『論語』は孔子とその弟子の言行録で、定期テストでは「不亦~乎」「勿~」などの句法、置き字(於)、再読の有無、そして各章の主題(学び・仁・君子と小人)が繰り返し問われます。書き下し文と現代語訳を正確に対応させ、有名な四字熟語(温故知新・克己復礼・巧言令色)の出典章を押さえるのが得点の鍵です。
本文(傍線①〜⑮)
【学而篇】子曰はく、「学びて①時に之を習(なら)ふ、②亦(また)説(よろこ)ばしからずや。朋(とも)有り、遠方より来(きた)る、亦楽しからずや。③人知らずして慍(うら)みず、亦君子ならずや。」と。
【学而篇】子曰はく、「④巧言令色(かうげんれいしよく)、鮮(すく)なし仁。」と。
【為政篇】子曰はく、「吾(われ)十有五(じふいうご)にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳(みみ)順(したが)ふ。七十にして⑤心の欲(ほつ)する所に従へども、⑥矩(のり)を踰(こ)えず。」と。
【為政篇】子曰はく、「⑦故(ふる)きを温(たづ)ねて新しきを知れば、⑧以(もつ)て師と為(な)るべし。」と。
【為政篇】子曰はく、「学びて思はざれば⑨則(すなは)ち罔(くら)し、思ひて学ばざれば則ち⑩殆(あや)ふし。」と。
【里仁篇】子曰はく、「⑪朝(あした)に道を聞かば、夕(ゆふ)べに死すとも可なり。」と。
【里仁篇】子曰はく、「⑫君子は義に喩(さと)り、小人(せうじん)は利に喩る。」と。
【顔淵篇】顔淵(がんえん)、仁を問ふ。子曰はく、「⑬己(おのれ)に克(か)ちて礼に復(かへ)るを仁と為す。一日(いちじつ)己に克ちて礼に復れば、天下仁に帰(き)す。仁を為すは己に由(よ)る。⑭而(しか)して人に由らんや。」と。顔淵曰はく、「請(こ)ふ、其の目(もく)を問はん。」と。子曰はく、「礼に非(あら)ざれば⑮視(み)ること勿(な)かれ、礼に非ざれば聴くこと勿かれ、礼に非ざれば言ふこと勿かれ、礼に非ざれば動くこと勿かれ。」と。
語注 子=先生。ここでは孔子を指す。「子曰はく」は「しいはく」と読む。 説ばし=「悦」に同じ。心からうれしい。 朋=同じ学問を志す友。 慍む(うらむ) 巧言令色(かうげんれいしよく) 仁=人を思いやる心。『論語』の中心となる徳。 十有五=十五歳。「有」は「又」で、十と五をつなぐ。 天命=天から与えられた使命。 矩(のり) 罔し(くらし) 殆ふし(あやふし) 道=人として生きるべき正しい道理。 喩る=よく理解している・通じている。ここは「判断の基準としてよくわきまえている」の意。 義=人として正しい筋道。 利=目先の損得。 君子=学問・人格ともにすぐれた人。反対は「小人」。 礼=社会の秩序を保つきまり・作法。 目=箇条・具体的な項目。 ※読み方が分かれるところ=「慍みず」は「慍らず(いからず)」、「故きを温ねて」は「故きを温めて」、「心の欲する所に従へども」は「従ひて」と読む教科書もある。また「朋有り、遠方より来たる」は「朋の遠方より来たる有り」と読む教科書もあり、「勿かれ」は「勿れ(なかれ)」と送る教科書もある。お使いの教科書の読み方に合わせること。
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設問
A 語句の意味と読み
- ①「時に之を習(なら)ふ」の「習ふ」のここでの意味を書け。
- ③「人知らずして慍(うら)みず」の「慍む」の意味を書け。
- ④「巧言令色(かうげんれいしよく)、鮮(すく)なし仁」の「巧言令色」とはどのような態度か。
- ④「巧言令色(かうげんれいしよく)、鮮(すく)なし仁」の「鮮なし」はどのような意味か。現代語の「鮮やか」との違いにふれて書け。
