にくきもの テスト対策問題28問|枕草子・解答つきPDF

定期テスト対策

清少納言『枕草子』の「にくきもの」は、日常のいらだたしいものを次々に挙げていく「ものづくし(類聚章段)」の代表例です。定期テストでは「まらうど」「ねぶたし」などの古語の意味、「やりつべけれど」の助動詞、「さへ」の用法、「こそ…にくけれ」の係り結び、そして作者のするどい観察眼という主題が定番で問われます。

本文(傍線①〜⑮)

にくきもの。急ぐことあるをりに来(き)て、長言(ながごと)するまらうどあなづりやすき人ならば、「のちに」とてもやりつべけれど、さすがに心恥(こころは)づかしき人いとにくくむつかし
硯(すずり)に髪(かみ)の入(い)りてすられたる。また、墨(すみ)の中に、石のきしきしときしみ鳴りたる。
にはかにわづらふ人のあるに、験者(げんざ)求むるに、例(れい)ある所になくて、ほかに尋(たづ)ねありくほどに、待ち遠(どほ)に久しきに、からうじて待ちつけて、よろこびながら加持(かぢ)せさするに、このごろ物の怪(け)にあづかりて困(こう)じにけるにや、ゐるままにすなはちねぶり声(ごゑ)なる、いとにくし。
ねぶたしと思ひて臥(ふ)したるに、蚊(か)の細声(ほそごゑ)にわびしげに名のりて、顔のほどに飛びありく。羽風(はかぜ)さへその身のほどにあるこそ、いとにくけれ
蚤(のみ)もいとにくし。衣(きぬ)の下に躍(をど)りありきて、もたぐるやうにする。

語注 硯=墨をする道具。 にはかなり=急だ。突然だ。 わづらふ=病気で苦しむ。 験者=加持祈祷で物の怪を追い払う修験者。読みは「げんざ」「げんじゃ」の両方があり、お使いの教科書のルビに合わせること。 例ある所=いつもいる所。 からうじて=やっとのことで。 加持=病気の平癒などを祈る祈祷。 物の怪=人にとりついて病気を起こすと考えられた霊。 困ず=疲れきる。弱る。読みは「こうず」。 ゐる=座る。 わびしげなり=いかにも心細そうだ。 羽風=羽ばたきで起こる風。 蚤=人や動物の血を吸う小さな虫。 もたぐ=持ち上げる。 ※本文の区切り方や表記は教科書によって少しちがうことがある。

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使い方のおすすめ。①まず何も見ずに解く → ②解答で答え合わせ → ③まちがえた設問の番号と同じ傍線を本文で探して読み直す。

設問

A 語句の意味と読み

  1. ①「をり」を漢字一字で書き、意味を書け。
  2. ②「長言(ながごと)」の意味を書け。
  3. ③「まらうど」の読みを現代仮名遣いで書け。また意味も書け。
  4. ④「あなづりやすき」の「あなづる」の意味を書け。
  5. ⑥「心恥(こころは)づかしき人」の「心恥づかし」の意味を書け。
  6. ⑦「いとにくくむつかし」の「にくし」と「むつかし」の意味をそれぞれ書け。
  7. ⑬「ねぶたし」の意味を書け。

B 文法

  1. ⑤「やりつべけれど」を品詞分解し、それぞれを文法的に説明せよ。
  2. ⑤「やりつべけれど」の「つ」が完了ではないと言えるのはなぜか、理由を書け。
  3. ⑧「すられたる」の「れ」は何の助動詞の何形か。意味も書け。
  4. ⑪「困(こう)じにけるにや」の「にや」のあとに省略されている語を補え。
  5. ⑭「わびしげに名のりて」の「わびしげに」の品詞名・活用の種類・活用形を書け。
  6. ⑮「羽風(はかぜ)さへその身のほどにあるこそ、いとにくけれ」から係助詞と結びの語を抜き出し、結びが何形になっているか書け。

C 主語・指す内容

  1. ⑤「やりつべけれど」とあるが、帰そうとしているのは誰か。
  2. ⑪「困(こう)じにけるにや」は、誰が、どうなっていると推し量った言い方か。
  3. ⑬「ねぶたし」と思って横になっているのは誰か。
  4. ⑮の「その身のほど」とは、何の身の大きさのことか。

D 口語訳

  1. ④・⑤を含む「あなづりやすき人ならば、「のちに」とてもやりつべけれど」を口語訳せよ。
  2. ⑨を含む「にはかにわづらふ人のあるに、験者(げんざ)求むるに」を口語訳せよ。
  3. ⑩を含む「からうじて待ちつけて、よろこびながら加持(かぢ)せさするに」を口語訳せよ。
  4. ⑮「羽風(はかぜ)さへその身のほどにあるこそ、いとにくけれ」を口語訳せよ。

