祇園精舎の定期テスト対策問題です。本文を読み、設問に答えてみましょう。問題用紙で解きたい人は下のPDFをどうぞ。解答は記事末尾で確認できます。
本文
祇園精舎の鐘の声、諸行無常〔①〕の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰〔②〕のことわりをあらはす。おごれる人も久しからず〔③〕、ただ春の夜の夢のごとし〔④〕。たけき者もつひにはほろびぬ〔⑤〕、ひとへに風の前の塵に同じ〔⑥〕。
遠く異朝をとぶらへば〔⑦〕、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の禄山、これらは皆旧主先皇の政にもしたがはず〔⑧〕、楽しみをきはめ、諫めをも思ひ入れず〔⑨〕、天下の乱れんことを悟らずして、民間の愁ふるところを知らざつしかば〔⑩〕、久しからずして、亡じにし者どもなり。
近く本朝をうかがふに〔⑪〕、承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信頼、これらはおごれる心もたけきことも、皆とりどりにこそありしかども、まぢかくは〔⑫〕六波羅の入道、前太政大臣平朝臣清盛公と申しし人のありさま、伝へ承るこそ、心もことばも及ばれね〔⑬〕。
設問
1. 現代語訳
1. 傍線部③「おごれる人も久しからず」を現代語訳しなさい。
2. 傍線部④「春の夜の夢のごとし」とはどのような意味か、現代語訳しなさい。
3. 傍線部⑬「伝へ承るこそ、心もことばも及ばれね」を現代語訳しなさい。
2. 文法・敬語
4. 傍線部⑤「つひにはほろびぬ」の「ぬ」の文法的意味(助動詞の種類と意味)を答えなさい。
5. 傍線部⑬「及ばれね」について、「れ」「ね」の助動詞の意味(種類)をそれぞれ答えなさい。
6. 傍線部⑬で、「こそ……及ばれね」と文末が「ね」となっているのはなぜか。文法的に説明しなさい。
3. 語句
7. 傍線部⑦「とぶらへ(とぶらふ)」の、ここでの意味を答えなさい。
8. 傍線部①「諸行無常」、傍線部②「盛者必衰」の読み方をそれぞれ平仮名で答えなさい。
9. 傍線部⑩「愁ふる」の意味を答えなさい。
4. 内容理解
10. 傍線部⑥「風の前の塵に同じ」は、何が何に「同じ」だと言っているのか。たとえている内容を説明しなさい。
11. 傍線部⑦「遠く異朝をとぶらへば」、傍線部⑪「近く本朝をうかがふに」とあるが、「異朝」「本朝」はそれぞれどこ(どの国)を指すか答えなさい。
12. この文章で、趙高・王莽や将門・純友などの人物の例が挙げられているのはなぜか。本文全体の主題と関係づけて説明しなさい。
5. 文学史
13. 『平家物語』のジャンル(物語の種類)を漢字で答えなさい。また、この作品を琵琶を弾きながら語り広めた、目の不自由な芸能者を何と呼ぶか答えなさい。
14. 『平家物語』の作者について、『徒然草』が伝える一説では誰とされているか答えなさい。また、本文の冒頭に表れている、この作品全体を貫く思想(仏教的な考え方)を漢字四字で答えなさい。
暗記(空所補充)
15. 次の冒頭文の空欄( ア )〜( エ )に入る語句を答えなさい。
「祇園精舎の鐘の声、( ア )の響きあり。沙羅双樹の花の色、( イ )のことわりをあらはす。おごれる人も久しからず、ただ( ウ )のごとし。たけき者もつひにはほろびぬ、ひとへに( エ )に同じ。」
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解答・解説
1. 現代語訳
1. 得意になって思い上がっている人も、長くは続かない。 「おごる」は「思い上がる・得意になる」、「久しからず」は形容詞「久し」(長く続く)の未然形+打消「ず」で「長くは続かない」。栄華は永遠ではないという無常観を述べた一文。