- ⑦「故(ふる)きを温(たづ)ねて新しきを知れば」の「温」は、ここでは何と読むか。教科書によって読みが分かれることにもふれて書け。
- ⑨「則(すなは)ち罔(くら)し」の「罔し」の意味を書け。
- ⑩「殆(あや)ふし」の意味を書け。
B 句法
- ②「亦(また)説(よろこ)ばしからずや」は、白文では「不亦説乎」の形である。この「不亦〜乎」はどのような意味を表す言い方か。
- ⑤「心の欲(ほつ)する所に従へども」の「所」はどのようなはたらきをしているか。「心の欲する所」の意味もあわせて書け。
- ⑧「以(もつ)て師と為(な)るべし」の「べし」はどのような意味か。
- ⑪「朝(あした)に道を聞かば」の「ば」は何形に接続し、どのような意味を表すか。
- ⑭「而(しか)して人に由らんや」の句法名と意味を書け。
- ⑮「視(み)ること勿(な)かれ」の「勿かれ」の意味・用法を書け。
C 主語・指す内容
- ①「時に之を習(なら)ふ」の「之」は何を指すか。
- ⑥「矩(のり)を踰(こ)えず」の「矩」は、ここでは何をたとえているか。
- ⑬「己(おのれ)に克(か)ちて礼に復(かへ)るを仁と為す」は、誰が誰のどのような問いに答えた言葉か。
- ⑭「而(しか)して人に由らんや」の「人」とは誰のことか。
D 口語訳
- ①②を含む「学びて時に之を習(なら)ふ、亦(また)説(よろこ)ばしからずや」を口語訳せよ。
- ⑤⑥「心の欲(ほつ)する所に従へども、矩(のり)を踰(こ)えず」を口語訳せよ。
- ⑪を含む「朝(あした)に道を聞かば、夕(ゆふ)べに死すとも可なり」を口語訳せよ。
- ⑫を含む「君子は義に喩(さと)り、小人(せうじん)は利に喩る」を口語訳せよ。
E 内容・記述
- ⑨「則(すなは)ち罔(くら)し」と、続く「思ひて学ばざれば則ち殆(あや)ふし」とを対比して、この章が説いていることを四十字以内で書け。
- ⑤⑥を含む為政篇の章(「吾(われ)十有五(じふいうご)にして学に志す」〜「矩(のり)を踰(こ)えず」)は、全体として何を述べたものか。
- ⑫「君子は義に喩(さと)り」とあるが、孔子はこの対比によって、人を何によって見分けようとしているのか説明せよ。
- ⑮「視(み)ること勿(な)かれ」以下で、孔子は「仁」を実践する具体的な項目(目)として何を挙げたか。簡潔にまとめよ。
F 文学史・思想
- 『論語』はどのような書物か。誰の言葉を誰がまとめたものかにふれて書け。また、儒教でどう位置づけられるかも書け。
- ⑦「故(ふる)きを温(たづ)ねて新しきを知れば」からできた四字熟語を書き、その意味と、『論語』の何篇の言葉かを書け。
- ⑬「己(おのれ)に克(か)ちて礼に復(かへ)るを仁と為す」からできた四字熟語を書き、読みも示せ。また、この言葉が『論語』の何篇に見えるかも書け。
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解答と解説
▼ 解答・解説を見る
A 語句の意味と読み
問1 くり返し復習する・おさらいして身につける。
└ 新しく学ぶことではなく、折にふれてくり返す意
問2 腹を立てる・うらみに思う。
└ 「慍らず(いからず)」と読む教科書もある。読みはお使いの教科書に合わせること
問3 言葉を巧みに飾り、顔つきをつくろって人にこびへつらう態度。
└ 「巧言」=うまい言葉、「令色」=よく見せた顔つき。学而篇の言葉
問4 少ない・ほとんどない、の意。現代語の「あざやか」の意ではない。
└ 白文は「鮮矣仁」。「仁がほとんどない」と、口先だけの人を戒めている
