古文で頻出する「る」「れ」は、直前の音に注目すると正体が見抜けます。直前がア段の音(未然形)なら、受身・尊敬・自発・可能を表す助動詞「る」。直前がエ段の音(四段の已然形・サ変の未然形)なら、完了・存続の助動詞「り」です。どちらにも当てはまらず、その音がもとから動詞の一部であれば、単なる動詞の活用語尾にすぎません。
次の各例文中の傍線部「る」「れ」について、後の問いに答えよ。
本文
※例文は学習用に作成しています。
① 旅の途中、にはかに雨に降らる。
② 帝、御簾の内にて笛を吹かる。
③ 故郷の山を見るにつけて、昔のことぞ思ひ出でらるる。
④ この弓ならば、われも引かるべし。
⑤ 池の面に、月の影うつれるを見る。
⑥ 軒端に咲ける梅の香、いとなつかし。
⑦ 道を歩む人、犬にほえらる。
⑧ 大臣、内裏へ参らる。
⑨ ふるさとの夢のみ見らるる夜なり。
⑩ かばかりの坂は、馬にても越えらる。
⑪ 庭に積もれる雪、朝日に光る。
⑫ あらしに散られて、花もとどまらず。
⑬ 春来ぬと思へど、いまだ咲かれず。
⑭ 君が代を千代に祈れれば、心安し。
⑮ 鳥のねに目を覚まされけり。
⑯ 流るる水の音、夜もすがら聞こゆ。
設問
- ①「降らる」の「る」の品詞・種類を答えよ。
- この「る」は助動詞「る」か、完了の助動詞「り」か。
- そう判断できる根拠(直前の音)を答えよ。
- ②「吹かる」の「る」について、助動詞「る」の意味(受身・尊敬・自発・可能のいずれか)を答えよ。
- ③「思ひ出でらるる」の「らるる」の文法的意味を答えよ。
- 助動詞「らる」の意味を、四つの中から選べ。
- 傍線部全体を現代語訳せよ。
- ④「引かるべし」の「る」の意味を答えよ。
- 下に「べし」が付くことも手がかりに、意味を一つ選べ。
- ⑤「うつれる」の「る」の正体を答えよ。
- 助動詞「る」か、完了「り」の連体形「る」か。
- 直前の「れ」が何段の音かを示して根拠を述べよ。
- ⑥「咲ける」の「る」について答えよ。
- これは何という助動詞の、何形か。
- 傍線部「咲ける」を現代語訳せよ。
- ⑦「ほえらる」の「らる」の意味を答えよ。
- ⑧「参らる」の「る」の意味を答えよ。
- 主語が「大臣」であることをふまえて意味を一つ選べ。
- ⑨「見らるる」の「らるる」の意味を答えよ。
- 受身・尊敬・自発・可能のいずれか。
- ⑩「越えらる」の「らる」の意味を答えよ。
- 受身・尊敬・自発・可能のいずれか。
- ⑪「積もれる」の「る」の正体を、助動詞「る」か完了「り」かで答えよ。
- 判断の根拠(直前の音の段)を述べよ。
- ⑫「散られて」の「れ」の品詞・種類を答えよ。
- これは助動詞「る」の何形か。
- ⑬「咲かれず」の「れ」について答えよ。
- 助動詞「る」の何形か。
- ここでの意味(受身・尊敬・自発・可能)を答えよ。
- ⑭「祈れれば」の二つ目の「れ」(已然形を作る「れ」)の正体を答えよ。
- これは完了の助動詞「り」の何形か。
- ⑮「覚まされけり」の「れ」の意味を答えよ。
- 助動詞「る」の何形か。
- 受身・尊敬・自発・可能のいずれか。
- ⑯「流るる」の「るる」について答えよ。
- これは助動詞か、それとも動詞の活用語尾か。
- もとの動詞の終止形を答えよ。
- 傍線部の「る」のうち、完了・存続の助動詞「り」の連体形であるものを、①〜⑯の番号からすべて選べ。
- 傍線部の「る・れ」のうち、受身の意味を表す助動詞であるものを、番号からすべて選べ。
- 「直前がア段の音なら助動詞『る・らる』、エ段の音なら完了『り』」と判別できるのはなぜか。活用形のしくみにふれて、一文で説明せよ。(記述)
