高名の木登りの定期テスト対策問題です。本文を読み、設問に答えてみましょう。問題用紙で解きたい人は下のPDFをどうぞ。解答は記事末尾で確認できます。
本文
高名の木登りといひしをのこ〔①〕、人を掟てて〔②〕、高き木に登せて梢を切らせしに、いと危く〔③〕見えしほどは言ふこともなくて、降るる時に軒長〔④〕ばかりになりて、「あやまちすな〔⑤〕。心して降りよ」と言葉をかけ侍りし〔⑥〕を、「かばかりになりては、飛び降るるとも降りなん〔⑦〕。いかにかく言ふぞ〔⑧〕」と申し侍りしかば〔⑨〕、「その事に候ふ〔⑩〕。目くるめき〔⑪〕、枝危きほどは、おのれ〔⑫〕が恐れ侍れば申さず。あやまちは、安き所になりて、必ず仕ること〔⑬〕に候ふ」と言ふ。
あやしき下臈〔⑭〕なれども、聖人の戒めにかなへり〔⑮〕。鞠も、難き所を蹴出して後、安く思へば必ず落つと侍るやらん。
設問
1. 現代語訳
1. 傍線部〔⑤〕「あやまちすな」を現代語訳しなさい。
2. 傍線部〔⑧〕「いかにかく言ふぞ」を、誰のどのような気持ちがこめられているかがわかるように現代語訳しなさい。
3. 傍線部〔⑬〕「安き所になりて、必ず仕ること」を現代語訳しなさい。
4. 傍線部〔⑮〕「聖人の戒めにかなへり」を現代語訳しなさい。
2. 文法・敬語
5. 傍線部〔⑤〕「あやまちすな」の「な」は何を表すか。文法的に説明しなさい。
6. 傍線部〔⑦〕「降りなん」の「な」「ん(む)」の文法的意味(助動詞の意味)をそれぞれ答えなさい。
7. 傍線部〔⑧〕「いかにかく言ふぞ」には係り結びがある。係りの助詞と、それによって結びがどう変化しているかを説明しなさい。
8. 傍線部〔⑥〕「かけ侍りし」、〔⑨〕「申し侍りしかば」、〔⑩〕「候ふ」の敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)をそれぞれ答えなさい。
3. 語句
9. 傍線部〔②〕「掟てて」の意味を答えなさい。
10. 傍線部〔④〕「軒長ばかり」とはどのくらいの高さか、わかりやすく説明しなさい。
11. 傍線部〔⑪〕「目くるめき」の意味を答えなさい。
12. 傍線部〔⑭〕「下臈」の意味を答えなさい。
4. 内容理解
13. 木登りの名人は、なぜ高い危険な所では何も言わず、安全な低い所まで降りてきてから初めて注意の言葉をかけたのか。本文に即して説明しなさい。
14. 本文で作者が述べようとしている教訓を、「油断」という語を用いて二十五字以内で説明しなさい。
5. 文学史
15. 『徒然草』の作者名と、この作品のジャンル(文学上の分類)を答えなさい。また成立した時代を答えなさい。
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解答・解説
1. (解答)あやまちをするな。/失敗をしてはいけない。 「あやまち」は「失敗・けが」の意の名詞、「す」はサ変動詞「す」の終止形、「な」は禁止を表す終助詞。終止形+「な」で「~するな」という禁止の意味になる。
2. (解答)どうしてこのように(言わなくてもよいことを)言うのか。 木登りの名人に注意されたあとの、登った男(おのこ)の言葉。「もうこれくらいの高さなら飛び降りても無事に降りられる。それなのに、どうしてこんな(わかりきった)ことを言うのか」という、いぶかしむ・不審に思う気持ちがこめられている。「いかに」=どうして、「かく」=このように。
3. (解答)(油断しやすい)安全な所まで来て、(あやまちを)必ずいたすものでございます。 「安き所」=(高い所に比べて)安全な低い所。「仕る(つかまつる)」は「す(する)」の謙譲語で「いたす」、ここでは「(あやまちを)しでかす」の意。「候ふ」は丁寧の補助動詞「~でございます」。失敗は危険な所ではなく油断する安全な所で必ず起こる、という名人の教訓。
