漢文の句形(句法)を、この1枚で全部見渡せるようにまとめた早見表です。テスト直前の総チェック、模試の前の最終確認にどうぞ。各ジャンルのくわしい解説記事へのリンクも付けてあります。
1. はじめに ― 句形は「目印の字」で見抜く
漢文の句形は、目印になる字と語順がすべて決まっています。「不」を見たら否定、「使」を見たら使役、文末の「ん(や)」を見たら反語——。この表で目印の字をひととおり確認したら、あとは100題ドリルで体に覚えさせれば仕上がりです。
2. 句形 早見表(ジャンル別)
① 否定・二重否定
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 不・弗 | ず | 〜ない(動作・状態の打ち消し) |
| 非 | …にあらず | …ではない(名詞の打ち消し) |
| 無・莫 | なし | 〜がない・いない(存在の打ち消し) |
| 無不〜 | 〜ざる(は)無し | 〜しないことはない(=必ず〜する) |
| 不可不〜 | 〜ざるべからず | 〜しないわけにはいかない |
→ くわしくは 否定・疑問・反語の解説
② 部分否定・全部否定
| 形 | 読み | 訳 |
|---|---|---|
| 不必〜 | 必ずしも〜ず | 必ず〜とは限らない(部分否定) |
| 必不〜 | 必ず〜ず | 必ず〜ない(全部否定) |
| 不常〜 | 常には〜ず | いつも〜とは限らない(部分否定) |
| 常不〜 | 常に〜ず | いつも〜ない(全部否定) |
→ くわしくは 部分否定・全部否定の解説
⚠ 否定語が先=部分否定、副詞が先=全部否定。語順がすべてです。
③ 疑問・反語
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 何〜(乎) | 何ぞ〜(や) | どうして〜か(疑問) |
| 何〜ン(乎) | 何ぞ〜ん(や) | どうして〜か、いや〜ない(反語) |
| 安〜 | 安くんぞ〜 | どうして〜(疑問・反語) |
| 豈〜乎 | 豈に〜んや | どうして〜か、いや〜ない(反語) |
→ くわしくは 否定・疑問・反語の解説
⚠ 同じ「何」でも、文末に「ん(や)」があれば反語、なければ疑問。
④ 禁止・願望
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 勿・莫・無・毋 | (〜する)こと勿かれ | 〜してはいけない・〜するな(禁止) |
| 欲〜 | 〜(せ)んと欲す | 〜したい・〜しようとする |
| 願〜 | 願はくは〜 | どうか〜してください・〜したい |
| 請〜 | 請ふ〜 | どうか〜させてください |
→ くわしくは 禁止・願望の解説
⑤ 使役
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 使・令・教・遣 | AをしてB(せ)しむ | AにBさせる |
→ くわしくは 使役・受身の解説
⑥ 受身
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 見・被 | る・らる | 〜される |
| 為A所B | AのBする所と為る | AにBされる |
| (動詞)於〜 | 〜に…らる | 〜に…される |
→ くわしくは 使役・受身の解説
⑦ 仮定・条件
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 如・若〜 | 如(も)し〜ば | もし〜ならば(順接仮定) |
