大鏡『三船の才』テスト対策問題28問|縦書きPDF・解答つき

定期テスト対策

本文(傍線①〜⑮)

一年入道殿(にふだうどの)の、大井川(おほゐがは)に逍遥(せうえう)せさせ給ひしに、作文の舟・管絃(くわんげん)の舟・和歌の舟と分かたせ給ひて、その道にたへたる人々を乗せさせ給ひしに、この大納言殿(だいなごんどの)の参り給へるを、入道殿、「かの大納言、いづれの舟にか乗らるべき。」とのたまはすれば、
「和歌の舟に乗り侍(はべ)らむ。」とのたまひて、よみ給へるぞかし、
 小倉山(をぐらやま)嵐(あらし)の風の寒ければもみぢの錦(にしき)着ぬ人ぞなき
申し受け給へるかひありて、あそばしたりな。
御自(おんみづか)らものたまふなるは、「作文のにぞ乗るべかりける。さて、かばかりの詩を作りたらましかば、名の上がらむこともまさりなまし口惜(くちを)しかりけるわざかな。さても、殿の、『いづれにかと思ふ。』とのたまはせしになむ、われながら心おごりせられし。」とのたまふなる。
一事(いちじ)のすぐるるだにあるに、かくいづれの道も抜け出で給ひけむは、いにしへも侍(はべ)らぬことなり。

語注 入道殿=出家した貴人への敬称。 大井川=京都・嵐山のふもとを流れる川。大堰川とも書く。 逍遥す=気ままに遊び歩く。ここは舟遊び。 管絃=楽器の演奏。音楽。 この大納言殿=「大納言」という官職で呼ばれている人物。 のたまはす・のたまふ=「言ふ」の尊敬語(「のたまはす」のほうが重い)。 小倉山・嵐(山)=大井川をはさんで向かい合う山の名。 錦=色糸で模様を織り出した高級な織物。 あそばす=「す・詠む」の尊敬語。 わざ=こと。行い。 さても=それにしても。 いにしへ=昔。 ※この話は『大鏡』太政大臣頼忠の段にある。

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使い方のおすすめ。①まず何も見ずに解く → ②解答で答え合わせ → ③まちがえた設問の番号と同じ傍線を本文で探して読み直す。

設問

A 語句の意味と読み

  1. ①「一年」の読みをひらがなで書き、あわせてここでの意味を書け。
  2. ④「作文」の読みをひらがなで書き、あわせてその意味を書け。
  3. ⑤「たへたる」の意味を書け。
  4. ⑬「口惜し」の意味を書け。
  5. ⑭「心おごり」の意味を書け。
  6. ⑮「だに」の意味を書け。

B 文法

  1. ③「せさせ給ひ」のうち「させ給ひ」の部分を文法的に説明せよ。
  2. ⑦「乗らるべき」の「る」の文法的意味を書け。
  3. ⑦の係助詞「か」を受けて、文末の「べし」はどう変化しているか。文法的に説明せよ。
  4. ⑧「む」の文法的意味を書け。
  5. ⑫「作りたらましかば…まさりなまし」は何という構文か。名前と訳し方の型を書け。
  6. ⑭「心おごりせられし」の「られ」の文法的意味を書け。

C 主語・指す内容・敬意の方向

  1. ②「入道殿」とはだれのことか。人物名を書け。
  2. ③「させ給ひ」の敬意は、だれからだれへ向けられたものか書け。
  3. ⑥「参り給へる」の主語はだれか。人物名を書け。
  4. ⑥「参り給へる」の「参り」は、だれからだれへの敬意を表しているか書け。
  5. ⑧「侍ら」は、だれからだれへの敬意を表しているか書け。

D 口語訳

  1. ⑦「いづれの舟にか乗らるべき」を現代語訳せよ。
  2. ⑩「着ぬ人ぞなき」を現代語訳せよ。
  3. ⑪「作文のにぞ乗るべかりける」を現代語訳せよ。
  4. ⑫「かばかりの詩を作りたらましかば、名の上がらむこともまさりなまし」を現代語訳せよ。

