「管鮑(かんぽう)の交わり」とは、利害や損得を超えた、きわめて深い友情のたとえです。中国春秋時代の管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)の固い友情に由来し、出典は『史記』管晏(かんあん)列伝です。定期テストでは、本文末の「生我者父母、知我者鮑子也(我を生む者は父母、我を知る者は鮑子なり)」という名句と、「者…也」の句法、そして鮑叔が管仲をどのように理解していたかが問われます。次の文章を読み、後の問いに答えよ。
本文
【白文】
【書き下し文】
管仲曰はく、
「吾(われ)始め困(こん)せし時、嘗(かつ)て鮑叔(ほうしゅく)と賈(こ)せり。財利を分かつに、多く自ら与(あた)ふ。鮑叔我を以(もっ)て貪(たん)なりと為(な)さざるは、我が貧しきを知(し)ればなり。
吾嘗て鮑叔の為(ため)に事を謀(はか)りて、更(さら)に窮困(きゅうこん)す。鮑叔我を以て愚(ぐ)なりと為さざるは、時に利(り)有り不利(ふり)有るを知ればなり。
吾嘗て三たび仕(つか)へ、三たび君(きみ)に逐(お)はる。鮑叔我を以て不肖(ふしょう)なりと為さざるは、我が時に遭(あ)はざるを知ればなり。
我を生む者は父母、我を知る者は鮑子(ほうし)なり。」と。【注】
・困……生活に行きづまり苦しむこと。
・賈す……商売をする。
・財利……商売でもうけた利益。
・貪……欲が深い、強欲なこと。
・謀る……(人のために)事をはかりごとする、計画する。
・窮困……ますます行きづまり困ること。
・三たび君に逐はる……何度も主君に退けられ、官職を追われた。「三」は具体的な回数ではなく「何度も」の意。
・不肖……才能がなく、おろかなこと。
・遭はざる……(よい)時機にめぐり合わないこと。
・鮑子……鮑叔牙のこと。「子」は男子への敬称。
設問
- 傍線部①「吾始困時、嘗與鮑叔賈」を書き下し文に改めよ。
- 「分財利、多自与」を現代語訳せよ。
- 「鮑叔不以我為貪、知我貧也」を現代語訳せよ。
- 「鮑叔不以我為愚、知時有利不利也」とあるが、ここで鮑叔は、管仲の計画が失敗した原因をどこにあると考えていたか。説明せよ。
- 「鮑叔不以我為不肖、知我不遭時也」とあるが、鮑叔は、管仲が仕官に失敗したのはなぜだと理解していたか。説明せよ。
- 「不肖」の意味を答えよ。
- 傍線部③「生我者父母、知我者鮑子也」を書き下し文に改めよ。
- 「生我者父母、知我者鮑子也」を現代語訳せよ。
- 「生我者父母、知我者鮑子也」には、「者…也」という句法が用いられている。この句法はどのような意味を表すか、答えよ。
- 「我を知る者は鮑子なり」という言葉には、管仲の鮑叔に対するどのような気持ちがこめられているか。説明せよ。
- 「賈す」の意味を答えよ。
- 「謀る」の、ここでの意味を答えよ。
- 「三たび君に逐はる」とはどういうことか。次から最も適切なものを一つ選べ。
- ア 三度だけ主君のもとから逃げ出した。
- イ 何度も主君に退けられ、官職を追われた。
- ウ 三人の主君を自ら見捨てた。
- エ 三度の戦いで主君を裏切った。
- 「吾始め困せし時」とは、管仲のどのような時のことか。簡潔に説明せよ。
- 傍線部②について、鮑叔が管仲を「貪なり(欲が深い)」と思わなかったのはなぜか。本文に即して説明せよ。
- 本文では、鮑叔が管仲を悪く評価しなかった例が三つ挙げられている。その三つを、それぞれ簡潔にまとめよ。
- (一)商売について
- (二)はかりごと(計画)について
- (三)仕官について
- この故事から生まれた「管鮑の交わり」という言葉の意味を答えよ。
- 本文全体を通して、鮑叔牙はどのような人物として描かれているか。簡潔に説明せよ。
- この本文の出典(書名)を答えよ。また、その作者を答えよ。
- 「管鮑の交わり」と最も近い意味を表す故事成語を、次から一つ選べ。
- ア 四面楚歌
- イ 刎頸の交わり
- ウ 漁夫の利
- エ 蛇足
▼ 解答・解説を見る
問1 吾(われ)始め困(こん)せし時、嘗(かつ)て鮑叔と賈(こ)せり。
(解説)「困」は生活に苦しむこと、「嘗」は「かつて」と読み、過去の経験を表す。「賈」は商売をするの意で「こ(す)」と読む。
問2 (商売の)もうけを分けるとき、(管仲は)多くを自分の取り分とした。
問3 鮑叔は、私(管仲)を強欲だとは思わなかった。(それは)私が貧しいことを(よく)知っていたからである。
問4 管仲の能力が劣っていたからではなく、時勢に有利な時と不利な時があり、たまたま不利な時機にあたったからだと考えていた。
問5 管仲に才能がないからではなく、よい時機にめぐり合えなかったためだと理解していた。
問6 才能がなく、おろかなこと。
問7 我(われ)を生む者は父母、我を知る者は鮑子(ほうし)なり。
問8 私を生んでくれたのは父母であるが、私(の本当の値打ち)を理解してくれるのは鮑叔(鮑子)である。
問9 「(…する)者は…である」と、あるものごとを取り立てて示し、それが何であるかを説明・断定する意味を表す。(「A者B也」で「AはBである」と訳す。)
問10 自分のことを、表面的な行動だけで判断せず、その事情や本当の値打ちまで深く理解してくれた鮑叔に対する、心からの感謝と深い信頼の気持ち。
問11 商売をすること。
問12 (人のために)はかりごとをする、事を計画する、という意味。
問13 イ
(解説)「逐」は追う・退けるの意で、ここは受身「逐はる」。「君に逐はる」で主君に退けられ官職を追われたこと。「三」は「何度も」の意。
問14 管仲がまだ若く、貧しくて生活に行きづまり苦しんでいた時のこと。(出世する前の不遇な時期を指す。)
問15 鮑叔は、管仲が利益を多く取ったのは欲が深いからではなく、管仲が貧しくて生活に困っていたからだと理解していたから。事情を察し、相手の立場を思いやっていたのである。
問16 (一)商売の利益を多く取っても、貧しさのためだと考え、強欲だと責めなかった。
(二)はかりごとが失敗して管仲を困らせても、時勢の有利・不利のためだと考え、愚かだと責めなかった。
(三)たびたび仕官に失敗しても、よい時機に恵まれなかったためだと考え、無能だと責めなかった。
問17 利害や損得を超えた、互いに深く理解し合う、きわめて親密な友情のこと。
問18 相手の行動を表面だけで判断せず、その背後の事情や人物の本当の値打ちまで察して理解する、心の広い思いやり深い人物。(友を信じ、深く理解する人物。)
問19 出典(書名)……『史記』(管晏列伝)/作者……司馬遷(しばせん)
問20 イ(刎頸の交わり)
(解説)「刎頸の交わり」は、相手のためなら首をはねられても悔いないほどの、固い友情の意。「管鮑の交わり」と同じく深い友情を表す。ア「四面楚歌」は周囲がすべて敵であること、ウ「漁夫の利」は両者が争う間に第三者が利益を得ること、エ「蛇足」は余計なつけたしの意。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
🔗 解説で復習する・ほかのテストを探す


コメント