高校漢文の超定番教材、史記『完璧(帰趙)』(廉頗藺相如列伝)の定期テスト対策問題です。「城入らずんば、臣請ふ、璧を完うして趙に帰らん」をはじめとする頻出の句法・書き下し・現代語訳を、テスト形式で総点検できます。藺相如が和氏の璧を秦の手から守り、無傷のまま趙へ持ち帰る——四字熟語「完璧」の語源にもなった名場面が舞台です。まずは本文を読み、設問に挑戦してみましょう。お話の流れがあいまいな人は、先に 史記『完璧帰趙』のやさしい解説 で内容をつかんでから取り組むと、得点が安定します。
本文
【白文】
【書き下し文】
趙の惠文王の時、楚の和氏(くわし)の璧を得たり。秦の昭王之を聞き、人をして趙王に書を遺(おく)らしめ、願はくは十五城を以て璧に易(か)へんと請ふ。
①是(ここ)に於(お)いて王召見し、藺相如に問ひて曰(い)はく、「秦王、十五城を以て寡人(くわじん)の璧に易へんと請ふ。予(あた)ふべきや不(いな)や。」と。
相如曰はく、「②秦城を以て璧を求めて趙許さずんば、曲(きよく)は趙に在り。趙璧を予へて秦趙に城を予へずんば、曲は秦に在り。」と。
王曰はく、「誰か使ひすべき者ぞ。」と。相如曰はく、「王必ず人無くんば、臣願はくは璧を奉じて往きて使ひせん。城趙に入らば璧を秦に留めん。③城入らずんば、臣請ふ、璧を完(まつた)うして趙に帰らん。」と。
秦王章台に坐して、相如を見る。相如璧を奉じて秦王に奏す。秦王大いに喜び、伝へて以て美人(びじん)及び左右に示す。
相如、秦王の趙に城を償(つぐな)ふに意無きを視(み)、乃(すなは)ち前(すす)みて曰はく、「④璧に瑕(きず)有り。請ふ王に指示せん。」と。王璧を授(さづ)く。
相如因りて璧を持ち、卻立(きやくりつ)して柱に倚(よ)り、怒髪上りて冠を衝(つ)きて曰はく、「⑤大王璧を得んと欲し、人をして書を発して趙王に至らしむ。趙王悉(ことごと)く群臣を召して議す。
⑥且(か)つ夫(そ)れ布衣(ふい)の交はりすら、尚ほ相欺かず、況(いは)んや大国をや。
今臣至るに、大王臣を列観(れつくわん)に見、礼節甚だ倨(おご)れり。臣大王に趙王の城邑(じやういふ)を償ふに意無きを観る。故に臣復た璧を取れり。
⑦大王必ず臣を急にせんと欲せば、臣の頭(かうべ)今璧と倶(とも)に柱に砕けん。」と。
相如其の璧を持ち、柱を睨(にら)み、以て柱に撃(う)たんと欲す。
相如、秦王の特(た)だ詐(いつは)りて詳(いつは)り趙に城を予ふと為すのみにして、実(じつ)は得べからざるを度(はか)り、⑧乃ち其の従者をして褐(かつ)を衣(き)、其の璧を懐(いだ)き、径道(けいだう)より亡(に)げ、璧を趙に帰(き)せしむ。
⑨秦も亦(また)城を以て趙に予へず、趙も亦終に秦に璧を予へず。
※「和氏の璧」は、楚の卞和(べんか)が見つけたとされる名玉。傍線部の番号は設問に対応しています。本文は頻出箇所を中心に編集しています。
設問
- 傍線部①「是に於いて王召見し」について、次の問いに答えよ。
- (1) 「是に於いて」の読みをひらがなで答えよ。
- (2) この「王」とは誰を指すか。漢字で答えよ。
- 傍線部②「秦城を以て璧を求めて趙許さずんば、曲は趙に在り」を現代語訳せよ。
- 本文中の「城不入、臣請完璧帰趙」(傍線部③)について、次の問いに答えよ。
- (1) この部分を書き下し文に直せ(送り仮名・読み仮名を補うこと)。
- (2) 「請」はここでどのような意味・用法か。最も適当なものを次から選べ。
ア 相手に許可を求める「どうか〜させてください」(請願) イ 相手に行動を要求する「どうか〜してください」(依頼) ウ 単なる過去「〜した」 エ 禁止「〜してはならない」 - (3) 「臣」とは誰のことか。人物名を漢字で答えよ。
- 傍線部③「璧を完うして趙に帰らん」について、次の問いに答えよ。
- (1) 「完うす」とはどういうことか。十五字以内で説明せよ。
- (2) この一文が、後の四字熟語「完璧」のもとになっている。本文に即して、「完璧」の本来の意味として最も適当なものを次から選べ。
ア 欠点が一つもなく、完全であること イ 傷一つない璧(玉)を、無事にもとの持ち主へ持ち帰ること ウ 大きく立派な宝物を手に入れること エ 約束を必ず守ること