| 苟〜 | 苟しくも〜ば | もしも〜ならば |
| 雖〜 | 〜と雖も | 〜だけれども・たとえ〜でも(逆接) |
→ くわしくは 仮定・条件の解説
⑧ 比較・最上・選択・限定
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 不如・不若 | 〜に如かず | 〜には及ばない(比較。例:百聞は一見に如かず) |
| 莫如・莫若 | 〜に如くは莫し | 〜が一番だ(最上) |
| 孰・孰若 | いづれか | どちらが〜か(選択) |
| 唯・独〜耳・而已 | 唯だ〜のみ | ただ〜だけ(限定) |
→ くわしくは 比較・選択・限定の解説
⑨ 累加・抑揚・詠嘆
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 不唯A、亦B | 唯だAのみならず、亦たB | AだけでなくBも(累加) |
| A且〜、況B乎 | Aすら且つ〜、況んやBをや | Aですら〜、ましてBは(抑揚) |
| 〜哉 | 〜かな | なんと〜だなあ(詠嘆。例:賢なるかな、回や) |
| 豈不〜乎 | 豈に〜ずや | なんと〜ではないか(詠嘆) |
→ くわしくは 累加・抑揚・詠嘆の解説
⑩ 再読文字
| 句形(漢字) | 読み | 意味・訳 |
|---|---|---|
| 未 | 未だ〜ず | まだ〜ない |
| 将・且 | 将に〜んとす | 今にも〜しようとする |
| 当 | 当に〜べし | 当然〜すべきだ |
| 応 | 応に〜べし | きっと〜のはずだ |
| 須 | 須らく〜べし | ぜひ〜する必要がある |
| 宜 | 宜しく〜べし | 〜するのがよい |
| 猶 | 猶ほ〜(の・が)ごとし | ちょうど〜のようだ |
| 盍 | 盍ぞ〜ざる | どうして〜しないのか |
→ くわしくは 再読文字の解説
⑪ 置き字
| 字 | 読み | はたらき |
|---|---|---|
| 而 | (読まない) | 接続のはたらき(〜て・〜して) |
| 於・于・乎 | (読まない) | 場所・対象・比較など(〜に・〜より) |
| 矣・焉 | (読まない) | 文末の断定・強調 |
→ くわしくは 置き字の解説
3. 紛らわしい句形の見分け(頻出3組)
(1) 疑問か反語か
文末に「ん(や)」があれば反語、なければ疑問。「何ぞ学ばざる」=どうして学ばないのか(疑問)/「何ぞ学を好まん(や)」=どうして学問を好むだろうか、いや好まない(反語)。
(2) 部分否定か全部否定か
否定語が副詞より先なら部分否定(不必=必ずしも〜とは限らない)、副詞が先なら全部否定(必不=必ず〜ない)。語順だけで決まります。
(3) 否定の「不」か禁止の「勿」か
「不行」=行かず(行かない=事実の打ち消し)/「勿行」=行く勿かれ(行くな=命令)。主語が「あなた・人」で命令の調子なら禁止です。
確認クイズ(3問)
Q1. 「不必勝」の意味として正しいものはどれ?
ア 必ずしも勝つとは限らない イ 必ず勝たない ウ 勝ってはいけない
答えを見る
正解:ア 解説:否定語「不」が副詞「必」より先にあるので部分否定。「必ずしも勝たず」と読みます。
Q2. 「豈に〜んや」が表すものはどれ?
ア 疑問 イ 反語 ウ 使役
答えを見る
正解:イ 解説:「豈」+文末「んや」は反語の代表形。「どうして〜だろうか、いや〜ない」と訳します。
Q3. 「使臣下諫」の「使」のはたらきはどれ?
