杜甫の『春望(しゅんぼう)』は、戦乱で荒れはてた都の春景色をうたった五言律詩で、定期テストの漢詩分野で最頻出の作品です。「国破れて山河在り」の一句はとくに有名で、芭蕉も引用したことで知られます。この記事では、本文(白文・書き下し)をもとに、形式・押韻・対句・現代語訳・語句・句法・主題まで、テストで問われやすいポイントを問題形式でまとめました。まずは本文を読んでから、設問に挑戦してみてください。
作品全体のやさしい解説は、こちらの記事にまとめています。あわせてご覧ください。
杜甫『春望』のやさしい解説はこちら
本文
【白文】
【書き下し文】
①国破れて山河在り
城春にして草木深し
②時に感じては花にも涙を濺(そそ)ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
③烽火(ほうか)三月(さんげつ)に連なり
④家書(かしょ)万金に抵(あ)たる
⑤白頭(はくとう)掻(か)けば更に短く
⑥渾(す)べて簪(しん)に勝(た)へざらんと欲す
設問
- この詩『春望』の形式を、漢字の熟語で答えなさい。(ヒント:一句が五字、全部で八句)
- 『春望』の作者は誰か。漢字で答えなさい。
- 『春望』の作者は、その詩風から後世に何と呼ばれたか。次から選びなさい。
- ア 詩仙 イ 詩聖 ウ 詩仏 エ 詩鬼
- 五言律詩について、次の問いに答えなさい。
- 第一・二句(はじめの二句)を何と呼ぶか。
- 第三・四句を何と呼ぶか。
- 第五・六句を何と呼ぶか。
- 第七・八句を何と呼ぶか。
- この詩で韻を踏んでいる字(韻字)を、本文中からすべて抜き出しなさい。
- 前問の韻字は、何句目の末字に置かれているか。「第〇句」の形で、あてはまるものをすべて答えなさい。
- 律詩では、原則としてどの二聯が対句になるか。聯の呼び名で二つ答えなさい。
- 第三・四句「感時花濺涙/恨別鳥驚心」が対句であることを、対応する語をあげて説明しなさい。(例:「花」と「鳥」が対応している、のように)
- 第五・六句「烽火連三月/家書抵万金」も対句である。ここでは「公(おおやけ・戦乱)」と「私(わたくし・家族)」が対比されているが、戦乱を表す語と家族を表す語を、本文中から一語ずつ抜き出しなさい。
- この詩では、ふつう対句にしなくてよい第一・二句(首聯)も対句になっている。第一句「国破山河在」と対応している第二句を、書き下しで答えなさい。
- 傍線部①「国破れて山河在り」を現代語訳しなさい。
- 傍線部①「国破れて山河在り」について、次の問いに答えなさい。
- 「国破れて」とは、何が原因で都(長安)が破壊された状況を指すか。歴史上の出来事の名で答えなさい。
- この句は、人の世のはかなさと自然の不変とを対比している。後世、この句を「夏草や兵(つはもの)どもが夢の跡」の場面で引用した俳人は誰か。
- 第二句「城春にして草木深し」を現代語訳しなさい。
- 傍線部②「感時花濺涙」について、次の問いに答えなさい。
- 「時に感じて」の「時」とは、どのような時世を指すか。簡潔に答えなさい。
- 「感時花濺涙/恨別鳥驚心」の二句を現代語訳しなさい。(「花を見ても涙を流し…」のように)
- 傍線部③「烽火三月に連なり」について、次の問いに答えなさい。
- 「烽火(ほうか)」とは何か。その意味を答えなさい。
- この句全体を現代語訳しなさい。
- 傍線部④「家書万金に抵(あ)たる」について、次の問いに答えなさい。
- 「家書」とは何か。答えなさい。
- 「抵(あ)たる」の意味を答えなさい。
- この句全体を現代語訳しなさい。また、ここに作者のどのような心情が表れているか、簡潔に説明しなさい。
- 傍線部⑤「白頭掻けば更に短く」を現代語訳しなさい。また、ここから作者のどのような様子が読み取れるか答えなさい。
- 傍線部⑥「渾(す)べて簪(しん)に勝(た)へざらんと欲す」について、次の問いに答えなさい。
- 「渾(す)べて」の意味として最も適切なものを選びなさい。
- ア まったく・すっかり イ ときどき ウ ほんの少し エ ゆっくりと
- 「簪(しん)」とは何か。また、それは当時どのような身分・立場の象徴であったか答えなさい。
- この句全体を現代語訳しなさい。
- 「渾(す)べて」の意味として最も適切なものを選びなさい。
- 句法について、次の問いに答えなさい。
- 「勝(た)へず」とは、ここではどのような意味か。「〜できない」を使って答えなさい。
- 「〜んと欲す」は、どのような意味を表す言い方か答えなさい。
- この詩で、作者が嘆いている季節はいつか。漢字一字で答えなさい。また、その季節であることが詩の主題とどう関わるか(情景と心情の対比)を簡潔に説明しなさい。
- この詩の主題として最も適切なものを、次から選びなさい。
- ア 友人との別れを惜しむ悲しみ
- イ 戦乱の世を嘆き、離ればなれの家族を思う気持ち
- ウ 出世できないことへの怒り
- エ 春の景色を楽しむ喜び
- この詩には、戦乱で荒れた都の姿と、変わらず巡ってくる自然の春とが描かれている。このように、人の世の「はかなさ・移ろいやすさ」を感じ取る考え方を、日本の古典でよく用いられる語で何というか。(ヒント:「もののあはれ」とも近い、世の移ろいをはかなむ感覚)