- 傍線部④「璧に瑕有り。請ふ王に指示せん」について、次の問いに答えよ。
- (1) この発言を相如がした、本当のねらいは何か。簡潔に説明せよ。
- (2) 「瑕」の読みをひらがなで答えよ。また、この「瑕」は実際に存在したか、しなかったか。
- 傍線部⑤「人をして書を発して趙王に至らしむ」について、次の問いに答えよ。
- (1) この文に用いられている句法を漢字で答えよ。
- (2) 「使(しむ)」のここでの意味を答えよ。
- (3) 全体を現代語訳せよ。
- 傍線部⑥「且つ夫れ布衣の交はりすら、尚ほ相欺かず、況んや大国をや」について、次の問いに答えよ。
- (1) 「すら〜、況んや〜をや」が表す句法の名称を答えよ。
- (2) この一文を現代語訳せよ。
- (3) 「布衣」とはどのような身分の人を指すか。簡潔に答えよ。
- 傍線部⑦「臣の頭今璧と倶に柱に砕けん」について、次の問いに答えよ。
- (1) この発言で相如は秦王に何を示そうとしたのか。説明せよ。
- (2) 文末「砕けん」の「ん(む)」の意味として最も適当なものを次から選べ。
ア 推量「〜だろう」 イ 意志「〜しよう(するつもりだ)」 ウ 勧誘「〜しないか」 エ 仮定「もし〜ならば」
- 傍線部⑧「乃ち其の従者をして褐を衣、其の璧を懐き、径道より亡げ、璧を趙に帰せしむ」について、次の問いに答えよ。
- (1) 「従者をして〜帰せしむ」に用いられている句法を答えよ。
- (2) 「褐を衣」とは、従者にどのような姿をさせたということか。簡潔に答えよ。
- (3) 「径道より亡げ」とはどういうことか。現代語で説明せよ。
- 傍線部⑨「秦も亦城を以て趙に予へず、趙も亦終に秦に璧を予へず」について、この結末はどのような状況になったことを示すか。簡潔に説明せよ。
- 「奉」の読みと意味について、次の問いに答えよ。
- (1) 「相如璧を奉じて秦王に奏す」の「奉じて」の読みをひらがなで答えよ。
- (2) ここでの「奉」の意味を答えよ。
- 「相如、秦王の趙に城を償ふに意無きを視る」について、相如は秦王のどのような態度から「城を渡す気がない」と見抜いたのか。本文に即して二つ挙げよ。
- 「怒髪上りて冠を衝く」とは、相如のどのような様子を表した表現か。簡潔に説明せよ。また、ここから生まれたとされる四字熟語を漢字で答えよ。
- 「相如其の璧を持ち、柱を睨み、以て柱に撃たんと欲す」とあるが、相如はなぜこのような態度をとったのか。その意図を説明せよ。
- 次の語の本文中での読みを、それぞれひらがなで答えよ。
- (1) 寡人
- (2) 怒髪
- (3) 径道
- 本文全体を通して描かれる藺相如の人物像として最も適当なものを次から選び、記号で答えよ。
ア 武力にものを言わせて強引に交渉を進める豪傑 イ 危険な場面でも機転と胆力で主君の利益を守り抜く知略の人 ウ 秦王の権威に屈し、保身を第一に考える臆病な臣下 エ 学問にすぐれ、礼儀作法を何よりも重んじる学者 - 次の傍線部の「予」について、読みと意味をそれぞれ答えよ。
「予ふべきや不や」 - 「曲は趙に在り」「曲は秦に在り」の「曲」とはどういう意味か。文脈をふまえて答えよ。
- この文章の出典について、次の問いに答えよ。
- (1) 出典の書名を漢字で答えよ。
- (2) (1)の著者名を漢字で答えよ。
- (3) (1)に用いられている、本紀・列伝などから成る歴史の記述形式を何というか。漢字で答えよ。
- 『史記』に関する説明として正しいものを、次から二つ選び、記号で答えよ。
ア 前漢の時代に著された イ 唐の時代に著された ウ 神話・伝説の時代から武帝の時代までを記す エ 日本の歴史を記した書物である オ 編年体で書かれている - 藺相如が和氏の璧を無事に持ち帰った話に由来する四字熟語「完璧(帰趙)」について、次の問いに答えよ。
- (1) 現代では「完璧」はどのような意味で使われているか。簡潔に答えよ。
- (2) 「完璧」を使った短文を一つ作れ。
- この故事から生まれた、藺相如と廉頗(れんぱ)の和解にまつわる有名な四字熟語に「刎頸(ふんけい)の交はり」がある。これはどのような交友を意味するか。簡潔に説明せよ。
