漢文を読むとき、文の意味を決めるのは「重要語(じゅうようご)」のひとつひとつの読みと意味です。同じ漢字でも、読み方がちがえば意味もガラッと変わります。この記事では、入試で何度も出る重要語を「読み・意味・例」の表でやさしく整理します。書き下し文と現代語訳をセットで覚えれば、初めて見る文章でもスッと意味が取れるようになります。
※「将(まさに〜んとす)」のように二度読む字(再読文字)は、別の記事でくわしく説明します。この記事では再読文字には深入りせず、1回だけ読む重要語を中心にあつかいます。
まずは一覧表(読み・意味)
| 漢字 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 蓋 | けだし | 思うに・おそらく(自分の考えを述べる) |
| 蓋(=盍) | なんぞ〜ざる | どうして〜しないのか(やんわり勧める) |
| 且 | かつ | その上・さらに・また |
| 夫 | それ | そもそも・いったい(話を始める合図) |
| 凡 | およそ | 総じて・だいたい・すべて |
| 如何・奈何・若何 | いかん(〜を いかん せん) | どうして・どうしたらよいか(理由・方法) |
| 何如 | いかん | どうであるか(状態・程度・よしあし) |
| 所以 | ゆゑん | 理由・わけ/〜する方法 |
| 是以 | ここをもって | だから・こういうわけで |
| 雖 | 〜と いへども | 〜だけれども・〜とはいっても |
| 与 | と/ともに/くみす/〜か | 〜と/いっしょに/味方する/疑問・反語 |
| 自・従 | より | 〜から(場所・時間の起点) |
| 即・則 | すなはち | そこで・とりもなおさず・〜ならば |
一語ずつくわしく
蓋(けだし/なんぞ〜ざる)
「蓋」には大きく2つの使い方があります。文の頭にあって「けだし」と読めば「思うに・おそらく」と、自分の考え・推量を述べる合図です。一方、文中で「なんぞ〜ざる」と読むときは「どうして〜しないのか」と、やんわり相手にすすめる言い方になります(この用法は本来「盍(こう)」の字を使い、「盍(なん)ぞ〜ざる」と読みます)。
| 白文 | 蓋 有 之 矣 |
|---|---|
| 書き下し | 蓋(けだ)し之(これ)有らん。 |
| 現代語訳 | 思うに、そういうこともあるのだろう。 |
且(かつ)
「且」を「かつ」と読むと「その上・さらに・また」という意味で、ものごとを付け加えます。なお「且」を「まさに〜んとす」と読むと「ちょうど〜しようとする」という再読文字になりますが、これは別記事であつかいます。ここでは「かつ=その上」の用法を覚えましょう。
| 白文 | 富 且 貴 |
|---|---|
| 書き下し | 富み且(か)つ貴(たふと)し。 |
| 現代語訳 | 裕福で、その上に身分も高い。 |
夫(それ)
文の頭で「それ」と読む「夫」は、「そもそも・いったい」と、これから話を始めるときの合図(発語)です。訳に必ず出さなくてもよい軽い語ですが、「さて、そもそも」と話を切り出す気分を表します。※文末で「〜か・〜かな」と読んだり、「かの(あの)」と読む使い方もありますが、入試で多いのは文頭の「それ」です。
| 白文 | 夫 学 不 可 以 已 |
|---|---|
| 書き下し | 夫(そ)れ学は以(もっ)て已(や)むべからず。 |
| 現代語訳 | そもそも学問は、途中でやめてよいものではない。 |
凡(およそ)
「凡」を「およそ」と読むと、「総じて・だいたい・すべて」という意味になり、文の頭で「一般に言って〜だ」とまとめる働きをします。
| 白文 | 凡 為 学 者 |
|---|---|
| 書き下し | 凡(およ)そ学を為(な)す者は。 |
| 現代語訳 | 総じて、学問をする者というものは。 |
如何・奈何・若何(いかん)と 何如(いかん)の読み分け
ここは間違えやすい最重要ポイントです。どれも「いかん」と読みますが、語順で意味が変わります。
- 如何・奈何・若何(「如・奈・若」が先)…方法・手段・理由をたずねる。「どうして〜か」「どうしたらよいか」。間に語をはさんで「〜を如何(いかん)せん(=〜をどうしようか)」の形がよく出ます。
- 何如(「何」が先)…状態・程度・よしあしをたずねる。「どうであるか」「どんなものか」。相手に評価・感想を聞くときの形です。
覚え方は「何が後ろなら『どうしよう(方法)』、何が前なら『どうだ(状態)』」。語順だけ見れば見分けられます。
| 白文 | 如 之 何 |
|---|---|
| 書き下し | 之(これ)を如何(いかん)せん。 |
| 現代語訳 | これをどうしたらよいだろうか。 |
| 白文 | 今 日 之 事 何 如 |
|---|---|
| 書き下し | 今日(こんにち)の事 何如(いかん)。 |
