漢文の「比較・最上」を表す句法を確認します。比較では「A〜於B」で「AはBより〜だ」と読み、「A不如B(A、Bに如かず)」「A不若B」は「AよりBのほうが良い(AはBに及ばない)」の意です。最上では「莫如〜(〜に如くは莫し)」「莫若〜」で「〜が一番だ」、「莫〜於…(…より〜なるは莫し)」で「…より〜なものはない」を表します。読み・書き下し・現代語訳を区別して押さえましょう。次の各例文について、後の問いに答えよ。
本文
※例文は学習用です。
① 霜葉は二月の花よりも紅なり。(霜葉紅二於二月花一/霜葉は二月の花より紅なり)
② 苛政は虎よりも猛し。(苛政猛二於虎一/苛政は虎より猛し)
③ 氷は水より寒たし。(氷寒二於水一/氷は水よりつめたし)
④ 百聞は一見に如かず。(百聞不レ如二一見一/百聞は一見に如かず)
⑤ 天の時は地の利に如かず。(天時不レ如二地利一/天の時は地の利に如かず)
⑥ 之を知る者は之を好む者に如かず。(知レ之者不レ如二好レ之者一/之を知る者は之を好む者に如かず)
⑦ 之を知るは之を行ふに若かず。(知レ之不レ若レ行レ之/之を知るは之を行ふに若かず)
⑧ 賢を用ふるに如くは莫し。(莫レ如レ用レ賢/賢を用ふるに如くは莫し)
⑨ 身を修むるは敬に若くは莫し。(修レ身莫レ若レ敬/身を修むるは敬に若くは莫し)
⑩ 楽しみは善を為すより楽しきは莫し。(楽莫レ楽二於為一レ善/楽しみは善を為すより楽しきは莫し)
⑪ 禍ひは足るを知らざるより大なるは莫し。(禍莫レ大二於不一レ知レ足/禍ひは足るを知らざるより大なるは莫し)
⑫ 千里の馬は常に有れども、伯楽は常には有らず。馬を知るは伯楽に如くは莫し。(知レ馬莫レ如二伯楽一/馬を知るは伯楽に如くは莫し)
設問
- ①「霜葉紅於二月花」について
- 「比較」「最上」のどちらの用法か答えよ。
- 「於」をふまえて現代語訳せよ。
- ②「苛政猛於虎」の「猛於虎」を書き下し文に直せ(送り仮名も含めてひらがなで)。
- ②「苛政猛於虎」を現代語訳せよ。
- ④「百聞不如一見」の「不如」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ④「百聞不如一見」を現代語訳せよ。
- ⑤「天時不如地利」の「不如」の訳として最も適切なものを次から選べ。
- ア 〜に及ばない(〜のほうが良い)
- イ 〜してはいけない
- ウ 〜と同じである
- ⑥「知之者不如好之者」を現代語訳せよ。
- ⑧「莫如用賢」の「莫如」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- ⑧「莫如用賢」について
- 「比較」「最上」のどちらの用法か答えよ。
- 現代語訳せよ。
- ⑨「修身莫若敬」を現代語訳せよ。
- ⑩「楽莫楽於為善」の「莫楽於〜」の部分を書き下し文に直せ。
- ⑩「楽莫楽於為善」を現代語訳せよ。
- ⑪「禍莫大於不知足」を現代語訳せよ。
- ⑫「知馬莫如伯楽」について
- 「莫如」の読みを、送り仮名も含めてひらがなで答えよ。
- 現代語訳せよ。
- ③「氷寒於水」について
- この「於」と同じ働きをしている「於」を、③以外の例文からすべて選び、番号で答えよ。
- 現代語訳せよ。
- ⑦「知之不若行之」の「不若」は、④⑤の「不如」と意味・用法が同じか異なるか答えよ。
- 「莫如・莫若」と「莫〜於…」は、ともに最上を表す。両者の形のちがいを、例をあげて簡潔に説明せよ。(記述)
- 次のうち「比較(AはBより〜だ・AはBに及ばない)」を表す句法をすべて選び、記号で答えよ。
- ア A〜於B
- イ A不如B
- ウ 莫如A
