唐の劉禹錫『陋室銘』は、狭く粗末な住まい(陋室)も住む人の徳が高ければ立派なものだ、と説く「銘」の名作です。対句(駢文)の美しさと、末尾「何陋之有」の反語・倒置が定期テストの最頻出ポイント。読み・語句・句法・主題をまとめて確認しましょう。
本文
【書き下し文】
山は高きに在らず、仙有れば則ち名あり。水は深きに在らず、龍有れば則ち霊あり。斯れは是れ陋室なるも、惟だ吾が徳のみ馨し。苔痕は階に上りて緑に、草色は簾に入りて青し。談笑に鴻儒有り、往来に白丁無し。以て素琴を調べ、金経を閲すべし。絲竹の耳を乱す無く、案牘の形を労する無し。南陽の諸葛の廬、西蜀の子雲の亭。孔子云はく、「何の陋しきこと之有らん」と。
問題
- 傍線部を含む文「斯れは是れ陋室なるも、惟だ吾が徳のみ馨し」の「馨」の読み(送り仮名も含む)と意味を答えよ。
- 「有仙則名」「有龍則霊」に共通して用いられている「則」の意味・用法を、書き下し「仙有れば則ち名あり」を踏まえて説明せよ。
- 「苔痕上階緑、草色入簾青」を現代語訳せよ。また、この二句が形式上どのような関係になっているか答えよ。
- 「談笑有鴻儒、往来無白丁」の「鴻儒」「白丁」はそれぞれどのような人物を指すか、対比を明らかにして説明せよ。
- 「無絲竹之乱耳、無案牘之労形」について、(1)「絲竹」「案牘」の意味を答え、(2)全体を現代語訳せよ。
- 末尾「何陋之有」を書き下し文に改め、用いられている句法を答えよ。
- 作者が「南陽諸葛廬、西蜀子雲亭」と、諸葛亮(孔明)や揚子雲(揚雄)の住まいを引き合いに出したのはなぜか、説明せよ。
- 『陋室銘』全体で作者が最も言いたいこと(主題)を、本文の語句を踏まえて簡潔に説明せよ。
解答・解説
問1の解答
読み=「かんばし(し)」。意味=「香りが高い」「(徳などが)よい評判として広く行き渡る」。ここでは自分の徳だけが立派に薫っている、の意で、この一文が全体の主旨句にあたる。
問2の解答
「則」は「則ち」と読み、「(Aならば)そこで・すぐに(Bとなる)」という順接の条件を表す。「(山は高くなくても)仙人がいれば、そこで有名になる」という仮定・条件の結果を導く語。
問3の解答
訳=「苔(こけ)のあとは階段を上って緑に色づき、草の色はすだれに映り込んで青々としている」。関係=互いに文の組み立て・意味が対応する対句(駢句)。字数・構造をそろえた対句を重ねるのが本文の特徴。
問4の解答
「鴻儒」=学識の深い大学者・すぐれた儒者。「白丁」=官位のない、学問のない一般庶民。立派な学者とばかり交わり、教養のない者とは付き合わない、と対比させ、交友の高尚さを示している。
問5の解答
(1)「絲竹」=弦楽器と管楽器、転じて音楽・楽器の音。「案牘」=役所の公文書・書類。(2)訳=「(やかましい)音楽が耳をわずらわせることもなく、(わずらわしい)公文書が体を疲れさせることもない」。俗事にとらわれない静かな暮らしを述べる。
問6の解答
書き下し=「何の陋しきこと(か)之有らん」。句法=反語(「どうして粗末だといえようか、いや粗末ではない」)。さらに本来「有何陋」の語順を、目的語を「之」で前に置いた倒置(賓語前置)の形になっている点も要注意。
問7の解答
諸葛亮の草廬や揚雄のあずまやも質素な住まいだったが、そこに住んだ人物が高徳・高名であった。自分の陋室もそれらと同じように、住む人の徳ゆえに立派なのだと、名士の例を借りて陋室が「陋(いや)しくない」ことを示すため。
問8の解答
住まいが狭く粗末(陋室)であっても、住む人の徳が高ければ少しも卑しくない、ということ。「斯是陋室、惟吾徳馨」を主旨とし、末尾の孔子の言葉「何陋之有」で締めくくって、貧しさに安んじて道を楽しむ(安貧楽道)作者の高潔な生き方を示している。
👉 本文の現代語訳・語句・文法のくわしい解説は 解説記事 で確認できます。
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