敦盛の最期 テスト対策問題28問|敬語と主語・解答つきPDF

敦盛の最期(平家物語) 確認テスト|定期テスト対策 定期テスト対策

『敦盛の最期』は平家物語の中でも定期テストに極めて出やすい名場面です。源氏の武将・熊谷直実(くまがへのなほざね)が、わが子ほどの若武者・平敦盛(たひらのあつもり)を討たねばならない場面で、武士として生きることのむなしさ(無常観)が描かれます。テストでは「現代語訳」「傍線部の敬語が誰から誰への敬意か」「助動詞『ばや』の意味」「主語が熊谷か敦盛か」「直実が出家を決意した心情」「文学史(軍記物語)」が繰り返し問われます。まず本文を読んで設問に答え、最後の解答で確認しましょう。あらすじや背景があいまいな人は、先に平家物語『敦盛の最期』のやさしい解説を読んでおくと設問が解きやすくなります。

本文(傍線①〜⑮)

熊谷(くまがへ)、「あはれ、大将軍(たいしやうぐん)とこそ見参らせ候へまさなうも敵にうしろを見せさせ給ふものかな。かへさせ給へ。」と、扇(あふぎ)をあげてまねきければ、招かれてとつてかへす。
渚(なぎさ)にうちあがらんとするところに、おしならべてむずと組んでどうど落ち、とつておさへて首をかかんと、内甲(うちかぶと)をおしあふのけて見ければ、年十六七ばかりなるが、薄化粧(うすげしやう)して、かね黒(ぐろ)なり。わが子の小次郎(こじらう)がよはひほどにて、容顔(ようがん)まことに美麗(びれい)なりければ、いづくに刀を立つべしともおぼえず。
「そもそもいかなる人にてましまし候ふぞ。名のらせ給へ、助け参らせん。」と申せば、「汝(なんぢ)はたそ。」ととひ給ふ。「物その者で候はねども、武蔵(むさし)の国の住人、熊谷次郎直実(くまがへのじらうなほざね)。」と名のり申す。
熊谷、「あはれ、助けたてまつらばや。」とおもひて、うしろをきつとみければ、土肥・梶原五十騎ばかりで続いたり。熊谷涙をおさへて申しけるは、「助けまゐらせんとは存じ候へども、味方の軍兵(ぐんぴやう)雲霞(うんか)のごとく候ふ。よものがれさせ給はじ。人手にかけ参らせんより、同じくは直実が手にかけ参らせて、後(のち)の御孝養(ごけうやう)をこそ仕(つかまつ)り候はめ。」と申しければ、「ただとくとく首をとれ。」とぞのたまひける
熊谷あまりにいとほしくて、いづくに刀を立つべしともおぼえず、目もくれ心も消えはてて、前後不覚(ぜんごふかく)におぼえけれども、さてしもあるべきことならねば、泣く泣く首をぞかいてんげる。
「あはれ、弓矢とる身ほど口惜(くちを)しかりけるものはなし。武芸(ぶげい)の家に生まれずは、なにとてかかるうき目をばみるべき。なさけなうも討ちたてまつるものかな。」とかきくどき、袖(そで)を顔におしあててさめざめとぞ泣きゐたる。

語注 まさなうも=よくない・見苦しい。 うしろを見せる=背を向けて逃げる。 おしならべて=馬を並べて。 どうど=どっと。 内甲=かぶとの内側。顔の見えるところ。 かね黒=お歯黒。歯を黒く染めること。都の貴族や上流の若者の身だしなみ。 小次郎=熊谷直実の子、小次郎直家。 よはひ=年齢。 物その者で候はねども=たいした者ではございませんが。 土肥・梶原=源氏方の武将、土肥実平と梶原景時。 雲霞のごとく=雲や霞のように数多く。 よも=(下に打消の言い方をともなって)まさか。 人手=他人の手。 御孝養=死後の供養。 仕る=「す」の謙譲語。いたす。 とくとく=早く早く。 目もくれ=目の前が暗くなり。 さてしもあるべきことならねば=そうしてばかりもいられないことなので。 かいてんげる=「かき(掻き)」のイ音便「かい」+「てんげる」。「てんげる」は「てけり」(完了「つ」+過去「けり」)が「てんげり」と変化した形の連体形で、係助詞「ぞ」の結び。切ってしまった。 うき目=つらい思い。 かきくどき=同じ嘆きを繰り返し言って。 さめざめと=涙を流して静かに泣くさま。