- 本文の内容に合うものを、次から一つ選び、記号で答えよ。
ア 秦王ははじめから十五城を趙に与えるつもりで、誠実に交渉した。 イ 相如は璧に偽りの傷があると言って秦王から璧を取り戻し、最終的に従者に命じて璧を趙へ持ち帰らせた。 ウ 相如は秦王の力に恐れをなし、璧を秦に渡して一人で逃げ帰った。 エ 趙王は最後に十五城を手に入れ、璧も秦に渡さずにすんだ。 - もしあなたが趙王だったとして、秦から「十五城と璧を交換しよう」と持ちかけられたら、応じるべきか応じないべきか。本文で趙の家臣たちが何を心配していたかをふまえて、あなたの考えを五十字程度で書け。
▼ 解答・解説を見る(まず自分で解いてから)
問1
(1) ここにおいて
(2) 趙(の惠文王)
〔解説〕「是に於いて」は「そこで・こうして」と場面を転換する常套句。ここでの「王」は趙の恵文王。璧を持っている側、相如を呼び出す側である点から判断する。
問2
(訳例)秦が城を差し出して璧を求めているのに趙が承知しないとなれば、(道理に合わない)非は趙の側にある。
〔解説〕「曲」は「正しくないこと・落ち度・非」。「ずんば」は仮定(〜ないならば)。相如が、交渉に応じる正当性を理屈で整理して述べた場面。
問3
(1) 城(じやう)入らずんば、臣請ふ、璧を完(まつた)うして趙に帰らん
(2) ア
(3) 藺相如(りんしょうじょ)
〔解説〕「臣請ふ〜ん」は「(私に)どうか〜させてください」という請願(願望)の句法。自分の動作についての願い出なのでア。イの「依頼」は相手の動作を求める用法で、ここでは不適。「臣」は王に対して自分をへりくだって言う一人称で、発言者である藺相如を指す。
問4
(1) (例)璧を傷一つない完全な状態に保つこと。(14字)
(2) イ
〔解説〕「完(まつた)うす」は「完全な状態に保つ・無傷で全うする」。本文の「完璧」は文字どおり「璧を完(まつた)うする」=傷のない璧を無事にもとへ持ち帰る意味で、ここからイが正解。現在使われる「欠点がなく完全」(=ア)は後世に広がった転義であり、本文での原義とは区別する。
問5
(1) (例)璧に傷があると偽って、秦王の手から璧を取り戻すため。
(2) か/(実際には)存在しなかった(うその傷)。
〔解説〕秦王に城を渡す気がないと見抜いた相如が、「傷をお見せします」と言って璧を返させ、取り返すための方便。傷は実在せず、相如の機転による嘘である。
問6
(1) 使役(使役の句法)
(2) 〜させる(ある人に動作をさせる)
(3) (訳例)(大王は)人に命じて手紙を出させ、(それを)趙王のもとへ届けさせた。
〔解説〕「使(し)ム」+〔人〕+〔動詞〕で「〔人〕に〜させる」という代表的な使役構文。「発書」は手紙を出すこと。
問7
(1) 抑揚(よくよう)の句法
(2) (訳例)そもそも庶民どうしの交際でさえ、なお互いにだまし合わないものだ。まして大国(の君主)であればなおさら(だますはずがない)。
(3) 官位のない庶民。
〔解説〕「Aすら尚ほ〜、況んやBをや」は、軽いAを引き合いに出して重いBを強調する抑揚形。「庶民でさえ約束を守る、まして大国はなおさらだ」と述べ、約束を守らない秦王を暗に責めている。「布衣(ふい)」は布の衣で、官職のない一般庶民を指す。
問8
(1) (例)秦王が無理に璧を奪おうとすれば、自分の頭を璧もろとも柱に打ちつけて璧を砕いてしまう、という決死の覚悟を示した。
(2) イ
〔解説〕命を懸けてでも璧を守るという脅し(覚悟)の場面。「砕けん」の「ん(む)」は話し手自身の動作についての強い意志を表す。
問9
(1) 使役(使役の句法)
(2) (例)粗末な身なり(庶民の服)をさせた、ということ。
(3) (例)目立たない抜け道(わき道)を通ってこっそり逃げ帰らせたということ。
〔解説〕「従者をして〜(せ)しむ」も使役。「褐(かつ)」は粗末な布の衣で、従者を庶民に変装させた。「径道」はわき道・近道で、人目を避けて璧を趙へ持ち帰らせた。
問10
(例)結局、秦は城を趙に渡さず、趙も璧を秦に渡さないまま終わった(取引は成立せず、璧は趙に守られた)という状況。
〔解説〕相如の機転により、趙は城を得られなかったものの、璧を秦に奪われずにすんだ。これが「完璧(帰趙)」=璧を全うして趙に帰した、という結末である。