E 内容・記述

  1. ⑦「いとにくくむつかし」とあるが、作者がそう感じるのはなぜか。四十字以内で書け(句読点も一字に数える)。
  2. ⑫「ねぶり声(ごゑ)なる」とあるが、この場面のどこが「にくし」なのか。四十字以内で書け(句読点も一字に数える)。
  3. ⑭「わびしげに名のりて」には、どのような表現の工夫があるか。技法の名を挙げて説明せよ。
  4. ⑮「羽風(はかぜ)さへその身のほどにあるこそ、いとにくけれ」のように、この文章で作者が「にくし」と感じているものには共通する特徴がある。それはどのようなことか、四十字以内で書け(句読点も一字に数える)。

F 文学史

  1. ⑦「いとにくくむつかし」を含むこの文章の出典の書名・作者名・文学の種類(ジャンル)を書け。
  2. ⑦「いとにくくむつかし」を含むこの文章のように、あるテーマに合うものを次々に並べていく『枕草子』の章段を何というか。同じ形式の段の例も一つ挙げよ。
  3. ⑮を含むこの文章の作者が仕えた中宮の名を書け。

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解答と解説

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A 語句の意味と読み

問1 折/とき・場合・ちょうどそのとき。
└ 「急ぐことあるをり」=急ぎの用事があるとき

問2 長話。だらだらと長くしゃべること。
└ 「長言するまらうど」=長話をする客

問3 まろうど/客・来客。訪ねて来る人。
└ 歴史的仮名遣いの「らう」は現代仮名遣いで「ろう」になる

問4 軽く見る。見くびる。あなどる。
└ 「あなづりやすき人」=気がねなく軽く扱える相手

問5 (相手が立派で)こちらが気おくれする。気がひけるほど立派だ。
└ 自分が恥ずかしいのではなく、相手がりっぱすぎてこちらが引け目を感じる、の意

問6 にくし=しゃくにさわる・いやだ・気にくわない/むつかし=不愉快だ・うっとうしい・わずらわしい。
└ 現代語の「憎い」「難しい」ではない。にくしは憎悪ほど強くない不快感

問7 眠い。眠たい。
└ 現代語「眠い」の古い形。同じ段の「ねぶり声」も同じ語から

B 文法

問8 「やり」=ラ行四段活用動詞「やる(帰らせる・追いやる)」の連用形/「つ」=強意(確述)の助動詞「つ」の終止形/「べけれ」=可能の助動詞「べし」の已然形(教科書によっては強い推量とする)/「ど」=逆接の接続助詞。
└ 「べし」の意味は、可能(〜できる)とする教科書と、強い推量(〜てしまえるだろう)とする教科書がある。お使いの教科書の説明に合わせること

問9 下に推量の助動詞「べし」が続いているから。「つべし」「ぬべし」の形では、「つ」「ぬ」は完了ではなく強意(確述)となり、「きっと〜・〜てしまうにちがいない」と下の語を強める働きになる。
└ 「つべし」「ぬべし」はセットで覚える

問10 助動詞「る」の連用形。受身(〜られる)の意味。
└ 「する(磨る)」はラ行四段。その未然形「すら」+受身の助動詞「る」の連用形「れ」。サ変なら「せらる」の形になるので、ここを「らる」と答えると×。(人に)墨をすられている、という意味。続く「たる」は完了・存続の助動詞「たり」の連体形

問11 「あらむ」(「にやあらむ」の形になる)。
└ 断定の助動詞「なり」の連用形「に」+係助詞「や」。結びの「あらむ」を言わずに止める形で、「〜であろうか」の意

問12 形容動詞「わびしげなり」、ナリ活用、連用形。
└ 形容詞の語幹+「げ」で「〜そうな様子だ」という形容動詞をつくる

問13 係助詞=こそ/結びの語=にくけれ/已然形。
└ 「こそ」の結びは已然形。ク活用形容詞「にくし」の已然形が「にくけれ」。終止形「にくし」と書くと×

C 主語・指す内容

問14 作者(清少納言)。
└ あなどりやすい相手=軽く扱える客の場合の話。直後の「さすがに心恥づかしき人」は、この逆の場合を言っている

問15 やっと呼んできた験者が、このごろ物の怪を相手にしてばかりで疲れきってしまっているのだろうか、と作者が推し量っている。
└ 「〜にや(あらむ)」=〜なのだろうか、という作者の推量