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読んだだけでは、テストでは書けません。本番と同じ縦書きで、実際に手を動かしてください。28問・解答と現代語訳つきです。

使い方のおすすめ。①まず何も見ずに解く → ②解答で答え合わせ → ③まちがえた設問の番号と同じ傍線を本文で探して読み直す。

設問

A 語句の意味と読み

  1. ②「まさなうも」の「まさなし」の、ここでの意味を書け。
  2. ④「かね黒(ぐろ)」とはどのようなものか、書け。
  3. ⑤「よはひ」の読みと意味を書け。
  4. ⑦「ましまし」の終止形と、ここでの意味を書け。
  5. ⑭「いとほしくて」の「いとほし」の、ここでの意味を書け。
  6. ⑮「口惜(くちを)しかりける」の「口惜し」の、ここでの意味を書け。

B 文法

  1. ②「まさなうも」の「まさなう」は、もとはどのような形か。またこの変化を何というか。
  2. ⑨「とひ給ふ」の「給ふ」は四段活用・下二段活用のどちらか。またそこから分かる敬語の種類を書け。
  3. ⑩「助けたてまつらばや」の「ばや」の文法的意味と、直前の語の活用形を書け。
  4. ⑪「よものがれさせ給はじ」の「よも」は文末のどの語と呼応しているか。またその組み合わせが表す意味を書け。
  5. ⑫「後(のち)の御孝養(ごけうやう)をこそ仕(つかまつ)り候はめ」の「め」は、どの助動詞の何形か。また意味を書け。
  6. ⑬「ぞのたまひける」の「ける」の活用形を書け。またそうなる理由も書け。

C 主語・指す内容・敬意の方向

  1. ①「見参らせ候へ」の「参らせ」は何敬語か。また誰から誰への敬意か書け。
  2. ③「見せさせ給ふ」は何敬語か。また誰から誰への敬意か書け。
  3. ⑨「とひ給ふ」の主語は誰か。そう判断できる決め手も書け。
  4. ⑬「ぞのたまひける」の「のたまふ」は、誰から誰への敬意か。①や③との違いにもふれて書け。
  5. ⑫「後(のち)の御孝養」とは、誰のための、どのようなことか。

D 口語訳

  1. ⑥「容顔(ようがん)まことに美麗(びれい)なりければ」を口語訳せよ。
  2. ⑧「汝はたそ」を口語訳せよ。
  3. ⑩「助けたてまつらばや」を口語訳せよ。
  4. ⑪「よものがれさせ給はじ」を口語訳せよ。

E 内容・記述

  1. ④「かね黒(ぐろ)」や「薄化粧」という描写から、この若武者がどのような人物だとわかるか。四十字以内で書け。
  2. ⑥「容顔(ようがん)まことに美麗(びれい)なりければ」のあと、熊谷は「いづくに刀を立つべしともおぼえず」(どこに刀を刺してよいとも思われない)という状態になる。熊谷が刀を刺せなかったのはなぜか、本文の語句を二つ以上引用して説明せよ。
  3. ⑫「後(のち)の御孝養(ごけうやう)をこそ仕(つかまつ)り候はめ」とあるが、熊谷がこのように申し出たのはなぜか。直前の本文をふまえて説明せよ。
  4. ⑮「口惜(くちを)しかりける」とあるが、熊谷が武士である我が身を情けないと嘆いたのはなぜか。説明せよ。

F 文学史・思想

  1. 『平家物語』のように、戦いを中心にえがいた作品のジャンル名を漢字で書け。
  2. 『平家物語』の冒頭「沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす」に示され、⑮のような熊谷の嘆きの根にもなっている、作品全体をつらぬく仏教的なものの見方を漢字二字で書け。
  3. 『平家物語』は、琵琶を弾きながら語り歩いた人々によって各地に広められた。この語り手の呼び名を書け。

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解答と解説

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A 語句の意味と読み

問1 よくない・見苦しい・みっともない
└ 「まさ(正)+なし」で、正しくない・よろしくない、が元の意味。ここは逃げる相手の振る舞いをとがめている場面なので「みっともない」