問5 「たづ(ぬ)」と読む。「温(あたた)めて」と読む教科書もあるが、どちらも「くり返し学ぶ」という意味は変わらない。お使いの教科書の読みに合わせること。
└ 「温(あたた)めて」と読む教科書もあるが、「くり返し学ぶ」という意味は同じ
問6 道理がはっきりせず、ぼんやりして身につかない。
└ 「くらし」=物事が見通せない状態
問7 あぶない。独断におちいって危険である。
└ ★現代語の「殆ど(ほとんど)」の意ではない。「あやうい」。字の形が似た「怠(おこた)る」とも別
B 句法
問8 「なんと〜ではないか」と、強い感動・詠嘆をこめて肯定する言い方。
└ ★「喜ばしくない」という単なる否定ではない。「亦楽しからずや」「亦君子ならずや」も同じ形
問9 白文「從心所欲」では、「所」は下の動詞「欲」を受けて「〜すること(もの)」と名詞のはたらきに変える。書き下すと「欲する所」と上下が入れかわり、上の連体形を受ける形になる。「心の欲する所」=「心が望むこと」。
└ 白文は「所欲」、書き下しは「欲する所」と、「所」と動詞の上下が入れかわる
問10 「〜することができる」(可能)。ここは「人の師となることができる」の意。
└ 白文「可以為師矣」の「可」にあたる
問11 未然形(「聞か」)に接続し、順接の仮定条件「もし〜たら」を表す。
└ ★已然形+ば(〜ので)との区別が頻出
問12 反語。「どうして他人によるだろうか、いや、他人によるのではない(自分しだいだ)」。
└ 「〜んや」で結ぶ形。直前の「仁を為すは己に由る」を強めている
問13 禁止。「〜してはならない」の意。
└ 「勿れ」と送る教科書もあるが、禁止という用法は同じ。「無・莫・毋」も同じく禁止に使われる
C 主語・指す内容
問14 すでに学んだこと(先生から教わった内容)。
└ 直前の「学びて」を受けている
問15 人として守るべき道徳のきまり・道理の枠。
└ もとは大工の使う「さしがね(ものさし)」
問16 孔子が、弟子の顔淵の「仁とは何か」という問いに答えた言葉。
問17 自分以外の他人。
└ 直前の「己(自分)」と対になっている
D 口語訳
問18 学んで、折にふれてそれをくり返し復習する。なんと喜ばしいことではないか。
問19 心の思うままにふるまっても、道徳のきまりを踏みはずすことがない。
└ 「ども」は逆接(〜けれども・〜しても)。だから「思うままにふるまっても、それでも道を外さない」となる。「従ひて」と読む教科書でも訳は同じでよい
問20 朝に人として正しい道(真理)を聞いて悟ることができたなら、その日の夕方に死んでもかまわない。
問21 君子は道義(正しい筋道)をよくわきまえ、小人は利益(目先の損得)をよくわきまえている。
└ 「喩る(さとる)」=よく理解している・通じている
E 内容・記述
問22 学ぶだけでは身につかず、考えるだけでは危うい。両方が必要だということ。(三十五字)
└ 「罔し=身につかない」「殆ふし=危うい」の二つを両方入れるのが採点の要
問23 孔子が十五歳で学問を志してから七十歳に至るまでの、年齢を追った精神的成長の歩みを述べたもの。
└ 十五歳=志学、三十歳=而立、四十歳=不惑、五十歳=知命、六十歳=耳順、七十歳=従心。年齢の呼び名としても問われる
問24 地位や才能ではなく、何を判断の基準に置くか(義を取るか利を取るか)によって人物を見分けようとしている。
問25 礼にはずれたことは、見ない・聞かない・言わない・行わない、という四つ。
F 文学史・思想
問26 孔子とその弟子たちの言行を記録した書物。孔子自身が書いたものではなく、孔子の死後に弟子たちがまとめた。儒教の根本経典「四書」の一つ。
