芥川龍之介『芋粥』の原話としても有名な、『今昔物語集』巻二十六第十七話。定期テストでは、身分の低い五位と豪勢な利仁の対比、「あはれ、いかで芋粥に飽かむ」の願望表現、使役・尊敬・謙譲の敬語(特に「せ給ふ」の識別)、係り結びが頻出です。本文の原文表記に沿って、読み・語意・現代語訳・文法・内容説明をまとめました。
本文
【冒頭(利仁と五位の紹介)】
今は昔、利仁の将軍といふ人ありけり。若かりける時は、その時の①一の人の御もとに、恪勤にてなむ候ひける。越前の国に有仁といひける勢徳の者の聟にてなむありければ、常に彼の国にぞ住みける。【大饗の場面】
しかる間、その主の殿に、正月に②大饗行はれけるに、そのかみは、大饗はてぬれば、取食といふ者をば追ひて入れずして、大饗のおろしをば、その殿の侍どもなむ食ひける。【芋粥のやりとり】
この五位、その座にて、芋粥をすすりて、舌打ちをして、「③あはれ、いかで芋粥に飽かむ」と言ひければ、利仁これを聞きて、「大夫殿、いまだ芋粥に④飽かせ給はぬか」と言ふ。五位、「いまだ飽き侍らず」と答ふ。利仁、「いで、⑤飽かせ奉らむ」と言へば、五位、「いとかしこきことなり」と言ふ。
問題
- 傍線部①「一の人」とは、どのような人物を指すか。簡潔に答えよ。
- 傍線部②「大饗」の読みと意味を答えよ。
- 傍線部③「あはれ、いかで芋粥に飽かむ」を現代語訳せよ。特に「いかで」「む」の意味に注意すること。
- 傍線部④「飽かせ給はぬ」の「せ」「給は」はそれぞれ何を表すか、文法的に説明せよ。
- 傍線部⑤「飽かせ奉らむ」を、敬語の種類とその敬意の方向を明らかにして現代語訳せよ。
- 冒頭文「恪勤にてなむ候ひける」「常に彼の国にぞ住みける」には係り結びが用いられている。それぞれの係助詞と、結びの語(活用形)を指摘せよ。
- 本文中で、身分の低い五位と豪勢な利仁とは、どのような点で対比的に描かれているか。冒頭部分の内容をふまえて説明せよ。
- 五位が「あはれ、いかで芋粥に飽かむ」と言った言葉には、五位のどのような心情・境遇がにじみ出ているか。簡潔に述べよ。
解答・解説
問1の解答
摂政・関白など、当時最も権勢のある人物(藤原基経を指すとされる)。利仁が熱心に仕えていた主君である。
問2の解答
読み=「だいきやう(だいきょう)」。意味=正月などに催された、貴族の大規模な宴会・ごちそう。ここでは主君の邸で正月に行われた宴。
問3の解答
「ああ、なんとかして芋粥を飽きるほど食べてみたいものだ。」 ※「いかで」は願望を伴い「なんとかして」、文末の「む」は願望・意志を表す。
問4の解答
「せ」は尊敬の助動詞「す」の連用形、「給は」は尊敬の補助動詞「給ふ」の未然形で、両者が結びついた二重尊敬(最高敬語)「せ給ふ」。「飽く(=満足するほど食べる)」の動作主は五位自身で、他人に飽かせる使役対象がないため使役ではない。利仁が五位を高く敬い、「(十分に)お飽きになっていないのですか(召し上がっていないのですか)」と尋ねている。
問5の解答
「(芋粥を)飽きるほど召し上がらせて差し上げよう。」 ※「せ」は使役の助動詞(利仁が五位に飽きるほど食べさせる)、「奉ら」は謙譲の補助動詞で、動作の受け手である五位への敬意(利仁から五位への敬意)を表す。「む」は利仁の意志。
問6の解答
「なむ」→結びは「候ひける」の「ける」(過去の助動詞「けり」連体形)。「ぞ」→結びは「住みける」の「ける」(同じく連体形)。いずれも連体形で結ばれ、内容を強調する。
問7の解答
五位は名も記されず、主君の邸で大饗の「おろし(お下がり)」を食べるような下級の侍として描かれる。一方、利仁は勢徳の者(有仁)の聟で越前に領地をもち、五位に芋粥を飽きるほど振る舞おうと約束できる財力・実力を備えた人物として対照的に描かれている。
問8の解答
芋粥を腹いっぱい食べることさえ夢のようだと感じる、ささやかな願いしか持てない、五位の貧しく満たされない境遇と、その素朴でつつましい人柄がにじみ出ている。この一言がのちの物語の発端となる。
👉 本文の現代語訳・語句・文法のくわしい解説は 解説記事 で確認できます。
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