問2 お歯黒。歯を黒く染めること(都の貴族や上流の若者の身だしなみ)
└ 「かね(鉄漿)」は歯を染める液。荒々しい東国武者の姿ではない

問3 読み=よわい/意味=年齢・年ごろ
└ 漢字では「齢」。「わが子の小次郎がよはひほど」=わが子と同じくらいの年

問4 終止形=まします/意味=いらっしゃる(「あり・をり」の尊敬語)
└ 「いかなる人にてましまし候ふぞ」=どのようなお方でいらっしゃいますか

問5 気の毒だ・かわいそうだ・いたわしい
└ 現代語の「いとおしい(かわいくてたまらない)」と訳すと×

問6 情けない・つらい・残念だ
└ 現代語の「くやしい」より広く、「ふがいない・情けない」の気持ち

B 文法

問7 もとの形=まさなく(形容詞「まさなし」の連用形)/変化の名=ウ音便
└ 「まさなく」の「く」が「う」に変わった形。本文の終わりの「なさけなうも」も同じウ音便

問8 四段活用/尊敬語(「お〜になる」の意の尊敬の補助動詞)
└ 下二段の「給ふ」は謙譲で、会話文の中で「思ひ給へ」のように使われる。ここは地の文で「問ふ」についているので四段活用の尊敬

問9 意味=自己の願望(〜たい)/直前は未然形(「たてまつら」)
└ 未然形+ばや=願望。已然形+ば(〜ので)と混同しない

問10 文末の打消推量の助動詞「じ」と呼応する/「よも〜じ」で「まさか〜ないだろう」
└ 「よも」は下に打消推量が来る

問11 助動詞「む」の已然形(係助詞「こそ」の結び)/意味は意志(きっと〜しよう)
└ 「こそ」があるので終止形「む」ではなく已然形「め」になる

問12 連体形/係助詞「ぞ」を受けた結びだから(係り結び)
└ 「ける」は過去の助動詞「けり」。「首をぞかいてんげる」も同じしくみ

C 主語・指す内容・敬意の方向

問13 謙譲語/熊谷から敦盛(大将軍)への敬意
└ 会話文なので敬意の主は話し手の熊谷。「候へ」は熊谷から聞き手の敦盛への丁寧語

問14 尊敬語/熊谷から敦盛への敬意
└ 「させ給ふ」は二重敬語(最高敬語)とする説明と、敬意を強めた尊敬とする説明がある。お使いの教科書の説明に合わせること

問15 敦盛/尊敬の補助動詞「給ふ」が使われているから(熊谷は自分の動作に尊敬語を使わない)
└ 「汝(=おまえ)」と呼びかけられた側が、次の行で「熊谷次郎直実」と名のっていることも手がかり

問16 作者(語り手)から敦盛への敬意。①③は会話文なので話し手である熊谷からの敬意だが、⑬は地の文なので作者からの敬意になる。
└ 話し手が誰かで敬意の主が変わる。地の文なら作者。ここで「ただとくとく首をとれ」とおっしゃったのは敦盛

問17 討たれる敦盛のための、死後の供養(冥福を祈る仏事)のこと
└ 「孝養」はここでは親孝行ではなく、死者の供養の意味

D 口語訳

問18 顔だちが本当に美しかったので
└ 「容顔」=顔だち。已然形+「ば」は順接の確定条件(〜ので)

問19 お前は誰か。
└ 「たそ」は「誰(た)そ」。「た」が「誰」の意味で、「そ」は係助詞「ぞ」の古い形(清音)。疑問語「た」があるので「誰か」という問いかけになる

問20 お助け申し上げたい。
└ 「たてまつら」は謙譲の補助動詞。「助けてさしあげたい」でもよい

問21 (あなたは)まさかお逃げになることはできますまい。
└ 「よも〜じ」で「まさか〜ないだろう」。「させ給ふ」は尊敬語なので、逃げられないのは敦盛のほう

E 内容・記述

問22 荒々しい東国武者ではなく、薄化粧やお歯黒をする都育ちの、身分の高い若武者。(三十七字)
└ 「大将軍」と呼びかけられるにふさわしい、平家の公達の姿

問23 組み伏せた相手が「年十六七ばかり」で「薄化粧して、かね黒なり」、しかも「わが子の小次郎がよはひほど」の美しい若者だったので、わが子を重ねてしまい、討つのがしのびなかったから。
└ 採点のポイント=「年十六七」と「わが子の小次郎がよはひほど」(わが子と同じ年ごろ)の二点が書けていれば〇