└ ★「作者は孔子」と答えるのは誤り。「学而」「為政」などの篇名は、各篇の最初の章の書き出しから二字を取ったもの(「子曰」は数えない。学而=「学びて時に…」、為政=「政を為すに徳を以てす」)。八佾篇のように書き出しの途中の語を取る例もある
問27 温故知新(今の読み方で「おんこちしん」)/昔の学問や事柄をよく学び直し、そこから新しい道理や知識を見いだすこと/為政篇。
問28 克己復礼(今の読み方で「こっきふくれい」)/顔淵篇。
【テスト直前チェック】この三つ
❶「不亦〜乎」は詠嘆。②「亦説ばしからずや」=「なんと喜ばしいことではないか」。「喜ばしくない」という単なる否定に取ると、続く「亦楽しからずや」「亦君子ならずや」まで総崩れになります。
❷⑮「勿かれ」は禁止、⑭「〜んや」は反語。「視ること勿かれ」=見てはならない。「人に由らんや」=どうして他人によろうか、いや、自分しだいだ。読みと意味をセットで。
❸四字熟語は「どの篇から出たか」までセットで。巧言令色=学而篇、温故知新=為政篇、克己復礼=顔淵篇。記述問題の答えは、ほぼこの三つに集まります。
現代語訳(全文)
【学而篇】先生(孔子)がおっしゃった。「学んで、折にふれてそれをくり返し復習する。なんと喜ばしいことではないか。同じ志を持つ友がいて、遠くから訪ねて来てくれる。なんと楽しいことではないか。人が自分を認めてくれなくても腹を立てない。それこそ立派な人物(君子)ではないか。」と。
【学而篇】先生がおっしゃった。「言葉を巧みに飾り、顔つきをつくろって人にこびへつらう者には、思いやりの心(仁)がほとんどない。」と。
【為政篇】先生がおっしゃった。「私は十五歳で学問を志した。三十歳で(学問の基礎ができて)独り立ちした。四十歳で(あれこれ)迷わなくなった。五十歳で天から与えられた使命を悟った。六十歳で人の言葉を素直に聞き入れられるようになった。七十歳になると、心の思うままにふるまっても、道徳のきまりを踏みはずすことがなくなった。」と。
【為政篇】先生がおっしゃった。「昔の学問や事柄をよく学び直して、そこから新しい道理や知識を知ることができれば、人の師となることができる。」と。
【為政篇】先生がおっしゃった。「人から学ぶだけで自分で考えなければ、物事の道理がはっきりせず身につかない。逆に、自分で考えるだけで人から学ばなければ、独断におちいって危険である。」と。
【里仁篇】先生がおっしゃった。「朝に人として生きるべき正しい道(真理)を聞いて悟ることができたなら、その日の夕方に死んでもかまわない。」と。
【里仁篇】先生がおっしゃった。「君子は道義(正しい筋道)をよくわきまえ、小人は利益(目先の損得)をよくわきまえている。」と。
【顔淵篇】顔淵が仁について尋ねた。先生がおっしゃった。「自分の欲に打ち勝って礼(社会の正しいきまり)に立ち返ること、それが仁である。一日でも自分に打ち勝って礼に立ち返れば、世の中の人々はその仁徳になびき従うようになる。仁を行うかどうかは自分自身による。どうして他人によるものであろうか、いや、自分しだいである。」と。顔淵が言った。「どうか、その具体的な項目をお聞かせください。」と。先生がおっしゃった。「礼にはずれたことは見てはならない、礼にはずれたことは聞いてはならない、礼にはずれたことは言ってはならない、礼にはずれたことは行ってはならない。」と。
※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
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