2. ただ(短くはかない)春の夜の夢のようだ。 「ごとし」は比況の助動詞「~のようだ」。春の夜の夢のように、栄華がはかなく短いものであることをたとえている。
3. (清盛公のありさまは)伝え聞くにつけても、心にも思い浮かべることができず、言葉でも言い表すことができない(ほどだ)。 「承る」は「聞く」の謙譲語。「心もことばも及ばれね」は「心(で思うこと)も言葉(で言うこと)も及ぶことができない」の意で、清盛の権勢のすさまじさを強調している。
2. 文法・敬語
4. 完了の助動詞「ぬ」の終止形。 「ほろび(ナ行上二段・連用形)+ぬ」で「滅んでしまった/滅んだ」。打消の「ず」(連体形「ぬ」)と混同しないよう注意。ここは連用形に接続しているので完了。
5. 「れ」=可能の助動詞「る」の未然形。「ね」=打消の助動詞「ず」の已然形。 「及ば(未然形)+れ(可能)+ね(打消・已然形)」で「及ぶことができない」。下に打消があるため、「れ」は可能の意味になる。
6. 係助詞「こそ」があるため、係り結びの法則により文末が已然形になっているから。 「こそ」は已然形で結ぶ。打消「ず」の已然形「ね」で結ばれている。
3. 語句
7. 訪ねる・調べ求める(過去をたずね探る)。 「とぶらふ」には「訪問する」「弔う」などの意味もあるが、ここは「遠く異朝(昔の中国)の歴史をたずね探ってみると」の意。次の「うかがふ(=さぐり見る)」と対になっている。
8. 諸行無常=しょぎょうむじょう/盛者必衰=じょうしゃひっすい(「しょうじゃひっすい」とも)。 「諸行無常」はこの世のすべては移り変わり一定でないこと、「盛者必衰」は勢いの盛んな者も必ず衰えることをいう仏教語。
9. 嘆く・悲しむ。 「愁ふ」は「嘆き悲しむ」の意。「民間の愁ふるところ」で「民衆が嘆き悲しんでいること」。
4. 内容理解
10. 勢いの盛んな(たけき)者も、結局は滅びてしまうこと(人の栄華のはかなさ)を、風の前に吹き散らされる塵にたとえている。 権勢を誇る者も、風に飛ばされる塵のようにあっけなく滅びるという、盛者必衰・無常をたとえた表現。
11. 「異朝」=中国(外国)。「本朝」=日本(わが国)。 中国の例(趙高ら)を「遠く異朝」、日本の例(将門ら)を「近く本朝」として対比的に並べている。
12. いずれも権勢を誇りながら、主君に従わず楽しみをきわめて、長く続かず滅びてしまった人物である。これらの例を挙げることで、「盛者必衰・諸行無常」というこの作品全体の主題を示し、最後に平清盛もまた同じ運命をたどることを暗示するため。 中国・日本の悪例を列挙して一般論(栄える者は必ず滅びる)を示し、その締めくくりとして清盛を置く構成になっている。
5. 文学史
13. ジャンル=軍記物語。語り広めた芸能者=琵琶法師。 『平家物語』は鎌倉時代に成立した軍記物語で、琵琶法師によって琵琶の伴奏で語られ広まった(その語りを平曲という)。
14. 作者=信濃前司行長(しなののぜんじゆきなが)。思想=諸行無常。 『徒然草』第二二六段に、信濃前司行長が著し、盲目の僧生仏(しょうぶつ)に語らせたという説が伝わる。ただし作者は未詳とするのが一般的。冒頭に示される「諸行無常」が作品全体を貫く思想である。
暗記(空所補充)
15. ア=諸行無常/イ=盛者必衰/ウ=春の夜の夢/エ=風の前の塵 冒頭の名文は暗唱できるようにしておくこと。対句(「祇園精舎の鐘の声」対「沙羅双樹の花の色」、「春の夜の夢」対「風の前の塵」)にも注目。


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