- 『春望』の作者が生きた時代に起こり、この詩の背景となった大規模な反乱を何というか。漢字で答えなさい。
- 次の文の空欄にあてはまる語を答えなさい。
「『春望』は( あ )詩の代表的な詩人である杜甫が、( い )の乱で都長安が占領されたときの心情をうたった( う )言律詩である。」
▼ 解答・解説を見る(まず自分で解いてから)
問1 五言律詩(ごごんりっし)。
一句が五字、全体が八句なので「五言律詩」。八句で一字が七字なら七言律詩、四句なら絶句となる。
問2 杜甫(とほ)。
問3 イ(詩聖)。
杜甫は「詩聖」と呼ばれる。なお「詩仙」は李白(りはく)を指す。混同しやすいので注意。
問4
(1) 首聯(しゅれん) (2) 頷聯(がんれん) (3) 頸聯(けいれん) (4) 尾聯(びれん)。
律詩は八句を二句ずつ四つに分け、上から首聯・頷聯・頸聯・尾聯と呼ぶ。
問5 深・心・金・簪。
いずれも「‐in(しん・しん・きん・しん)」の音で韻を踏んでいる。
問6 第二句・第四句・第六句・第八句。
律詩では原則として偶数句の末字(および詩によっては第一句末)で韻を踏む。本作は偶数句で押韻している。
問7 頷聯(第三・四句)と頸聯(第五・六句)。
律詩では中の二聯(頷聯・頸聯)を対句にするのが原則。
問8 (解答例)「感(じる)」と「恨(む)」、「時」と「別」、「花」と「鳥」、「濺涙(涙を濺ぐ)」と「驚心(心を驚かす)」がそれぞれ対応しており、文の組み立てもそろっているので対句である。
問9 戦乱を表す語…烽火 / 家族を表す語…家書。
「烽火(戦争・公の出来事)」と「家書(家族からの手紙・私的なこと)」を対比させている。
問10 城春にして草木深し。
「国破れて山河在り(国は破れたが山河は残っている)」と「城春にして草木深し(町に春は来て草木は生い茂る)」が対応し、首聯も対句になっている。
問11 (解答例)国都〔長安〕は戦乱で破壊されてしまったが、山や河は昔のままに残っている。
問12
(1) 安史の乱(あんしのらん)。唐の玄宗の時代に起きた安禄山・史思明らの反乱で、都長安が占領された。
(2) 松尾芭蕉(まつおばしょう)。『おくのほそ道』平泉の場面で「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」と引用している。
問13 (解答例)町には春がやってきて、草や木が生い茂っている。
(「深し」は草木が深々と生い茂るさま。荒れはてた都に、それでも変わらず巡る春を対比させている。)
問14
(1) 戦乱(戦争)が続く、世の乱れた時世。
(2)(解答例)この戦乱の世を思うと、(美しいはずの)花を見ても涙がこぼれ、家族との別れをうらめしく思うと、(楽しいはずの)鳥の声にも心を痛める(はっとさせられる)。
問15
(1) 敵の来襲などを知らせる「のろし(火)」。ここでは戦乱・戦争そのものを表す。
(2)(解答例)戦乱を告げるのろしは、三か月もの間ずっと続いて(やまない)。
※「三月」は「数か月にわたって長く」の意で訳すこともできる。
問16
(1) (ふるさとの)家族から届く手紙。
(2) 価値が相当する、匹敵する。
(3)(解答例)家族からの手紙は万金(非常に大きな価値)に値するほどありがたい。
心情…戦乱で家族と離れ、便りもなかなか届かない中で、一通の手紙がこの上なく貴重に感じられる、家族を深く思う気持ちが表れている。
問17 (解答例)訳…白くなった髪は、(心配のあまり)掻けば掻くほどさらに短く(薄く)なってしまう。
様子…戦乱や家族を思う心労で、老け込み、すっかり衰えてしまった作者の姿が読み取れる。
問18
(1) ア(まったく・すっかり)。
(2) 「簪(しん)」は、髪をまとめて冠を留めるためのかんざし(ピン)。役人・官吏の身だしなみの象徴であった。
(3)(解答例)(髪が薄くなって)まったく、もう簪を挿して留めることもできそうにない。
問19
(1)(簪を挿すことに)「耐えられない=もはや簪を挿しておくことができない」という意味。
(2) 「(今にも)〜しようとする・〜しそうだ」という意味(ここでは「〜になりそうだ」という状態を表す)。
問20 季節…春。
(解答例)荒れはてた戦乱の都にも、自然の春は変わらず巡ってくる。その美しい春の景色と、戦乱を嘆き家族を思う作者の悲しみとが対比され、かえって悲しみが深く際立つ。
問21 イ。
戦乱の世を嘆き、離ればなれの家族を思う気持ちが主題。あわせて、栄えた都も滅びる、人の世のはかなさ(無常)も読み取れる。
問22 無常(無常観)。
栄えた都も戦乱で滅び、人の世は移ろいやすい――という、世のはかなさをはかなむ感覚。
問23 安史の乱(あんしのらん)。
問24 (あ)唐 (い)安史 (う)五。
「唐詩の代表的な詩人である杜甫が、安史の乱で都長安が占領されたときの心情をうたった五言律詩である。」
※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は中国古典の原文(著作権の対象外)を用いています。
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