| 現代語訳 | 今日のことは、どんなようすであるか。 |
所以(ゆゑん)
「所以」は「ゆゑん」と読み、「理由・わけ」を表すのが基本です。文脈によっては「〜する方法・手段」(〜するためのもの)という意味にもなります。「〜する所以なり」で「〜するわけである/〜するための手立てである」と訳します。
| 白文 | 此 吾 所 以 憂 也 |
|---|---|
| 書き下し | 此(これ)吾(わ)が憂(うれ)ふる所以(ゆゑん)なり。 |
| 現代語訳 | これが、私が心配している理由である。 |
是以(ここをもって)
「是以」は「ここをもって」と読み、「だから・こういうわけで」と、前の内容を受けて結論につなぐ接続のことばです。「是(こ)れ以(もっ)て」ではなく、ひとまとまりで「ここをもって」と読むのがポイントです。
| 白文 | 是 以 君 子 慎 之 |
|---|---|
| 書き下し | 是(ここ)を以(もっ)て君子は之(これ)を慎(つつし)む。 |
| 現代語訳 | だから、りっぱな人はこのことを慎重にするのだ。 |
雖(〜といへども)
「雖」は「〜といへども」と読み、「〜だけれども・〜とはいっても」という逆接(前と後ろが食いちがう)を表します。「たとえ〜であっても」と、仮の話として訳すこともあります。返り点で上の語から「雖」へ返って読む形に注意しましょう。
| 白文 | 雖 有 智 慧 |
|---|---|
| 書き下し | 智慧(ちゑ)有りと雖(いへど)も。 |
| 現代語訳 | 知恵があるとはいっても。 |
与(と/ともに/くみす/〜か)
「与」は読みが多い字です。使い分けを表で整理します。一番多いのは「A 与 B=AとB」の形(並べる「と」)です。文末で「〜か(=歟)」と読むと疑問・反語になります。
| 読み | 意味 | 形・例 |
|---|---|---|
| と | 〜と(並べる) | A与B=AとB |
| ともに | いっしょに | 与(とも)に行く |
| くみす | 味方する・賛成する | 之(これ)に与(くみ)す |
| か(=歟) | 〜か(疑問・反語) | 文末で用いる |
| あたふ | あたえる | 之(これ)を与(あた)ふ |
| 白文 | 父 与 母 |
|---|---|
| 書き下し | 父と母と。 |
| 現代語訳 | 父と母と。 |
自・従(より)
「自」「従」はどちらも「より」と読み、「〜から」と、場所や時間の出発点を表します。「自(よ)り」の下から返って読みます。なお「自」には「みづから(自分で)」という別の読みもあるので、文脈で見分けましょう。
| 白文 | 有 朋 自 遠 方 来 |
|---|---|
| 書き下し | 朋(とも)有り遠方(ゑんぱう)より来(きた)る。 |
| 現代語訳 | 友が遠くからやって来る。 |
即・則(すなはち)
「即」「則」はどちらも「すなはち」と読みます。だいたいの使い分けは、「則」が「〜ならば(そのときは)」と前後をつなぐ条件の働き、「即」が「とりもなおさず・つまり」「すぐに」という気持ち、と覚えておくとよいでしょう。どちらも「そこで/そのまま」という流れを表します。
| 白文 | 学 則 不 惑 |
|---|---|
| 書き下し | 学べば則(すなは)ち惑(まど)はず。 |
| 現代語訳 | 学べば、(そのときは)迷わない。 |
覚え方のポイント
- 「いかん」は語順で判断…「何如」=どうであるか(状態)/「如何・奈何・若何」=どうしたらよいか・どうして(方法・理由)。「何が前か後ろか」だけ見れば一発。
- 2字でひとまとまりの語に注意…「所以=ゆゑん(理由・方法)」「是以=ここをもって(だから)」は、1字ずつバラバラに読まない。
- 逆接の合図は「雖(いへども)」…「〜といへども」が出たら、後ろに「でも・しかし」の内容が続くと予想して読む。
- 「与」は形で見分ける…間にはさまれていれば「と」、文末なら「か」、下に目的語があれば「くみす・あたふ」。
- 同じ字で2つの読みがある語は文脈で…「蓋(けだし/なんぞ〜ざる)」「自(より/みづから)」「且(かつ/まさに〜んとす※再読)」は、前後の意味から読みを決める。
重要語は、白文・書き下し・現代語訳をワンセットで声に出して覚えるのが近道です。表をくり返し見て、「この字が出たらこう読む」を体にしみこませましょう。
もう一歩くわしく|つまずきやすい字を深掘り
一覧表だけでは「読みは分かったけれど、文章になると迷う」という人が多い字があります。ここでは、入試でとくに差がつく「夫」「与」「雖」「所以」を、もう一歩くわしく見ていきます。読み方そのものより、「どこに置かれているか(位置)」と「前後にどんな語があるか」に注目するのがコツです。位置を手がかりにすれば、初めて見る文でも読みを決められるようになります。