問24 うしろには土肥・梶原ら味方が五十騎ほど迫っており、助けようとしても敦盛はとうてい逃げきれない。どうせ他人の手にかかるのなら、自分の手で討ち、その後の供養をしてやりたいと考えたから。
└ 「味方の軍兵雲霞のごとく候ふ」「よものがれさせ給はじ」が理由にあたる

問25 武芸の家に生まれた武士であるために、わが子ほどの年で、助けたいとまで思った若武者を、自分の手で討たねばならなかったから。
└ 直後の「武芸の家に生まれずは、なにとてかかるうき目をばみるべき」が根拠。物語では、この思いがのちの直実の出家(発心)へつながっていく

F 文学史・思想

問26 軍記物語
└ 『保元物語』『平治物語』『太平記』も同じ仲間

問27 無常
└ すべては移り変わり、栄えるものも必ず衰えるという見方

問28 琵琶法師
└ 語りものとしての平家物語を「平曲」という

【テスト直前チェック】この三つ
主語で迷ったら敬語を見る。「させ給ふ」「のたまふ」など尊敬語がつく動作の主は敦盛、「参らす」「仕る」とへりくだるのは熊谷。「汝はたそ」「ただとくとく首をとれ」はどちらも敦盛の言葉。
係り結びは五か所。「こそ…候へ」「こそ…候はめ」は已然形、「ぞ…のたまひける」「ぞ…かいてんげる」「ぞ…泣きゐたる」は連体形。こそだけ已然形、と覚える。
「いとほし」=気の毒だ、「口惜し」=情けない。現代語の「いとおしい」「くやしい」で訳すと×。「まさなし」=みっともない、「よはひ」=年齢もセットで。

現代語訳(全文)

熊谷は、「ああ、大将軍とお見受け申し上げます。みっともなくも敵に背中をお見せになるものですね。お引き返しなさい。」と、扇をあげて招いたので、(若武者は)招かれて引き返してくる。

渚へ駆け上がろうとするところに、(熊谷は)馬を並べてむんずと組んでどうと落ち、取り押さえて首を切ろうと、かぶとの内側を押し上げて顔を見たところ、年は十六、七ほどの若者で、薄化粧をして、お歯黒をつけている。わが子の小次郎ほどの年ごろで、顔だちが本当に美しかったので、どこに刀を刺してよいとも思われない。

「そもそもどのようなお方でいらっしゃいますか。お名のりください、お助け申し上げましょう。」と申し上げると、「お前は誰か。」とお尋ねになる。「たいした者ではございませんが、武蔵の国の住人、熊谷次郎直実(と申します)。」と名のり申し上げる。

熊谷は、「ああ、お助け申し上げたい。」と思って、うしろをさっと見たところ、土肥・梶原が五十騎ほどで続いている。熊谷は涙をおさえて申し上げたことには、「お助け申し上げようとは存じますが、味方の軍勢が雲や霞のように数多くございます。(あなたは)まさかお逃げになることはできますまい。他人の手におかけ申し上げるよりは、同じことならこの直実の手におかけ申し上げて、その後のご供養をきっといたしましょう。」と申し上げたところ、(若武者は)「ただ早く早く首を取れ。」とおっしゃった。

熊谷はあまりに気の毒で、どこに刀を刺してよいとも思われず、目の前も暗くなり心も消え果てて、前後もわからなくなったけれども、そうしてばかりもいられないことなので、泣く泣く首を切ってしまった。

「ああ、弓矢を取る武士の身ほど、情けないものはない。武芸の家に生まれなかったならば、どうしてこのようなつらい目にあうだろうか、いや、あうまい。情けなくもお討ち申し上げたものだなあ。」と繰り返し嘆いて、袖を顔に押しあててさめざめと泣いていた。

※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。

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