たゆまず努力を続ければ必ずやり遂げられるということ。愚公(信念・継続)と智叟(目先の賢しら)の対比で描かれる。
👉 本文の現代語訳・語句・文法のくわしい解説は 解説記事 で確認できます。
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