問16 作者(清少納言)自身。
└ 「にくきもの」は、作者自身が日ごろ体験して感じたこととして書かれている

問17 蚊の(小さな)体の大きさ。
└ 「あんなに小さい体なのに、羽風だけは体相応にある」という言い方

D 口語訳

問18 気がねなく扱える相手ならば、「またあとで」とでも言って帰してしまえるだろうけれど。
└ 「とて」=〜と言って/「つべし」=きっと〜できる

問19 急に病気で苦しむ人があるので、(物の怪を退ける)験者を探し求めると、
└ 「わづらふ」=病気で苦しむ/「あるに」「求むるに」の「に」が二つとも接続助詞(〜ので・〜したところ)。傍線⑨「にはかに」の「に」は形容動詞「にはかなり」の連用形の活用語尾なので、これは数えない

問20 やっとのことで(験者を)待ちうけてつかまえて、喜びながら加持祈祷をさせると。
└ 「加持す」(サ変動詞)の未然形「加持せ」+使役の助動詞「さす」の連体形「さする」。「(験者に)加持をさせる」の意

問21 (細い声で鳴くだけでもいやなのに、)羽ばたきの起こす風までもがその体の大きさ相応にあるのは、たいそうしゃくにさわる。
└ 「さへ」=添加の副助詞で「〜までも」。「こそ…にくけれ」は強調の係り結びなので、訳では強く言い切る

E 内容・記述

問22 気おくれする立派な客で、長話をされても追い返せず、我慢して聞くほかないから。(三十八字)
└ 「あなづりやすき人ならば…やりつべけれど」と対にして読む

問23 急病人のためにやっと探し当てた験者が、座るなり眠そうな声を出したところ。(三十六字)
└ 「からうじて待ちつけて、よろこびながら」という期待の高まりが根拠

問24 擬人法。蚊が鳴くのを、人が自分の名を告げるように「名のる」と言い表し、さらに「わびしげに」と蚊の気持ちまで描くことで、小さな蚊のうるささをユーモラスにとらえている。
└ 「わびしげに」=いかにも心細そうに

問25 どれも日常のささいな出来事で、自分の思いどおりにならない小さな不快さである点。(三十九字)
└ 客・硯と墨・験者・蚊・蚤と、どれも身近な「あるある」で、大事件ではない

F 文学史

問26 『枕草子』/清少納言/随筆
└ 平安時代中期に成立した、日本で最初の随筆といわれる作品

問27 類聚的章段(ものづくし)/例=「うつくしきもの」「すさまじきもの」「はしたなきもの」など。
└ 『枕草子』の章段は、類聚的章段・日記的章段・随想的章段の三つに分けて説明されることが多い

問28 中宮定子(藤原定子)
└ 一条天皇の中宮。『源氏物語』が「もののあはれ」の文学と言われるのに対し、『枕草子』は「をかし」の文学と呼ばれ、この中宮のもとでの明るい宮廷生活が描かれている

【テスト直前チェック】この三つ
「こそ…にくけれ」は係り結び。係助詞「こそ」を受けて、ク活用形容詞「にくし」が已然形「にくけれ」になっている。終止形「にくし」と答えると×。同じ段に連体形「にくき(もの)」、連用形「にくく」、終止形「にくし」もそろって出てくる。
「やりつべけれど」は「つ+べし」の重なり。「つ」はここでは完了ではなく強意(確述)で、「きっと〜できる」と下を強める。「べけれ」は「べし」の已然形、「ど」は逆接。品詞分解でこの二語を取りこぼさない。
「にくし」「むつかし」「心恥づかし」は現代語と別物。にくし=しゃくにさわる・いやだ、むつかし=不愉快だ・うっとうしい、心恥づかし=相手が立派でこちらが気おくれする。現代語の感覚で訳すと減点される。

現代語訳(全文)

しゃくにさわるもの。急ぎの用事があるときにやって来て、長話をする客。気軽に扱える相手ならば、「またあとで」とでも言って帰してしまえるのだが、そうはいっても、こちらが気おくれするような立派な相手だと、たいそうしゃくにさわって不愉快だ。

硯に髪の毛が入ったまま墨をすられているの。また、墨の中に石がまじっていて、きしきしときしんで音を立てているの。

急に病気で苦しむ人があるので、験者を呼び求めるのに、いつもいる所にいなくて、よそへ探し回っているうちに、待ち遠しく時間ばかりがたって、やっとのことで(験者を)つかまえて、喜びながら加持祈祷をさせると、このごろ物の怪の相手ばかりしていて疲れきってしまっているのだろうか、座るとすぐに眠そうな声であるのは、まったくしゃくにさわる。

眠たいと思って横になっているところに、蚊が細い声でいかにも心細そうに、自分の名を告げるように鳴いて、顔のあたりを飛びまわる。(あんなに小さい体なのに)羽ばたきの起こす風までもがその体の大きさ相応にあるのは、本当にしゃくにさわる。

蚤もとてもいやなものだ。着物の下で跳ねまわって、着物を持ち上げるようにする。

※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。

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