「夫」は置かれる位置で読みが変わる
「夫」は位置によって読みも意味も大きく変わる、まぎらわしい字の代表です。整理すると次の三つです。
- 文の頭にある「夫」=「それ」…これから話を始めるときの発語(はつご)です。「そもそも・さて」と話を切り出します。訳に必ず出さなくてもかまいません。
- 名詞の上にある「夫」=「かの」…「あの・例の」と、すでに話題になっているものを指します。「夫(か)の人」で「あの人」。
- 「ふ」と音で読む「夫」=「おっと・成人男子」…「丈夫(じやうふ)」「農夫(のうふ)」のように、ふつうの名詞として使われます。
| 白文 | 夫 天 地 者 |
|---|---|
| 書き下し | 夫(そ)れ天地(てんち)なる者は。 |
| 現代語訳 | そもそも天地というものは。 |
見分けるコツは「文の一番はじめなら『それ』、名詞のすぐ上なら『かの』」。位置を見れば、ほとんど迷わずに決められます。
「与」は前後の形でフローチャート式に見分ける
読みが多い「与」は、暗記しようとすると混乱します。前後の形を上から順に確かめる「フローチャート式」で考えると、すっきり決まります。
- 二つの名詞にはさまれている(A 与 B)→「と」と読み「AとB」。一番よく出る形です。
- 動詞のように使われ、下に「に」がつく→「くみす」と読み「味方する・賛成する」。
- 下に目的語があり「あたえる」意味になる→「あたふ」と読む。
- 文の終わりにある→「か」と読み、疑問や反語を表す(「歟」と同じ働き)。
つまり「はさまれていれば『と』、文末なら『か』、それ以外で動きを表すなら『くみす・あたふ』」という順に確かめれば見分けられます。位置と前後の語だけで判断できるのがポイントです。
| 白文 | 管 仲 与 鮑 叔 |
|---|---|
| 書き下し | 管仲(くわんちゆう)と鮑叔(はうしゆく)と。 |
| 現代語訳 | 管仲と鮑叔と(の二人は)。 |
「雖」は「上の語から返って読む」のが最大の注意点
「雖(いへども)」でつまずく一番の原因は、返り点の向きです。「雖」は文の上のことばを先に読み、あとから「雖」へ返って「〜といへども」と読みます。日本語に直すと「〜だけれども」「〜とはいっても」という逆接(前と後ろの内容が食いちがう)になります。
- 事実をふまえた逆接…「実際は〜だが、それでも」。例:「貧(まづ)しと雖も=貧しいけれども」。
- 仮の話としての逆接…「たとえ〜であっても」。例:「死すと雖も=たとえ死んでも」。
どちらの訳になるかは前後の内容で決まります。「雖」が出てきたら、後ろに「でも・しかし」の内容が続くと予想しながら読み進めると、文の筋を見失いません。
「所以」は「理由」と「方法」のどちらかを文脈で決める
「所以(ゆゑん)」には二つの意味があり、入試では「どちらの意味か」を答えさせる問題がよく出ます。
- 理由・わけ…「〜する所以なり」で「〜するわけである」。あとに気持ちや原因が続くときはこちら。
- 方法・手段(〜するためのもの)…「〜する所以」で「〜するための手立て」。あとに道具・やり方が続くときはこちら。
| 白文 | 所 以 教 民 |
|---|---|
| 書き下し | 民(たみ)を教(をし)ふる所以(ゆゑん)。 |
| 現代語訳 | 民を教えるための方法(手立て)。 |
見分けの目安は「あとに『気持ち・原因』が来れば理由、『やり方・道具』が来れば方法」。前後を見れば自然に決まります。
入試ではこう問われる|出題のされ方
これらの重要語は、定期テストや入試で次のような形で問われます。どこを見られているのかを知っておくと、対策が立てやすくなります。
- 読みを答える問題…「傍線部の漢字の読みをひらがなで書きなさい」。とくに「所以=ゆゑん」「是以=ここをもって」のような二字でひとまとまりの語が狙われます。一字ずつ読まないことが大切です。
- 書き下し文を選ぶ問題…返り点・送りがなに合った書き下しを選ばせます。「雖」のように上の語から返る字は、返り点の向きが正解の決め手になります。
- 意味・解釈を選ぶ問題…「如何(方法・理由)」と「何如(状態)」のちがい、「所以(理由/方法)」のちがいのように、似た語の意味の区別が問われます。
- 現代語訳の問題…重要語を正しく訳に反映できているかが採点されます。「雖=〜けれども」「是以=だから」を訳し落とさないようにします。
とくに差がつくのは「如何と何如の読み分け」と「所以の意味の決定」です。語順や前後の語という「目で見える手がかり」で判断できるので、勘ではなく根拠をもって選べるように練習しておきましょう。
ミニ練習問題(解答つき)
ここまでの内容を、かんたんな問題で確かめましょう。まず自分で読みと意味を考えてから、解答を見てください。
- 「学 則 不 惑」の「則」の読みと、文全体の意味は?