問11
(1) ささげて(ほうじて)
(2) (例)両手でうやうやしく持つ・差し上げる(献上する)。
〔解説〕「奉」は「ささ(げる)/たてまつる」で、敬意をもって両手で持ち上げ差し出す動作。
問12
(例)①璧を受け取ると側近や美人に次々と見せて喜ぶばかりで、城のことに触れなかった点。②相如を正式な場ではなく軽い場所(列観)で接見し、礼儀が傲慢であった点。
〔解説〕本文の「伝へて以て美人及び左右に示す」「臣を列観に見、礼節甚だ倨れり」から読み取る。
問13
(説明例)激しい怒りのために髪の毛が逆立ち、かぶっている冠を突き上げるほどであった、という様子。/四字熟語=怒髪衝天(どはつしょうてん)。
〔解説〕怒りが頂点に達した形相を表す誇張表現。「怒髪、天を衝く」とも。
問14
(例)秦王が力ずくで璧を奪おうとすれば、本当に璧を柱に打ちつけて砕いてしまうという姿勢を見せ、秦王に手出しをさせないため。
〔解説〕「睨柱(柱を睨む)」「欲以撃柱(柱に打ちつけようとする)」は、決死の覚悟を行動で示し、秦王をひるませる威嚇である。
問15
(1) かじん (2) どはつ (3) けいどう
〔解説〕「寡人」は君主が自分をへりくだって言う一人称。「怒髪」は怒りで逆立つ髪。「径道」はわき道・近道。
問16
イ
〔解説〕相如は、命の危険のある秦王の前でも、嘘の傷を口実に璧を取り返し、従者に変装させて璧を趙へ送り返すなど、機転(知略)と胆力で主君(趙)の利益を守った。よってイ。
問17
読み=あた(ふ)/意味=(璧を秦に)与える・引き渡す。
〔解説〕「予(あた)ふ」は「与える」と同じ。「予ふべきや不(いな)や」で「与えるべきか、そうでないか」と趙王が思案する場面。
問18
(例)道理に合わないこと・落ち度・非(が一方の側にあること)。
〔解説〕「曲」は「まがったこと」から転じて「道理に外れていること・非」。「直(ちょく=正しい)」の対義として用いられる。
問19
(1) 史記 (2) 司馬遷(しばせん) (3) 紀伝体(きでんたい)
〔解説〕『史記』は前漢の司馬遷が著した歴史書。帝王の記録「本紀」と人物の伝記「列伝」などから構成される記述形式を紀伝体という。年代順に出来事を記す「編年体」と対比して覚える。
問20
ア・ウ
〔解説〕『史記』は前漢の武帝の時代に司馬遷が著し(ア)、伝説上の黄帝から武帝の時代までを記す(ウ)。イ「唐の時代」・エ「日本の歴史」・オ「編年体」はいずれも誤り(『史記』は紀伝体)。
問21
(1) (例)欠点がまったくなく、完全であること。
(2) (例)彼の演技は完璧で、観客は息をのんだ。/(例)準備を完璧に整えて本番に臨んだ。
〔解説〕原義「傷のない璧を全うする」から転じて、現代では「少しの欠点もなく完全であるさま」を表す。短文は「完璧だ/完璧に〜する」の形が自然。
問22
(例)たがいに相手のためなら首をはねられても悔いないほどの、固い友情・深い交わり。
〔解説〕「刎頸の交はり」は、のちに藺相如と廉頗が和解して結んだとされる深い友情を指す故事成語。命をかけても惜しくない親友の交わりをいう。
問23
イ
〔解説〕本文の内容に一致するのはイ。アは「はじめから誠実に交渉」が誤り(城を渡す気はなかった)。ウは「璧を渡して逃げた」が誤り(璧は守り抜いた)。エは「十五城を手に入れた」が誤り(城は得られていない)。
問24
(解答例)応じるべきではない。秦が城を渡さず璧だけ奪う恐れがある一方、断れば兵を向けられる心配もあるため、信頼できる使者を立てて慎重に交渉すべきだ。(約60字)
〔解説〕本文では家臣たちが「秦に与えれば城をだまし取られるかもしれない/与えなければ攻め込まれるかもしれない」という板挟みを心配していた。この二つのリスクにふれて自分の判断を書けていれば可。賛否どちらでも、理由が本文に即していればよい。
※この問題はオリジナル作成です(教科書・市販問題集の転載ではありません)。本文は中国古典の原文(著作権の対象外)を用いています。版により細部の表記が異なる場合があります。
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