4. (解答)(昔の)聖人の教え・戒めに一致している。かなっている。 「聖人」=徳の高い理想的な人物・賢人。「戒め」=教え・いましめ。「かなへり」=「かなふ(一致する・合致する)」の已然形+完了・存続の助動詞「り」で「一致している」。身分の低い職人の言葉だが、聖人の教えにも通じる立派なものだ、という作者の評。
5. (解答)禁止(を表す終助詞「な」)。「あやまちす」(サ変終止形)に付いて「あやまちをするな」と禁止の意を表す。 動詞の終止形(ラ変型は連体形)+終助詞「な」で「~するな」の禁止。命令形の前に置く「な…そ」とは別なので注意。
6. (解答)「な」=完了(強意)の助動詞「ぬ」の未然形/「ん(む)」=推量(または意志)の助動詞「む」の終止形。 「飛び降るるとも降りなん」で「(飛び降りたとしても)きっと降りられるだろう」の意。完了の助動詞「ぬ」+推量「む」が連なる「なむ」は「きっと~だろう・~してしまうだろう」という強意(確述)+推量を表す。ここは「降りることができるだろう」という男の自信を示す。
7. (解答)係りの助詞は「ぞ」。「ぞ」を受けて、文末の動詞「言ふ」が終止形ではなく連体形「言ふ」で結ばれている(強意・強調)。 「いかにかく言ふぞ」。係助詞「ぞ」は強意を表し、結びを連体形にする。四段動詞「言ふ」は終止形・連体形が同形のため形の上の変化は見えにくいが、文法上は連体形止め。
8. (解答)〔⑥〕かけ侍りし…丁寧(「侍り」)/〔⑨〕申し侍りし…謙譲(「申し」)+丁寧(「侍り」)/〔⑩〕候ふ…丁寧。 「侍り」「候ふ」はいずれも丁寧の補助動詞で、語り手から読者(聞き手)への敬意を示す。「申す」は「言ふ」の謙譲語。なお〔⑨〕は本動詞「申し」(謙譲)に丁寧の補助動詞「侍り」が付いた形。
9. (解答)指図して。命令して。 「掟つ(おきつ)」はタ行下二段動詞で「指図する・命令する・取り決める」の意。ここは名人が(弟子の)男に木に登るよう指図したことをいう。
10. (解答)家の軒(のき)と同じくらいの高さ。人が飛び降りても危なくない程度の、地面に近い低い高さ。 「軒長(のきたけ)」=軒の高さ。「ばかり」は程度を表し「~くらい」。木のてっぺん近くの危険な高さから降りてきて、ようやく軒ほどの低い所まで来た場面。
11. (解答)目がくらむこと。目まいがすること。 「目くるめく」=目がくらくらする・目まいがする。高い所での恐ろしさ・危なさを表す。
12. (解答)身分の低い者。下々の者。 「下臈(げらふ/げろう)」=身分の低い者。木登りの職人を指す。これに対し「上臈(じょうろう)」は身分の高い人。作者は身分の低い者の言葉にも聖人の戒めに通じる知恵がある、と評価している。
13. (解答)高くて危険な所では、登っている本人が自然と恐れて用心するので注意する必要はないが、軒ほどの安全な低い所まで降りてくると、つい気がゆるみ油断して、あやまち(失敗)を必ずしてしまうものだから。 名人は「目くるめき、枝危きほどは、おのれが恐れ侍れば申さず。あやまちは、安き所になりて、必ず仕る」と説明している。危険な場面より、安心して油断する場面でこそ失敗が起こる、という人間の心理を見抜いている。
14. (解答例)油断したときにこそ失敗は起こるという戒め。(19字) 本文の主題は「あやまちは安き所になりて必ず仕る」、すなわち物事が易しく安全に思えて油断したときにこそ失敗するという教訓。蹴鞠(けまり)の例も同じ戒めを補強している。字数内で「油断」を含めてまとめればよい。
15. (解答)作者…兼好法師(吉田兼好/卜部兼好)。ジャンル…随筆。成立した時代…鎌倉時代(末期/鎌倉時代から南北朝時代にかけて)。 『徒然草』は鎌倉時代末期(十四世紀前半)に成立した兼好法師による随筆。『枕草子』『方丈記』とともに日本三大随筆の一つに数えられる。「高名の木登り」は第百九段。


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