「うつくし」は、現代語の「美しい」ではなく「かわいい・愛らしい」という意味で、古典の語彙問題でくり返し問われる最頻出語です。清少納言は『枕草子』のこの章段で、自分が「かわいい」と感じる小さなものを次々に書きつらねています。まずは本文を読み、設問に答えてみましょう。最後の「解答・解説」で答え合わせができます。あわせて枕草子のやさしい解説(あらすじ)も読むと、作品全体の雰囲気がつかめます。
本文(傍線①〜⑮)
①うつくしきもの。②瓜にかきたるちごの顔。雀の子の、③ねず鳴きするに④をどり来る。
⑤二つ三つばかりなるちごの、いそぎて⑥はひ来る道に、⑦いとちひさき塵のありけるを⑧目ざとに見つけて、いと⑨をかしげなる⑩およびにとらへて、大人などに⑪見せたる、⑫いとうつくし。
頭は⑬あまそぎなるちごの、目に髪の⑭おほへるを⑮かきはやらで、うちかたぶきて物など見たるも、うつくし。
語注 うつくし=かわいい。愛らしい。 ちご=幼い子ども。赤ん坊。 ねず鳴き=ねずみの鳴き声に似せて口を鳴らすこと。雀を呼び寄せるときにした。 をどる=飛びはねる。 ばかり=〜ぐらい。おおよその程度を表す。 塵=ごみ。ちり。 目ざとに=目ざとく。小さなものでもすばやく見つけるさま(形容動詞「目ざとなり」の連用形。形容詞「目ざとし」と同じ系統の語)。 をかしげなり=いかにもかわいらしい様子だ。 および=指。 あまそぎ=肩のあたりで切りそろえた子どもの髪型。尼そぎ。 かきはやる=手でさっとかき払う。 うちかたぶく=首を少しかたむける。
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設問
A 語句の意味と読み
- ①「うつくしきもの」の「うつくし」の意味を書け。
- ②「瓜にかきたるちごの顔」の「ちご」の意味を書け。
- ③「ねず鳴き」とは、どうすることか説明せよ。
- ⑤「二つ三つばかりなるちご」の「ばかり」の意味を書け。
- ⑧「目ざとに」の意味を書け。
- ⑨「をかしげなる」の、ここでの意味を書け。
- ⑬「あまそぎ」とは、どのような髪型か書け。
B 文法(助動詞・助詞)
- ④「をどり来る」を単語に分け、それぞれの動詞の終止形を書け。
- ⑦「いとちひさき塵のありけるを」の「ける」は、どの助動詞が活用したものか。終止形と文法的意味を書け。
- ⑦「いとちひさき塵のありけるを」の「塵の」の「の」の用法(はたらき)を書け。
- ⑪「見せたる」の「たる」は、どの助動詞が活用したものか。終止形・文法的意味・活用形を書け。
- ⑭「おほへる」を単語に分け、「おほへ」の終止形と、「る」が何の助動詞の何形かを書け。
- ⑮「かきはやらで」の「で」の文法的意味を書け。
C 主語・指す内容
- ⑥「はひ来る」の主語にあたる部分を、本文中から一続きで抜き出せ(十一字)。
- ⑩「および」とは、だれの、体のどの部分か。本文中の語を用いて答えよ。
- ⑪「見せたる」とあるが、幼児は何を大人に見せたのか。本文中の語を用いて答えよ。
- ⑫「いとうつくし」は、本文のどの部分を受けているか。始めと終わりの四字を書け。
D 口語訳
- ②「瓜にかきたるちごの顔」を現代語訳せよ。
- ③・④を含む「雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る」を現代語訳せよ。
- ⑦「いとちひさき塵のありけるを」を現代語訳せよ。
- ⑭・⑮を含む「目に髪のおほへるをかきはやらで」を現代語訳せよ。
E 内容・記述
- ⑤「二つ三つばかりなるちご」のしぐさのうち、筆者がとくに心をひかれたのはどのような点か。⑧「目ざとに」に注目して三十五字以内で書け。
- ⑬「あまそぎ」の子どものどんなところに、筆者はかわいらしさを感じているか。四十字以内で書け。
- ①「うつくしきもの」として挙げられているものを、四つ簡潔に書け。
- ①「うつくしきもの」として挙げられたものに共通する特徴を、三十字以内で書け。
F 文学史
- ①「うつくしきもの」を含むこの文章の出典の書名・作者・成立した時代を書け。