ア 受身 イ 仮定 ウ 使役
答えを見る
正解:ウ 解説:「使」は使役の目印。「臣下をして諫めしむ」=臣下に諫めさせる、と読みます。
4. 句形を「例文」で確かめる(書き下し・現代語訳つき)
表で目印の字を覚えたら、つぎは実際の名文で「読み」と「意味」を確かめるのが近道です。ここでは句形ごとに、ことわざや有名な一節を例にとり、原文・書き下し文・現代語訳をそろえて示します。声に出して三回読めば、目印の字がそのまま頭に残ります。
否定・二重否定の例文
- 原文:過則勿憚改。 書き下し:過ちては則ち改むるに憚ること勿かれ。 現代語訳:あやまちを犯したら、改めることをためらってはいけない。(『論語』)
- 原文:無不為也。 書き下し:為さざるは無きなり。 現代語訳:しないことは一つもない(=何でもやってしまう)。「無+不」で二重否定となり、結局は強い肯定になります。
- 原文:不可不慎。 書き下し:慎まざるべからず。 現代語訳:慎重にしないわけにはいかない(=必ず慎重にせよ)。これも二重否定で、強い肯定・強い命令を表します。
疑問・反語の例文
- 原文:学而時習之、不亦説乎。 書き下し:学びて時に之を習ふ、亦た説ばしからずや。 現代語訳:学んでときどき復習する、なんとうれしいことではないか。(『論語』。「不亦〜乎」は「なんと〜ではないか」という詠嘆の形)
- 原文:燕雀安知鴻鵠之志哉。 書き下し:燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや。 現代語訳:ツバメやスズメのような小者に、どうして大きな鳥(大人物)の志がわかろうか、いやわかるまい。(『史記』。文末「ん(や)」があるので反語)
使役・受身の例文
- 原文:遣使者持璧。 書き下し:使者をして璧を持たしむ。 現代語訳:使者に宝玉を持たせる。(「遣(使・令)」+「AをしてB(せ)しむ」で使役)
- 原文:信而見疑、忠而被謗。 書き下し:信にして疑はれ、忠にして謗らる。 現代語訳:誠実なのに疑われ、忠義なのに悪口を言われる。(『史記』屈原の話。「見」「被」はどちらも受身の目印)
比較・限定・再読文字の例文
- 原文:百聞不如一見。 書き下し:百聞は一見に如かず。 現代語訳:百回聞くことは一度実際に見ることに及ばない。(「A不如B」=AはBに及ばない=Bのほうがよい)
- 原文:未聞道。 書き下し:未だ道を聞かず。 現代語訳:まだ道理を聞いたことがない。(再読文字「未」は「いまだ〜ず」と二度読む)
- 原文:将欲取之、必固与之。 書き下し:将に之を取らんと欲すれば、必ず固く之に与ふ。 現代語訳:今にもそれを奪い取ろうとするなら、まずはわざとそれを与えておく。(『老子』。再読文字「将」=今にも〜しようとする)
5. つまずきやすいポイントと入試での問われ方
句形の問題は、選択肢の訳を選ばせたり、書き下し文を答えさせたり、傍線部の用法を問うたりと、出され方が決まっています。失点しやすい「落とし穴」を先に知っておきましょう。
- 同じ字でも用法が変わる:「使」は使役のほか「使者・使ひ」という名詞のこともあります。「為」は「為る(なる・つくる)」「為(ため)に」「為(た)り」「受身(為A所B)」と多彩。前後の語順と送り仮名で判断します。
- 「不」と「無」を混同しない:「不」は動作・状態の打ち消し(〜しない)、「無」は存在の打ち消し(〜がない)。「無+不」は二重否定で強い肯定、「不+可+不」は「〜ねばならない」になります。
- 反語は「結論が逆」になる:反語は形は疑問でも、意味は反対の断定です。「豈に〜んや」は「決して〜ない」、「何ぞ〜ん」は「〜しない・〜できない」。訳すときは「いや、〜ない」を補うと安全です。
- 部分否定と全部否定は語順だけ:「不常〜」は「いつも〜とは限らない」(部分否定)、「常不〜」は「いつも〜ない」(全部否定)。否定語が先か副詞が先かを、まず指で押さえて確認しましょう。
- 再読文字は送り仮名がカギ:「未」「将」「当」などは二度読みます。一度目は副詞のように、二度目は返って動詞・助動詞として読むので、「いまだ〜ず」「まさに〜んとす」とセットで暗記すると崩れません。
6. ミニ練習問題(書き下し・解答つき)
表で確認した句形を、自分で読めるか試してみましょう。まず自力で書き下し・現代語訳を考えてから、答えを開いてください。
問1.次の漢文を書き下し、現代語訳しなさい。
不入虎穴、不得虎子。
解答・解説を見る
書き下し:虎穴に入らずんば、虎子を得ず。
現代語訳:虎の住む穴に入らなければ、虎の子を手に入れることはできない(=危険を冒さなければ大きな成果は得られない)。「不〜ば、不…」は「〜しなければ…しない」という否定の仮定。前半の「ずんば」が条件、後半が結果です。
問2.次の傍線部「豈」が表すのは、疑問・反語のどちらか答えなさい。
豈に天の我を亡ぼすにあらずや。
解答・解説を見る
解答:反語。
解説:「豈に〜(あら)ずや」は「なんと〜ではないか」という反語・詠嘆の形。意味は「これは天が私を滅ぼそうとしているのにちがいない」と、強い断定になります。文末の「ずや(んや)」が反語の目印です。
問3.次の漢文の「使」のはたらきを答え、書き下しなさい。
天帝使我長百獣。
解答・解説を見る
はたらき:使役。
書き下し:天帝我をして百獣に長たらしむ。
現代語訳:天帝は私を多くのけものたちのかしらにならせた。(「使+A+B」で「AをしてB(せ)しむ=AにBさせる」。『戦国策』「狐借虎威」の一節)
7. よくある質問(Q&A)