E 内容・記述

  1. ④とあるが、道長は三つの舟を用意した。三つすべて答え、この三つが当時の貴族にとってどのような位置づけのものであったかも書け。
  2. ⑨「もみぢの錦」はどのような表現技法か。何を何にたとえたのかを含めて四十字以内で書け。
  3. ⑪・⑬とあるが、公任が和歌で絶賛されたにもかかわらず悔やんだのはなぜか。当時の価値観をふまえて八十字以内で説明せよ。
  4. ⑭とあるが、公任は何を誇らしく思ったのか。本文に即して八十字以内で説明せよ。

F 文学史・作品常識

  1. この文章の出典の書名と、その作品のジャンルを書け。
  2. 『大鏡』は、どのような人物が、どのような形式で歴史を語る作品か書け。
  3. 「三舟(三船)の才」とはどのような意味の言葉か。またこの話の中心人物はだれか、人物名も書け。

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解答と解説

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A 語句の意味と読み

問1 ひととせ/ある年・先年
└ 「いちねん」ではない。昔の出来事を語り出すときの言い方

問2 さくもん/漢詩(を作ること)
└ 「さくぶん」と読むと×。作文の舟=漢詩の舟

問3 (その道に)すぐれている・十分な力がある
└ 動詞「堪ふ」の連用形+存続の助動詞「たり」

問4 残念だ・くやしい・もの足りない
└ 現代語の「口惜しい」より広く使う

問5 得意になること・いい気になること
└ 「おごり」=思い上がり。ここは誇らしさ

問6 〜さえ
└ 軽いものを挙げて、より重いものを推し量らせる副助詞

B 文法

問7 尊敬の助動詞「さす」の連用形「させ」+尊敬の補助動詞「給ふ」の連用形「給ひ」。尊敬語を二つ重ねた二重敬語(最高敬語)である。
└ ★「させ」を使役と訳さない。「逍遥せ」はサ変「逍遥す」の未然形で、この「せ」は敬語ではない

問8 尊敬(〜なさる)の助動詞「る」
└ 貴人である公任の動作を高めている。受身・可能・自発ではない

問9 疑問の係助詞「か」の結びとなるため、終止形「べし」が連体形「べき」になっている(係り結び)。
└ 「か」→連体形。結びの語をたどる練習

問10 意志(〜しよう)
└ 会話文で主語が話し手自身のときは意志。「(和歌の舟に)乗りましょう」と訳す

問11 反実仮想。「もし〜だったら、…だろうに」と訳し、実際にはそうしなかった残念さを含める。
└ ★「ましかば…まし」を見たら反実仮想。「なまし」の「な」は強意

問12 自発(自然と〜してしまう)
└ 「得意にならずにはいられなかった」。「し」は過去「き」の連体形で、係助詞「なむ」の結び

C 主語・指す内容・敬意の方向

問13 藤原道長
└ 出家した貴人の敬称。この話の舟遊びの主催者

問14 語り手から入道殿(藤原道長)へ
└ 最高敬語は摂関級・天皇級の人物にしか使わない=道長の地位の高さを示す

問15 この大納言殿=藤原公任
└ 「参り」は謙譲語で道長への敬意、「給へ」は尊敬で公任への敬意

問16 語り手から入道殿(藤原道長)へ
└ 「参る」は謙譲語。動作の向かう先(参上した相手)である道長を高めている

問17 公任から聞き手の入道殿(藤原道長)へ(丁寧の補助動詞)
└ 「侍り」は丁寧の補助動詞。会話文なので敬意を向けるのは話し手=公任

D 口語訳

問18 (あの大納言は)どの舟にお乗りになるのだろうか。
└ 「る」=お〜になる。なお「べし」の意味は、推量(〜だろうか)とする説明と適当(〜のがよいだろうか)とする説明があるので、お使いの教科書の説明に合わせること

問19 (紅葉の錦を)着ていない人は一人もいない。
└ 「ぬ」は打消「ず」の連体形。打消+「なし」の二重否定=強い肯定

問20 漢詩の舟に乗ればよかったなあ。
└ 「作文の(舟)に」と「舟」が省かれている。「ぞ」の結びで「ける」が連体形

問21 これくらいの(出来ばえの)漢詩を作っていたならば、名声が上がることもいっそうまさっていただろうに。
└ 「かばかり」=これほど・このくらい。先に自分が詠んだ「小倉山…」の歌の出来ばえを指す。反実仮想の型(もし〜だったら…だろうに)を崩さない