- 「父 与 母」の「与」の読みは?
- 「今 日 之 事 何 如」の「何如」の読みと、たずねている内容(方法か状態か)は?
- 「是 以 君 子 慎 之」の「是以」の読みと意味は?
- 「智 慧 有 と 雖 も」の「雖」が表すのは順接か逆接か?
【解答】
- 「則」は「すなはち」。意味は「学べば(そのときは)迷わない」。「則」は「〜ならば」と前後をつなぐ条件の働きです。
- 「与」は「と」。二つの名詞にはさまれているので「父と母と」と読みます。
- 「何如」は「いかん」。「何」が前にあるので、たずねているのは状態・程度(どうであるか)です。
- 「是以」は「ここをもって」。意味は「だから・こういうわけで」。前の内容を受けて結論につなぎます。
- 「雖」が表すのは逆接。「知恵があるとはいっても(そのあとに食いちがう内容が続く)」という流れになります。
よくある質問(Q&A)
Q. 「如何」と「何如」は、結局どちらも「いかん」と読むなら区別する意味はあるの?
A. 読みは同じでも、たずねている内容がちがうので区別が必要です。「如何(如・奈・若が前)」は「どうしたらよいか・どうして」と方法や理由をたずね、「何如(何が前)」は「どうであるか」と状態やよしあしをたずねます。設問で「何をたずねているか」を問われたときに差がつきます。「何が前なら状態、何が後ろなら方法」と覚えましょう。
Q. 「即」と「則」は、どちらも「すなはち」なら入れかえてもいいの?
A. 読みは同じですが、ニュアンスに傾きがあります。「則」は「〜ならば(そのときは)」と前後を条件でつなぐ働きが中心、「即」は「とりもなおさず・つまり」「すぐに」という気持ちが中心です。書かれている漢字はそのまま書き写し、訳すときに文脈に合わせて使い分ければ大丈夫です。
Q. 「自」が「より」なのか「みづから」なのか、どう見分ければいい?
A. 下に場所や時間を表す語が続いていれば「より(〜から)」、下に動作(動詞)が続いて「自分で〜する」となれば「みづから」です。「自 遠方 来(遠方より来る)」は場所が続くので「より」、「自 行(みづから行く)」は動作が続くので「みづから」です。下に何が来ているかを見ましょう。
Q. 再読文字(将・且=まさに〜んとす など)も、ここで一緒に覚えた方がいい?
A. まずはこの記事の「一回だけ読む重要語」をしっかり固めるのがおすすめです。再読文字は読み方のしくみが特別なので、別にまとめて練習した方が混乱しません。「且」は「かつ(その上)」と「まさに〜んとす(再読)」の両方がありますが、ここでは「かつ」を確実にしておきましょう。
まとめ
漢文の重要語は、丸暗記よりも「位置と前後の語という手がかりで読みを決める」と考えると、ぐっと楽になります。最後に大切なポイントをおさらいします。
- 「いかん」は語順で判断…「何如」=状態(どうであるか)、「如何・奈何・若何」=方法・理由(どうしたらよいか)。
- 二字でひとまとまりの語…「所以=ゆゑん(理由/方法)」「是以=ここをもって(だから)」は一字ずつ読まない。
- 「夫」は位置で決める…文頭なら「それ」、名詞の上なら「かの」。
- 「与」はフローチャート式…はさまれていれば「と」、文末なら「か」、動きを表せば「くみす・あたふ」。
- 「雖」は返って読む逆接…上の語から返って「〜といへども」、後ろに食いちがう内容が続く。
これらの語は、白文・書き下し文・現代語訳をワンセットで声に出すと、いちばん速く身につきます。表と例文をくり返し確認して、「この字が出たらこう読む」という感覚を体にしみこませましょう。慣れてくれば、初めて見る漢文でも意味の骨組みがすばやくつかめるようになります。
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