- 「不如」「不若」のように、二字で「〜に及ばない・〜のほうが良い」と比較を表す働きを何と呼ぶか。次から選べ。
- ア 抑揚
- イ 比較・選択
- ウ 使役
- ④「百聞不如一見」と同じ「〜に及ばない」の用法の例を、本文⑤〜⑫からすべて選び、番号で答えよ。
- 「比較・最上」の句法をふまえ、「過ちては改むるに如くは莫し」のような『莫如/莫若』の文を、自分で一つ作ってみよ。(記述)
▼ 解答・解説を見る
問1 用法=比較。訳=「霜にあたって紅葉した葉は、二月(春)の花よりも紅い。」 「A〜於B」で「AはBより〜だ」を表す。
問2 書き下し=「とらよりもたけし」。 「於」は比較の基準を示し「〜より(も)」と読む。
問3 訳=「むごい政治は虎(の害)よりも恐ろしい(たけだけしく激しい)。」
問4 読み=「しかず」。 「不如」を「〜に如かず」と読む。
問5 訳=「百回聞くことは、一度実際に見ることに及ばない(一度見るほうがよくわかる)。」
問6 ア。「不如」は「AはBに及ばない=Bのほうが良い」という比較・選択の意。「天の時(天が与える好機)は、地の利(土地の有利さ)に及ばない=地の利のほうが大切だ。」
問7 訳=「(物事の道理を)知っている者は、それを好む者には及ばない(好む者のほうが優れている)。」
問8 読み=「しくはなし」。 「莫如」を「〜に如くは莫し」と読む。
問9 用法=最上。訳=「賢者を用いることほど良いことはない(賢者を用いるのが一番だ)。」
問10 訳=「身を修めるには、敬(つつしみ)に及ぶものはない(つつしみが一番大切だ)。」 「莫若」は「〜に若くは莫し」。
問11 書き下し=「ぜんをなすよりたのしきはなし」。 「莫〜於…」は「…より〜なるは莫し」と読む。
問12 訳=「楽しみは、善い行いをすることより楽しいものはない(善を行うのが最も楽しい)。」
問13 訳=「わざわいは、満足を知らないこと(足るを知らないこと)より大きいものはない。」
問14 読み=「しくはなし」。訳=「馬(の良し悪し)を見抜くことにかけては、伯楽に及ぶ者はいない(伯楽が一番だ)。」
問15 同じ働き=①・②・⑩・⑪。いずれも「於」が「〜より」と比較の基準を示す(⑩⑪は最上「莫〜於…」の中の「於」)。訳=「氷は(もとの)水よりも冷たい。」
問16 同じである。「不若」は「不如」と同じく「〜に若かず(しかず)」と読み、「〜に及ばない・〜のほうが良い」という比較・選択を表す。⑦は「之を知るは之を行ふに若かず」=「(それを)知っているだけでは、実際に行うことに及ばない」。
問17 (例)「莫如・莫若」は〈莫如+A〉の形で「Aに如くは莫し=Aが一番だ」と直接に最上を示す(例:莫如用賢)。一方「莫〜於…」は〈莫+形容詞+於+…〉の形で「…より〜なるは莫し=…より〜なものはない」と、比較の「於」を用いて最上を示す(例:禍莫大於不知足)。
問18 ア・イ。 ア「A〜於B」は「AはBより〜だ」、イ「A不如B」は「A、Bに如かず(AはBに及ばない=Bのほうが良い)」で、どちらも二つのものを比べる比較。ウ「莫如A」は「Aに如くは莫し(Aが一番だ)」で最上。
問19 イ(比較・選択)。
問20 ⑤・⑥・⑦。⑤(天時不如地利)・⑥(知之者不如好之者)・⑦(知之不若行之)は、すべて「Aは(Bに)及ばない=Bのほうが良い」という同じ用法(⑦の「不若」も「不如」と同じ)。⑧⑨⑫の「莫如・莫若」と⑩⑪の「莫〜於…」は最上なので入らない。
問21 (解答例)「学ぶは習ふに如くは莫し。(学ぶことは復習するのに及ぶものはない=復習が一番だ。)」など、〈莫如/莫若+A〉の形で最上を表していれば正解。
※この問題は誰でも古典塾オリジナルです。
🔗 解説で復習する・ほかのテストを探す


コメント