E 内容・記述

問22 漢詩(作文)の舟・管絃(音楽)の舟・和歌の舟/いずれも当時の貴族が身につけるべきとされた教養の柱で、この三つに通じることが最高の評価とされた。
└ この三つに通じる才能が「三舟(三船)の才」。舟の名を並べるだけで終わらせない

問23 見立て(比喩)。散りかかる紅葉の美しさを、色糸で織った錦の織物にたとえている。(三十九字)
└ 「着ぬ人ぞなき」と続けて、皆が錦をまとっているように見える、と詠む。なお、この歌の「嵐」は山の名「嵐(山)」と「あらし(強い風)」の掛詞と説明されることも多いので、お使いの教科書の説明もあわせて確認すること

問24 当時は和歌よりも漢詩(作文)のほうが格の高い正式な教養とされていたから。同じ出来ばえのものなら漢詩で示したほうが、名声はいっそう上がったはずだと考えたため。(七十八字)
└ 「悔しさ」の理由は、公任の実力不足ではなく当時の序列にある

問25 道長が乗る舟を一つに決めず「どの舟に乗るのか」と尋ねたこと自体が、漢詩・管絃・和歌の三つの道すべての名手だと世に認められている証拠だと感じられたこと。(七十五字)
└ 「悔しさ」と「誇り」が同居するのがこの章段の読みどころ。設問は「何を」なので、文末は「〜こと。」でそろえる

F 文学史・作品常識

問26 『大鏡』/歴史物語
└ 平安時代後期に成立(作者は未詳)。『栄花物語』とともに藤原道長の栄華を描く。「四鏡」の第一

問27 大宅世継・夏山繁樹という二人の長寿の老人が語り合う、対話(座談)形式で語られる。
└ 冒頭「雲林院の菩提講」で二人が出会う設定。記述は紀伝体

問28 漢詩・和歌・管絃の三つの道すべてにすぐれた才能のこと/藤原公任
└ この逸話から生まれた言葉。公任は『和漢朗詠集』の撰者としても有名

【テスト直前チェック】この三つ
二重敬語(最高敬語)なのは「させ給ひ」の部分。「逍遥せ」はサ変動詞「逍遥す」の未然形で、この「せ」は敬語ではありません。「させ」を使役と訳すと×で、敬意は入道殿=藤原道長に向かいます。
「作りたらましかば…まさりなまし」は反実仮想。「もし〜だったら…だろうに」と訳し、実際にはそうしなかった残念さまで出すのが満点の条件です。
公任が悔やんだ理由=当時は和歌より漢詩(作文)が格上だったから。記述問題の答えは、ほぼこの一点に集まります。

現代語訳(全文)

ある年、入道殿(=藤原道長)が大井川で舟遊びをなさったときに、漢詩の舟・管絃の舟・和歌の舟と(三つに)お分けになって、それぞれの道にすぐれている人々をお乗せになったが、この大納言殿(=藤原公任)が参上なさったのを(ご覧になって)、入道殿が、「あの大納言は、どの舟にお乗りになるのだろうか。」とおっしゃると、

(大納言は)「和歌の舟に乗りましょう。」とおっしゃって、お詠みになったのだよ、

 小倉山や嵐山から吹きおろす嵐(強い風)が寒いので、(散りかかる)紅葉の錦を着ていない人は一人もいないことだ。

(自分から和歌の舟を)申し受けなさっただけのかいがあって、みごとにお詠みになったことよ。

(公任)ご自身もおっしゃるということには、「漢詩の舟に乗ればよかったなあ。そうして、これくらいの(出来ばえの)漢詩を作っていたならば、名声が上がることも(和歌よりも)いっそうまさっていただろうに。残念なことをしたものだなあ。それにしても、殿(=道長)が、『どの舟に(乗ろう)と思うか。』とおっしゃったときには、われながら(三つの道すべての名手と認められたのだと)得意にならずにはいられなかった。」とおっしゃるそうだ。

一つのことにすぐれるのさえ(難しいことで)あるのに、このようにどの道にも抜きん出ていらっしゃったとかいうのは、昔にもございませんことだ(=前例のないすばらしさだ)。

※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。

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