- ②「吹かる」と⑧「参らる」は、どちらも同じ意味の助動詞「る」である。その意味を答え、なぜそう判断できるのかを、主語に注目して説明せよ。(記述)
▼ 解答・解説を見る
問1 受身・尊敬・自発・可能を表す助動詞「る」の終止形。/根拠=直前が「降ら」とア段の音(四段動詞「降る」の未然形)であるため。ここでは雨に「降られる」という受身。
問2 尊敬。主語が「帝」という高貴な人物で、その動作(笛を吹く)を敬っているため。「お吹きになる」の意。
問3 意味=自発。「(自然と)思い出されてくる」の意。直前が「出で(ら)」とア段(下二段動詞「出づ」の未然形)で、心情に関わる動詞に付くため自発。/現代語訳=「昔のことが自然と思い出される」。
問4 可能。「(この弓なら自分にも)引くことができる」の意。下に推量の「べし」を伴い、打消を伴わずに能力を表す文脈であるため可能と判断する。
問5 完了(存続)の助動詞「り」の連体形「る」。/根拠=直前の「れ」がエ段の音(四段動詞「うつる」の已然形)であるため。「月の影が映っている(のを)」と存続の意。
問6 完了・存続の助動詞「り」の連体形。直前「咲け」がエ段(四段「咲く」の已然形)。/現代語訳=「咲いている梅」。
問7 受身。「(道を歩む人が)犬にほえられる」の意。直前が「ほえ(ら)」とア段(下二段「ほゆ」の未然形)で、「犬に」という動作主が示されるため受身。
問8 尊敬。主語が「大臣」という高貴な人物で、「参る」という動作を敬っているため。「(内裏へ)参上なさる」の意。
問9 自発。「ふるさとの夢ばかりが自然と見られる」の意。心情・知覚に関わる「見る」に付き、動作主を示さないため自発。
問10 可能。「これくらいの坂は馬でも越えることができる」の意。能力・可能を表す文脈であるため。
問11 完了・存続の助動詞「り」の連体形「る」。/根拠=直前「積もれ」がエ段の音(四段「積もる」の已然形)であるため。「積もっている雪」と存続。
問12 助動詞「る」の連用形「れ」。直前「散ら」がア段(四段「散る」の未然形)。下に接続助詞「て」が付くため連用形。「(嵐に)散らされて」と受身。
問13 助動詞「る」の未然形「れ」。下に打消「ず」が付くため未然形。/意味=可能(打消を伴い「まだ咲くことができない」=不可能の意)。
問14 完了・存続の助動詞「り」の已然形「れ」。「祈れ」がエ段(四段「祈る」の已然形)+「り」で、下に「ば」が付き「祈っているので」と確定条件を作る。
問15 助動詞「る」の連用形「れ」。下に過去「けり」が付くため連用形。/意味=受身(「鳥の声に目を覚まさせられた=目を覚まされた」)。直前「覚まさ」はア段(四段「覚ます」の未然形)。
問16 動詞の活用語尾。「流るる」は下二段動詞「流る」の連体形で、「るる」全体が活用語尾であり助動詞ではない。/もとの動詞の終止形=「流る」。
問17 ⑤・⑥・⑪。いずれも直前がエ段の音で、完了・存続「り」の連体形「る」。
問18 ①・⑦・⑫・⑮。いずれも動作主(「雨に」「犬に」「あらしに」「鳥のねに」)が示され、受身の助動詞「る」。
問19 助動詞「る・らる」は未然形(ア段の音)に接続し、完了「り」はサ変の未然形・四段の已然形(エ段の音)に接続するため、傍線部の直前がア段かエ段かを見れば両者を区別できるから。
問20 意味=尊敬。②は主語が「帝」、⑧は主語が「大臣」と、いずれも高貴な人物の動作であり、受身・自発・可能と解する文脈(動作主や心情、能力)がないため、敬意を表す尊敬と判断できる。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。
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