- ①「うつくしきもの」を含むこの作品の、文章の種類(ジャンル)を漢字二字で書け。
- ①「うつくしきもの」のように、同じ種類のものを次々に書き並べた章段を何と呼ぶか。
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解答と解説
▼ 解答・解説を見る
A 語句の意味と読み
問1 かわいい・愛らしい(いとおしい)
└ ×「美しい・きれいだ」。小さいもの・幼いものをいとおしく思う気持ちを表す。定期テスト・入試の最頻出語。
問2 幼い子ども・赤ん坊(乳幼児)
└ 漢字では「稚児」。「子ども」とだけ訳さず「幼い」を必ず入れる。
問3 ねずみの鳴き声に似せて、口で「ちゅっちゅっ」と音を立てること。
└ 雀の子を呼び寄せるためのしぐさ。だから雀が「をどり来る」。
問4 〜ぐらい・〜ほど(おおよその程度を表す)
└ 全体で「二、三歳ぐらいの幼児」。限定の「〜だけ」ではない。
問5 目ざとく。(小さなものも見のがさないほど)目が早く。すばやく目にとめて。
└ 下の「見つけて」にかかる連用修飾語で、「目ざとに見つけて=すばやく見つけて」と二語セットで訳す。まぎらわしい誤答は「目つきが鋭い」。目ざと=目が早い、であって目つきの話ではない。なお本文の形「目ざとに」は形容詞「目ざとし」の活用形(連用形は「目ざとく」)ではなく、形容動詞「目ざとなり」の連用形とされる。品詞名はお使いの教科書の説明に合わせること。
問6 いかにもかわいらしい様子の(かわいらしげな)
└ 「〜げなり」=いかにも〜そうだ。「をかし」の基本は「趣がある」だが、ここは幼児の指なので「かわいらしい」。
問7 肩のあたりで切りそろえた、子どもの髪型(尼そぎ)
└ 尼の髪に似ることからの名。「頭はあまそぎなるちご」=おかっぱ頭の幼い子ども。
B 文法(助動詞・助詞)
問8 「をどり」=動詞「をどる(躍る=飛びはねる)」/「来る」=動詞「く(来)」
└ 「をどる」+「来る」が結びついてできた語(複合動詞)。ここでは、もとの二つの動詞に分けて答える。「来る」はカ行変格活用「く」の連体形。
問9 助動詞「けり」/過去(〜た)
└ 連用形「あり」に接続。地の文なので、詠嘆ではなく過去にとる。下の「を」に続くので連体形「ける」。
問10 主格(〜が)。「小さなごみがあったのを」の意。
└ 「雀の子の、…をどり来る」の下の「の」(=雀の子が)、「二つ三つばかりなるちごの、…はひ来る」の「の」も同じ主格。※「雀の」の方は「〜の」(連体格)で別もの。
問11 助動詞「たり」/ここは完了(〜た)/連体形
└ 連用形「見せ」に接続。下に「こと・様子」を補って受ける準体法なので連体形。「たり」は完了・存続の助動詞だが、ここは「見せた」と完了で訳す。
問12 「おほへ」=動詞「おほふ(覆ふ)」/「る」=完了・存続の助動詞「り」の連体形(ここは存続で「〜ている」)
└ 「り」は四段動詞の已然形につくと説明する教科書と、命令形につくと説明する教科書がある。どちらで習ったかは、お使いの教科書の説明に合わせること。
問13 打消の接続(〜ないで・〜せずに)を表す接続助詞。
└ 未然形に接続する。「ず+て」がつづまった形とされる。「かき払いもしないで」と訳す。ここが訳せるかで差がつく。
C 主語・指す内容
問14 二つ三つばかりなるちご
└ 直前の「ちごの」の「の」が主格。「幼児が急いではって来る道に」とつながる。
問15 (二つ三つばかりなる)ちご=幼児の指(ゆび)
└ 「をかしげなるおよびにとらへて」=「かわいらしい指でつまんで」。つまんだのは、はって来たその幼児。「および=指」は現代語とズレる語の代表。
問16 (いとちひさき)塵=道に落ちていた、とても小さなごみ
└ 大人なら気づかないほど小さなものを見つけた、というのがこの場面の要。
問17 始め「二つ三つ」/終わり「見せたる」
└ 「二つ三つばかりなるちごの、…大人などに見せたる」までの一連の動作全体を受けている。
D 口語訳
問18 (例)瓜に描いた、幼い子どもの顔。
└ 「かきたる」=描いた。「かく」は「書く」「描く」どちらの意味にもなる。
