藤原道綱母『蜻蛉日記』の「嘆きつつ(町の小路の女・うつろひたる菊)」は、夫兼家の浮気に苦しむ心情を詠んだ和歌「嘆きつつひとり寝る夜の…」を中心に問われます。掛詞「あくる」、反語「かは」、接続助詞「つつ」、「つとめて」「ことわり」などの重要語、兼家への皮肉という主題が定番の出題ポイントです。
本文
【本文(一)】
二三日ばかりありて、暁方に、門をたたく時あり。さなめりと思ふに、憂くて、開けさせねば、例の家とおぼしき所にものしたり。【本文(二)】
つとめて、なほもあらじと思ひて、 嘆きつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る と、例よりはひきつくろひて書きて、うつろひたる菊にさしたり。【本文(三)】
返り言、「あくるまでもこころみむとしつれど、とみなる召し使ひの来あひたりつればなむ。いとことわりなりつるは。 げにやげに冬の夜ならぬ真木の戸もおそくあくるはわびしかりけり」 とあり。さても、いとあやしかりつるほどに、ことなしびたり。
問題
- 傍線部「暁方」の読みを、現代仮名遣いのひらがなで書きなさい。
- 傍線部「つとめて」の意味として最も適当なものを答えなさい。
- 傍線部「うつろひたる菊」とはどのような菊か、また作者がこれに歌を挿して贈った意図もふまえて説明しなさい。
- 和歌中の傍線部「あくる」には二つの意味が掛けられている。掛詞として掛けられている二語を漢字で書き、それぞれの意味を答えなさい。
- 傍線部「かは知る」に用いられている「かは」の文法的な働き(種類)を答え、この一句を現代語訳しなさい。
- 傍線部「嘆きつつ」の「つつ」の意味・用法を答えなさい。
- 傍線部「例の家」とはどこを指すか。本文の内容に即して具体的に答えなさい。
- 傍線部「ことなしびたり」とはどのような様子か。また、それを見た作者の心情もふまえて説明しなさい。
解答・解説
問1の解答
あかつきがた。「暁(あかつき)」は夜明け前のまだ暗い時分を指す。兼家が明け方に門をたたく場面。
問2の解答
翌朝(早朝)。「つとめて」は①早朝②(何かがあった)その翌朝、の意。ここは兼家を門前で追い返した「その翌朝」。
問3の解答
色があせて(変色して)盛りを過ぎた菊。「うつろふ」は色があせる・心変わりするの意で、兼家の心変わりを暗示し、恨みの気持ちを託している。
問4の解答
「明くる」(夜が明ける)と「開くる」(戸を開ける)の掛詞。門を開けてもらえず一人寝した夜が明けるまでの長さと、門が「開く」ことを掛け、兼家への皮肉を利かせている。
問5の解答
「かは」は反語の係助詞(結びは連体形「知る」)。訳「どんなに長いものとおわかりでしょうか、いや、おわかりにはなりますまい」。反語で兼家を強く責めている。
問6の解答
接続助詞「つつ」で、動作の並行(〜しながら)を表す。「嘆きながら」の意。反復・継続の用法もあるが、ここは「嘆きつつ(=嘆きながら)ひとり寝る」で並行。
問7の解答
兼家がいつも通っている「町の小路の女」の家。門を開けてもらえなかった兼家が、そのままいつもの女のもとへ行ってしまったことを表す。
問8の解答
「ことなしぶ」は何事もなかったかのように平然とふるまう意で、兼家が浮気を悪びれもせず素知らぬ顔をしている様子。作者は、そんな夫の態度をいっそう不快に思い、あきれと不信をつのらせている。
👉 本文の現代語訳・語句・文法のくわしい解説は 解説記事 で確認できます。
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