Q. 句形はぜんぶ暗記しないとダメ?
A. 丸暗記よりも「目印の字」と「語順」をつかむほうが効率的です。たとえば否定なら「不・非・無」、使役なら「使・令・教・遣」、受身なら「見・被・為〜所」とグループで覚え、あとは例文で読みを確かめれば、初めて見る文でも見抜けます。
Q. 疑問と反語をいつも間違えます。
A. 判断の決め手は文末です。「ん(や)」「んや」で終わっていれば反語、なければ疑問と考えてまず間違いありません。反語は「いや、〜ない」と心の中で補って訳すと、選択肢を選ぶときに迷いません。
Q. 再読文字はどれを覚えればいい?
A. 「未・将(且)・当・応・須・宜・猶・盍」の8字が定番です。それぞれ「いまだ〜ず」「まさに〜んとす」「まさに〜べし」「まさに〜べし」「すべからく〜べし」「よろしく〜べし」「なほ〜ごとし」「なんぞ〜ざる」と、読み方を口ぐせにして覚えてしまいましょう。
Q. 置き字はテストに出ますか?
A. 出ます。「而・於(于・乎)・矣・焉」などは読まない字ですが、「書き下し文に書かない」「白文を訓読するときどこで返るか」を問う形でよく出題されます。読まない=無視ではなく、文の構造を決める大切な字だと意識しておきましょう。
8. この表の使い方(仕上げまでの流れ)
- まず早見表(第2節)を上から下まで一度ながめ、知らない目印の字に印をつける。
- 印をつけた句形について、各ジャンルのくわしい解説記事(表の下のリンク)で読み方と訳を確認する。
- 第4節の例文を声に出して読み、目印の字が実際の文でどう働くかを体で覚える。
- 第6節のミニ練習と確認クイズで、自力で書き下せるか試す。
- 最後に100題ドリル(下のボックス)で総仕上げ。間違えた句形はこの表に戻って復習する。
句形は「覚える量」ではなく「見抜く目」です。目印の字と語順さえつかめば、初めて出会う漢文でも落ち着いて読み解けます。この1枚を手元に置いて、くり返し確認してください。
まとめ
- 句形は目印の字+語順で機械的に見抜ける。
- 疑問と反語は文末の「ん(や)」で区別。
- 部分否定と全部否定は否定語と副詞の語順で区別。
- 再読文字は8字(未・将・当・応・須・宜・猶・盍)をセットで暗記。
- 仕上げは句形総まとめの100題ドリルへ。
📗 参考書・問題集で対策するなら|塾長が古文・漢文の市販教材を目的別に正直レビューしています。目的別おすすめを見る →
[広告・PR]
動画で授業を受けたい人へ
誰でも古典塾は「読んで覚える」無料テキスト専門で、動画授業はありません。「文字だけだと入りにくい」「授業を聞いて理解したい」人は、動画授業のスタディサプリ(古文・漢文=岡本梨奈先生)が相棒になります。


コメント