問19 (例)雀の子が、(人が)ねずみの鳴きまねをすると、飛びはねるようにしてやって来る(様子)。
└ 「の」=が(主格)、「に」=〜すると(順接の確定条件)。
問20 (例)とても小さなごみがあったのを
└ 「いと」=とても、「塵」=ごみ、「の」=が、「ける」=過去「けり」の連体形。
問21 (例)目に髪がかぶさっているのを、かき払いもしないで
└ 「の」=が、「おほへる」=おおっている、「で」=〜ないで。
E 内容・記述
問22 (例)大人なら見のがすほど小さなごみを、幼児がすばやく見つけた点。(三十字)
└ 「小さなものを見のがさない」という一点が、この章段全体の芯になっている。
問23 (例)髪が目にかかっても払おうとせず、首をかしげて見入る、幼さと無心さ。(三十三字)
└ 「かきはやらで」「うちかたぶきて」の二つの動作から読み取る。訳をそのまま書き写すのではなく、「どこがかわいいのか」を書く。
問24 (例)①瓜に描いた幼い子どもの顔 ②ねず鳴きに寄って来る雀の子 ③小さなごみを見つけて大人に見せる幼児 ④髪が目にかかったまま首をかしげて物を見る子ども
└ 冒頭の「うつくしきもの。」は見出し(お題)なので数に入れない。そのあとを句点ごとに区切ると、ちょうど四つになる。
問25 (例)どれも小さくて幼く、あどけないものであるという点。(二十五字)
└ ★「小さい・幼い・あどけない」の三語で書けば外さない。記述の答えはほぼここに集まる。
F 文学史
問26 『枕草子』/清少納言/平安時代(中期)
└ 清少納言は一条天皇の中宮定子に仕えた女房。『源氏物語』の紫式部とほぼ同時代。
問27 随筆
└ 『枕草子』『方丈記』(鴨長明)『徒然草』(兼好法師)の三つで「日本三大随筆」。『枕草子』は日本最初の随筆とされる。
問28 類聚的章段(るいじゅうてきしょうだん)/ものづくし
└ ほかに随想的章段(ずいそうてきしょうだん・「春はあけぼの」など)・日記的章段(にっきてきしょうだん・宮中のできごと)がある。三分類はセットで覚える。
【テスト直前チェック】この三つ
❶「うつくし」=かわいい・愛らしい。「美しい」と訳したらそこでバツ。「ちご=幼い子ども」「および=指」「目ざとに見つけて=すばやく見つけて」も、そのまま出ます。
❷テストに出る助動詞はこの四つ。「ありける」=過去「けり」の連体形/「見せたる」=完了・存続「たり」の連体形(ここは完了で「見せた」)/「おほへる」の「る」=完了・存続「り」の連体形/「二つ三つばかりなるちご」「あまそぎなるちご」の「なる」=断定の助動詞「なり」の連体形。
❸「かきはやらで」の「で」は打消の接続(〜ないで)。ここで差がつきます。記述の答えは「小さい・幼い・あどけない」の三語に集まります。
現代語訳(全文)
かわいらしいもの。瓜に描いた、幼い子どもの顔。雀の子が、(人が)ねずみの鳴きまねをすると、飛びはねるようにしてやって来る(様子)。
二、三歳ぐらいの幼い子どもが、急いではって来る道の途中に、とても小さなごみがあったのをすばやく見つけて、たいそうかわいらしい指でつまんで、大人などに見せた(その様子)は、たいそうかわいらしい。
髪を尼そぎ(肩のあたりで切りそろえた髪型)にした幼い子どもが、目に髪がかぶさっているのをかき払いもしないで、首を少しかたむけて物などを見ているのも、かわいらしい。
※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
あわせて読みたい
- うつくしきもの 現代語訳(枕草子)(この範囲のやさしい解説)
- 春はあけぼの テスト対策問題|枕草子の解答つきPDF ― 同じ枕草子の定番章段。随想的章段の代表で、セットで出題されやすい。
- にくきもの テスト対策問題|『枕草子』の解答つきPDF ― 同じ「ものづくし」の章段。「うつくしきもの」と対にすると章段の型がつかめる。
- 枕草子のあらすじ|春はあけぼの・清少納言・をかし ― 作品全体の流れと文学史(作者・成立・三分類)はここで確認。
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